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生徒会室での日常

お助けより短編が増えるあれ

「終わらねぇええ……」


 まただ。

 生徒会室に来たのはこれで何十回目だろうか?目の前に重ねられた始末書と、ペナルティの書類にため息が積もる。

 や、……わざとではなかった。

 ただ、依頼内容である『告白大作戦』が見事に振られて、相手方の怒りでこう、校舎の一部がスパッと……。


「言い訳は聞きたくありません。それに、彼女を止めようとした結果、あなたも校舎を壊したじゃないですか」

「ぐっ……、仕方ねえだろ!?ドラゴン少女なんて聞いてねーよ!」


 火を吹くんだぜあいつ?アーマーがなきゃ一発で焼け死んでたぜ。

 愚痴った所で減る訳じゃない。始末書にペンを走らせ、ふと思い出したことを呟く。


「そういや、前の予算会議どうだったんだ?」

「相変わらずロボコン部に持って行かれてます。……お助け部(生活支援活動部)は……」

「……」


 言葉が出ない。

 目の前に映る予算は、見事に前回よりも大幅に下がっていた。


「ちょっと待てええええ!どういうことだよ!?何で、あれだけ言ったのに下がってんだよ!?」

「……それは、……その」

「只でさえ、賠償金やら徴収金やらで無いってのに……」


 何なんだ、何なんだこの敗北感!そして、ダブルパンチ!  七海が以前やらかした校長の壷やロボコン部から前借りした予算だって、すっきりしてないんだぞ!?だから、今回は増やして欲しいって言ったのに……。


「ご、ごめんね秀久?……桁を一つ間違えたみたいで」


 原因は彼女のうっかりだったようだ。素が出ているのは突っ込まない。

 俺は始末書が重なっている光景を眺めつつ、隣に座って俺にもたれている生徒会長を半端睨む形で見る。生徒会長の『夜瀬レイナ』は苦笑気味な顔で返す。ぐっと体を倒され、密着度が近くなる。

 みなももと同率を争うだけはある……。間近で見る彼女は、美しくさが際立っている。ぱっちりとした紫色の瞳、綺麗な素肌、黒く長い髪に女性特有のいい匂いがする。


「……」

「秀久ー?」

「……」

「……、えいっ」


軽い衝撃を受け、ようやく我に返った。

だが、状態はさっきより急接近してるようで、胸板に大きな膨らみが当たる。肩には顎が乗っているみたいで、首周りに細い腕が回されている……、つまり……だ――


「れ、レイナ!?」

「あ、ようやく気がついた」

「い、い、いきなり何すんだよ!?」

「みなもちゃんの方が良かった?」

「……はあ!?」


なんでみなもが出てくるのだろうか……。だけど、声のトーンが僅かに低く、真剣気味なのが伝わっていた。

仕方ねぇ、嘘無しで真剣に返すか。


「……いや、これはこれで気持ちいいぜ?」

「……」

「(ゴスッ)いっっで!!?ちょっ、頭突きはねーだろ!?」


レイナは冷ややかな目で卑猥だよと一言。何だろ……もう泣きたい。

くそっ、言い方がおかしかったのか?……誉めれば何とかなったりして……。


「え、えっと……いい匂いだよな~(ゴスッ)だっ!?」

「馬鹿……っ」


つんと突き返され、俺は苦笑した。

……作業に戻ろう。ペンを握りしめ、始末書に――


「あの、レイナさん?そろそろ離れてくれると……「嫌」」


ん……?あれ?


「いや、始末書を「嫌」」


……


「あ~喉渇いたなあ~、何か買いに行くかー「いいよ」じゃあ離れ「やだ」…………」


……、……詰んだぜ。


「レイナ、悪かったよ……ごめん」

「…………なるほどね、秀久ってホント純粋なんだね」

「え?」

「ちょっと試してみたけど、……大人しすぎるよね」


そう言って、ゆっくりと俺から離れる。レイナは少しだけ眉を寄せ、いつものように笑っていた。

……何か知らねーけどやられた!?


「てか大人しすぎってどういう意味だよ!?……俺だってな、……一冊やニ冊……」

「……今度、秀久の家行くから」

「しまったぁあああ!?」


みなもにも言っておくと言われ、俺の聖書が消えるビジョンが見える。

……ん……、いや、それはまずい!最近入手した二人の写真が一緒の場所にしまってあるんだった!


「レイナ!今週はちょっと……ぉお!?」

「きゃっ!」


慌てて止めようとしたせいか、足が躓き、前のめりに倒れる。が、不思議と顔面に痛みはなく……、寧ろ柔らかい……。


「んぶ!?」

「……っ」


二つの柔らかな感触、そして甘く女性特有の香り……。

右手で、それを掴むと案の定形を変えた。つまりだ――


「……わ、悪いレイ「よし、殴る!」」


顔を真っ赤にしたレイナと、顔を真っ青にした俺の鬼ごっこが生徒会室で行われた。

……殴られ慣れるってのも、辛いぜ……とほほ。

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