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無色の英雄~職業無職でも成りあがります!~  作者: どら
第5章 新たな迷宮と王女
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第6話 逃避行と

状況は非常に厳しい。

才能(ステータス)でいえば、動けないリュウを担ぐのは私であるべきだが、あの触手の攻撃を防ぐ必要があるから、魔法職であるシャルに任せるしかない。


彼女も冒険者だ。一般人の女性、どころか戦闘職を発現していない男性よりも筋力はあるはずだ。

だが、やはり男1人を抱えて移動するには時間がかかってしまう。


「ぐっ…このっ…!」


初めこそこちらの動きをうかがうような姿勢を見せていたあの化け物だが、こちらが撤退の意思を見せた途端、急に猛攻を仕掛けてきた。


幸いなのが、ほかの通常の怪物(モンスター)と同様に、技能(スキル)が通用することだ。

挑発(タウント)突撃盾(バッシュ)が効くおかげで、まだなんとか捌くことができている。


「【火炎弾(ファイアボール)】…!」


もう一つの光明が、奴の弱点がおそらく火属性であるだろうということだ。

魔力が満足に回復していないため、初級の魔法しか放てていないシャルであるが、

威力の低さのわりにかなり大きくその触手がひるんでいるように思えるのだ。


蜘蛛の糸を手繰るようなわずかな隙間をなんとか進んでいき、

もうあと少しで脱出口にたどり着くというタイミングであった。


「縺上◎縺碁??£繧九s縺倥c縺ュ縺?h髮鷹ュ壹←繧ゅ′豁サ縺ュ繧医き繧ケ縺」


「…っ!?」


「なっ…なによあれ…!?」


【ケルベロス】の背中をかき分けるように生み出された()()は、明らかに生物ではない。

スライムのようにも見える粘液上の体。


だが、スライムのように透き通った液体ではなく、ヘドロのようにおぞましい体をしている。


何より、もはや頭部なのか胴体なのかわからない、その体のてっ辺にみられる、血走った巨大な一つ目。

それは間違いなく私たちを捉えている。


まずい。ここに居続けては。

本能がさけぶ。奴と相対し続けてはいけない…!


「…走れっ!」


「…っ!」


私とシャルは脱出口にむけて走り出す。

それとほぼ同時、あの化け物がこれまでで最も速い速度で、その触手をこちらに差し向けた。


盾は構えられた。が、わかってしまう。これは防げない。

幻視する。盾ごと貫かれる自分の姿を。

だが、もし私が躱せば犠牲になるのはシャルだ。


「エリー!」


それに私が一瞬でも時間を稼げれば、リュウも救えるかもしれない。


この一瞬で、まるで走馬灯のように、このパーティーでの出来事が脳裏をめぐっていく。


あのとき、リュウに出会えたから。


だからディーとシャルと仲間になれた。


また冒険者になることができた。


夢をもう一度、追いかけることができた。


刹那、あの時のリュウの言葉が、私の耳を叩いた。




『僕が君の矛になるから。君が僕の盾になってほしい』




そうだ。あの時誓ったのだ。

私はこのパーティーの、


いや


リュウの盾になると誓ったのだ。


たいそうな誓いを立てたくせに、私がふがいないばかりに、彼をたくさん傷つけてしまった。

これからも、たぶん彼が傷ついてしまうことがたくさんあるのだと思う。


だからこそ、私自身があきらめてはいけないのだ…!

リュウの背中を見て、私は学んだはずだ。

あの時も、ナールビエでの時だってそうだった…!


諦めなければ、私は()()()()()()()()


技能(スキル) 重装盾術(ファランクス)!」


これは一種の賭けだ。

本来、重装盾術は真っ赤なオーラをまとって盾の耐久力をあげる技能だ。

でも、あの時魔人が生み出した【オラクル】と対峙してから、私の技能が変化しているのを感じる。

なにかがつっかえてる感覚があるが、その壁をここで壊す…!


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁあああ"あ”あ”あ”ぁぁぁ!!!」


真白に輝く私の盾。

これまでに私自身見たことないほどの光の強さ。

これが、私の心の強さの証明であるのなら


「【聖陣守護(セイントセンチネル)】!!」


まばゆい光が、ボス部屋を大きく照らした。

光を浴びた化け物が、全身から煙を吹きながら大きく後ずさる。


「辭ア縺?李縺??縺?李縺?李縺?李縺??縺??縺??縺?李縺??縺?李縺?ュサ縺ォ縺溘¥縺ェ縺?>繧?□縺?d縺?縺?d縺?豁サ縺ォ縺溘¥縺ェ縺!?!?!?!?!?!」


