サマーアクシデント
「暑い……」
「そだね……」
梅雨が終わり、本格的に夏へ移行したのだろう。気温もどんどん上昇し、部屋も蒸し暑くなって来る。
秀久は、自分の背中にもたれかかってるレイナと一緒に暑さでダウンしていた。頬や腕から流れ落ちる汗が床を濡らす。
「今日に限ってエアコン壊れてるとかまじかよ……」
「修理屋には連絡したよ?ただ、うっかり日にち間違えちゃって」
「……そのうっかりは洒落にならないぞ……」
「あ、はは……」
「「暑い……」」
声のトーンも弱く、気だるくなる。秀久は団扇を扇いでいた手を止め、虚ろな瞳で空を見上げる。
「海にでも、行くか」
「……海かあ、いい考えかも」
「……ただ」
「うん……、体が重いよね」
体中の力という力が抜け落ち、二人は団扇をただ扇ぐ。
と、レイナが秀久の首に腕を回し密着状態になる。
「何やってんだ……余計に暑いだろ……」
「いっそ汗を沢山かけば後で涼しくなるかなって」
「…………俺が死ねっての。離れろ……」
「ごめん、暑いから無理」
端から見ればある意味アウトな光景かも知れない。
レイナの服は汗で透けており、二人共汗で濡れている。女性特有の良い匂いが秀久の鼻をくすぐる。
「暑いな……」
「……うん」
「……濡れてるから感触違うな、やっぱ」
「……今日だけだよ……」
いつもならぶっ飛ばされる秀久だが、レイナも暑さで頭をやられているみたいだ。
扉が開き、澪次と流牙、響が入って来る。
「お邪魔します……連絡通り暑いね」
「死なれると適わんからな。差し入れだ」
「暑い中密着って、なんか楽しそうだね♪」
「アホなことを言う……く、離れろ!暑苦しい!」
響も秀久達に便乗して流牙に抱きつく。秀久はぼーっとした目で澪次を見上げ、手を上げる。
「よ、澪次、秋獅子、響」
「くす、相変わらずレイナに懐かれてるね秀久」
「……だろー?余計暑いんだよ……」
「~♪」
「相変わらず鈍いよね、秀久」
流牙は袋からアイスを取り出し、秀久の冷凍庫へしまう。
響が密着しているせいか、汗が出ている。
「この暑さではすぐ溶けてしまうな」
「……エアコン直さねえとやっぱ駄目か……」
「そうだな。響」
「はーい♪」
響は流牙から離れ、エアコンへと向かって行く。
服は汗で透けており、覗こうとした秀久をレイナが床に叩きつけるように押し倒した。
「うん……これならすぐ直るよ」
「響って機械得意なのか?」
「多少は噛んでるみたいだよ。主に直す方が多かったみたい」
「へえ~」
レイナの言葉に相槌を打ちながら、澪次に助け起こして貰う。
「あ~涼しい~」
「ん~、気持ちいいね♪」
秀久とレイナはエアコンの風を受けながら、背中合わせでぐて~と体を伸ばしている。
澪次はくすくすと笑いながら、カットしたフルーツを皿に盛る。流牙は響と壊れたテレビを直している。
「もう少し涼んでから……海でも行くか」
「くす。急には難しいよ。みんなも誘って、あと水着買わないと」
「だな……そんじゃ、来週の頭にするか」
「イチャイチャするのはいいけど、水分補給しなきゃ駄目だよ」
「「イチャイチャしてないから」」
「……くす。はいはい」
そんなこんなで海へ行くことに決めた秀久達。
この後レイナがうっかり秀久のアイスを食べ秀久がぶっ飛ばされる。
そして、響によって余計にカオスになる。
ダウンした秀久が澪次に食べさせて貰い疑われたりと何時もと同じ騒がしい日常をおくったのだった。