クリエイタ
現在止まっているクリエイタの内容を変え、書いてみたいなあと思ったシーンを書いてみました。
設定としてはオリュンポスの神々の戦争ゲームと言ったとこでしょうか
真っ直ぐに伸びた長い橋を駆け抜ける。走った跡には鋭い刃が突き刺さり、それは俺が走る度続いていく。
足を止めることは出来ない。
ドスドスと鈍い音が耳を刺激する。不快だし恐ろしくもある。今生きてるのは自分の脚力のお陰だろう。そうじゃなければ間違いなく刃は俺の身体や足、頭を貫いている。
星のない暗い闇の中をひたすら走る。あの雨のように落ちてくる刃をなんとかしたい。けど海に飛び込むには高すぎるし少し余計な動きを取れば間違いなく死ぬ。今できることはこの橋を渡りきることのみだ。
「頑張るわね、彼」
「……アルテミス、奴の腕を狙うぞ」
「援護するの光一?仮にも敵同士よ?」
「俺の獲物を横取りされたくないだけだ」
「ふーん……そっか、まあ私も気にくわないしね……あいつ」
「ガァアアア!?……この矢……アルテミスか!」
白く光った矢がアレスの左腕を射抜き、続けて数発の弾丸が同じ場所に当たる。流石のアレスも左腕を押さえ、赤い血を流す。
この矢、そして弾丸……、間違いない光一達だ!
俺は一瞬のチャンスを見逃さず、チェーン付きのダガーナイフを錬成し橋の向こうへと投げる。
「アテナ!!」
「はい!」
アテナがチェーンを盾に絡め取り、一気に引き上げる。俺の身体は宙に浮き、波に流されるようにアテナの方まで飛ばされた。
が、勢いか強すぎるせいかどうやって止めたらいいのかわからない!速い速い!?やばい、地面にぶつかる!?
「うわぁぁあああああああ!?」
「秀久っ!」
「……っと」
地面へと落下する前にアテナがダガーナイフを引っ張り自分の方へと引き寄せる。進路を無理やり変えたことで勢いは落ちたものの、アテナが受け止めなかったから何処かしらに激突していただろう。
ありがとなアテナ……と言った言葉が妙にこもっていた。
……、ふくよかな感触が顔に伝わる。
…………。
……まさか!?
「うわ!!ごめ、ごめんアテナ!」
「……こほんっ、お気になさらず、しかしアルテミスが助けるなんて意外でした」
「お前と同じで、アレスが嫌いだったりしてな」
「それはありますね、はい。メガパーありえます」
「真顔がなんか怖い」
アレスどんだけ嫌われてるんだよ。
アテナの顔を見てみると笑ってはいるが明らかに張り付けたような笑顔だ。剣を持つ手がブルブルと震え、何か黒いオーラが見える気がする。
アテナにはアレスって名前だけでもタブーのようだ。
俺は苦笑しながら橋の方を見る。
「アテナ、アルテミス……てめえらまとめて消してやる」
うわー、かなり怒ってないかあれ。
「秀久、レイナ、と合流しましょう。不本意ですが神の力を完全に引き出してた今のアレスは私とアルテミスだけでは力不足です」
「数で勝負ってわけ」
「はい。アポロン……、ヘパイストスでやっと五分に持って行けます」
神々の力四人分でやっと互角……。
改めて自分が今生き延びれてることが奇跡に感じる。
戦神アレス。
字の如く戦いの神……。
今更だが、俺達は神と対峙している。
……冷や汗が、止まらない。
「秀久」
「あ、ああ」
携帯を手に取りレイナへ電話を繋ぐ。
二回ほどコールが鳴り、耳に入った声は一瞬にして俺の背筋をぞわりと駆け巡る。
『よお、上狼。まだ死んでないのか、しぶといなお前』
「足立……!」
何故だ、なんでこいつが……、
まさか!
「てめぇ!!!レイナをどうした!」
「うおっ、怖い怖い。安心しろよ、『今は』何もしてないからよぉ」
「…………お前……」
「俺はセントラルタワー2階に居るぜ。ほら、お姫様を助け出してみせろよ王子さま」
ブツンと通話が切れる。
同時に俺は地面を蹴って走り出す。
「秀久!!どう考えても罠です!落ち着いて下さい!」
「落ち着つけるわけないだろ!?」
あの足立だ。
レイナに何かしないわけがない。俺の沸点はとっくに上昇していてアテナの声は届かない。
足立に対する殺意と憎悪ばかりが湧き出て溢れる。
アレスに任せ、その間に攫ったんじゃない。恐らく、彼女を誘拐した上で俺を狙って来たんだ。
……あの光景を、足立は見ていたんだ。それを知ったからこそ……。
怒りからかアレスのことを忘れてしまい、セントラルタワーへと駆け出す足。
「……!秀久!」
「っ!……お前」
アテナの盾に弾かれる小型ナイフ。
目先には小さな少女と、アテナやアルテミスと同じ神である男が立っていた。
翡翠色の髪……、そんな馬鹿な……。
「天枷!?」
「……行かせないよ」
「お前があいつに手を貸す理由はわからないけど、どいてくれ!」
「……だって」
?
誰にーーー
「……っ!」
「秀久!?」
パタパタと腹部から落ちる赤い血。
鋭い金属が腹を貫通し、ジャラジャラと鎖のような塊が俺の体を通って後ろへと弾かれる。
……この鎖、……そんな。雅までも…。
「秀久の欠点は一度プチんとなったら、周りが見えなくなることだよね〜」
「み……みや、び」
「秀久君、これは神々のゲームなんだよ?仲間意識を持っていたら……すぐ死んじゃうよ?」
天枷の笑みはとても不気味で、この世のものとは思えなかった。
「ちっ、あの馬鹿。アルテミス!アレスの足を狙うぞ!……片足潰せば十分だ」
「りょーかいっ、1分で終わらせるわよ光一」
「……骨が折れそうだな」
ぼんやりとした視界の中で光一とアルテミスはアレスの右足に弾丸と矢を撃っている。
あいつら……。
ズキズキと痛む腹部を押さえ、俺は無理やり立ち上がった。
レイナを助けなきゃ……。
「秀久、お許しを」
「……っ!」
バシッと後頭部の溝を叩かれ、意識が薄くなって行く。




