テスト1
テスト
秀久:一週間単独行動禁止
・七海:拉致禁止
・圭太:一週間の掃除当番
ボードに新しくペナルティが付与された。つか、全員ペナルティって何だよ。なんでまともな奴いねーんだよ。
そんな時期が、俺にもあった。お陰様で他の部から格下に見られるわ、信用を無くすわともう散々だった。
しかしだ……、そんな気苦労も今日で終わる。
「お帰りなさい副部長!!」
「……えと、ずっとは居られないですよ?あくまでも休憩期間と言うか……」
「胸がまた大きくなりましたね」
「え!?そ、そうかな……」
「七海ちゃんいきなり何聞いてるの!?」
まあまあと圭太を宥める涼宮みなも。
彼女は、あの七海が懐く数少ない人物だ。そしてこの部の副部長であり、美術部部長でもある。
全国オリジナルキャラクター専攻部門の応募が一段落したようで、休憩期間を貰ったらしい。
昨日聞いた話だと、美術部は集中期間と休憩期間が存在していて、集中期間はコンクールや大会、応募などがある祭に学校から学問を免除してもらい、打ち込めるらしい。というのも、美術部はロボコン部と並ぶ成果を上げていて……特別特権を貰っている。
「それにしても、副部長ちょっと変わりましたよね?何というかより綺麗になったと言うか……、華やかさがあると言うか」
「そ、そうかな?」
恥ずかしそうに微笑むみなも。まあ確かに……、変わってたのは……他にも。
確かに少し膨らみを増したたわわ、長く細い足を包み込むストッキング、柔らかそうな桜色の唇……、それに……
「部長?」
「……え?あ!あははは」
「笑わないで下さい気持ち悪い」
「……、はは……」
「七海ちゃん駄目ですよ、秀久くんだって頑張ってるんですから」
「副部長、それフォローになってないです」
くそっ、別にいいさ。みなもの天然は今に始まったことじゃねーし。
どーせ俺は不細工さ!
「そうだ!副部長の為にケーキ買ってあるんだった!取って来ますね!」
「あ、じゃあ私も手伝いますよ」
「え、悪いですよ」
「私だって部員です。それに、久しぶりにお茶淹れたいし」
「うーん……じゃお言葉に甘えて」
トツトツと楽しげに会話をしながら台所に消える二人。お持て成しが得意な圭太だけど、あれは元々みなもがお茶を淹れてくれたり、依頼人にお持て成しをしていた影響からだ。
にしては、何か仲良すぎじゃね?
「あの二人仲良いですよねー」
「……ま、仲介役系どうし、話が合うのかもな」
「取られますよ」
「何がだよ」
「別にーー、圭太はセミロング一筋ですしね~、くく。あ、修理依頼の件終わりました」
「お疲れ様、報告書今日中に頼むぜ」
「了解了解」
七海は用紙を受け取ると、さっさとソファーに向かって行く。そして用紙をデスクの上に置き、漫画片手に寝転ぶようにダイブする。
……報告書は生徒会に通すことになってんだけどな……。
「秀久くん?」
「みなも?て、はやっ!」
「?……秀久くんはミルクティーで良かったんだよね?」
「……あ、ああ」
手馴れてやがる……。みなもは中央の透明ガラスのテーブルに四人分のケーキを並べ、手早くカップを置く。
ミルクティーが俺、コーヒーブラックが七海、お茶が圭太、紅茶がみなもとこれを数秒で用意したのかよ……。
ん……、ちょっと待て。
「圭太はどうしたんだよ」
「馬圭太ならセミロング女子見つけたとかで、あれです」
『可愛いな~、ちょっとウェーブがかかっているのが特に!』
……頭いてえ。
「秀久くん、隣いいですか?」
「ん?ああ」
「馬圭太はほっといて食べましょうよ」
「寝転がりながら食べようとするな、牛になるぞ」
「はーい」
みなもの隣で寝転んでいた七海は踵を返すと、ソファーに座り直してケーキを食べる。
「はう……美味しいです」
「あ、あの……みなも」
「はい?」
「あの……縄」
「はい?」
「ヒッ」
光の無い目を向けられた気がした。
怖い、凄く怖い。泣きそうになるくらいだ。
「喉渇いてますよね秀久くん」
「ああ、凄い喉カラカラ!あ、飲ませてくれるとか?」
「はい、その状態じゃ飲めませんし」
縄で縛られている自分を見る。
そりゃそうだ。
「折角だし口移しとかあづっっ!?!」
「何言ってるんですか変態」
「……秀久くん、流石にそれは」
七海にミルクティーを口に流し込まれ、口全体が燃え盛るように熱い。みなもはみなもで引いてるし!
じ、冗談だから!
「そもそも、縄で縛る必要ある!?」
「ありますよ、大アリです」
「野獣ですもんね」
「誰が野獣だ!」
みなもはきっぱりと言い放ち、七海はけらけらと笑っている。くっそー……、いつもに増して頭痛いぞー。
「てかみなも、怒ってる?」
「怒ってます、げきおこです」
そう言って角を指で見立てる。
あ、可愛い。
「こうでもしておかないと部長フラッと居なくなりますからねえ。まあ妥当ですねー」
「でしょ?」
「でしょ?じゃねえ!これじゃあ作業すら出来ないだろ!」
手足を縛られどうしろと?
トイレに行けないし、書類も片付けられない。
どうにか解けないかと体を動かすものの、みなもが縛っているため全く反応が無い。
「あ、バダバタ暴れないで下さいよ、あ」
「あ」
ガツッと俺の足がテーブルを蹴飛ばす。その勢いからかワンホールのケーキが飛び上がり、宙を舞う。
回転をかけながら落下していくそれは俺たちがスローモーションに見える程早く、次の瞬間にはベチャッと音を立てていた。
……、絶句、七海と俺はその光景に思わず唾を飲み込んだ。
「あ!皆さんケーキ先に食べて…………」
「うぅ、ベトベト……します」
圭太が顔を真っ赤に染め上げる。
仕方ない、これは全国の男子達には絶対抗えない興奮だろう。
ケーキを全身に被り、顔や髪、ストッキングにまで生クリームが垂れている。制服はブラウスにも染み渡り、お尻を突き出すように倒れているみなも。
ブラウスからはシミで下着が透けていた。
「GJ部!副部長!ありがとうございますありがとうございます!」
「いやぁあっ!?見ないで下さぁい!」
「部長の残念さも酷いですが、副部長の痴女さもかなりですね」
「違います!わざとじゃないんです!わざとじゃないんですよ!」
涙目でぶんぶんと首を振るみなも。
……凄く、いやらしい。
涼宮みなも、彼女はこの部活では副部長であると同時にお色気担当という解釈を俺達はしている。
「とりあえずシャワー浴びてこような、な?」
「はい……」
胸元を隠しながらしょんぼりと頭を垂らす。
部室にあるシャワー室へ向かおうと身を起こしたみなもだが、七海が手で制していた。
「七海ちゃん?」
「そのまま行かれると、床が汚れて掃除が大変なんですよー」
「それは仕方ないだ……ぅえ!?」
七海は問答無用と言わんばかりにみなもから制服を剥ぎ取る。一瞬にして大事な箇所しか隠してないみなもが現れ、ぷるんと2つの山が揺れた。
「きゃ、……きゃぁあああああああ!?」
「「ごふ!?」」
みなものグーパンチが俺と圭太の頬を撃ち抜く。
秀久:不憫
圭太:ツッコミ
七海:ミステリアス
みなも:色気