もはや音と認識することすら難しい断末魔をあげながら、苦しんでいる。


「…この力は」


見覚えがあった。どこか暖かく、太陽のようなぬくもりが瞬く間にひろがっていった。

この光景を、私は体験したことがある。


「…今は考えている場合ではないか。脱出が先決だ」


「エリー!急いで!」


「今行く!」


そうして、なんとか私たちは逃げ延びることができた。

あの化け物の正体やら、私が新たに手に入れた力やら、考えなければいけないことは多い。

だが今はとにかく、リュウを医者に見せなければならない。


私たちは、急いで迷宮前の医療施設へと走った。









その後の顛末はこう。


あの後エリーと私は、帰還した冒険者のために用意された診療所に駆け込んだ。

待機していた神官の人は、リュウの傷を見てその顔を真っ青にしながらも、出来ることをできるだけやってくれたわ。


何とか止血をしながら、王都へ急いだ私たちは、そのまま王都中心地にある病院へ担ぎ込んだ。

治療に当たってくれた医者の話によると、傷自体の治療はできたものの出血があまりに多すぎたため、意識が戻るかどうかは五分とのこと。


でも、絶対に大丈夫、リュウはこんなところで死んだりしないし、絶対に目を覚ましてくれるわ。

だから、私たちは彼が目覚めた時のために、できることをするの。


エリーに呼ばれたディーは、ベッドに横たわるリュウの姿を見て茫然としていたけれど、すぐに気を取り直して、ギルドにとんぼ返りしていった。


今回のことの顛末を、王女殿下に伝えるために。


今回の一件は、ギルドとしても看過できない事態として認知されたらしく、即座に迷宮の閉鎖が行われた。さらに、そのタイミングでギルドにいた上級冒険者たちに緊急依頼として、迷宮周辺の警備ガ発行された。対応の速さはさすが王都のギルドであるといえるわね。


さらに、緊急連絡用の魔道具を用いて王女殿下へと話が向かい、ものの数時間でリュウの眠る病室に、私たち【導きの星(ガイディングスター)】と王女殿下、そして騎士団長のシンシア様が勢ぞろいした。


「…迷宮のボスがそのような…」


「にわかには信じられんな…話を聞くうえでは、死霊(アンデット)化に近いと思うが…」


「そもそも死霊になるには明らかに時間が短すぎます。それに、死体自体が復活するのではなく、死体の中から別種の怪物が発生するなど、見たことも聞いたことも…」


王女様と騎士団長様が考察を重ねるが、やはり奴の正体にはたどり着かない。


「…魔人の仕業かもしれん」


「エリー?」


「王女殿下、一つお願いがあるのですが」


「なんだ?何でも言ってくれ」


「極秘に、才能(ステータス)の鑑定をお願いしたい」


「極秘…か」


「はい。だれにも口外しないというお約束もしていただきたい」


「ちょ、ちょっとエリー、急にどうしたの?」


突然自身の才能の鑑定を要求するエリー。その意図が読めない。

あの化け物の正体と、エリーの才能にいったい何の関係があるというの?


「私の読みが正しければ、私が新しく使えるようになった技能が、奴の正体をつきとめるヒントになるかもしれません」


「ふむ…」


エリーの要求に対して考え込む王女様。いやこれ私たち無礼うちとかされないわよね…?エリーも大胆過ぎるわよ…


「シンシア、どの程度時間があれば用意できる?」


「そうですね、騎士団所有のものであれば1時間もあれば」


「では頼む」


「かしこまりました」


「フレア!」


「はっ」


王女様の号令に従って部屋を出ていったシンシア様と入れ替わりで、別の女性騎士が部屋に入ってくる。


「例のヤツはもはや迷宮のシステムから乖離してしまっている可能性がある。ギルドだけでは手に負えない場合に備えて、騎士隊も動かせ」


「かしこまりました。1番隊から3番隊までを向かわせます」


すごい、あっという間に場面が整っていく。

これが王女様のカリスマというやつなのね。


「聞いての通りだ。ひとまず君たちはリュウ殿の様子をみていてあげてくれ」


「…なにからなにまで、感謝します」


「なに、こちらこそ礼を言わせてくれ。今回の件も、もし君たちじゃなければおそらく生存すら難しかっただろう。そうなれば、第2第3の犠牲者が生まれていてもおかしくなかった」


犠牲者、という言葉を聞いて私はついベッドで眠っているリュウを見てしまう。

あのとき、リュウが庇ってくれていなければ私はたぶん死んでた。


リュウだって、もう少し攻撃がずれていたら…


このパーティーに入ってから、冒険があまりにうまくいっていたから、慢心していたのかもしれない。

誰だって不死身でもなんでもない。リュウだって、エリーだってそう。


あの二人の背中をずっと見ていた。あの二人と一緒なら、いつまででもどこまででも行けると思っていた。いつの間にか、二人の背中を追いかけていくだけになってしまっていたんだと思う。でもそれじゃダメなんだって気づいた。


私も、二人と肩を並べられるように。横に並んで戦えるように。

もっと胸を張って、【導きの星】の一員だって、そう言えるように。


もっと、強くなる。


仲間を守れるように。


その決意に呼応するように、胸に宿る魔力がかすかにきらめいたような気がした。



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