表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/48

進展

IFシリーズ1弾。今回はみなもちゃんと秀久が――という話です

 赤いマフラーが靡く。寒波が過ぎ去り、気温も穏やかにはなって来た。なって来たが寒いのは相変わらずだ。

 寒さに強いとは言っても流石に制服の上にコートは羽織る。周りの視線もあるが、風邪を引くのもご免だ。白い息が空中で消えて行く。


「すっかり……冬だな」


 雪は降らないが、別にそれがどうこう問題にはならない。秀久はポケットに突っ込んでいた手を抜き、腕時計を確認する。

 ……十分も経過している。

 流石に何かあったのではないかと考えるが、彼女のクラスは担任がマイペースだ。それが理由なのだろう……。


「ね、今日は寄り道しない?」

「またかよ~?昨日もゲーセン行っただろ」

「いいじゃん、ね、ね?」「分かった分かった」


「…………」


 口元を覆ったまま、赤いマフラーがまた靡く。

 秀久は仲良く校門から消えるカップルをぼーっと眺めていた。


(あいつは、……そんなおねだりもしないな……)


 秀久の頭に、今頃慌てているであろう少女が浮かぶ。気を遣っているのか、それはそれで辛いものがある。

 寧ろ逆かも知れない。何時も面倒くさがる秀久を、みなもが引っ張る。苦労させているのは確かで、秀久は壁に手をつき深い溜め息を漏らした。


「やっぱ俺がこんなんだから、呆れてるのかぁ……?」

「ヒーくん?」

「どわっふ!?」


 背後からかかった声にびっくりし、秀久は盛大に顔面を壁に打ちつける。しかも、その相手がさっきまで想っていた人というのがこれまたびっくりだ。

 二重にびっくりし、赤くなった顔を撫でながら、秀久は後ろを振り向く。

 制服の上にコートを重ね着している。が、スカートから下は無防備の為、寒さからか膝が朱く染まっている。白い息を出しながら、くりっとした赤い瞳が開閉する。


「ヒーくん?きゃっ!」

「おせえよ」

「……ごめんね」


 くすっと笑みを零すみなも。秀久の耳から熱が伝わる。ゆっくりと離し、秀久は顔を背けたまま手を差し出す。


「帰るぞ……」

「うん」


 秀久の手を握ろうとした時、動きが止まる。震える手をみなもは不思議そうに数秒眺めてから、秀久を見上げた。口元を桃色のマフラーにうずめたまま首を傾げた。


「ヒーくん?」

「……あ、あのさ」

「うん」

「何処か行きたい場所あるか?」


 一瞬、みなもの目が見開く。

 そして直ぐに首を振る。


「え……、あ、……ど、何処でもいいんだぜ?ほら、食べたいものとか」

「大丈夫だよ。ヒーくん、何か無茶してません?」

「ぎくっ)い、嫌だな。ただ俺は」


 みなもの手が滑り込み、ぎゅっと握りしめる。赤い瞳が潤みを帯び、頬が朱に染まっている。

 可愛い反面色っぽい。秀久は理性を堪えつつ、みなもはニッコリと笑った。


「私、気を遣ってなんかいないよ?ヒーくんと居れるだけで幸せだから」

「ーーーっっ」


 みなもは変わった。よく泣いて、よく怖がって、……守ってあげなきゃと思っていた。

 熱が顔に集まり、ふいっと逸らす。あの頃とは逆のようで、なおかつちょっと大胆になった。……お助け部を設立してから彼女は周りに触れて少しずつ、少しずつ変わったんだと思う。秀久だけではない。周りの影響も受けて、自分の力で彼女は成長した。

 ――だからこそ、彼女はもう幼なじみではない。一人の女として、異性として……秀久の隣を支えるパートナーになったのだ。


「だけど、付き合って6ヶ月……何時もと変わらねえ……」

「そ、それもいいんじゃないかな?」

「いーーや!このままじゃ七海から『だからヘタレ』って言われちまう!だからみなも!」

「ひゃい!」

「今日から俺のこと、呼び捨てで呼んでくれ」

「はい…………、え?……ふええ!?」


 みなもの顔が真っ赤に染まり、マフラーで隠してしまう。しかし体がふるふると震えており、涙が溜まっている。

 かなり動揺しているのは確かだが、秀久は握っているみなもの手に指を絡める。


「ぴゃ……」

「頼むみなも!」

「き、急にそんなこと言われましてもぉ……あうう~」


 しかしやはりみなもだ。

 俯いたまま、口を必死に動かそうとしている。


「ひ……」

「……」

「ひ、秀久……さん」


 ――何処の嫁だ。

 お互いに顔が赤く赤く染まり上がる。みなもに至っては目じりに涙を溜めて、口元が震えている。 秀久はぐっと拳を握りしめ、ゆっくり開く。みなもを強引気味に引き寄せ、ぎゅーーっと抱きしめた。


「ひゃぁっ……ひ、ヒーく「秀久」……ひ、秀久さん!?」

「もう一回、……言ってくれるか?」

「あ、う……ひ、秀久しゃん」

「噛んだ、もう一回」

「~~~、恥ずかしいです、ひ、秀久さん!」


 この光景を偶然見てた誰かが呟いた。

 お前ら、結婚しろよと。




『で、……呼ばせ続けた結果、恥じらいが薄らいだみなも副部長が大胆になったと』

『ああ、だけど……膝に座ってくるまでに薄らいだなんて思わなかったよ、orz!!』

『秀久さん、しゅき……』


『変態ですね、死んでください』

『やっぱりそういうオチ!?』

うーん、ちょっとみなもちゃんが崩壊気味……(苦笑)

次は誰にしようかな~♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