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東方魔法録~Witches fell in love with him.  作者: 枝瀬 景
二章 吸血人狼~Are you a werewolf.
31/67

29 二日目(前半の後半)~Are you a werewolf.

この話は二連続で投稿したものです。お気に入り機能の最新29話から入った方は前編である28話をお読みください。


毎度しつこく言いますが、この話は人狼ゲームの常識を無視したものがあります。なんでこんなにしつこく言うかというと、人狼ゲームを知っている人は恐らく「はぁ!?」とか「作者てめ、そんなことが許されると思ってるのか!!」と思うかもしれないからです…

- the first half of the discussion -


「伝承は本当だったんだ…」


ポツリとお父さんが呟いた。

伝承…『夜に住まうものが村に三体現れたとき、この村に滅びをもたらす。阻止するには人狼を占うものと、死者の霊から人狼を見分けるもの、他のものを守るものそれぞれ一人ずつと、それ以外の人狼側ではないもので人狼を突き止めよ』

これが本当だとすると今のところ仮定が全て正しければ…


「伝承が正しければ今のところ人狼側は2体。村人側は村人9人で、そのうち占い師のワールさん一人に『他のものを守るもの』…猟銃で人狼を追い払っているからここは『狩人』と仮称して、狩人が一人に『死者の霊から人狼を見分けるもの』が一人いるってことですね」

「仮定が全て正しければな」


うーん、なんだか不思議な世界に迷い混んだ気分。だって占い師に狩人に死者の霊から人狼を見分ける人ですよアナタ。人狼だって十分にアレだけど僕としてはこっちの方が信じがたい。


人狼だったらそう言う生き物だと説明されればまだ納得出来るけど、占うとか猟銃で魑魅魍魎を退けるとか死者の霊で判断するとか…。別の種族と言われれば納得いかないこともないかもしれないけど、これが普通の人間だって言うから信じがたいんだよなぁ。


「あ、人狼は襲撃に失敗したと言うことは誰が狩人なんでしょう?」


素朴な疑問が僕の口から出た。人外なのに人間とか変なことを考えていたら自然と気になってしまったのは仕方がないことだと思う。


「お、そのことなんだけどな…むぐぅ!」


ワールさんが何かを言おうとした瞬間に明希さんがとても人間とは思えないスピードでワールさんの目の前まで迫り、手で口をふさいだ。

…全然見えなかった。明希さんって何か格闘技でもやってるのかなぁ?


「駄目ですよワールさん。ここで狩人のことを話しちゃ。人狼に狩人の正体がバレちゃ不味いでしょ」

「ふがっ!もがっ!」

「えぇ…?あ、あぁ。そうですね…迂闊な発言をしてごめんなさい。ここで狩人の正体をバラしてしまったら狩人が襲われるかもしれないですね…」


でもこれはいい情報だ。

明希さんのスピードに呆けながらも思わず顔がニヤついた。不謹慎なのは重重承知だけど探偵気分で嬉しくなったのは押さえられなかった。


「でも、これでワールさんが本物の占い師ってことになりませんか?」

「まあ、そうとも考えられる」

「え…?おい、クレイ…どういうことだ…?」


僕と明希さんの推理と、息子である僕の想像もつかなかった頭のキレに戸惑うように父さんが僕に説明を求めた。


「お父さん、人狼にとって驚異なのは能力を持った人間なんだ。勿論、能力も持たない村人でも、もしかすると自分を処刑する為に投票する票の絶対数が多いのはある意味驚異だけど、それ以前に占いはその投票の為の判断基準。もし本物の占い師に自分が占われたら最後、人狼は疑われて処刑を免れるのは至難の技。その占い師を襲ったと言うことは…」


「そうか!占い師は人狼にとって驚異。その驚異を殺そうとしたのならワールは本物の占い師であるという証拠他ならない!……凄いぞクレイ!こんな推理が出来るなんて!俺はお前のような息子を持てて誇らしく思う!!」


お父さんは感情的になって僕の頭を乱暴にワシャワシャと撫でた。


「で、でもクレイ。狩人が襲われるかも知れないってどういうこと…?」


お母さんがお父さんと同様に興奮しながらも僕の言ったことが引っ掛かったようで狩人の弱点について訪ねてきた。


「それは狩人が自分自身を守れないかもしれないからなんだ」

「……え?」

「狩人ってどうやって人狼を追い払ってっいると思う?」

「それは……どうやって?」


「……ええっと人狼が護衛対象を襲うスキに銃で撃つからだよ。この銃は一発づつしか弾を込められない。きっと狙いに狙って撃つんだろうね。夜の人狼は銃じゃ殺せないけど退けさせることは出来る。でも人狼が狩人自身を襲いにきたら?きっと狙う暇なんかないし恐怖で狙いが外れるかもしれないんだ」


他人を守れて自分を守れないなんて可笑しな話だけど、それが一見、無敵のように見える狩人の弱点だと僕は思う。


狩人はきっと隠れて他の人を襲うのに夢中な人狼を狙い、人狼への恐怖に怯えながらも狙われているのは自分じゃないという微かな確証を心の支えにして、たった一発の弾を当てるために全集中力を使って引き金を引くことはちょっと考えれば想像がつく。


でも、狙われているのは狩人自身で、襲われている最中、誰かを守っている時みたいに集中して狙えるはずがない。それに狙われているのは自分じゃないという心の支えが無い中、恐怖心で一杯な狩人に一発の弾を人狼に当てるのは酷というものだ。


「俺もそう思う。狩人は狩人自身は守れない」


明希さんも同じことを思ったようで僕の考えを肯定してくれた。


「…そうなの」


お母さんはまるで生気が抜けたような声で返事をした。

その声を聞いて明希さんはチッと舌打ちをした。だけど、何故かその顔には怒りは無かった。


「……でも母さんってなんで父さんより…」


明希さんは何かブツブツ呟いた。…?よくわからないけど何かを恐れているようだった。それになんだか最初の舌打ちとその後の呟きは別のことのようにも思える。


「「「……………………」」」


静寂。一旦、推理が終わって訪れた静寂は、何時もより何倍も頭を使って喋った僕達にとって必然なものだった。


明希さんはおもむろにポケットから銀の懐中時計を取り出して時間を確認した。


「そろそろ昼時だから、ここらでひとまず休憩しない?昼間にこんなに喋ったのは久しぶりだ…」


ゲームでは護衛された人物は誰が狩人なのかはわからないのがルールなのですがここではそのルールを無視してます。それがこの物語とゲームの違いの1つです。


明希の舌打ちの理由とその後の呟きの真相は答え合わせである明希視点でわかります。まあ、あんまり大したことじゃないんですけどね。

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