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バレンティン

試し書き。というより、ただの短編。

君達!2月14日がなんの日かわかっているか!?


……うんうん、そうだバレンタインデーだ!

女の子が男の子にチョコをあげる日なんて言われているがしかしお世話になっている人への感謝を贈る日でもある!断じてイチャイチャカップルだけのためではない!だがしかしだ君達、やはり男の子に生まれたのであれば欲望にもっと飢えるべきだ!

女の子からのチョコが欲しい?そんなことは当たり前だろう君達!恥ずかしいことじゃあない!

ではわかっているな君達?

今こそ立ち上がるのだ!自分達だってチョコが欲しいと叫ぶのだ!


世界よ!俺達は今、愛に飢えている!!



「はい翔馬!バレンタインチョコ!」

「……お前も飽きないな」

「えへへ〜」


呆れたような顔をしながらちゃっかりチョコを受け取る藤沼。リーさんはにへらと笑みを浮かべながら袋から小箱のような包を取り出した。


「はい、秀久の分!」

「俺も?」

「うん!義理だけどね」


ストレートに言うがこれが俺じゃなく、例えばリーさんに好意を抱いている男子だとしたら血の涙を流すんじゃないだろうか。けど甘いものが好きな俺からしたら義理でもなんでも嬉しいものだ。

そういえば、今日のリーさんは珍しく髪型が違う。いつもは髪をお団子のようにまとめているがそれを下ろして背中までかかっている。


「リーさん、髪型変えた?」

「流石秀久、誰かと違って鋭いね!」

「おい、その誰かって俺のことか?」

「翔馬のことじゃないと思うよ?」

「なんだその分かりやすいようで分かりにくい返し方は!」

「翔馬が鈍いからでしょ!」

「やっぱ俺じゃねえかお前!」


あーあ、また痴話喧嘩始めちゃったよ。

こうなってはお手上げなのでさっさと退散することにしよう。いつもなら仲裁に入るけど、今日はなんだか不吉な予感がするんだ。


「あ!秀久君」

「萌さん?」


教室から出ると、黒い髪をツインテールにした女の子が声を掛けて来た。四葉萌さんはクラスメイトで、才崎智っていう変態の幼馴染でストッパー……所謂苦労人だ。


「良かった、探していたんですよ?」

「え?俺?」

「はい、えっとこれどうぞ」


お洒落な袋を渡され、萌さんは照れたように微笑んでいた。


「すげえ、チョコレートブラウニーだ!これ萌さんが?」

「はい!初めてなのでちょっと失敗したかもしれないですけど」

「大丈夫、ありがとう萌さん」

「いえいえ、あの、秀久君何か気づきませんか?」

「……えっと、髪型変えた?」

「そうなんです!」


ぱあっと明るくなり、萌さんは一礼をしてから少し陽気な足取りで校庭の方へと去って行く。

暫くポカンと眺めていたが、とりあえず図書室の方へ向かうことにした。

うーん、萌さんもリーさんも髪型を変えるなんて何かあったのだろうか?


「……ふむ、君はどうやら何も知らないらしいな」

「うわぁ!?」


条件反射で殴り飛ばしてしまった。


いくら変態とはいえ申し訳ないなと思っていたが、あいつはケロリと立ち上がりフッと笑っていた。相変わらず頑丈な男だ。

才崎智は床に置いていた袋を手首に引っ掛け、眼鏡を拭きはじめた。


「お前、それ」

「ふむ。萌君からだ、ブラウニーらしいが私は甘いものはあまり好まなくてな。持て余してるのさ」

「そんな言い方ないだろ、せっかく作ってくれたのに」

「ふむ、まあ後で彼女ごと頂くとして」

「待て!今なんか言わなかったか!?なんか意味深なこと言わなかったか!?」

「秀久、廊下で騒ぐのは良くないぞ」


誰のせいだと思ってるんだ!!

萌さんの苦労に同情しつつ、才崎が言っていたことを思い出した。


「才崎、俺が気づいてないってどういう」

「ふむ。秀久、今日はなんの日だ?」

「バレンタインデーだろ?」

「そうだ、バレンタインデーだ。だから女の子は髪型を変える。そういうことだ」

「いや、わからないんだけど」


わからないんだけど



「地文まで同じことを繰り返すな。ふむ、バレンタインデーというのいつの日か、女の子好きな男の子に髪型を変えてチョコをあげるという日になったそうだ」

「なにその付け足したような感じ」

「ふむ、ある有名なモデルが髪型を変えてチョコレートをあげることで異性の気持ちをより引き寄せることができるというインタビューがきっかけで始まったらしい」

「それだけで!?」

「秀久、今の時代は流行に流されやすいのだ。ネット、テレビ、雑誌……簡単に世間に広まるようになっていったからな」


才崎は一人納得したようにうんうんと頷いていた。

……確かに情報網が多く、すぐに広まっていくのが今の時代だ。この学園は特に個性豊かな生徒が多いから余計に広まっていくのも早いんだろう。

リーさんも萌さんも流行りに乗っているとなると、他の人も便乗してそうだ。


「おや?………ふむ、最後に一つ」

「なんだよ」

「……嫉妬には気をつけたまえ」


そう言うと、窓から光が差し思わず目を閉じる。

次に目を開いた時には才崎は居なくなっていた。足音すら立てず、相変わらず謎だらけだ。

俺は小さくため息をつき、才崎の言っていた嫉妬という意味を考えながら図書室に向かう。

……いや、待てよ?


