第13話 執念の激突
金属同士がぶつかり合う音が響き渡る迷宮最下層、ボス部屋。
「技能 突撃盾!」
「シッ…!」
エリーが相手を行動阻害させたところにすかさず切り込む。
刀の刃は【エンシェントゴーレム】の右腕関節部分にクリーンヒット、ひと際大きな破裂音が響いたと思えば、ゴーレムは再び大きく距離をとるために飛びずさった。
「むっ、ヒビがはいったな」
「これだけ殴ってやっとかぁ…やっぱりめっちゃ固いな」
かれこれすでに10分は殴り続けてるけれど、ようやっとヒビが入るだけとは、あの関節部分の球体だけでゴーレム何体分の耐久力あるんだよ全く。
でもこういうのは、傷が入ってからは早いって相場が決まっている。
「もう一度いくぞ」
「オッケー」
そういうと、エリーは再びゴーレムのもとに向かって走りこんでいく。
「技能 重装盾術!」
エリーの盾が美しい銀色に輝く。
その輝きに魅入られたかのように、ゴーレムもエリーに向かって突進を開始。
だけどそれは悪手だと思うなぁ。
エリーの重装盾術は、なんてったって魔人もどきの謎ビームを防ぎきるようなとんでも技能である。
そんなのに攻撃を加えたって、ねぇ?
案の定、その鋭い腕でなぐりつけたものの、逆に大きく跳ね返されて体勢を崩す結果となった。
「___ 最刃流 三日月 下弦 ___」
そうして上に跳ね返された右脇の下から、刀を振り上げる。
あ、入った。
これまでの斬撃とは違って、良いのが入った手ごたえが、刀を通して腕に伝わってきた。
その感触のまま、刀を振り切る。
バキィッ!!
ついに右腕の球体が砕けた。苦節10分少々。…そんなに苦労してないか。いやでも結構こいつ硬かったし。結構殴ったし。苦労させられたといっても過言ではないはず。
それはさておき、関節部分が破壊されたことによって、右腕の肘から先が地面に落ちる。
それと同時に、なにかガラスが割れるような、パリンという甲高い音が音が響く。
「エリー!」
「わかっている!技能 突撃盾!」
おそらくこの音は、奴の防御ギミックを突破した合図だと思われる。
ならば、今が奴を倒す絶好のチャンスなはずである。
それがわかっていたエリーは、ゴーレムに即座に行動阻害をかける。
「待たせた!シャル!!」
「全くよ、待ちすぎてもうちょっとで寝るところだったわ!」
では、うちのリーサルウェポンに登場願いましょうか。
「ほんとにもう…こんだけの魔術を待機させておくのだって楽じゃないのよ…?」
「いやほんとうにごめん。思ったよりあいつがタフで…」
「まぁいいわ。このストレスはあいつにぶつけさせてもらう…いくわ、【日輪冠】!!」
巨大な太陽が、現れた。
以前に多様な魔術を見たことがある。確か【灼熱】…だったか。
系統はたぶんあれと同じ、だけど規模が全く異なる。
「前は遠慮してたからね。今回は正真正銘、マジも大マジの本気の一撃よ。食らいなさい!」
まさに災害。いや、それすらも生ぬるい強大な爆発。
星一つが消滅したかのように錯覚させるような超新星爆発。
ちょっと足の力を抜くと、僕も吹き飛ばされそうだ。
とんでもない爆風のなか、僕とエリーは吹き飛ばされないように注意しながら、魔術を放ったシャルのもとに合流する。
「これはまたとんでもない…」
「大丈夫?ポーション飲む?」
「いただくわ…今のでなんの誇張もなくすっからかんになっちゃった…」
シャルは、もう足に力が入らないのか、地面にペタンと座り込んでいる。
加えて、魔力枯渇によるものか、唇も真っ青だ。
彼女に魔力ポーションを渡すと、シャルはそれを一気に飲み干す。
だがいくら魔力ポーションを飲んだとしても、もうしばらくは魔法を撃つどころか、動くこともままならないだろうな。
まぁ、あの魔法を食らってまともに生きてるわけがない。
そもそも炭すら残らず消滅している可能性だって…
「…っ!リュウ!」
「…は?」
爆炎が晴れた。その先にいたのは、いまだにフィールドに立つ【エンシェントゴーレム】。
無事…ではない。さっき落とした右腕は再生していないし、左足も焼失している。
全身の装甲は無残にも剥がれ落ち、内部にある魔術回路らしきものがむきだしになっている。
背中にあった羽はもう2本しか残っていない。
そして、頭部。
顔面の半分が剥がれ落ちて、内部にあったコアが露出しており、そのコアにも痛々しくひびが入っている。
それだけボロボロになっている。
にもかかわらず、立っている。その足で、しっかりと。
