世界で一番高いもの
「世界で一番高いモノって何だと思う?」
何気なしに、少女は同級生に問い掛けた。
少学二年生……『何で?』『どうして?』がまだまだ多い年頃である。
「そうね。やっぱり人間の心が一番高いんじゃない? いくらお金を払っても買うことはできないし、逆にいくらお金を積まれても絶対に売ろうとは思わないでしょ?」
そう答えたのは真面目で知られる委員長だった。
クラス中の人間が納得した……かに見えた。
「違うね。」
言ったのはケンゴだった。
「じゃ、あんたは何だと思うわけ? 答えなさいよ。」
喧嘩ごしに委員長が詰問した。
自分の答えに絶対の自信を持っていたらしい。
ケチをつけられたような気がして、むかっ腹がたったのだろう。
その辺りが子供である。
「だから、世界で一番高いモノだろ?」
ケンゴが反復する。
一瞬、教室中が静まり返った。
誰もがケンゴの答えを待っている。
「そんなの決まってるじゃねぇか。俺様のプライドだよ。」
オオニシケンゴ――。
彼は『ありがとう』『ごめんなさい』を絶対に言わない少年だった。