第15話 次の舞台へ
三章終幕!!
他の三人にベッドに縛り付けられてから2日
一日寝たらほとんど痛みも引いて、問題なく動けるようになったにもかかわらず、
三人が三人とも「大事をとってもう一日休みなさい」の一点張りで、当然ながら僕も逆らうことができず、結果丸二日を宿のベッドで寝て過ごすことになった。
そんなこんなで、無事に監禁(?)から解放された僕はパーティーメンバー全員を連れてあいさつ回りに赴いていた。
リーザナに想定よりだいぶ長く滞在していたこともあって、ギルド以外にも、商店街のおばさまおじさま方にも大分お世話になったので、そのお礼をして回ろうということである。
ポーションをよく買わせてもらったお店の店主であったおばさんには、こちらがお礼に伺ったにもかかわらず、選別といって大量の栄養ドリンクを持たされてしまった。代わりにポーションを結構な数買わせてもらったが、これでは余計にお世話をかけてしまうことになってしまう。
特に、今回の冒険で一番ポーションのお世話になったシャルは、店主さんに何度もお礼を言っていると
「もっとでっかくなってうちのポーション宣伝してくれたらいいから!」
と快活にわらっていた。本当に気持ちの良い方であった。
続いて訪れたのは、迷宮に持ちこむ非常食を購入したお店だ。
今回の攻略では、迷宮に泊まり込むようなことはなかったため、そこまで大量の食料を買ったというわけでないのだが、店主であるおじさんは「ガハハ!」と笑いながらフルーツを籠いっぱいに譲ってくれた。
「今度リーザナに来た時にもっとたくさん買ってってくれよな!」
とのこと。王都への道中に必要な食料品はここで買わせてもらうことにしよう。
最後は、装備品の整備を担ってくれた武具屋である。
僕の刀やエリーの防具の調整はもちろん、何を隠そうエリーの新しい盾を制作してくれたのがこの武具屋の店長であったのだ。
店長がエリーの盾をあの短期間で作ってくれていなければ、そもそも迷宮の踏破なんて夢のまた夢であった。エリーは彼に深々と頭を下げていたが、寡黙な店長さんは静かに手をあげて答えるのみであった。漢である。
一通り挨拶を済ませた次は、いよいよ王都へ出発する準備をしなければならない。
季節的にも、もう少し遅れてしまうと雪が降るほど寒くなってしまうので、そうなる前に王都にたどり着いておきたい。
「王都へは、途中何か所か村や町を経由しますが、何度か野営も必要になると思います」
「ってことは結構距離があるの?」
「そうですね。短くとも2週間はかかると思います」
「2週間か。物資はさきほどのあいさつ回りの時に買った分で足りるか?」
「それに関しては問題ありません。中継地点に考えている村でも補給できると思いますから」
というわけで、
今度は王都に向かっての馬車旅ということで、その道中の計画をみんなで共有しようということで、みんなで僕の部屋に集まっていた。
もろもろの準備を整えて、三日後には出立する予定である。
「少しずつ馬車に荷物を移していきましょう。リュウさんとエリーさんにお願いしてよいですか?」
「うむ。力仕事は任せてくれ」
「とりあえず直近では使わなさそうなものを先にまとめておこうか」
まだ3日はこの町に滞在するので、荷物すべてを馬車に詰めるわけにはいかない。
なので、この三日で使う予定のないものや、緊急時以外は利用することがないような道具類を先にまとめて、馬車に詰めておく、というのは、こういう馬車で長旅をする上では常識である。
こういう力仕事は、リーダーである僕が真価を発揮できる数少ない場面だからね!
気合い入れてやらせていただきますよ!