「あれを食らってまだ立っていられるのか…」
「どんだけタフなんだよ…いやあれほんとにBランクの怪物…?」
「…もしかすると、魔人の影響…かもしれんな」
…なるほど。ナールビエでの出来事は僕らの記憶にも新しい。
あのいけ好かない魔人野郎が最後に召喚したとんでもない化け物。
同じことがこの迷宮でも起こっているとすれば、アイツが妙に硬かったりタフだったりしたのにも納得がいく。
「つまりアイツは、見た目はB級のゴーレム君だけど、中身はもうちょっと強い奴を魔人が召喚していた…ってこと?」
「あくまで推測だ。たまたま強い個体を我々が引いたという可能性もある。あいつの強さ自体は、想定していたものとそう差はなかったからな」
「ちょ…っと待ってて…ウプッ…すぐまりょっオエッ回復すりゅ…」
「いや無理しなさんな」
シャルはあいつが健在なのをみて、手持ちの魔力ポーション全部一気飲みしたらしい。
僕が渡した一本に、自前で持っていたはずの4本全部飲み干したとしたら、もう胃の中ポーションでパンパンでしょうよ。今にも吐きそうな顔して…って顔リスみたいになってるじゃないか。
ボス戦で吐くんじゃないぞ。
見た感じ、いくらタフだっていっても、さすがにもうギリギリだと思う。
あと一撃、強烈なやつお見舞いできれば、たぶん倒せる。状況はこちらのガン有利。そのはずだが、
問題は、その一撃をどうやって入れるか。
シャルの魔法はもう撃てない。エリーは当然攻撃手段がないから、必然的に僕がどうにかしないといけないわけだが、魔力を引き出して攻撃できるのは後一発が限度。まさしくラストアタックだ。
流石に放出した魔力を長い間とどめ続けるなんて高等技術はないし、一度避けられたらもうこちらに相手に有効打を与える手段がなくなって、一気に状況がひっくり返る。
「リュウ、ひとついいか」
「うん?」
「何秒あればいける?」
「…5…いや3秒あれば」
「わかった。いつでもいけるように、準備を頼む」
そういうと、エリーは立ちふさがる敵に向けてゆっくりと歩みを進めていく。
エリーのことは信頼している。だから、僕も言葉は必要ない。
ただ淡々と刀を構える。右わきに刀を控え、柄を両手で握る。
現状僕が使える技で、最大の火力を出せるものを。
「新技お披露目といこうか」
盾を前面に構えたエリーは、軸足である右足を大きく下げる。
まるで一流のスプリンターのような姿勢だ。
すると、構える盾がまるで血潮のように真っ赤に光り輝く。
「いくぞ… 技能龍ノ角!」
瞬間、大きな衝撃とともにエリーが跳んだ。
あまりの衝撃に、出発地点には大きなへこみができている。事前にわかっていなければ、目で追うのがやっとだっただろう。
【エンシェントゴーレム】も同様だった。ただでさえ体がきしんでいるところに、一瞬のうちに距離を詰められた奴は、反応こそ見せるものの満足に対応できず、エリーの突進に押さえつけられる。そのままの勢いで壁にたたきつけられたゴーレムは、壁と盾に挟まれて身動きが取れなくなっているようだった。
いやあれ、ゴーレムだから耐えてるけど、普通の怪物ならあれだけでひき肉になってるんじゃ…?
まさかこんなとんでもない技を隠し持ってるなんて、聞いてないよエリー。
いやはや、こんなの見せられて、こっちも興奮しないわけがないよね。
エリーが有言実行したんだ。
なら僕もそれに、精一杯の力で答えないと失礼ってもんでしょう。
魔力を最大まで込める。右腕だけではなく、全身に。
骨と筋肉がきしむ音がする。あぁ、この戦いが終わったらまた病院のお世話になる羽目になりそうだ。
エリーに押さえつけられているゴーレムが暴れているのが、エリーの背中越しに確認できる。
そのたびに、奴の装甲らしき白い破片が足もとに散らばり落ちてる。間違いなくアイツも限界だ。
狙いは頭、アイツの核を一撃で砕く。
もう何も考える必要はない。
シャルが、エリーがこの盤面を作りあげてくれた。
美味しいところは、いただいていくとしようか。
___最刃流 天光絶息 ___
星々をも切り裂く一撃が、核をえぐり取った。
【日輪冠】の詠唱
→【灼熱】の術式+合成+【灼熱】の術式<闇に包まれし世界を照らせ 破壊と創造をつかさどる天空の綺羅星よ、今ここに顕現せよ>
こんな感じです。いずれこの世界の魔術の詠唱に関する細かい設定もお話しできたらいいなと思います。
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