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東方魔法録~Witches fell in love with him.  作者: 枝瀬 景
一章 喘息少女~If you have memory in former incarnation , what would you like to do.
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1 生誕~The day,Two babies were born.

再び気が付くとぼんやりと赤い世界が広がっていた。へその辺りに何が繋がっている。頭を下にして水中を浮かんでいる感覚もする。

ああ、そっか転生して赤ん坊になったんだ。これが胎中か。それにしても母親のお腹の中というのはなんと心地の良いことだろう。

いつまでも浸かっていたくなるような暖かくて気持ちのいい羊水。何があっても不安に感じることのない安心感。

母親というのはやはり偉大だなぁと思っていると声が聞こえてきた。


「もうそろそろかしら?」

「そうだなぁ。いつ生まれてきてもおかしくないだろうな」


始めに若い女性の声がして、次に渋い男性の声が聞こえてきた。恐らく母親と父親だろう。

その声を聞くとなんだか急に二人の顔が見たくなった。


「っ~!痛!痛い痛い痛い痛い!!」

「ど、どうしたんだ!?」

「う」

「う?」

「産まれる…」

「な、なんだって!?大変だ!すぐに医者のいるところにつれていってやる!」


痛いと声を聞くたびに申し訳ない気持ちで一杯になる。だけど我慢してほしい。後もう少しの辛抱だから。

それから少し時間が過ぎて俺は頭を捻りながら外に出ようとする。少しずつ少しずつ、ゆっくり、しかし着実に外に出ていく。そして眩しさと寒さを感じた。


「よく頑張ったね。おめでとうシェルさん、可愛らしい男の子ですよ」


母親とは別の女性の声が聞こえてきた。そして素早くお湯で俺の体を洗う。洗われるついでに俺は口の中にある羊水を無表情で吐き出した。


「な、泣かずに羊水を吐き出したわよこの子…」

「ク、クールだわ…」


と、看護婦と思われる女性二人に驚かれつつもタオルで体をくるまれ、母親…母さんに抱かれた。


「あ、ああ…私の赤ちゃん…」


まるで割れ物を扱うかのように大事に抱える母さん。そんな母さんの顔を見るとブロンドの髪で美人だった。まるで外国人みたいだった。…いや、外国人なんだろう。名前がシェルだったし、周りの看護婦も金髪だ。もっともそんな美人外国人から産まれた俺も外国人なんだろうが。というか今は日本が外国か。


「無事に生まれて良かったよ。…しかし猿みたいな顔だなぁ。肌も茶色いしケツは赤いし、しっぽも生えてる」

「それは友達が贈ってきたお猿さんの人形よ修造さん」

「わはは、冗談だ。ん?どれ…おお、髪は俺と同じで黒か」


父親…父さんの方を見てみると黒髪で誰がどう見ても日本人、といった顔だ。修造と呼ばれていたから日本人で間違いないだろう。なるほど、俺はハーフか。そして面白い父さんだ。


「あ、目も黒いわ。これも修造さん似ね」

「ああ、だが顔つきはお前に似てるぞ?」

「そう?ふふ、やっぱり私たちの子供よね」

「ああ、大切にしていこうな」


そう言って二人で俺の頬や頭を撫でる。恥ずかしくて悶えそうだ。やめてくれぃ。この手の雰囲気は苦手なんだ…

俺が恥ずかしがって照れていると、オギャーと耳をつんざくような泣き声が聞こえてきた。俺は泣いてないぞ?

隣の方を見ると俺とは別の赤ん坊が産まれていた。


「珍しいこともあるのねぇ。赤ちゃんが1日に二人も産まれてくるなんて」

「本当、おめでたいけど、流石に大変だったわ」


はぁ、とため息をついて疲れきった表情を浮かべる看護婦たち。

すると父さんがもう一組の方の父親らしき人に話しかけた。


「よぉエドワード、お前のところも無事に産まれたみたいだな」

「ああ、おかげさまでな」

「よせやい、俺は何もしてないぞ」

「社交辞令だ」

「つれねぇな、お前のところは男か?女か?」

「女だ」

「ほほぅ、…そのうち『パパの下着と一緒に洗濯しないで』とか言われそうだな」

「ぐ!?」

「ハイハイ、産まれたばかりなのにそんなこと言わないの」


と母さんが父さんを諌める。どうやらエドワードという人と父さんは仲がいいみたいだ。


「フラウ、女の子ですって?」

「そうよ、シェルは男の子?なら許嫁なんてどうかしら?」

「気が早いわよ、まあ、でも長い付き合いにはなるでしょうね」


フラウと呼ばれた女性と母さんはほがらかに談笑する。母親同士も仲がいいみたいだ。というか娘の反抗期とか許嫁とかは気が早すぎるだろ。まだ産まれて1日もたってないぞ。


「ああ、そうだ修造さん。名前はどうしましょう」

「それならすでに決めてるぞ」


転生する時に神に名前は明希のままと言っているから大丈夫だろう。これで変な名前がついたら、いつか神に一発入れてやる。


聖良布夢(せらふぃむ)とかはどうだ?」


ネ申ィィィィィィィ!!てめえェェェ!


「他にも羅妃多(らぴゅた)とか、藍衣姫(なうしか)歩如(ぽにょ)なんて言うのもあるぞ?」


父さんは至極真面目な顔つきで紙に当て字を書きながら母さんに向かって言う。おい!母さんの顔がひきつっているぞ!そして神ィィ!!ぶん殴ってやるぅ!


「冗談だ。明希、明るい希望で明希。明希・ヘルフィ・水原だ」

「もう…修造さんの冗談はたまにわかりづらいんだから…」

「わはは、悪い悪い」

「でもいい名前ね。私も気に入ったわ」

「おう!気に入ってもらって何よりだ」


あーよかった。冗談かよ。本気で焦ったぜ…。ヘルフィなんてミドルネームがついているのが気になったが母さんの名前かと納得した。


「おーいエドワード、お前のところは名前決まったか?決まっていないなら俺がつけてやろうか?」

「いや、激しく遠慮しておく。それに名前はもう決まった」

「まあ、どんな名前なの?」


「パチュリー、パチュリー・ノーレッジよ」


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