閑話1 初雪と昇級
閑話ということで少し短めです。
【アンノウン】事件からはや半月。
結局、僕はあれから2週間病院のお世話になり、退院後も落ちた体力や筋力を元に戻すべくリハビリに励んでいたおかげで、気づけば外はめっきり寒くなってきた。冬の到来である。
王国のなかでは、王都は中心に位置しているとはいえ、大陸全体で見れば南端に位置しているのには変わらないため、冬も結構冷えるし、雪もしっかり降る。
僕の地元でもあるナールビエほどではないにしても、結構な量積もるらしい。
そんななか、ぼくなは何をしているかというと
「ふぅ…」
気温の低い中で白い息を吐きながら、自宅の庭で精神を集中させていく。
胸の奥にある自分の魔力を、少しずつ引っ張り出していくような意識。
魔力の制御に関しては、少しずつだが確実に上達してきている実感がある。
けど、この間の【アンノウン】戦でもそうだったが、やはり咄嗟の時に制御が甘くなってしまう傾向があるみたいだ。おかげでひどい目にあったわけだし。まだまだ修行不足です。
「リュウ」
「エリー?どした?」
そんなこんなでしばらく外で訓練を続けていると、エリーが声をかけてくる。
「そろそろ朝食が出来上がるそうだぞ」
「む、もうそんな時間か。ごめんすぐ行くよ」
「今日は暖かいスープらしいからな、冷める前に…お?」
「降ってきたね」
王都、というか、故郷を出てから初めての雪だ。
今日はいつもよりも肌に差すような寒さだったから、もしかしたら一降りくるかな?とは思ってたけど、こんな早くから降るとなると、今夜にでも積もりそうだな。
「ふふふ、去年の今頃は、こんなことになるとは思いもしなかったな」
「それは僕もそうだよ」
去年の今頃でいえば、ぼくはエリーやディーと出会ってすらいないし、師匠にしこたましごかれていた時期だ。エリーはギルド職員として頑張ってたころかな?
「こんな時に言うのもなんだが、リュウには感謝してもしきれないよ」
「エリー?」
「君と出会わなければ、私はその一生をくすぶったまま惰性で過ごすことになっていただろう。今、こんなにも刺激的で楽しい生活を送れているのは、すべて君のおかげだ。本当にありがとう」
「…それは全部エリーの努力のたまものでしょ。あくまでぼくは手助けしただけだよ」
「フフッ、君はそういうだろうなと思ってたがな。私が感謝の気持ちを持っていることは胸に止めておいてほしい」
そういってほほ笑むエリーの横顔は、めっちゃくちゃきれいだった。
「いただきます!」
「「「いただきます!」」」
今日の朝食に並んだのは、冬らしいあたたかな野菜スープとホットサンドである。
野菜スープには一口サイズに切り分けられた様々な野菜が入っていて食べ応え抜群。
ほのかに効いたスパイスの香りがさらに食欲をそそる。
「う~ん、素朴な素材の味の中に、ピリッとした辛みが刺激になって無限に食べれるわねこれ!」
「おかわりはたくさんありますからね~。たくさん食べてくださいね!」
ホットサンドは、中にベーコンとチーズが挟まっており、甘めのケチャップとよく合ってとてもおいしい。ケチャップが甘めな味付けなおかげで、チーズの酸味とのコラボレーションが絶妙である。
「朝はあまり食べられないタイプだったが、これならいくらでもイケるな」
「これは食べ過ぎちゃうよね」
僕とエリーはすごい勢いでホットサンドを平らげる。
実際、美味しすぎて朝どころか一日365日三食全部これでいいと断言できる。
もう半年近くディーの作った料理を堪能しているはずなんだけど、あきる気配が全くない。
なんなら、最近はシャルの手助けもあって、これまで手間と時間を考えて手を出せなかったような、凝った料理にも挑戦しているらしく、そのレベルもどんどん上がっている。
もう内のメンバー全員胃袋掴まれてしまっています。がっしり。
「今日はギルドに用事があるのでしたっけ?」