髪型が変わってるってことは……




「それで、わざわざここに来たんですか?」

「そんなとこです……」


くすくすと笑いながら、みなもは紅茶を淹れていた。

本屋のバイトは今日は休みって言っていたからいつものように美術室で絵を描いていた。

部員は彼女一人だが、彼女には友達や親友、彼氏もいる。廃部予定だったがみなもが入ったことでそれは保留になったらしい。


……。


……うん、いい匂いだ!ハーブティーは初めてだから楽しみだなぁ。


……。


「秀久君、どうかしました?」

「あ、いや、ははは」

「?」


……。

あー、ダメだ!うなじが気になる!


「〜♩」


ソプラノ調の鼻唄を聴きながら、視線は彼女の後頭部に集中する。

ゆらゆらと揺れるポニーテール。その奥には滅多に見れないうなじと細く白い首が見える。バカ!視線集中じゃないんだよ!ただの変態おやじみたいじゃねえか!


「し、しっかしみなもも髪型変えたんだな」

「うん!友達から勧められちゃった。秀久君、鈍いからわからないかなって思ってたけど」

「そんなことねーよ!俺だってこう見えても鋭いんだぞ!リーさんだって萌さんだって髪型変えてたことに気づいたし!」


カチャリと、食器を置く音がした。


「……そうなんですね。ちょっと悔しいです」

「なんで!?」

「だって、最初が私じゃなくてリサちゃんだったから」


……〜〜!


待て上狼秀久!感情に押されてはダメだ!だけど、だけど頰をぷくーって、頰ぷくーってしてるのダメです!なんか感情に押されてしまいそう!


抱きしめたい……、いやいや我慢しろ!バカ!


「!……もしかして、チョコ……」

「え?あ、いや、その」

「そうなんですね……」


ずーんと落ち込むみなもさん。

これはこれで可愛……って違う違う!なんかフォローを!


「二人共本命じゃないし!俺の本命はみなもさん……な訳だし、だからノーカンというか」


「……はぁ、今日はどうしても用事があったから渡せなかったっていうのは……言い訳だよね(ブツブツ」


あ、やばい。

みなもさんから負のオーラが!


「えっと、じゃあチョコ!」

「ふえ?」

「俺が自分から貰いに行ってるの、みなもだけだから……それでどうかな?」

「……」


あれ?

またなんかやったった?

返事がなく後ろ姿しか見えないのが余計に嫌な予感しかなく、冷や汗が出ていた。少しだけ近づくと僅かに肩が動きゆっくりと振り返る。


瞬間、彼女の姿を見て固まってしまった。


「秀久君は……こういうの嫌いでしゅか?」


口にチョコを加えて1ヒット、床に座ったままで2ヒット潤んだ目で3ヒット見上げるみなもで4ヒット、身体中の血流が駆け巡り頭に登って行く。

あのみなもさんがここまで大胆になるなんて誰が予想しようか。静まれ俺の下の竿!!


「み、みなもさん、なんで」

「……乙女心は複雑なんですぅ」


返事の仕方を間違えてしまったのか、みなもはチョコを加えたままむすっと頰を膨らましてしまった。

いやあれを見てどう反応しろと!?

ヘタレ言われようが自分を抑えた俺は凄いと思う!……けど、さっきから口元に視線が行ってしまう!


「ここ、学校だぞ?」

「…………」

「美術室とはいえ、誰かに見られたら……」

「ぅう……」


顔を真っ赤にして涙を溜めるみなも。ここに来て状況を理解したらしい、冷静になって急に恥ずかしくなるのも無理はない。

ほっと安堵していると、俺の体が勝手に動き床に倒れていた。


あれ?


「……秀久君」

「あ、あれ?み、みなもさん、なんで俺は今押し倒されているんでしょうか!?近い!近いって!」

「わ、私にもどうしたらいいかわからないんでしゅ!」

「だからってこれはダメだって!!」

「……じゃあ、秀久君の好きなようにしてくだしゃい」


なん、だと?


「なんでも?」

「……(コクコク)」


え、と……じゃあ






『失礼します!!涼宮みなもさん!恵まれない我々に是非ともチョコをーー』


「あ……」


やっべー!学校の男子達にみなもにチョコを食べさせて貰ってるの見られちゃったー!


『上狼、貴様……涼宮さんと優雅なティータイムに飽き足らずあーんだと……?』

「待て!やらしいことなんて何もしてないだろ!?こ、これはただのティータイム……」

『黙れえ!!!あーんだけでも極刑じゃあああ!』


こうして男子生徒軍団との甘くて苦い追いかけっこが始まりましたとさ。

才崎「秀久、君はヘタレだな」

秀久「あそこで一線越える方がやべえだろうが!」


少しずつですが、ストック書いてます。

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