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第6話 作戦会議

「私たちはBランクパーティー【戦乙女(ワルキューレ)】。私がリーダーのリリアーナだ。で、この二人が…」


「アリエルです」


「ユリエルです」


「…見ての通り、二人は双子の姉妹なんだ」


水色の髪のほうがアリエル、ピンクがユリエルね。覚えられるだろうか。


「僕はCランクパーティーの【導きの星(ガイディングスター)】のリーダー、リュウだ。こっちの二人はエリザヴェータとシャルティア。」


「よろしく頼む」


「よろしくね」


そういって自己紹介した僕たちに、【戦乙女】の三人が深々と頭を下げる。

先ほどの会話を見ていても、この三人のまじめな性格が見て取れる。


「そんなかしこまらないでください。僕らは冒険者としても後輩ですし」


「後輩に迷惑をかけた」


「先輩としてあるまじき失態」


「「ごめんなさい」」


「二人の言う通り、ランクでも上の我々が、後輩の手を煩わせてしまったのだ。本当に申し訳ない」


「わかりました!お礼は受け取りますから!頭をあげてください」


ようやっと彼女たちを落ち着かせて、みんなそろって座ったところで本題に入ることにする。


「ここまで乗りかかった船ですし、先ほどの事態についてお聞きしても?」


「あぁもちろんだ」


彼女の説明をかみ砕くとこうだ。


さきほどの男、名前をタクト君というらしいが、彼はそもそも【戦乙女】の正規メンバーではないらしい。もともとこのパーティーには、正規のサポート要員のメンバーがいるそうなのだが、家庭の事情で一時的に離脱しているらしく、その間の臨時要員(スポッター)として一時的に加入したのが彼だった。


彼は【付与術師(エンチャンター)】としてパーティーに加入したそうなのだが、まずここで一つ食い違いが発生した。


「そちらの皆さんは、付与術師の能力がどのようなものか、ご存じか?」


そう問われた僕だが、いかんせんほかの職業に関する知識が疎いので、シャルに目線を向ける。


「そうね…一般的には、武器などの装備類に魔力を付与して、擬似的な魔法攻撃を可能にする職業…ってところかしら」


そのシャルの答えに対して、リリアーナさんは神妙にうなずいた。


「私もその認識であったし、彼の付与術師としての能力もそういった類のものであると思っていたのだ。しかし、そうではなかった」


「と、いうと?」


「彼の付与術は、武器や防具ではなく、私たち冒険者そのものの才能(ステータス)を向上させるものだったのだ」


「…それはまた」


「実測値を確認したわけではないから断言はできんが、体感では3割ほど上昇した感覚があった」


「身体能力だけじゃない」


「魔力も上昇した」


…それってとんでもない能力では?

魔法的な付与がされた武器や防具をつかって才能を底上げすることはできなくはないが、それでも多くて1割ほどの上昇値しか得られないものがほとんどだし、そういった効果が付与された装備なんて、希少すぎて普通の冒険者は目にすることすら難しい代物だ。


そんな状況で、魔法一つで才能を3割も上げるなんて、知られただけで国を挙げた大騒ぎになるだろう。

それこそうちのシャルと同じような立場に置かれることは必至だ。


「最初こそよかった。彼のおかげで普段は苦戦を強いられる怪物をいとも簡単に倒せるのだ。一時は抜けているメンバーが帰ってきた後も、彼を正規メンバーに昇格するという話もみんなでしてたほどだ」


「まぁ、そうなるでしょうね」


「ただ、迷宮に潜っている間、彼に力を借りている状況に対して、少しずつ()()()()()のだ」


「怖い…ですか」


「あぁ。このまま彼の付与によって向上した才能に慣れてしまった時、彼がいなくなったら、このパーティーが解散したら…自分が一人になったら…その先を考えた時、付与が無くなったとしても私は戦い続けることができるのか…わからなくなった」


