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東方魔法録~Witches fell in love with him.  作者: 枝瀬 景
三章 少女修行~in Gensokyo.
44/67

41 恋煩~Have you ever fallen in love with anyone .

今回はアリス視点。途中、小説の書き方としてあまりよろしく思われないと一般的に言われる描写?が有ります。でも、アリスを可愛くするためには仕方のないことなんです。あと36帰路での吸血シーンに吸血しなかったら死んでたかも知れないということを加筆しました。

「はぁ……………………」


私はカップを片手に、もう片方の手で頬杖をつきながら長い溜め息を溢した。


「シャンハーイ?」

「ホウラーイ?」


人形の上海と蓬来が私が溜め息を溢したことに、あたかも疑問を持ったように反応した。あくまで人形だから疑問を持つ筈がない。そう反応するように私が命令式を予め入れていたから、それに従って反応しただけ。


「貴女達はある意味いいわよね…。この胸のモヤモヤや苦しさを感じなくて済むのだから…」


はぁ…とまた溜め息を溢した。尤も、私はこの苦しさを本気で嫌だと思っている訳ではない。…私にマゾヒズムの精神は持ち合わせていないわ。念のため。

この症状が出てきたのは昨日、紅魔館から家に帰って夕食の支度をしている最中だった。


………………………………………

……………………………………

…………………………………


私は図書室から得た情報を人形に取り入れる時間を確保するために、夕食を簡単に済ませようとトマトとチーズを使った簡単なスープを作った。鍋に火をかけてかき混ぜている時に、ふと明希のことを思い出した。多分、トマトの赤色が血の色を連想させたのでしょう。吸血行為のせいね。


そして、明希のことを思うと何だかんだ胸がモヤモヤして苦しくなってきた。自分でも驚いて、初めは何かの病気かと思った。でも、焦った時にはいつの間にか胸のモヤモヤが消えていた。何故?と不思議に思いながらも鍋から皿にスープを注ぎ冷めない内に食べることにした。


食べ終わってから紅魔館で集めた情報を元に人形を作っていると、あ、あの村で買った鉱石があったわねと思い出した。

鉱石を手に取っていると、明希とのあの村でのやりとりが思い出された。


村から出られなくなった二日目の昼過ぎ。私は柄にもなく自分の昔話をして愚痴を言ってしまったのだ。

そんな私を明希は少し困ったような優しい顔で私の頭を撫でてくれた。

いきなり頭を撫でられて最初はビックリしたけど、段々心が落ち着いて胸が暖かくなった。

その事を思い出していると頬が緩み嬉しくなっている自分がいた。二日目のことを思い出していると釣られて三日目のことも思い出してしまった。


あのときの私は大胆にも明希を膝枕してしまった。その…初めは撫でられたお礼がしたくて私も何か出来ないかなと思っていたのだけど…。

その日明希はフラフラして眠そうだった。紅茶を淹れるのはいいと私は言ったけど、明希は寝惚けていて淡々と紅茶を淹れた後に寝てしまった。

椅子に座って机に突っぷしている明希の黒髪を机越しにおそるおそる撫でてみる。初めて触った男の人の髪は私のと比べて少し硬かった。


机を挟んで前のめりの状態はちょっときつい。そこで私は椅子を明希の隣に持っていった。しかし、それでも明希の頭を撫で辛かったので、私は明希を起こさないように私の膝の上に乗せた。膝の上に乗せることで明希の寝顔が見えた。朝の人狼の犯人探しの眠そうな顔とは違って、何時ものカッコいい顔からは想像出来ない無防備な寝顔だった。その無防備を私に対して見せてくれると思うと、つい嬉しくなって微笑みながら明希の頭を撫でた。そして頭をなでる単調な動きと明希が寝ていたのに釣られて私も眠ってしまった。

今思うと何故こんなにも明希の頭を撫でようとムキになっていたのかしら。


そして人狼の騒ぎが終わった帰り道。

別れ際に明希が突然苦しみ始めた。血を吸われた後でわかったのだけど、禁断症状だったようね。

人狼との戦闘の最中に私の気付かない間に出来た首筋の切り傷から出る僅かな血を見て、魔法使いでもあり吸血鬼でもある明希は理性を失ってしまった。

いきなり抱き寄せられた時は心臓が跳び跳ねた。そしてドキッっとしたと思ったらすぐに首筋を舐められてくすぐったかった。突然の明希の行動に私は戸惑っていた。

私の戸惑いを気にせず明希は私の手首を掴んで牙を首に突き立てた。明希が血を吸い始めると、少しの痛みと全身の筋肉が弛緩するほどの快楽が私の心身を支配した。

血が首筋から抜けていく感覚にゾクゾクして、初めて男性に抱かれて(性的な意味でなく)心臓がドキドキして血が抜けていくのに拍車をかけていた。

更には貧血気味だと言ってしばらくの間明希に体重を預けて……


「きゃぁぁぁあ~!!/////」


わ、わ、私ったらなんてことしてたの~!!


私はベットに飛び込んで枕を抱き締めて恥ずかしさのあまり悶えた。

思い出すだけで顔が紅潮して胸がドキドキして破裂しそうだった。

じっとしていられなくて、より強く枕を抱き締めて顔を埋めて悶々としていた。


ただ、何故こうも明希のことを思う度に心が落ち着かなくなるのだろう。初めて他人と親しくなって交流を持った私には解らなかった。

やっぱり友達だから?友達だから…特別だからこんなにも会いたいのかしら……


「……////」


その日は顔を枕に埋めている内に寝てしまった。


………………………………………

……………………………………

…………………………………


「ま、また///」


いけないいけない。これじゃ今から紅魔館に行けないじゃない!

