七夕に願いを
七月七日。世間では七夕の日だ。
願いごとを書いた短冊を笹の葉に吊し、皆で祝う。デネブ、アルタイル、ベガ……夏の第三角、織り姫と彦星から連なる天の川。
星空も満点、その煌めきにみなもは赤い瞳を輝かせていた。
スケッチブックを抱きしめ、草原に囲まれた丘に座り込んでいる。その先ではみんながバーベキューの準備で騒いでいるが……。
と言うのも、七夕と平行してキャンプを予定していたのだ。最初はどうなんだという意見もあったが、みんなで星空の下で過ごすのも悪くない。
それに、いかにも自分達らしい。
「お前、案外ロマンチストなんだな」
「わ、悪いでしゅか」
噛んだことに顔を赤くしているみなも。軽く苦笑しながら、秀久は隣に座り、星にも負けない輝きをした金色の髪の天辺、頭を軽く撫でた。
……もう慣れました。
みなもは気持ちよさそうに目を閉じ、思い切って秀久の方へこてんと倒れる。
「綺麗な夜空だな」
「ほんとだね……世界もお星さん達みたいに綺麗で、仲良く並んでいたらいいのにね」
「……」
秀久は星空を見上げるみなもを見る。
彼女の瞳には、何処か悲しみや寂しさがあるような気がした。だが、それは秀久も分かっているのか何も言わず暫く星空を見上げる。天の川……、それさえもまた寂しい存在だ。
「ヒーくん、泣いてるんですか?」
「え?」
目もとを指でこすり、濡れていた。
知らず知らずの内に涙が出ていたようだ。
もし、あの時過去が違っていたら……三人で見れたのだろうか……。
「……いや」
答えはきっと変わらない。
秀久はみなもをガシガシと強めに撫で、再び星空を見上げた。
「行こうぜ、摩果達が待ってる」
「あ~食った食った~」
「……(星空の下でバーベキューも楽しいね♪)」
龍星は片付けをしながら、芹香の言葉に頷いた。
草原ではつぐみ、秋斗、明香、煉介らが星空を見上げている。
「わ~綺麗!!」
「ホントだ。天の川も見えるね」
「ろマんチックデスね~煉介♪」
「はい!皆さんと見た今日の夜空、俺は忘れません!」
一方で響は流牙を連れて、どんどん奥へと進んでいた。
「天の川か……たまには悪くない」
「りゅーがー!こっちも凄いよー!」
「……何処まで行く気だ。……この草原が天の川になりかねんな」
深紅と光一は片付けを手伝いつつ、はしゃぐみんなを丘から見下ろしている。
「元気やな~」
「一年に一回しかないんだ。仕方ないだろうな……」
「せやな。ほな、わっちらも見に行こか♪」
星を先に満喫していたみなもは片付けを終え、スケッチブックに何かを描いている。
隣に秀久と澪次、摩果はみなもの隣で本を静かに読んでいる。
「秀久は願いごと、何書いたの?」
「……澪次奪還」
「ぷっ……嘘が下手くそだね。ある意味本音でもありそうだけど」
「……うるせえ」