5話
「・・・では、あなたにお城へ戻っていただきたい。」
「っ!!私にもう一度あの王子の元へ戻れとおっしゃるのですか?」
さっきの話しを聞いていらっしゃらなかったのだろうか。あの王子の元に戻るだなんて考えるだけで鳥肌がたつ。
「いえ、正確には第5王子の補佐をして欲しい。うすうす感じられていたとは思いますが、あなたは以前あなたがする必要のない殿下の仕事までこなされていました。」
確かに王妃になる前にこんな機密事項を知っていいものかと顔をひきつらせた覚えがある。いつか消されるのではと恐怖した。なので逃げ出したくても逃げられず追い詰められてしまったのだ。結局自分で命を終わらせようとしてしまったが。
「ですが、私がお城へあがるとあの王子もさすがに不審に思われると思うのですが・・・」
「あの王子がいなければ問題はありませんか?」
あの王子って旦那様までおっしゃってますが・・・それにいったいどういう意味でだろうか。
「第5王子のことはご存知ですか?」
第5王子。継承権は第一位はあの王子。第二位は病弱でほとんど部屋からでない第2王子。第3王子は亡くなられており第4王子は大恋愛のうえ、国内の貴族とむすばれ継承権はいらないと放棄し婿入りしている。そして継承権第三位が第5王子である。武芸が秀でており、三年前の戦争では「銀の悪魔」という異名で恐れられていた。このお方がいたからこそ負けずにすんだのだ。
「・・・銀の悪魔の異名をもつお方ですよね・・・」
「ええ、ようやく王位継承する意志をもたれ動かれました。あのくそ王子はようやく廃嫡されました。」
にっこりと旦那様が笑われた。言っていることと表情があっていない・・・。
「あなたはあの王子に追従されているものだと思っておりましたわ・・・」
そう言うと旦那様は顔をしかめた。
「あの王子のどこを敬えというのです。」
心底いやだと言う表情でため息をつかれる。
「あなたが自殺をはかったことはあっという間に噂にのぼりました。そして、あなたが記憶喪失になり私の元に嫁いだことも。同時に仕事がいっこうにはかどらなくなりました。そうしてようやく今まで政務されていたのがソフィ、あなただったと周りも気付きはじめたのです・・・」
話しはこうだ。いっこうに書類が返ってこず仕事が進まない各部署のお偉いさんたちが王子直属の部下に文句をいいにいった所、実は全然王子が仕事をしないので全部妃殿下に仕事をまわしていたのだと言ったからさぁ大変。王子をひっつかまえて仕事をさせるもののまったくやる気もみせず仕事の仕上がりも悲惨なもの。どうやら私が嫁ぐ以前も別の人を脅して仕事をさせていたようで、その人は私が王子の仕事をこなすようになると二人もいらないと殺されてしまったらしい。部下が密告というか、脅されて話したらしい。今ではまっとうな人は王子から離れ、ずる賢い人も距離をとりだしたそうだ。そうすれば自然と第5王子に人が集まりだすのだが、元々継承権に興味がない方なので交渉が長引くかと思われたが3年前の戦争で戦った隣国のお姫様に一目惚れしていたらしく、彼女を正妃におし、なおかつ隣国との関係を良くする手伝いをしてくれるならと承諾したそうです。戦後もあの王子が引っかきまわしたらしく、隣国とはいまだに微妙な関係なのだ。そんな諸々のことを床に伏せがちだった王様も知ったらしく、あの王子を廃嫡する事が決まったそうだ。お城の事に、いえ、世の中の事に興味を持たず園芸や家事にいそしみ細々と暮らしていた私には目から鱗な話しだった。




