正月
明けましておめでとうございます
それはある朝……
秀久「な!?」
みなも「え!?」
秀久「もしかして俺達……」
みなも「もしかして私達……」
「「入れ替わってるーーー!?」」
なんてネタはさておき……
新年が明けた。
年始はやはり賑わいを見せており、初詣で来たお客でごった返している。やはり考えることは皆同じであり、しかしやはり毎年行っているのだから行くべきだろうと誰かが言っていた。
そんなことで、上狼秀久は欠伸をしながら神社から少し離れた場所で待ち人をしている。ここでは待っている人らしい。
「昨日は結局夜まで騒いだからあまり寝れなかったな……」
思い出すは昨日の風景。
たまにはみんなで過ごすのも面白いだろうとこれまた誰かが言って一軒家である秀久宅にて忘年会、新年会騒ぎだった。
酒で酔い潰れる者やテレビを見て笑っている者、黙々と蕎麦を食べている者……。その風景は思い出すだけで珍妙で、可笑しなものだった。
秀久は無理やりお酒を飲まされ酔い潰れたみなもを介抱しながら、ぐったりと力つきるように眠っていたのだ。
「秀くん」
少し眠たげに目を閉じていると、聴き慣れている声が耳から体に伝わり目が覚めた。
優しく、柔らかで身体中に安らぎをくれる大好きな声だ。
目を開いた先には、桃色の柄のある振袖に髪飾りをつけた銅色のような茶色く長い髪をした少女が立っていた。いつも見ている長い髪の彼女だが、でもいつもと違う感覚がした。みなもは秀久に近寄ると、心配そうに顔を覗き込んでくる。
「眠たい?」
「……いや、大丈夫。……それより、とても綺麗だよ」
「……ありがとう」
お互いに頬を赤らめ、少し俯いたり目を逸らす。
しかしそこには気まずいという雰囲気はなく、みなもは嬉しそうに微笑んでいるのが見え、秀久もそんな彼女に見惚れていた。
「……行こう?」
「ああ、みんなももうすぐ来るみたいだしな」
「それまで……」
「ああ、一緒に回ろう」
パアアと明るい表情を浮かべ、嬉しそうに手を差し出すみなも。それを握ろうとした秀久だが、少しだけ視線を下に向け手を引っ込める。
伝えたい。伝えなきゃいけない。
不思議そうに首を傾げるみなもに、秀久は苦笑し少しだけ、少しだけ一歩下がる。
「涼宮みなもさん」
「は、はい!」
「お、俺は……あ、貴女のことが昨日までずっと好きでした!その気持ちは今日も、明日も続いていくと思います、だから……」
「はい……」
「だから、これからもこんな俺ですが、宜しくお願いします!」
わからない。
この先なんて誰もわからない。
でも、生きたいと思うようになった。
生きたいと思いたくなる理由がある。
涼宮みなもは美少女だ。
頭もよく、人当たりも良く、絵が上手い。
優しく、甘く、でも……誰よりも広い。
そしてそんな彼女とこの先を生きて生きたい。彼女に出会って世界が変わった、彼女と出会って自分を許せた。
だから……だから……
「はい、私の方こそよろしくお願いします」
微笑んでくれた。
その笑みは綺麗だった、その姿は天使のようだった。
彼女は、涼宮みなもは………。
「はーいそこまで、イチャイチャしない」
「あう」
2人の間に割って入った黒髪の女性によって桃色のような空間が消えた。
顔を赤くし恥ずかしそうに手を頬に当てているみなもと複雑な表情を浮かべて女性を睨む秀久。違う反応が見れて満足した女性は背中を押しながら2人を神社の方へと向かわせた。
(大凶……、……想い人の気持ちに気づかなければ恋愛成就は見込めない……)
(大吉!想い人との関係が縮まる年になる。……普段よりも積極的に行くべし……)
秀久はこの後、餅取りに巻き込まれボロボロになるのだった。