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東方魔法録~Witches fell in love with him.  作者: 枝瀬 景
一章 喘息少女~If you have memory in former incarnation , what would you like to do.
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2 誘拐~One bawled,another used magic and the other swung the frying pan.

一人は泣き叫び、一人は魔法を使って、一人はフライパンを振った…なにがあったんでしょう?

ダメ人間になりそうだ。と早くも弱音をあげる。

人間、存外に環境の変化への対応力が高い。早起きが出来ない人も蹴飛ばされて起こされ続けたら、嫌でも早起き出来るようになる。それから二度寝を決め込むか、心を悪鬼羅刹にして布団から出るかは別問題だが。

何が言いたいのかと言うと何から何まで、食事、移動、着替え、風呂全て親任せであるこの状態が続けば、親がいないと何も出来ないダメ人間になってしまいそうなのだ。ならばどうすればいいか?早く自分でそれらが出来るようになればいいのだ。まずは二足歩行の練習から…


「あ、見て見て修造さん。明希が手足を一生懸命に動かしているわよ」

「おーまるでひっくり返った亀みたいだな」


…その前に寝返りをうつ練習からしないとダメみたいだ。ふぅ、運動して腹がへった。ご飯を食べる為に俺は鳴いた。泣いたではない。はっ!言ったそばからダメ人間街道まっしぐら!?だがへったものは仕方がない。


「あーうー」

「あらあら、お腹が空いたのかしら?」


母さんが服のボタンを外して胸を出す。俺は母乳を飲むためにしゃぶりつく。

初めは一瞬戸惑ったが直ぐに慣れた。いくら美人だからと言って母親だぜ?母親に欲情するなんて二次元だけだ。自分の母親の裸を想像してみろ。…萎えるだろ?


「元気がいいな本当に」

「ええ、本当に。将来が楽しみだわ」


そういえば魔法はどうなっているんだろう?乳を吸いながら、ふと思い出す。俺は魔法が存在する世界に転生したのだから俺が魔法を使えてもおかしくないと思うのだ。あの神は意外と消費者目線でサービスがよかった。言語の問題とか名前に合う容姿にしてくれたし。


「あら、修造さん。どうかしたの?」


母さんが難しい顔で新聞を読み始めた父さんに問いかけた。


「見てくれ、また魔法使い狩りが起きたみたいだ。それにここから結構近いぞ」


噂をすればなんとやら。魔法使いだって?でも何か穏やかじゃないな。東方projectってそんなことがしょっちゅうあるのか?殺伐としていない世界にしてもらったはずなのに…。


「最近多いわね…。ちょっと前まではそんなことはなかったのに…」

「気をつけなきゃな。特にお前は明希を産んで魔力が全然回復してないだろ?」

「修造さんも気をつけてくださいよ?相手は複数らしいから。いくら修造さんでも一人だったら危ないわ」

「はは、わかってるよ。逆にエドワードと一緒に返り討ちにしてやるさ」


なんだと?父さんと母さんが魔法使い?エドワードさんも魔法使いなのか?もしかしたら俺も魔法使い?

俺は興奮して胸を吸うのを止めて喜んだ。


「あー、だー、きゃきゃ」

「あら、心配してくれているの?ありがとうね」

「明希のことも心配だなぁ。連中、仲間を増やすために子供をさらって洗脳するって噂だ」

「あらやだ、怖いわねぇ…」


おお怖ぇ怖ぇ。だけどそんなことして何がしたいんだろうな。まあ、悩んだって仕方がない。大人ならいざ知らず、ハイハイすら出来ない今の俺に出来ることなど何も無いからな。


「ちょっと心配になってきたからエドワードと家の警備について話し合ってくる。夕暮れ前には帰ってくるから」

「わかったわ。フラウにもよろしくね」









~夜中~

みんなが寝静まった夜♪柵から外を見ていると、とってもすごい~ものを~見・た・ん・だ。

赤ん坊用の柵付きベッドで寝ていた俺は物音がして、ふと目が覚めた。近くで寝ている両親を柵の隙間から見てみるが、まるで魔法が掛かったかのようにピクリともせず寝ている。

カチャリ、と窓の方から物音がしたので見てみると俺はぎょっとした。なんと黒ローブを着てフードを被っている見知らぬ人がどうやってかは知らないが、窓の鍵を開けて入ってくるではないか。アニメじゃない。

侵入者は足音を立てずにソロリソロリと俺の方へ近づいてくる。俺は昼間の会話を思い出した。


ー 連中、仲間を増やすために子供をさらって洗脳するって噂だ ー


俺は一瞬ゾッとして思考が停止した。もしかして俺を誘拐しに来たのか!?

