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第6話 下へ

いよいよ迷宮攻略が本格化していきます!

どれ程の時間が過ぎたであろうか。


どれほどの敵を切り倒したであろうか。


1分か1時間か、はたまた一瞬か。もはやその感覚さえもよくつかめなくなってきた。


敵の怪物は、あくまで低階層に出現する弱個体ばかりである。しかし、圧倒的数というのは、質にも勝る強力な武器であるのもまた事実。


僕が敵を切り、エリーさんが防ぐ。

たぶん僕一人だったらどこかのタイミングで圧倒的物量に押しつぶされて死んでいたかもしれない。それほどの数に対して今なお対処できているのは、間違いなくエリーさんのタンクとしての技量によるものである。


だがやはり、多勢に無勢。ぼくらともに少しずつではあるが確実にケガが増えてきている。

今はまだかすり傷程度ではある。が、一歩間違えば、それが僕らのどちらか、あるいは両方の死に直結しそうな、そんな予感をひしひしと感じる。


加えて、怪物たちの勢いを受け流すために移動を余儀なくされているのも問題である。

僕らは間違いなく、()()()()()()()()()()()()()()()()


怪物、しかもこんな低階層に出てくるやつらに、そんな知能が存在しているのか…?


「フッ!」


「…ッ!」


エリーさんが自身の盾にとりついたスライムを、その大盾の質量に任せて吹き飛ばす。


エリーさんの背後から忍び寄ってきたウルフを、僕が胴体で両断する。


連携というほどでもないが、少しずつ怪物の攻撃を仕掛けるタイミングがいやらしくなってきている気がする。そもそもの攻撃力や速度も、最初と比べるとレベルが上がっているような。


やはり、()()()()()()()()()()()


突入直後にはなかった怪物の強さ、何かしらの意図を感じさせる怪物たちの動き。

まるで、僕たちを下層に誘い込むような、まるで何者かの意図が働いているような。



「エリーさん、このままではじり貧です」


「…そうだな。一つ考えがあるにはある。だが…」


「たぶん僕も同じ考えだと思うんですけど、一応いってみてください」


「…下層へと向かう。そして、ふたりでこの迷宮を攻略する」



迷宮の踏破は、迷宮最深部に存在するボスモンスターを撃破し、迷宮心臓(ダンジョンコア)を破壊することで達成される。迷宮心臓が破壊されると、その瞬間に迷宮内に存在する怪物たちは、迷宮心臓復活のための魔力として吸収される。つまり、怪物たちが一斉に消滅する、というわけだ。そしてもう一つ、迷宮心臓が復活するための一週間ほどは、ボスモンスターが再出現(リポップ)しなくなる。


怪物が一瞬でも消滅すれば、ギルドの増援がこちらに向かいやすくなるだろうし、何より迷宮飽和も治めることができるはずだ。


これだけの数の怪物を相手にし続ければ、いずれこちらの体力が限界を迎えるだろう。

かといって、ギルドからの増援がいつくるのか、そもそもこの事態をギルドが把握できているのかもわからない現状、ここで立ち止まっているのが一番の愚策であることは明確だ。


しかし、


「こんな下級迷宮で、こんな意思を感じさせるような動きをする怪物など見たことがない。これも迷宮飽和に伴う異常…と片付けられればまだ良いが…」


「エリーさんは、別に原因があると?」


「わからん。しかし、妙な胸騒ぎがする。これ以上にまずい事態など起こりようがない、と自分でも思っているのだが、なにかもっと恐ろしいことが進んでいるような、確信めいた予感がある」


僕も、全く同じ意見である。

事前にギルドで貸してもらった迷宮探索に関する事前資料には、迷宮飽和を含む、ダンジョン内で考えられる不測の事態についていろいろ書かれてあった。


そこには確かに、意思を持った怪物が発生する可能性などにも言及されていたが、

現状そういった怪物が出現したのは、A級以上の迷宮のみであるらしい。


つまりだ。今D級迷宮のなかに、A級迷宮に発生するような怪物が大量発生している、といっても過言ではないわけである。


「…下へ行きましょう」


「…自分で言いだしておいてなんだが…危険だぞ。おそらく今この迷宮はすでにD級の枠を大きく超えている。C…いや、Bすらも超えているかもしれん。その下層となれば、もはやどのような状況になっているかも想像がつかん」


「どのみちここでじっとしていても押しつぶされるだけです。幸い怪物の強さもまだ僕らふたりで対処できる範囲に収まっていますから、動くなら今のうちしかないと思います」


「…そうだな。悩んで立ち止まっていてもいずれ…か。」


怪物の強さの変動がどのような仕組みでここっているのかわからない以上、怪物たちがこれ以上に強くなっていく可能性だってある。そうなれば、いよいよ僕たちのキャパシティーを超えてしまうだろう。


そうなる前に、動くのが賢明だ。


「行きましょう。ボスを倒しに」


「こうなれば一蓮托生というやつだな…このタイミングで相方が君であった幸運を神に感謝するよ」


「それはこちらのセリフでは?」


気づけば目の前には下層へと続く階段。

決意を固めた僕らは、いざ向かう。


ナールビエ迷宮 第2階層へ。




一方そのころ、ギルドにて。


迷宮飽和(スタンピード)が発生!?」


「は、はい!迷宮に向かったDランクパーティーが入り口付近でありえない数の怪物と遭遇して敗走したとのことです!」


「すぐに手の空いている冒険者に招集をかけて!リリーちゃん!斥候職の冒険者に依頼を発行して。『迷宮飽和に対処するために増援を求む』旨の手紙をほかギルドに届けてもらって!」


「は、はい!ディルーネさん!」


まさかこんなタイミングで迷宮飽和が発生するとは。なんと間が悪い。

今の迷宮には、ディルーネの友人(と自分は思っている)のエルフと、とても礼儀正しい姿勢が印象に残っている青年がまだ残っているはずであった。


「…どうか、無事でいて…!」


混乱は、まだ始まったばかりである。




ディルーネとエリーはすでに数年の付き合いです。

エリーさんもちゃんとディルーネのことを友人だと思っています。


エリーがリュウの試験に付き合うときめたのも、友人であるディルーネのことをかばってくれたからというのも少なからずあるみたい

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