「リリにそのはなしをきいて、私も同じことを思った」


「私たちは、ずっと【戦乙女】として戦っていくつもり。でも必ずずっと一緒に入れるとは限らない。それが冒険者」


「だからまず初めに、彼にお願いをしたのだ」


三人は、彼に『付与術は三人が要請したときに限って発動してほしい』という旨を伝えたそうだ。

命の危険が迫った時など、緊急事態にのみ能力上昇を行うことで、通常時は自身の力だけで戦うことができるように。


ただ、彼はそれに反発した。

初めこそしぶしぶであるが了承の意を示したそうだが、彼は割と頻繁に、一方的に付与を施してきたらしい。それを注意すると


『皆さんが危険だと思うとつい…でもぼくは皆さんのことを思って…!』


と、決まり文句のように言い返してきたのだという。

同じようなセリフをさっきも言い放っていたな。それで相手がこれまで納得してきたから、今回もそれで行けると思っていたのだろうか。


「そもそもの話、付与術の件がなくとも、リーダーの要請に答えられない人間をパーティーに加えておくことはできない。だから今日こちらから契約破棄の申し出をして…」


「さっきの事件につながる…というわけか」


話聞いてるだけでも、基本的に彼女たちの側に非はないように感じられる。

というかどんだけ話聞かないんだその男。


「私から言えるのは、変なの掴まされてご愁傷様ってぐらいかしら…」


「シャルの言い方はどうかと思うが、過程はどうあれパーティーから抜けさせることはできたわけなのだし、あとはギルドに事の詳細を伝えるぐらいか?」


「そうだな…そうさせてもらう。改めて今回は助かった。礼を言わせてくれ」


「感謝」


「感激」


「僕らは特に何かできたわけじゃないから、困ったときはお互いさまということで」


そういって彼女たちは僕らに何度も頭を下げながらギルドの受付へと向かっていった。

それと入れ違うような形で、ディーが書類の束を抱えながら戻ってきたので、そのまま僕らは自宅へと戻った。







「そんなことが…」


「まぁ冒険者として生活していれば、あぁいったトラブルは日常茶飯事だろう」


「ま、どうせ私たちとはもう関わることないでしょうし、気にする必要もないんじゃない?」


「だといいけど…」


「それより今は迷宮の話でしょ?」


自宅にて、机の上にはこの王都に存在する迷宮のリストが広げられている。

この中から次に挑戦する迷宮を選ぶわけなんだけど…


「いったんA級は省いておこうか」


「そうだな。順当に行けばC級かB級の迷宮が妥当だろう」


「オーソドックスなやつだと…このあたりかしら」


そういってシャルが指さしたのは、C級の迷宮が書かれている資料だ。

シャルの指先に示されているのは、洞窟のなかに発生した迷宮だ。


「この迷宮がつくられた洞窟は、ほかのものと比べると内部が非常に狭いらしく、乱戦になると難易度が跳ね上がるそうです」


「となると魔法も使いづらそうね」


「仮に怪物自体がそこまで強くなくても、囲まれると皆を守り切れない可能性もあるな」


「じゃあこっちのはどう?」


僕は資料を流し見ている時に目についたものを手に取った。


「草原型の迷宮…ってどんなやつなの?」


「リーザナの迷宮と似たようなものだな。入り口は何の変哲もない扉だが、中に入ると景色が一変するようなタイプだ」


「この草原型というのは、階層一帯が広い草原で構成されているものをいうそうです。視界が広くとれるので不意打ちにあう可能性は低いですが、一度に多くの怪物の相手をしなければならなかったり、闘争手段が確保しづらいという難点もあります」


「やっぱり王都の迷宮ともなると、どれも一筋縄ではいかない奴ばっかりか」


「ディーが悩むわけだな」


ふーむ。やっぱりうちの人数が少ないのがネックだな。

パーティーメンバーが多ければ、もっと柔軟に対応できるのだが。


「前衛職がもう一人いれば、この草原型の迷宮でもいいとおもうのだが…」


「現状だと、不測の事態に対処しきれるか不安だね」


この際だし、D級の迷宮とか、王都の外で発行されている依頼(クエスト)を消化しながら、追加メンバーに応募が来るのを地道に待つ、という選択肢をとってもいいかもしれない。


「ギルドを通した新メンバーの募集って、だいたいどのくらいで応募が来るものなの?」


「そうですねぇ…王都は人材も豊富ですし、人の流入も盛んですから、遅くとも一週間以内には何かしらのリアクションが来るのではないでしょうか」


「一週間…待ってみる?」


「それも考えとしてはありかもしれん」


リーザナでは、B級に相当する迷宮をクリアしたわけだし、もう少し大胆に動いてもいいかもしれないって気持ちもあるんだけど、そういうタイミングが一番足元をすくわれるんだよね。

僕たちはどうやらトラブルを抱えやすい体質(?)であるらしいし。


環境も変わってから初めての攻略になるわけだから、慎重に慎重を重ねるぐらいがちょうどいい。

だからこそ、ディーも同じ考えだからこそ、次の迷宮の選定にも悩んでくれていたんだと思うしね。


じゃあとりあえず新メンバーの追加ができるまで、いったん依頼をクリアしながらお茶を濁す方向で話が固まりそうになった矢先、


静かに迷宮のリストとにらめっこしていたシャルがふと声をあげた。


「ねぇ、B級ではあるけど、この迷宮なんていいんじゃない?」


「これは…」


シャルが見つけた迷宮には、特記事項という項目にこう記されてあった。




大連続(ボスラッシュ)形態、と______

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