大晦日パニック
お久しぶりです。今年最後の更新です。
カレンダーを見れば日付はいつの間にか31日を迎えていた。年というものは早く、そしてあっという間に次の年へと変わる。一年間という短さの中で、人は成長し、飛躍し、そして大きくなって行くものだ……。
様々な体験や出来事が彼を変え、一回り大きく成長させた。それは彼だけの力では成し遂げられなかったのだろう……。彼と出会い、彼に影響を与えた彼らの力があってこそ……、以前の彼はそれを理解することが出来なかった。
秀久はキラキラと光りを放つ部屋を見渡し、マスクを外す。年末年始は大忙しなのは彼の家でも変わりはない。
――て、待て待て待て待て待て待て待て!!
七海「何ですか、今いいところだったのに」
秀久「いいところじゃねーよ!!どう考えてもこれ去年の使い回しだろうが!」
七海「バレました?あは☆」
秀久「あは☆……じゃねーよ!何やってんだ!」
七海「いや~、ほら、今年は殆ど更新なかったじゃないですか?だから、使い回しても問題ないかと」
秀久「ありありだ!確かに、殆どと言っていい程更新しなかったけど、それなら最後くらいは真面目にしろよ!」
七海「うわ、何言ってんですか……」
秀久「こいつうぜーーー!!」
七海「まあそれはそうと、更新しない間に色々可笑しなことが起きたんですよ」
秀久「え?……別に何もなかったような」
七海「まあ、そう見えるのは分かりますが、事件はすぐそこで起きている!(ドンッ」
秀久「いや、わけわからねーから!」
七海「まあ実際問題が起きたのは私達じゃないんですよね」
秀久「は?……いや、まさか……やめとけ!それはやめとけって!!」
七海「殆ど更新しなかったことで何が起きたのか……ではレッツラゴー!」
※キャラ崩壊が入ります。苦手な方はここでバック、プリーズバック
秀久「…………」
龍「よ、秀久」
七海「龍星さんから星が抜けて龍になりました」
秀久「いきなり何やってくれてんだあああああ!?龍星さん!龍星さんですよね?」
龍「あ?俺は榊龍だが?」
秀久「榊ドラゴンって何だよ……どう見ても真っ赤なドラゴンじゃねーか!」
龍「はっはっは、秀久、ハッピーバースデー」
秀久「もう24日過ぎてるよ!!」
秀久「……」
芹香「あ、ヒデく~ん」
七海「芹香さんの声のボリュームが普になりました」
秀久「これは、別に問題なく「ヒデく~ん」むぎゃっ!」
芹香「朝ご飯食べてる?忘れ物とかしてない?あ、歯ブラシ新しいのに替えておいたからね、それとヒデくんの部屋掃除してたらベッドの下から本見つかったから机に置いてあるからね、ヒデくんも年頃なんだね~、ちょっと中身見ちゃったけど似たような髪型と胸をした女の子が――」
秀久「ちょ、なんだこれ!?」
七海「お母さん属性が追加されたみたいですねー「やっぱり却下ーー!!」」
秀久「ぜえ、ぜえ……」
七海「息上がるの早くないですか?」
秀久「い、や……仕方ない、だろ……てかまだあるのかよ」
七海「はい」
光一「なに?……例の密輸組織が?わかった。ヘリを出してくれ」
秀久「えと……」
光一「ちっ、時間がないな。俺だ!そっちまで走って行く!ヘリが見えた時点で合流だ!」
秀久「え……ちょ、光一が物凄い勢いで走り去ったんだけど」
七海「もやしと呼ばれていた光一さんは、どうやら運動神経抜群になっていますね」
秀久「……」
七海「ただ、銃の腕前は素人レベルになっています」
秀久「……なんか、読めてたのが悔しい」
澪次「行くぜええ!」
秀久「お前誰ええええええ!?」
七海「夜瀬さんは優しいキャラから一転、熱血の突っ込みキャラになってますね~」
秀久「あんなの澪次じゃない!光一といい、アイデンティティ崩壊してんじゃねーか!」
澪次「おうヒデ!奴は強いぜ、油断するなよ!」
秀久「お前は誰と戦ってるんだーー!?」
レイナ「あ……秀久」
