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東方魔法録~Witches fell in love with him.  作者: 枝瀬 景
三章 少女修行~in Gensokyo.
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44 引越2~I...It's not for you.

引越は前に使ったので2を付けました。

「パチュリー。その……血を頂戴?」

「え?」


言い出すのに割と勇気が必要だった。

俺は魔法使いでもあるが、同時に吸血鬼だ。成り行きで吸血鬼になったにしろ吸血鬼の性からは逃れられない。つまり、喉が渇いた。

パチュリーにはアリスと村で起こったことを話してある。アリスの血を吸ったことも。結論から言うとパチュリーは怒ることは無かった。むしろ、今まで血を吸わなくて大丈夫だったのか心配してくれた。パチュリーの優しさが骨に染みるぜ…


「…そうだったわね。いいわ。きて…」


頭のいいパチュリーはその事を思い出して首筋をはだけさせた。

突然、恋人が血をくれなんて普通に考えて訳分からんことを言うのはおかしいから若干言うのを躊躇われたが、杞憂に終わったようだ。俺はパチュリーを抱いて、カパッと口を開けてパチュリーの首筋に噛みついた。


「っ…」

「ちゅる…」


やっぱり、歯を差すから始めは痛いみたいだ。出来るだけ痛みを与えないようにゆっくり歯を差す。


「ちゅる…ちゅぱ。ごくッ」

「ふぁ!」


甘い。


病みつきになる甘美な味で、さながら伝説にある甘露のようだ。いや、パチュリーの血は俺にとっての甘露だった。

歯を差した時に滲み出た血の味に我慢できず、一気に血を吸い上げた。


「じゅるるるるる!…ごくッ」

「ひゃ、んぁぁぁ、あぁっ!」


獣のように貪り、強くパチュリーを抱き締める。肉付きのよさからくる弾力がとても柔らかい。

答えるようにパチュリーも俺の腰に回した腕の力を強くする。

血を吸うという背徳的な行為に、それも恋人のものということが合わさり興奮して、理性が効かなくなって欲望のままに血を吸い上げる。


「っは、ごくッ、ごくッ、ごくッ」

「んぁぁあ……っ、あはぁ……!」


あー、ヤバい。歯止めが効かない。パチュリーは喘息持ちだというのに止めようと思っても、あと一口、あと一口が止まらない。嗚呼、あと一口ぐらいいいよね…


不意に扉が開く音がした。でも確認する前に一口だけ…


「はぁむ、ちゅぷ…じゅる…」

「ふぁあ!」


「…あ」


誰が来たようだった。じゃあ本当にこの一口で最後に…


「ゴク…ゴク…ぷぅ…」

「はぁあぁ…んっ」


パチュリーを抱き締めたまま、今度こそドアの方に視線を向ける。するとそこには顔を若干紅らめて惚けているアリスの姿があった。首に手を当ててこちらを眺めている。


「あ…タイミング悪かったなぁ…」


よく考えたら昨日、俺が呼んだからアリスが来るんだった。

パチュリーは激しい吸血に疲れたのか体重を俺にかけて肩で息をしていた。パチュリーが倒れないように抱き抱え、居るに居たたまれなくなってアリスに言い訳染みたことを言った。


「なんかごめんね?喉の渇きはどうしょうもないからさ」

「え?…あ!ええ。吸血鬼だものね」


惚けていたアリスは慌てて返事をした。吸血鬼だからということを理解してもらったのはいいが、気まずい。


「まあ…その、座って?」


紛らわすように話題を変えるために、アリスに椅子に座るように言った。俺も話をするためにアリスと向かい合うように座った。パチュリーは完全とはいかないが復活して俺の補助なしで隣に座った。


「えっと、今日アリスを呼んだのは大事な話があるんだ」


大事な話とは引っ越すからここに来ても図書室はないということだ。

一週間ぐらい前に何時でも来ていいといいつつ、急に明日にいなくなることが申し訳ないと思った。


「実は…俺達、明日には引っ越す事になったんだ」

「…………。え?」


「呼ばれず飛び出てジャジャジャジャ~ン!ゆかりん登場!」


俺達が着いているテーブルの上の空間に音もなく『スキマ』が開き、レミリアに似たようなナイトキャップを被った長い金髪の女性が宙に浮くように突然現れた。


「「「…………………」」」

「あれ?無反応?誰か驚いたっていいじゃない。ゆかりん傷ついちゃう」


そう言って彼女は顔を両手で隠し、涙も流さない嘘泣きを始めた。


「紫さん…。今大事な話をしてるんだけど…」


貴女の作った幻想郷に引っ越すことを彼女に伝えてるんです。


レミリアから幻想郷に引っ越すことを聞いたのは数日前。レミリアは「いい場所に引っ越すけど良いわよね」と質問ではなく、引っ越すことを前提とした確認作業を俺達にした。まあ、俺はパチュリーがいれば何処でもいいからいいと言った。父さんと母さん、エドワードさんとフラウさん、それにエリーとレイレウにはまた引っ越すと伝えてある。あとはアリスに伝えるだけだった。


