第3話 いざ、迷宮へ
この物語はいろいろな壁を詰め込んでいきますが、基本となるのは主人公のリュウが英雄へと昇華する過程です。
どのくらいの長さになるのかも見当がつきません。
めっちゃ早く終わるかもしれないし、無限に続くかもしれない。
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迷宮とは、ある日突如として世界に現れた謎の施設群を指し、これらは共通して、内部に怪物が自然発生するという特徴を持っている。
この怪物は、基本的には才能に目覚めた人間にのみ対処可能であり、現在は、ギルドによって管理されている才能に目覚めた冒険者によって攻略が進められている。
迷宮は、難易度によってDからSの5つの等級に分けられており、
S級→50階層以上存在し、未攻略かつ、最深部への到達が現状不可能な最難関ダンジョン
A級→20~30階層が存在し、最上級冒険者のみで結成されたPTでのみ踏破可能なダンジョン。
B級→階層数はA級と同等であるが、上級冒険者以上であれば踏破可能かつ、すでに1度以上攻略が完了しているダンジョン
C級→15階層前後のものが分類され、中堅冒険者であっても攻略が可能なダンジョン。
D級→初心者向けダンジョン。階層も少なく出現する怪物も弱いものが多い。
というように区別される。ここにおける上級冒険者の区分というのは…
「すまない、遅くなってしまった」
今日はいよいよ、エリザヴェータさんとともに初めての迷宮に挑戦する日である。
遠足前のこどもよろしく、楽しみと興奮と緊張が入り混じってしまった結果よく眠れなかった僕は、とんでも無く早く目が覚めてしまい、集合場所にもだいぶ早く到着してしまった。
エリザヴェータさんは集合時間ぴったりだというのに遅れてきたことを申し訳なさそうにしていた。やはりこの人は誠実でまじめな方なのだなというのがよくわかる。
「エリザヴェータさんは、騎士職なんですね」
「まぁそうだな。ただ基本は私は介入せず、怪物に対する攻撃は行わないからそのつもりでな。危険だと判断したらすぐに撤退だ」
「わかりました」
エリザヴェータさんは、全身を自身の髪色と同じ白銀の鎧に身を包み、身の丈と同じほどの大盾を背負っていた。いわゆるタンク役を行う騎士職に代表される装備である。
いやこんな華奢な人がこんな大盾を振り回す姿はなかなか想像できないんだけども、ギルドが新人冒険者の監督に際して不足なしと判断するということは、相当の実力があるってコトである。すごい。
「この迷宮の詳細については理解しているか?」
「はい。ギルドの方にいただいた資料は一通り確認しました」
「うむ。では入り口に向かいながらおさらいをしようか」
今回挑戦するのは、D級ダンジョン「ナールビエ迷宮」である。この町唯一の迷宮であり、また初心者冒険者向け迷宮として割と人気のダンジョンらしい。
階層は5層。上層が1,2階層、中層の3,4層と最下層である5層に分割され、それぞれに異なる種類のモンスターが発生している。
今回の攻略では、最上層である1層の探索が目的だ。あくまで僕の冒険者適性を見るだけなので、深く潜る必要はないからね。
「1層に登場するモンスターは、小型のスライムとウルフ種の幼体だな。いずれも弱い個体ばかりではあるが、技能なしでは有効打が与えられるかわからん。気はぬかないように」
「わかりました」
「それと事前に断っておくのだが、昨夜君の才能値を確認させてもらった。事後承諾になってしまい申し訳ない」
「いえ、迷宮探索を安全に進めるためには、味方の実力を知ることも重要ですし、構いませんよ」
「そう言ってもらえると助かる。おそらく君の才能であれば1層は問題なく進めるだろう。そこでだ、事前の打ち合わせとは少し異なるが、状況によっては2層以降への突入も視野に入れてみないか?」
「え?それは構いませんが…」
「まぁ、不思議に思う部分もあるとおもうが、こちらにも思惑があるので乗ってくれると助かる。君位の安全は私の命を持って保証するよ」
「いえ、そこまでしていただなくても大丈夫ですよ!あくまで2層以降への挑戦は、攻略が順調に進めば、ということですよね?」
「その通りだ。正直君のように、才能は高いのに技能はない、という人物には出会ったことがない。ギルドとしても、はたして才能だけでどの程度ダンジョンに通用するのか確かめたいという部分も否めない」
「結果として僕が冒険者になれるのであれば、問題はありません」
そのあと、雑談を重ねながらあること10分ほど、
「ここがD級ダンジョン『ナールビエ迷宮』の入り口だ」
「D級とはいえ、大きいですね」
「まぁ、入り口の大きさと迷宮の難易度はあまり比例しないからな。王都には一軒家の扉ほどの大きさの入り口から入った結果、難易度がB級の迷宮につながっていた、なんて話もあるらしいから」
「それはまたとんでもない詐欺迷宮ですね…」
高さも広さも、人を並べれば10人は入るのではないかと思われるような巨大な扉。ここを超えればその先は迷宮なのだ。いよいよ、僕の憧れた英雄への道が始まるのだ。そう考えると武者震いがするな!
「それと、ここから迷宮にはいれば安全な場所はほとんどない。危険な状況で『エリザヴェータさん』などと呼んでる暇もないだろうし、私のことはエリーと呼んでくれて構わない。私も君のことはリュウと呼ばせてもらう」
「わかりました。エリーさん」
「うむ、では行こうか。初迷宮へ」
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「な、なんだこいつは!?」
「ここはD級なんだろ!?なんで、なんでこんな」
「人型の怪物がこんなところにいるんだよ!!?」
リュウはまだ知らない。この初迷宮の攻略が、まさしく彼の英雄譚の第一歩であるということを。
エリザヴェータはまだ知らない。なんてことのない初級迷宮の攻略が、自身の運命を大きく変える出来事になろうとは。
すでに、物語が動き出していたのである。
今回のエルフは騎士でした!
彼女にもまだ秘密がありますゆえ、そのあたりもお楽しみに!