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秋if

11月、冬の訪れを感じさせるその季節は朝が寒い。暮れるのもあっという間で夏の暑さが嘘みたいに消えている。早い所では既に雪が見られる地域もある。

寒さには強い方だが雪が積もるのは少し困る。

面白いことをする奴がいるもので、雪が積もることがあると俺は必ず落とし穴にはまる。

雪の落とし穴ってなんだよ!?落ちたら落ちたで周りの雪が落ちてきて流石に寒いし風邪ひくわ!あと除雪機の弾く雪が大抵直撃するのも困りものだ。

時計を眺めていると黒い髮に紫色の瞳、珍しくロングスカートを履いているレイナが駆けてくる。


「お待たせ〜」

「おう、それじゃ行くか。ほら、これ着けとけ」

「?」


俺が渡した袋に首をかしげ、ガサガサと音が鳴らしながら中からものを取り出す。それを見て、レイナの表情が明るくなり嬉しげに首元に巻き始めた。

正直センスがあるかわからないし、マフラーと手袋なんて在り来たりかも知れない。色もベージュだからちょっと地味かも知れないし。


「暖っかい、秀久ありがとね」

「っ……」


頬に柔らかい感触が伝わる。

大したことじゃない、レイナが頬にキスしただけだ。

だけだけど……、つい周りを見てしまう。

……バイクに乗るから冷えないようにと思って買ったのだが結果オーライだ。


「それじゃ行来ましょうか、お姫様」


そう言って手を差し出す。

レイナは快く手を握り、冷えていた手の中に暖かさが伝わって来る。レイナの指は手袋越しからでも分かるくらい綺麗な形をしている。


「秀久、握りすぎ」

「ん、悪い。」

「くす、そんなに私の指好きなの?」

「うん」


正直、ずっと握っていたい。


「ほら、行かないと時間過ぎちゃうから」

「ん、もう少し」


……困ってるな。

俺はいつもレイナに振り回されてることを思い出し、指をいじるのを止める。


「はあ、やっと終わっ……」


レイナが一瞬にして真っ赤になる。

してやったり。

首元にキスを落とされるなんて想像してなかった顔をしている。マフラーで隠れているほっそりとした白い首。改めて見るとレイナの体はいつもの怪力がどこから来てるかわからない程細い。

……うん、体型はモデル以上だ。


「わっ、ちょ、……」


腰はくびれてるし、お尻の形もいい。


「……ん、」


スカート越しからでも分かる足の長さ。

……胸は柔らかくてでか


「いい加減にしなさーーい!!!」

「うわぁあああああああぁあああああああ!目が回る!」


足を捕まれ、本気の紅い不憫犬(ヒデヒサブーメラン)。いつもなら彼女のうっかりから出るその技は、今回彼女の沸点を超えさせ強制的に発動させてしまった。

ボディタッチはやりすぎたけど、うぷ、気持ち悪い、酔う!酔うから!?

てか……


「レイナ、胸大きくなっ……うわぁあああああああぁあああああああぁぁ……」

「……ん?ぐべ!?」

「ごは!?」


ぶん投げれ、見事にたまたま居合わせた流牙と激突。

お互いフラフラ体を揺らしながら倒れこむ。


「あ!秋獅子くんごめん!」

「りゅ、りゅーが、大丈夫?」


痛い、頭が凄く痛いし目も回る。

おまけに気持ち悪い、吐きそう。


「……貴様か、上狼……」


ズズズと黒いオーラを撒き散らしながら、鬼のような形相で立ち上がる秋獅子。

……やばい、滅茶苦茶怒ってる。


「違う、これはレイナが……」

「貴様は彼女のうっかりすら止めれないのか?」

「彼女って……いやそうじゃなく……あれはもう不治の病と言うか」

「今回は秀久が悪いでしょ!」


レイナが頬を膨らませ、響は首を傾げる。

……あ、やばい、嫌な予感がする。


「ヒデヒデが原因ってどういうこと?」

「……セクハラされた」

「うわあ、ヒデヒデ……ないよ」

「わざとじゃないんです!!……その、ついテンションが上がったと言いますか、レイナを少し困らせてやろうと思ったと言いますか、……その、凄く柔らか「反省しなさい〜」いただだだ!?首締まる、!」


なんでこうなるのさーーー!


「……痴話喧嘩なら他所でやれ。行くぞ響」

「秋獅子、お前こそもっと響を構ってやれよ」

「……秀久?」


背を向ける秋獅子に思わずそんな言葉を投げかけていた。

俺がレイナに振り回されてるからわかる、響に振り回されてる秋獅子はリアクションが薄い。こいつは無反応が過ぎる。響もレイナと似て周りを振り回すことが得意だ。

だが、秋獅子へのそれはアプローチ……好意そのものだ。鈍感と言われてる俺でも分かるくらい、彼女は秋獅子にアピールしている。


「……それがどうした?俺が決めることだろ」

「……それは」

「甘いな貴様は。いや寧ろ、そんなに振り回されて、投げ飛ばされて何故彼女と居られる?」

「そんなこと、レイナが好きだからに決まってるだろ」


だから恨まないし、飽きないし離れない。

その気持ちを侮辱するようなら、俺は秋獅子を全力で殴り飛ばすつもりだ。


「そうか……、ぞっこんだそうだ、夜瀬」

「……っ、秀久は変なところで無自覚だから」

「は?いや、だから俺はレイナが好きだからな?てか顔赤く……絞まる絞まる!」

「熱々だね〜」


響はニヤニヤと笑っていた。

……上辺だけ。


「秋獅子、もう一度聞くぞ。お前は響のことどう思ってるんだ」

「貴様に答える義理は無い」


それだけを言うと、秋獅子は再び背を向ける。

今度は響を促すことなく、一人で歩き出した。


「りゅーが待ってよー!それじゃあね二人とも」

「ああ、……頑張れよ」


響は苦笑すると、小走りで秋獅子の背中を追いかけて行く。


「響……」

「秀久、此処のホテルにしよう!夜景が綺麗なんだって」

「お前……随分とお気楽だな」


いつの間に離れていたのか。そういえば首が軽い。

そして何処から取り出したのかわからないガイドブックを見ながら、レイナは楽しそうにしている。

ピリピリした空気は好きじゃないし、色んな意味でもレイナのか自由さに肩の力が抜ける。


「んー、響と秋獅子くんなら大丈夫だよ。……秋獅子くんって少なからず秀久と似てるしね」

「……不服だ」

「拗ねないの、ほら、お昼の時間無くなっちゃうから」


考え過ぎなのかもしれない。

そうだなと頷き、レイナと再び手を繋ぐ。

……あいつにもきっとある筈だ、……手を握った時の温もりが。

俺は彼女との、レイナとの1日を楽しもう。

考えるのをやめ、俺は彼女を後ろに乗せてバイクを走らせた。

続きます流牙編に

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