「あ、うん。例の新人候補の人との顔合わせの日程を決めなきゃいけないのと、うちのランクに関してもなんか話があるらしい」
「昇格ですね」
「昇格でしょうね」
「昇格だろうな」
まぁ、十中八九そうでしょうね。さすがにあの化け物を倒したうえで、公表はしていないものの上位職が発現したメンバーがいるパーティーをC級のままにしておくわけにはいかないだろうから。
「個人ランクはそれぞれ一個ずつ上がるとして、パーティーランクはBになるのかな?」
「おそらくそうだろうな。個人ランクは、シャルはもしかしたら二つ上がるかもしれんぞ?」
「そうだとうれしいわね。私だけ置いてけぼりなのはちょっと嫌だし」
シャルって意外とそういうところ気にしいだよね。
って口に出して言うと間違いなく痛いしっぺ返しを食らうので黙っておく。
が、彼女からうけているジト目を見ると、だいたい何考えているかばれてそうで苦しい。
ギルド帰りにパフェぐらいはおごらされそうである。
「では片付けたらでかけましょうか。ギルドではそんなに時間かからないと思いますし、帰りに食料品を買っておきたいですから」
「了解。じゃあいくつか袋持って行っておこうか」
「お願いします」
「片付け手伝うわ」
「ありがとうございます。じゃあ私が食器を洗うので、拭くのをお願いしていいですか?」
「了解よ」
「では私は出かける準備をしよう。リュウも手伝ってくれ」
「おっけい」
もうこの辺りは慣れたものである。
そうしてささっと準備を済ませて、僕らはギルドへと向かった。
「ぷぷぷぷぷぷ、白金級!?」
「はい!今回の功績を鑑みまして、シャルティア様の冒険者等級は、二つ上がって白金級とみとめられました!」
エリーの言う通り、なんとシャルの等級が二つも上がり無事白金級に昇格した。
二回連続で二階級特進って、冒険者の歴史上ほとんどないことなんじゃないか?
シャルは、どうやら朝の話は冗談半分に聞いていたようで、現実にこうして自分のランクを確認しながら唖然としている。
「そして、リュウ様とエリザヴェータ様は、等級が一つ上がって金剛石級となります」
「ありがとう」
「ついに僕らも金剛石級か。長かったようなそうでないような」
「期間でいうと間違いなく短いな。が、正直私も一個一個の出来事が濃すぎて、長く感じるよ」
「そうだよねぇ」
ぶっちゃけまともに迷宮攻略した回数のほうが少ないんじゃないか僕ら。
結局【怪獣の巣】もあれから再攻略できてないし…
「最後に、皆様【導きの星】のパーティーランクをBへと昇給させていただきます!おめでとうございます!」
「お、やったな」
「私も鼻が高いです!」
ディーにもいろいろとお世話になっているから、どこかのタイミングでお礼をしたいところである。
彼女に言うと、「私も皆さんにお世話になっているので、お互い様です!」なんて言ってはぐらかされちゃうだろうから、ディーには内緒で、エリーとシャルと三人で相談することとしよう。
「では、本日の本題である、顔合わせの日程なのですが…」
「そうだな…うちは特に急ぎの予定なんかはないし、向こうの方に合わせますよ」
「そうですか?では、相手方ができれば週末が良いとのことでしたので、今週末の、この時間などはいかがでしょうか?」
「三人はどう?」
「私は問題ありませんよ」
「私も特に希望はないしね」
「うん、いいんじゃないか?」
三人とも問題は無し、と。
「では、その日に打ち合わせをさせていただくということで、おねがいします」
「かしこまりました!ではそのように調整させていただきます!今回は昇級誠におめでとうございます!」
そういって声をかけてくれる受付の女性にこちらもお礼を返しながら、ギルドを後にするのであった。
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