侵入者はベッドのすぐ隣に近寄って俺を抱えようと腕を伸ばす。チラッと両親の方を見るがまったく気付く様子がない。ヤバい、と思った俺は助けを求めるため大声で叫んだ。


「おんぎゃあああああぁぁぁぁぁ!」

「!?」


侵入者は突然の泣き声に驚いた。物音しない静かな時に、それに俺を誘拐しようと緊張していたことが、侵入者により大きな驚きを与える。そして侵入者は思わず腕を引っ込めた。

さらに、俺の大きな泣き声で両親が目を覚ました。


「うーん…どうしたんだ?明希…こんな夜中に…。!?」

「ふぁ~…。明希が夜泣きなんて初めてじゃないかしら…。!?」


両親は俺の大きな泣き声で目覚めると侵入者の存在に気付いて驚き、硬直する。侵入者も焦りで固まっている。

先に動き始めたのは侵入者の方だった。


「跪け!『グラビニティ』!」


は?何を言っているんだこいつ。厨二病か?と思った。だがそんな考えは両親が四つん這いになっているのを見てすぐに消えていった。俺が初めて魔法を目にした瞬間だった。アニメじゃない、本当のことさ。


「くっ!打ち砕け!アイスクラブ!」


父さんが四つん這いの状態から一瞬だけ片腕を侵入者に向けて魔法を使った。

氷でできた太い棒が侵入者を襲う。


「がっ…!?」


氷の棒が侵入者の頭に当たり、侵入者はよろけた。そのお陰で魔法が解けたのか、両親は四つん這いの状態から解放された。


「氷漬けにしてやる!アイスフリーズ!」


すると侵入者は足から段々凍りついていく。だが侵入者は黙って氷浸けになるはずがなかった。


「グラビニティ!」


さっきよりも強い力が父さんに掛かり、父さんは無理矢理うつ伏せにさせられた。


「はぁはぁ、まずはお前からだ!」


侵入者はそう言ってどこからか短剣を取り出す。そしてうつ伏せで動けない父さんに向かって短剣を突き刺そうと短剣を振りかぶる。


「私の家族に何をするの?」


いつの間にか侵入者の後ろにフライパンを持った母さん微笑みながらが立っていた。さっきから見当たらないと思っていたけどフライパンを取りに行ってたのかよ…

そして侵入者がその声に反応する前に母さんは笑顔でフライパンを振った。カィン、と金属の音が部屋に響く。


カィン!「ぐっ!」カィン!「痛っ!」カィン!「ちょ!」カィン!「待っ、」カィン!「止めっ!」カィン!「許しっ!」カィン!「……(気絶した)」メキッ!

「ちょっと待って!ストップ!ストーップ!」


侵入者が気絶してもなおフライパンを振り続ける母さんを父さんが止めにかかった。怖ぇ…、うちの母さん怖ぇよ…。しかも最後の方は金属音じゃなくなっているし…。


「あら?修造さんもやりたいの?」


しかもSだった。気絶したのがわかってて殴り続けてたのかよ…。


「いや、いいよ。気絶してるしもう許してあげて…」


父さんがとても見ていられないと言いたげな顔で侵入者を哀れんだ。


「あら残念。これからだったのに…」


Sじゃない、ドSだった。あれだけやってこれからが本番なのかよ…。


「それはともかく、この人はどうするの?」

「魔法警察に引き渡すよ」


ガンガンガンガン!と不意に玄関で激しいノックがした。父さんが小走りで玄関に向かっていく。


「おー、エドワード。どうかしたか?」

「どうかしたか?じゃない。お前の方が何があった?争う音が聞こえてきたそぞ!」


玄関から父さんとエドワードさんの話声が聞こえてくる。ここからでは見えないがどうやらエドワードさんがさっきの戦闘の音を聞いて駆けつけて来てくれたみたいだ。因みにお隣さんだったりする。よく聞こえたのだろう。…フライパンで殴る音が。


「あー悪りぃ。起こしたか?実はな、さっき賊が侵入して明希を誘拐しようとしたんだ」

「昼間話した例の魔法狩りか!?」

「多分な。シェルにフライパンでボコボコにされてそこで伸びてるよ。後で魔法警察が引き取りにくる」

「昼間警備の話をしてお互い強化したのに…!」

「まだ甘かったってことだ。…そうだ、まだ仲間がいるかも知れなから安心は出来ない。今夜はそっちに泊まっていいか?」

「当然だ」

「そうね、信頼し合える人たちと大人数で固まれば襲われにくいしね」


そのあと来た魔法警察らしき人に侵入者は引き渡された。そして俺たち家族はエドワードさんの家に泊まった。父さんとエドワードさんは交代交代で見張りをすることにした。


赤ん坊の体で長時間の夜更かしは耐えられなかったみたいだ。段々と睡魔に襲われて俺は泥のように眠った。


ちなみにフライパンは変型していません。ヒィ!

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