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渋谷と、つけまつげと、わたし  作者: ルーツ


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3/3

模試ガール、渋谷で再起動

ギャルはふと思い出したように言った。


「てかさ」


「はい?」


「名前、まだ聞いてなくね?」


あ。


致命的ミス、再び。


「あ、あの……わたし、佐倉です」


「さくら? かわいーじゃん」


「名字です」


「ウケる」


ギャルはくるっと振り向いて、軽く手を振った。


「うちはミオ」


ミオ。


たった二文字なのに、急に世界が鮮明になった気がした。


「ミオさん」


「“さん”いらん。先輩でもないし」


「でも年上ですよね?」


「一個だけ。ほぼ誤差じゃん」


誤差。


そう言って笑うミオの横顔は、やっぱり強くて、自由で、まぶしい。


──────────


数日後。


わたしの机の上には、あの日の“優勝リップ”。


塗るたびに思い出す。


「ちゃんと“ここにいる”って感じ」


鏡の中の自分は、まだ完璧じゃない。


でも、前よりも逃げていない。


通知音が鳴った。


画面には、見慣れないアイコン。


──ミオ


(え、なんで!?)


そういえば帰り際、


「インスタくらい交換しとこ。さすがにそれは現代人として」


と言われて、半分パニックでQRを出したのだった。


恐る恐る開く。


《今日さ、あのリップつけて学校行った?》


心臓が跳ねる。


《はい》


即レスしてしまった。三秒。


《どうだった?》


《…ちょっとだけ、強くなれた気がします》


即、既読が付いた。


しかし数秒経過する……長い。


そして、


《それもう優勝じゃん》


画面越しでも、親指が立っているのが見える気がして高揚した。


─────────


受験勉強は相変わらずしんどい。


模試の結果に落ち込む日もある。


でも、前みたいに「どうせ無理」とは思わなくなった。


わたしには、戦闘服がある。


姿勢と、前髪と、血色感。


それから、


「隣、堂々と歩きな」


あの言葉。


春になったら…

受験が終わったら…

また渋谷へ行く…


今度は偶然じゃなくて、言い訳もしないで、


ちゃんと胸を張って。


そして並んで歩くんだ。


ミオの隣を。


堂々と。


──三か月後のわたしは、まだ途中。


でももう、物語の脇役じゃない。

これは、わたしが主人公なのだ。

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