あれ、なんか目から液体がこぼれて視界がぼやけるんだけど。
「私はギルドのほうへ。今回の報奨金などを王都でも引き出すことができるように手続きをしに行きましょう。シャルさん、護衛をおねがいしてもよろしいですか?」
「任せなさい!」
ギルドにある口座というのは、基本的に書類上の手続きさえ済ませておけば、どの町のギルドでもお金を引き出したり預けたりできる。が、その手続きを忘れていると、お金の移動に時間がかかってしまい、即金を利用できなくなったりする。
口座にお金はあるのに、引き出せなくて金銭トラブルに発展する…なんてのは有名な冒険者あるあるの一つだな。そのあたりはディーに任せておけば問題ないだろう。
そうして、なんやかんやあわただしく旅支度を済ませていると、気づけばあっという間に出発の日の朝を迎えたのであった。
「この度は本当にお世話になりました」
「ちょ、ちょっと、頭をあげてください!」
ギルドの前で僕らに頭を下げるのは、リーザナのギルド長であるサラさんである。
その背後には、この町で良くしてくれた受付嬢のニーコさんも同様に頭を下げてくれている。
「以前もお伝えしましたが、僕たちは自分たちがやりたいようにやっただけなので、そんなお礼を言われるようなことは何も…」
「それでも、です」
そういって頭をあげたサラさんの表情は、とても晴れやかなものであった。
「皆様がいらっしゃらなければ、迷宮のことも魔人のことも解決できないまま、もしかすればもっと大きな事件につながっていたかもしれません」
「それは…」
それはまぁ、そうかもしれない。
ぼくらがリーザナに来た時、ひいき目に見てもあの迷宮を攻略できるようなパーティーは見当たらなかったし、それだけじゃなくてあの魔人化した男を止められるような冒険者もいなかっただろう。
最終的には、ギルドナイトとかほかの街の優秀な冒険者が鎮圧することになってはいたんだろうけど、
じゃあその間に被害が出ないかって言ったらそんなことはないだろうし。
「仮に皆様がご自身のためにやったことであっても、我々は皆様の行動に助けられたのは事実です。なので、ぜひともこの感謝は受け取っていただきたく」
「…わかりました。でもこれで最後ですよ!」
「えぇ。本当にありがとうございました」
「…どういたしまして」
少し照れ臭くなって顔をそらしてしまう。
そらした先で、やけにニヤニヤしてこちらを見ているエリーと目が合ってしまった。
逆側から肘で僕の脇をつついてくるシャルもいるし。その向こうではディーもニコニコでこっちを見てるんだろうな。もはや見なくてもわかるよ。
「話は変わるのですが、少しお耳に入れておきたいことが…」
「なんでしょう?」
少し表情を変えたサラさんが、僕に近づいてくる。
真面目な話っぽいし、ディーにも聞いておいてもらおう。馬車で荷物の最終点検をしていたディーに声をかける。
「実は、ナールビエでの迷宮飽和を解決したパーティーである皆様のことが、王都のギルドを通して、のっぴきならない身分の方に伝わっているようなのです」
のっぴきならない身分ってそれ、まさか…
「それってまさか…」
ディーも全く同じリアクションをしている。
貴族
この王国において、迷宮が多く存在するこの地を、冒険者が現れる前から治めていたとされる血族たち。
国王を頂点とし、その血筋によって脈々と受け継がれてきた家系を守り、そしてこの国を守ってきた者たち。
しかし、この世界において、特別な才能を得た冒険者は、それだけで帰属に匹敵する立場を手に入れることができる。冒険者、特に金剛石級を超えると、もはや貴族たちと同等の発言権を得ることができる。
そんな冒険者のトップであるギルド長がのっぴきならない身分と評する存在なんて、そう多くないわけである。
「第3王女殿下、キシュトルテ・フォン・カーマイン様。かの御仁が、皆様にご興味を抱かれている、とのことです」
「それはまた…」
「といっても、我々のもとにも、どういった経緯でご興味を持たれ、また皆様に何をお求めになるのか、私にも測りかねる部分がございます。王女殿下は聡明であらせられることで有名な御方ですので、悪いことにはならない…と思うのですが…」
「これは、王都についたらまた一波乱起こることを覚悟しておかなければいけませんね…」
「あとでエリーとシャルにも伝えておこう…」
僕らはなにかしらトラブルがないと生きていけないらしい。いや求めてないんですけどね。本当にやめてください。
「では、そろそろ行きましょうか」
「ん、そうだね」
もうこんな時間か。
今日は夕方までに中継地点である村にたどり着く計画なので、そろそろ出発しなければ。
やっぱりこういう別れの瞬間は何度経験しても慣れないな。
ディーの声かけがなければいつまでも話し込んでいたかも。
「マリーもルーも気力万端だ」
エリーもシャルも、ディーも、準備は万端って顔だ。
「よし、じゃあ出発だ!今度こそ王都へ!」
約一か月滞在したことで、少なくない愛着の湧いてきた街リーザナ。
お世話になったギルドにも別れを告げ、いざ最終目的地、王都への旅路がスタートするのであった。
これは余談であるが、城門を出てすぐ王女様の話を二人に伝えたところ、
エリーはまるでメデューサに睨まれたように固まり、シャルは「急におなか痛くなってきたから私リーザナに残るわ」なんて言い出した。
今はディーの膝の上しっかり拘束されているよ。
2~3話道中のお話を閑話で差し込んだのち、王都編突入する予定です。
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