秀久「レイナ?って何で猛ダッシュで逃げ出してんの!?」
七海「レイナさんは逆にしおらしい乙女に変わってるみたいですね~」
レイナ「うう、……顔に何か付いてなかったかなあ、……久しぶりに会ったからどう会話していいかわからないよぉ……」
秀久「……お前も誰だよ……」
七海「ね?問題起きまくりでしょ?」
秀久「まだ優しい方で良かったよ……」
つぐみ「あ、ヒデくん!」
秀久「ダレデスカ?」
つぐみ「え!?あたしだよ!雨宮つぐみ!」
秀久「……いや、だってお前そんなにデカくぐぼぉああ!」
つぐみ「デカいって言うなああ!」
七海「つぐみさんは身長が180行ってるみたいですね、綾菜さんは逆に……」
綾菜「ヒデくん、抱っこ~♪」
秀久「小さくなってると……」吐血しつつ
明香「ヒデ~、ハッピーバースデー!元気にしてましたか~?」
秀久「いや、だから誕生日終わって……って普通に喋ってる!」
明香「見てて下さいね~、ハッ!」
秀久「凄い!!空中でグルグル回ってる!」
明香「ヒデ~!バースデープレゼントでーす!」
秀久「凄い!あんな距離からパイを俺の口の中に……まずうううううう!!?」
七海「料理が壊滅的になってるみたいですね」ニヤニヤ
秀久「……この野郎……」
「酷い目にあった……」
他も回ってみたが、動物になっていたりキャラが全くもって別人になっていたり、仕舞いには流牙なんて女子力溢れる奴に変わっていたりした。
……なんてこった。……更新しなかっただけでこんなにも世界が変わるなんて。
重い足取りで我が家へ帰り、リビングに向かう。なんて最悪な大晦日なんだろう……。
「ただいまー……」
「おかえりなさい秀久さん」
扉を開けた先で、髪の長い赤い瞳の少女が微笑んでいた。
……そうだ、……そうだった。
「ひ、秀久さん!?大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫、……大丈夫だ」
「どこか痛むんですか?」
「いや、……ちょっと嬉しくてさ」
涙を拭い、笑ってみせた。
目の前の少女は変わることなく俺を待ってくれていた。それだけで今までのカオスな出来事が洗い流されて行く。
「それなら……良かったです。あ、お布団閉まって来ますね」
「ああ……悪いな」
みなもはにっこりと微笑み、パタパタと奥に姿を消した。
「遅いな……」
かれこれ数十分が経っている。だけど、みなもは一向に姿を見せなかった。いくら晴れているとはいえ、寒い筈だ……。
俺はソファーから立ち上がり、テラスへと向かう。
「みな……」
「はぅうう……」
「……え」
「あ、秀久さん。ごめんなさい、すぐ閉まってしまいますね」
何事もなかったようにみなもは布団を抱えて部屋へと消えた。
……、気のせいだったのだろうか。だが俺には、布団を抱きしめ鼻をこすりつける彼女の姿が見えた気がした。
今ならまだ間に合う。廊下を歩く背中へ声をかけようと俺は振り向い――
「――もしかして、見ちゃいました?」
「ーーー!?」
背中にぞわりと寒気が走る。
ゆっくり振り向くと、背後でくすくすと笑うみなもが。
――逃げろ
行動を起こす前に腕を有り得ない力で掴まれ、痛みに顔をしかめた。
「――ふふふふ、逃がしませんよ。……秀久さん」
「っ……!」
「見られたからには……しーーっかり、責任を取って貰いますからね?」
「うわぁあああああああああ!?」
布団を取っ払い、ガバッと身を起こす。
視線を暫くさまよわせ、息を整えた。
……ゆ、夢?
窓を見ると朝日が差し込み、隣で眠っていたみなもを照らす。
「……なんとも……ない?」
……あれは本当に夢だったのだろうか。
いや、夢であって欲しい……。
俺は静かにため息をつき、天井を見上げた。
「来年こそは、いい年になるといいな」
時計の針は、朝の六時を指していた。
では皆さん、良いお年を