楽しくバイト?
ネタ劇です、はい
お金というものは勝手に増えるものではない。使えば減り、使えば減り、使えば増えるなどそんな甘いことは無い。ではどうしたらいい?
答えは簡単。稼ぐしかないのだ。年齢が年齢なのもあり、アルバイトが出来る。アルバイトをすればお金が入る、そしてそうやって稼ぐ。
大人になれば職に就き、また変わってくるのだが……、しかしアルバイトにも種類は沢山ある。苦手な事をする業務を削って行く内に、一つの募集内容に目が行く。
キイーッと椅子を引き、秀久はそのままベッドに倒れる。
「ここしか無いか」
内容はホールのスタッフだ。
それなら接客してればいいし、秀久はコミュニケーション能力は豊富な方だ。それに、募集内容には『初めての人大歓迎!今なら時給アップ』という項目もあり、ポイントが高い。
バサッと雑誌を置き、秀久はスマホを弄る。耳に当て、数回コールを鳴らす。
「俺だ。確か金に困ってるって言ってたよな?」
アルバイト初日。
無事面接も通り、秀久は『コスプレ喫茶カフェリア』で働くことになった。面接に訪れた際に、コスプレをしてウェイトレスが接客をしていた。
コスプレ自体別に抵抗は無い。それに、面白そうだ。といっても一人では無く、一緒に面接を受けた親友もいる。喫茶店前で待ち合わせしているが、まあ、このお店、大きい。
「あ、秀久さん!」
「よ、龍ちゃん」
軽く手を挙げ、茶髪の男性と合流する。東郷龍清は秀久同様にお金に困っていたらしく、秀久と同じくこの喫茶店で働くことになった。学校では数少ない秀久を弄らないメンバーで、秀久は親しみを込めて龍ちゃんと呼んでいる。
「さて、今日から頑張らねえとなっ」
「はいっ。コスプレって何やるんでしょうかね?」
「お楽しみって所だな。行こうぜ」
そして二人は後悔する羽目になる。
『どう?サイズ合ってるかしら?』
店員専用の試着室の奥から聞こえる声。
秀久と龍清はギチギチと音を鳴らしながら服を握りしめていた。歯を噛み締め、顔は真っ青だ。
ここのコスプレ喫茶、店員だけでなく訪れた客もコスプレ出来るのだが……、一つ落とし穴があった。
それは――
『ここの店員、女性限定だった!』
『何で見落としてるんですか!?』
だが、それなら……二人は直ぐに弾かれていた筈。
『男手欲しかったのよね~、しかも中性的な♪』
『『最悪なことに、店長が変態だった!!』』
つまり、つまりだ。
……もし、店長の真澄が言うことが正しければ……
「「(ゴクッ」」
「「きゃあぁ~!可愛い!」」
「「こっちは美人さんだ~!」」
女性店員から好印象の二人。
だが、嬉しくはない。
秀久の格好は、メイド服に茶髪のウィッグ。背が高めの彼だが、全く違和感の無い美人メイドさんに仕上がっていた。モップ片手に、絶望顔の秀久、隣を見るとゴスロリ服にツインテールの美少女が。いや、龍清だ。
「むふふふ、私の目に狂いは無かったわね~♪」
「あの、辞めていい『駄目』」
秀久の訴えは従業員全員によって爆破される。
「秀久さん……」
「やめてくれ龍ちゃん。……涙目で見られても女にしか見えねーよ」
「「……はあ」」
これは、知り合いにバレたら一生の傷物だ。
「じゃあ、ヒナちゃんにリュカちゃん。早速接客よろしくね♪」
「待って下さい店長、……誰ですかそれ」
「いや~ん、二人のな・ま・え」
秀久→ヒナちゃん
龍清→リュカちゃん
「「辞めさせて下さい!!」」
『全力で断る!!』
ブラック企業だ。
『ヒナちゃん五番席!』
「は、はーい~」裏声
『リュカちゃん!これ二番席ね♪』
「わ、わかりましたぁっ!」
『ねえ、君可愛いね』
「すみません、そういうのいりません。だから死ね!!今すぐ死ね!」
『嫌いじゃないよ』
「触るなああ!?」
『り、リュカちゃん』
「はい?呼びま……きゃ!」
『はあはあ、リュカちゃん、はあはあ』
「ひいいい?!」
『何やってんだお前はああ!!』垂直蹴り
――一時間後
「はあはあ……」
「凄いわ二人共!大人気じゃない!」
「……おえっ」
「リュカちゃ……龍ちゃんはダメージデカいんですが」
カウンターの席に座り、龍清をさする秀久。他の女性店員の助けもあり何とかやれてるが、思った以上にハードだ。
女装に慣れるなどしたくはないが、仕事自体は身についてきた。と、店のドアが開き、一人の女性が入って来る。
「こんにちは~店長♪」
「あら、希林ちゃ~ん♪」
(な……!?)
ぴんっと立ったアホ毛。希林は秀久へと向かって行くと、じっと見てくる。
「何やってるの秀ひ「店長、リュカちゃんちょーーっと抜けます!!」んぐぐ!?」
「あら?了解よ~」
「え!?秀……ヒナさーーん!」
希林を連れて抜け出す秀久。端から見れば、美人メイドが少女を連れ去っている光景にも見える。
慌てていたせいか、希林の密かな胸を鷲掴んだまま抱えるような形になっている。