第11話 本格的な攻略
さて、最後に少し騒ぎはあったものの、無事にギルドへ帰還した僕らは、
念のためディーに事情を話して、例の若者パーティーについて少し調べてもらった。
本来は他の冒険者の情報をみだらに開示することは当然できないわけだが、今回はうちのメンバーであるエリーが引き抜きにあうという実害が出ているということで、パーティーの名前とメンバーだけ教えてもらうことができた。
くだんのパーティーは【勇者の歩み】というらしい。
いかに彼らが冒険者にあこがれをもってこの世界に飛び込んできたのか、よくわかるネーミングである。
メンバーは三人で、たまたま地元で仲の良かった二人組に加えて、魔法職を発現した友人を加えた幼馴染によるパーティーだそうだ。
まぁ、それはわかったからなんだという話ではあるのだが。
他のパーティーに所属しているメンバーの引き抜きは違法というわけではないが、褒められた行為ではない。しかも、先日の一件もあってギルド側も結構ピリピリしてるからね。ギルドとしても、このパーティーに不穏な動きがないかは注視してくれるらしい。この件はこんなところでいいか。
で、肝心の迷宮攻略についてだが。
「一層を見て回った感じ、やはり出現する怪物以外は特に変化はなさそうだな」
「うん。じゃあ事前の計画通り、明日からは攻略ペースをはやめていこうか」
「そうね。これ以上のんびりしてると、王都に行くのにも支障が出そうだし」
すでに僕らがリーザナに来てから半月が経過している。
まだ九月末とはいえ、これ以上長引くと、雪が降りしきる中での旅になる。中央部に近い位置にあるリーザナとは言え、やはり冬の寒さは厳しいものだ。さすがにそんな中馬車で移動というのはなかなかね。
「調査に必要な情報はもちろんなるべくとっていくけど、ここからはスピード重視で進んでいこう」
「了解だ」
「腕が鳴るわね」
というわけで、僕らは迷宮下層、第22階層へと突入した。
「___ 最刃流 抜刀術 紫電一閃 ___」
「技能 突撃盾!」
「【火炎弾】!」
といっても、出てくる怪物は21階層を変わり映えがしないうえに、これまでの迷宮の地図がそのまま使えるため、そこまで苦戦することなく順調に進行することができている。
出てくる怪物は【プラチナゴーレム】を中心に、パワーが特徴の【コバルトゴーレム】や逆に速度が一段速く、体が小さくて厄介な【プチゴーレム】など多種にわたった。
中層から下層への変化ならば、妥当なものだといえるだろう、とはエリーの弁である。
「順調ね」
「あぁ。このペースで行けば今日中に25階層の転移門までは問題なくたどり着けそうだな」
迷宮では、基本的に怪物が湧かない場所は、5階層ごととボス部屋の前にある安全地帯のみであるが、例外として階層間の階段が挙げられる。
まぁ、横幅は人が3人きれいに並べられるぐらいの幅しかなく、段の高さもそこそこあるので、満足に休息できるような場所ではないんだけど、こうして体力を回復させるためのスペースとしては十分である。
もっとも、王都の迷宮になると、通る冒険者の数も多くなってくると、当然通行の邪魔になってしまうのでこんな芸当はできない。あくまでここがまだ人がいない下層であるからこそできる裏技みたいなものだ。
「今日は25階層までいったら戻るんだよね」
「そうだな。正直、内部の構造が変わっていないから、転移門のある階層以外で探索を追えるメリットがほとんどない。よっぽどのことがない限りは、次の探索で最下層まで向かって、最後にボスを倒す…という流れになるだろう」
「まだこの迷宮のボスがどんなやつかはわかってないのよね?」
「そうだな。ゴーレム種であるのは間違いないと思うが」
「行き当たりばったりのボス戦は何が起こるかわからないし、きっちり準備していこう」
そういう僕に、二人は神妙な面持ちでうなづいてくれる。
特にエリーは、ナールビエでのボス戦でメチャクチャしんどい思いをした経験があるから、その表情が真に迫っている気がする。
そうして、僕らはこの迷宮でのまだ見ぬボスに思いを馳せながら、25階層の転移門からギルドに帰還するのであった。
「くそっ…」
「おいお前どうしたんだよ」
「そうですよ…!この間から変ですよカイルさん…!」
俺は、同世代のパーティーの中でも優秀である自信があったし、実際発現した職業も強力なものばかりだった。これからは、リーザナの話題を俺たちが席巻すると思っていた。なのにだ。
なにやら同じ時期にパーティー登録したやつらが、D級迷宮を歴代最速でクリアしただの、夜中に街中で暴れた暴漢を倒しただの、この町の注目をすべてかっさらっていきやがった。
しかもそいつら、今度はギルドから直接C級迷宮の調査を引きうけたなんて話もある。
そんな話、俺には全くなかったってのに…
俺たちなら、いや俺ならもっとうまくやれるに違いない。
だから、俺たちが先にC級迷宮を攻略して、俺のほうが優秀な冒険者だってことを見せつけてやらなきゃならない。
そう思っていたら、C級迷宮の下層で、噂のパーティーと遭遇した。
俺の仲間はずいぶんと及び腰で、俺たちの覇道がここから始まるっていうのに先の攻略をしぶってやがった。そんな二人を説得していたところに、とても美しい容姿をもったエルフの女性に声をかけられたのだ。
運命だと思った。
こんなところに来るってことは、相当に優秀な冒険者なはずだ。
彼女が俺のパーティーに加わってくれれば、こんなC級どころじゃない。王都のもっと大きな迷宮だってクリアできるはずだ。
彼女だって、俺たちみたいな優秀なパーティーに加わることができれば、その名声をあげることができるわけだし、いわゆるWIN-WINの関係というやつだ。
なのに、ほかのパーティーにすでに入ってるから無理だと断られた。
そういう彼女の視線を追うと、赤髪の美女と、なにか冴えない黒髪の男が座って談笑している様子が見えた。
あんな地味な男がこのエルフの美女だけでなく、輝くような赤い髪の女性まで侍らせているというのか。
ふざけるな。俺のほうが顔も実力も上のはずだろう。
俺は彼女を説得するために、この後食事に誘おうと思ったのに、仲間の二人に邪魔されてそれは叶わなかった。どいつもこいつも俺の邪魔をしやがって…
俺はこんなところで立ち止まるような男じゃない。
今に見てろ…!
パーティー【英雄の歩み】のリーダー、カイル。
彼は、地元ではその職業による恩恵もあり、いわゆるリーダー的な存在であった。
両親はじめ周りの大人たちは、そんな彼に大きな期待を寄せていた。
そのため、地元では挫折という挫折を味わうことなく、ここリーザナにたどり着いたのである。
彼はまだ16歳、多感な年ごろであるところに、自分よりも良い環境で過ごしている同世代の男を見て、嫉妬心を抱くなというほうが無理であっただろう。
問題は、その嫉妬心が過剰に大きかったこと、そして、これまで一度も大きな失敗を犯してきていなかったことによる自己肯定感が異常なまでに膨れ上がっていたことである。
果たして彼のその果てしない尊大さが、はたして良い方向に向かうのか、はたまた闇に飲まれるのか。
それはまだ、だれにも、それこそカイル自身にもわからない。
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