「全く…神出鬼没ね…」

「あー!その声もしかしてアンタ!?」


パチュリーは紫さんの行動に飽きれていた。

アリスが立ち上がり、紫さんを指差して驚いた。


「ふふ、そうよ。私は八雲紫。ずっと見ていて面白かったわ」


紫さんはクスクスと扇子で口元を隠して上品に笑った。


「ん?知り合い?」

「姿は今知ったわ。コイツ勝手についた来て何時の間にか家にいたのよ。何がしたいのかわからないけど、明希とな…んでもないわ」


俺はアリスにたずねた。

アリスは始めは憤慨した様子だったが俺との辺りでその勢いが失せた。


「んん?そう。で、紫さんは何しに来たの」


俺は半目になって紫さんに質問した。

紫さんは扇子を歌舞伎役者のように一瞬で閉じ、アリスに質問した。


「私が引っ越しの話をここに持ち出したと言ったら…貴女はどうする?」


紫さんは俺ではなくアリスに質問した。

人の話を聞け。まあ、紫さんにいっても無駄か。


「え?………ちょっと、どういうこと?私をからかっているの?」


紫さんとの間に何があったのか知らないが、アリスは怒っていた。


「貴女に出来ることは二つ。一つはこのまま黙ってこの男とサヨナラすること」

「ふざ…」

「もう一つは、貴女も引っ越すこと。後悔のない選択をしなさい」

「……っ!」


俺とパチュリーを置いてどんどん話が進んでいく。あれ?おかしいな。何で俺達が引っ越す話からアリスが引っ越すかしないかの話になっているんだ?


アリスは少し悩んだ後、紫さんに言った。


「私もいくわ」

「それは本当に後悔しないわね?」

「勿論よ」


アリスがそう答えると紫さんは芸者のようにバッと扇子広げて口元を隠した。


「ふふ、決まりね。貴女も明日一緒にきなさいな」


そう言って紫さんはスキマの中に消えて行った。


「アリス。いいの?」

「いいのよ。ここの本が読めなくなる方が後悔するわ。べ、別に明希と離れるのが嫌だった訳じゃないんだからね///」













翌日。

幻想郷に引っ越すに当たって、紫さんから俺とパチュリーにお願いがあった。何でも、引っ越した先で紅魔館を何年かの間、不可視にして欲しいとか。ルールを作るためとか言ってたけど、詳細は後で話すと言ってた。仕方ないので俺一人で外にでた。


季節は冬。葉は既に枯れていて、吐く息は白く煙った。部屋着のまま外に出たのは失敗だったかな。

普段、図書室では魔法を使って完璧な空調を実現している。学生の頃は暑いときは氷柱を出したり、寒い時は暖炉に火を付けるぐらいしか出来なかったが、地道に魔法の実力は上がっているのだ。


「それじゃ、ちゃっちゃと終わらせるか」


魔法で紅魔館がすっぽり入るように結界を造り、結界の外からは見えなくする。試しに結界の外から紅魔館を見るとちゃんと不可視になっている。よしよし。

結界を張り終えたことを確認すると俺は手をハエみたいに擦り合わせながら図書室に戻っていった。


………………………………………

……………………………………

…………………………………


図書室には賢者の石があともう少しで出来るパチュリーと俺の報告を待つ紫さんとレミリア。外から帰ってきたと言うことで温かい紅茶を淹れてくれている小悪魔がいた。美鈴は地下のフランの所に行っている。なんか一気に賑やかになったなぁ。


「張ってきたよ」

「紅茶をどうぞ」

「ん、ありがと」


椅子に座って紅茶を受け取り、紫さんが声を上げた。


「それでは皆様。これから幻想郷にご案内致します。準備は宜しいですか?と言っても皆様は何もしなくても宜しいのですが」


じゃあ言うなよ。とは言わずに紫さんが閉じた扇子を上から降り下ろしたのを皆が見つめた。


「終わりましたわ」

「「「早っ!?」」」


俺とパチュリーと小悪魔はその呆気なさに驚いた。レミリアは知っていたのかあまり驚いた様子は見られなかった。


「外に出ればわかりますわ。ああ、時差があるので日傘を忘れないように」


言われるがままに日傘をもって外に出た。


外には幻想的な景色が広がっていた。


ふとおもったんですが、俺達の戦いはこれからだぜ!って終わりそうな感じがしなくもないですか?まあ、絶対にしません。中途半端に幕切れするなんて僕は嫌いです。

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