何とか顔の紅潮を鎮めて私は紅魔館に向かった。


















ペラ……ペラ……グツグツ……ペラ……ガキッ!……ペラ……ボフッ!……ペラ……


図書室に本のページを捲る音とパチュリーが賢者の石の研究をする音が響き渡る。賢者の石は完成に近付くに連れて失敗も多くなるから煩いだろうけど我慢してとのこと。けれども、そんな音なんて私の耳には全く入ってこない。

何故なら明希のことが気になってそれどころじゃないから。昨日は表の人狼の死体を片付けていたから明希はいなかった。だから昨日は調べものがはかどった。でも、昨日の内に全部片付けてしまっていて、今日は目の前にいる。


チラチラと本越しに明希を覗く。明希は集中しているのか全くこちらに気付いていない。

明希は机に対して斜めになるように座っていた。足は組んで机の外に出していて、右肘をテーブルに立てて握りこぶしの上に顎を乗せて頬杖をついている。左手で本を持って読書する姿はとても様になっていてカッコよかった。


ポッと私の頬が熱くなるのを感じて、慌てて視線を本に落とした。そして本が上下逆さまだったことがバレなくてよかった。余計に恥ずかしくなって顔が紅くなる。

端から見ると挙動不審よね私……。明希とパチュリーがそれぞれの作業に没頭しているからと言ってこのまま変な動きをしていたら見られるのは確じ……


「!?」


一瞬誰かの視線を感じた。ただ者ではない濃い妖力を持った誰。明らかに私を見ていた。明希でもないし、パチュリーでもない。一体誰が……


「お兄さま~!」


ピタッ


明希はページを捲る手を、パチュリーは試験管の中身を移し変える手を、私はキョロキョロするのを凍りついたように止めた。

お兄さま……?現在の図書室にはお兄さまと呼べるような男の代名詞を使える人は一人しかいない。

そしてお兄さまと爆弾発言した不思議な羽の生えた少女は、明希の首に飛び付いた。


「お兄さま!遊んで遊んで!」

「……一応確認するがフラン。お兄さまって俺のことか?」

「そうだけど…。まさかお兄さまはお姉さまだったの!?」

「いやいや、俺は男だ…。俺が言いたいのは、なんでいきなり俺のことをお兄さまと呼ぶようになったんだ?」

「えっとね、美鈴からお兄さまとパチュリーと小悪魔のことを話してもらったの。それでお兄さまは御姉様が吸血鬼にしたって聞いて」


フラン…とか言う少女は明希の膝の上に何食わぬ顔で乗った。裏山…じゃなくて!


「明希…その子は…?」

「ああ。フラン、アリスに自己紹介」

「うん。私はフランドール・スカーレット!レミリア御姉様の妹で明希お兄さまの妹でもあるの!フランって呼んでね!」

「え、ええ。私はアリス・マーガトロイド。アリスでいいわ」


フランは明希の膝の上から動かずに自己紹介をした。


「フラン。なんで俺が兄なんだ?レミリアが俺を吸血鬼にしたからって言うなら俺は弟か甥っ子に当たらないか?」

「そうだけど…弟や甥っ子じゃ変なの。…お兄さまって呼んじゃ…だめ?」


フランは明希の膝の上で上目使いで言った。…あれは何て言う名前の脅迫かしら?そんな顔されたら初対面の私だっていいと返事をしてしまう。フランはそんな顔をしていた。


「うぅ…。わかったよ…」

「やったー!お兄さま大好き!」


フランは感極まって明希に抱き付いた。

明希はフランの頭を撫でながら言った。


「そう言えばフランは出てきて大丈夫なの?」

「うん!狂気はある程度発散出来たから暫くは大丈夫!!御姉様も屋敷内なら遊んでいいって!」

「そうか。それはよかったね。

…人狼を壊して狂気を発散か…。うーん解決の糸口が見えた気がする」


狂気ってなにかしら?聞く限りじゃとても良いものじゃなさそうね。でも、本人と紅魔館の主が大丈夫って言うなら大丈夫でしょ。あまり他人のことを根掘り葉掘り聞くのはお行儀が悪いわ。


「お兄さま~もういいでしょ?早く遊ぼうよ~」

「はいはい。でもここじゃ二人の邪魔になるから別の場所で遊ぼっか」

「はーい!」

「と言うわけだからごめんね?」


明希はそう言ってフランに手を引っ張られながら図書室を出ていった。


………………………………………

……………………………………

…………………………………


時刻は夕方。そろそろ帰って夕食の支度をしなければならない。


「今日もありがとう」

「また明日もおいでよ」


私は明希とパチュリーに見送られていた。


「それじゃあ、また明日もお邪魔してもよろしいかしら?」

「ええ、いいわよ」

「じゃあまた昼過ぎに行くわね」

「わかった」

「また明日ね」

「バイバイ」

「気を付けてね」


それからアリスは家に帰って行った。


アリスを誰にも気付かれずに見ていた者が一人いた。


「ふふふ、これは面白そうね」


キャラ人気投票と記念の噺のやってほしいことも大募集中です。


詳しくは活動報告の東方魔法録50話記念イベントを御覧ください。


期限は49話が出て二日後までです!

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