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狼と鬼

久しぶりだな~。CP系もいいですが、今回はあの人との距離?関係?を書きました。

 冬のシーズンに入って数日、冷え込む季節と共に冷たい風が吹く。雪というものは積もりは無いが、降りはする。が、それも一瞬であり奇跡に近いようなものかも知れない。

 赤いマフラーで口元が隠れてはいるが、赤い瞳は明らかに動揺している。だからこそ、澪次は彼に苦笑している。


「秀久の秋獅子君嫌いは相変わらずだよね」

「うるさい、黙ってろ!」

「はいはい」


 秀久と澪次は学校の帰りだ。本格的にやって来た寒さ対策に、澪次は手袋と厚手の群青のコートに身を包む。

 隣で何かを睨んでいる秀久は、制服に赤いマフラーだけという中々挑戦的な格好ではある。

 白い息が、宙に消える。澪次が口を開いたのだ。


「隠れるよりは、普通に会った方が良くない?」

「……秋獅子だぞ?会った所で『貴様に言うことなど何もない』って言われるに決まってる!」

「くすくす、さっきの中々似てたよ」

「……っるせえ」


 またムスッと拗ねる。

 澪次にツンとすることなど珍しく、よほど今の現状が応えているのだろう。看板から覗き込む先に、二つの人影が見える。

 一つは秀久と水と油関係にある秋獅子流牙。堂々たる貫禄、そして何にも屈伏しない精神、彼もまた人間と呼ぶには離れている存在なのかも知れない。

 自分の正義を貫く秀久と自分の在り方を貫く流牙。

 似ているようで、交えない。だからこそくだらないことで競い合い、蹴落とし合い、いやこれは秀久だ。その度秀久は不憫を重ねるのだ。

 頬に手当てがされているが、これもその一つ。とにかく合わないのが彼らだ。

 ――だからこそ、秀久が澪次と波長が合うのは不思議だ。


「大体何で秋獅子何だよ!!顔か!?イケメン様々かよ!」

「レイナは顔だけの単純な理由で惹かれないよ。秀久だって分かってるでしょ?」

「……」


 荒々しかった目が急激に大人しくなる。まるでお座りをした狼、いや子犬だ。 流牙の隣を歩いているのは夜瀬レイナだ。名前通り澪次の双子の妹であり、天真爛漫な性格をしている。長い黒髪は傷も無く、艶やかで綺麗だ。ダッフルコートに身を包み、白い息が漏れている。


「お前には……全部お見通しだな、澪次」

「全部なんて知らないよ。でも……」


そう言って澪次は秀久に寄りかかる。秀久の頬は雪のように冷たかった。


「少なくとも君のことは一番詳しいって自慢出来る、かな?」

「よせよ、恋人じゃねーんだから」

「くすくす……秀久の好みがレイナみたいな人ってのも知ってるんだけどね~♪」

「澪次、壁ドンしていいか?」


 罪深い男だ。

 ますます笑みが深くなり、顔を真っ赤にする秀久を眺める。

 彼に好意を向ける少女はレイナだけではない。彼の性格とその真っ直ぐな心に惹かれた少女は何人もいる。彼に救われた少女は何人もいる。 だからこそ、秀久は苦しいのだろう。鈍いのに定評はあるが、だからこそ答えが見つからない。


「……救いようないじゃないか」


 空を見上げ、ポツリと呟く。

 追うのをやめたのか、澪次と身を寄せ合い空を見上げる。澪次は応えない。いや、それでいいのだ。……これは、秀久の独り言なのだから。

 好きという感情なのか、守りたい感情なのか定かではない。ただ、これから先……彼女の空いた空白を埋めてあげることは出来るのか。

 否、彼は自分のそれに嘆く。


「なあ……澪次」

「うん」

「……これからも、隣にいて良いか?」

「……」


 ――うん


 優しく微笑むその顔は、あの時の自分を思い出した。

 ああ、どれくらい彼の空白は埋まったのだろう。どれくらい彼を笑顔に出来たのだろう……。

 だから彼女達と似ている部分があるのかも知れない。

 みなもや明香……、希林やつぐみとポツポツと冷たい空に浮かび消えて行く。そしてレイナが浮かぶ。ふとした仕草、表情、声……。

 そうか……。きっとそうかも知れない。

 そう……、これはきっと……。


「レイナに殴られ過ぎてお「よし殴ろう!!」ごふぁああ!」

「……あ、はは」


 看板に顔が埋まる。肩で息をするレイナに、澪次は苦笑した。後ろから流牙が歩いて来ると、一言。


「台無しだな」

「何がだ!!俺だって頭をきちんと捻って「捻ってその答え!?この鈍感~!」へ、あだだだだ!」


 相変わらずだ、彼は。

 澪次はくすくすと笑いを零しつつ、レイナの拳を避ける秀久に微笑みかける。


(……僕が変わったって思ってるんだろうけど、……それは君もだよ。秀久)


「くしゅっ……あ」

「お」


赤いマフラーがレイナの首に巻かれる。見上げた先に、秀久はニッと笑っていた。何か言う前に、頭にポンと手を置かれる。


「首もと冷やしてたら風邪引くぜ?」

「ありがとう、秀久」

「……!……ああ」


 その純粋な心、それだけは変わらないで欲しいかな。

 澪次の独り言は空へと消えた。





「ところで、何で流牙と一緒にいたんだよ?」

「あ、秀久用事で抜けてたんだっけ。明日は杉崎君が誕生日だから二手に別れて準備する為に材料買いに行くって」

「え」

「くじ引きの結果だ。貴様は澪次との筈だが……何も知らないのか?」

「え」

「……ごめんね、秀久。秀久のことだから知ってたとばかり」


「ええええ!?!」


「ヒーくん、黙っててごめんね?」

「ヒデくん……杉崎君にドロップキックするから嫌いだと」

「いや、あれはあいつが卑猥なことするからで……」


「まアまア、それよリヒデ、ケーキ一緒に作るデすよ!」

「アタシも手伝うよ~」

「待て、……明香と希林は装飾をだな」


「しゅーちゃーん!」

「危なっ!ぶつかったら材料崩れるだろ!」

「あうー、ごめんなさい」


「……はあ……」

「ドンマイ秀久!」

如何でしたか?一人一人との絡みも書きたいですね~。後、読んでみたいです(´∀`)

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