第3話 いざ中層へ
少し長くなってしまいました。
「せいっ!」
「グギガグガ…」
現在僕たちは、迷宮第7層まで進んできていた。
クエストに必要な【プラチナゴーレム】もすでに数体倒しているし、このペースなら10層にたどり着くまでに必要数集まりそうだ。
「シャル、魔力はどうだ?」
「んっ、問題ないわね。ポーションの数も問題なく足りそうだし、このまま階層主まで一気に行っちゃいましょう」
エリーの問いかけに対して、シャルは魔力ポーションをあおりながら答える。
うん、昨日はあんなことがあったばかりだし、いつも通り動けるか心配だったんだけど、そちらの方も普段通り問題なさそうで良かった。
階層主とは。
二けたを超える階層を持つ迷宮には、10の階層ごとにボスモンスターが存在しており、そのボスを倒さなければ次の階層への階段が現れないという仕組みなのである。
これまで僕らは、最大でも10階層で終わりの迷宮しか経験していないし、これが初めての階層主への挑戦となる。
「10階層の階層主はもうわかってるんだっけ?」
「あぁ、たしかゴーレム種の中でもスピードに特化した、【ラピッドゴーレム】だそうだ」
「あぁアイツね。ギルドの資料で見たことあるわ」
「どんなやつなの?」
「文字通り高速で移動するゴーレムだな。大きさは私と同じぐらいだな。まぁ速いといってもゴーレムの範疇は超えないな。あとは、速度がある分物理耐性は比較的低めだから、もしかしたらリュウの攻撃も通るかもしれん」
なるほど、それならもしかしたらこのボスはシャルに頼りっきりになることはないようにできるかな。
にしても、もしシャルが加入してくれなかったらと思うと、感謝してもしきれないな。
「…なによわたしのことじっとみて」
「なんでもないなんでもない」
昨日、ギルドで絡まれた後、無事にエリー・ディーと合流した僕らは、宿に帰ってから緊急会議を開いたのであった。
「そんなことが…」
「最近は、特に物理攻撃を主にした職業が多いパーティーは、今の密林迷宮にはだいぶ苦戦しているようだ。そのおかげで、焦燥感に駆られているものも多いようだ」
「ギルド側も対処はしているようなんですが、いかんせん手が足りていないようで…」
まぁそうだろうなぁ。冒険者同士のいざこざの解決はもちろんだけど、そもそも迷宮が作りが変わってしまうなんて大事件に対応するなんて、とんでもない重労働だろうし。
「ギルドには明日改めて事情を説明するとして、僕らもある程度自衛したほうがいいよね?」
「そうだな。基本は我々四人でできる限り一緒に動こう。どうしても無理な場合でも、ディーとシャルは、外出する際は必ず私かリュウのどちらかがつくことにしよう」
「ごめんなさい…わたしのせいで…」
「そんなことはありませんよ!悪いのは自分勝手なそのウォーなんとかというパーティーです!」
エリーも僕も、ディーの一言に無限にうなずく。
そんな僕らの様子に、顔を赤く染めながら目をそらすシャル。
「…あ、ありがと」
うんうん。いい感じだ。
という形で落ち着いたのであった。
こういうことがそう何度もあるとは思わないけど、迷宮でだって不測の事態が起こるとも限らない。
迷宮のギミックのせいでパーティーが分断されることだって可能性はゼロじゃないしね。
今回みたいな迷宮の性質に対応できるようにするためにも、5人組は早めに集めたほうがいいかもしれないな。
それは置いておいて、今は迷宮攻略に集中だ。
「リュウ、いったぞ!」
「あいさ!」
エリーは僕の声をかける片手間、2体のゴーレムを抑え込んでいる。
いやほんとなんでそんなほっそい体であんなパワーが出るのか。
っと、そんな場合じゃないな。エリーの脇を抜けた3体目が、僕に向かって突進を仕掛けてくる。
当然だが、あんな巨体を正面からうけるほど筋肉ないからね。僕は僕のやり方でやらせてもらおう。
「____最刃流 陽炎___」
突如2つに分身した僕に対して、突進を仕掛けてきたゴーレムは目標を失ってブレーキをかけてしまう。
「隙ありっ!___最刃流 山茶花___!!」
山茶花は、高速の突きを連続で繰り出す技である。そもそも突き技自体が攻撃力に優れた技ではないのに加えて、相手は物理耐性の高いゴーレム。まぁ大したダメージは与えられないだろう。だが、うっとおしいでしょ?
で、僕とエリーが敵を引き付けることができれば
「範囲 炎 壁<仇なす仇敵を地獄の業火で灰燼に返せ>【火炎障壁】!!」
広範囲を巻き込む火炎の奔流、中級の火の魔術【火炎障壁】。僕らがまとめて足止めしていた3体のゴーレムをまとめて燃やし尽くす強力な魔法だ。
「わぁお」
「前々から思っていたが、シャルの魔術、あれ普通の魔法よりだいぶ威力高いのではないか?」
「もともと魔法って詠唱したほうが威力が高いのよ。あとは人よりちょ~っとだけ私が魔力操作が得意なのも理由かもしれないわね」
なるほどね、まぁ本当にそれだけじゃない気はするけど。それは大きな問題じゃないからいいか。
「魔力のほうは大丈夫?」
「そうね…まだポーションにも余裕があるし、このまま10階層の安全地帯まで行っちゃいましょう」
「わかった、ならば先行しよう」
「よ~し、とりあえずスパート頑張ろう!」
そこからは特に問題もなく、無事に第10階層、ボス部屋の前までたどり着くことができた。
安全地帯にはすでに何パーティーか休憩をしていたが、どうやらまだボスに挑んでいるところはいないようだ。
「このままボス部屋に入ってしまうか?」
「私は問題ないわよ。魔力もポーションで回復済み」
「ふむ…じゃあ今日はこのままボスまで倒して転移門を開放するところまでいこうか」
いざ、ボス戦である。
いざボス部屋に突入した僕らをまちかまえていたのは…
「これが【ラピッドゴーレム】か」
「ほんとちっちゃいのね。これならそこらへんの【アイアンゴーレム】のほうがデカいんじゃない?」
「ひとまずどのくらいの速度出すのか確認しよう。エリー、頼める?」
「任された」
エリーは言うが早いか、全力のダッシュでゴーレムとの距離を詰める。
「技能 挑発!」
技能『挑発』
相手のヘイトを無条件で一度だけ自分に向けることができる、タンク職のみが覚えることができる専門技能である。
技能の発動に対して、僕たちを明確に敵視した僕ら【ラピッドゴーレム】は、次の瞬間に驚くべき挙動をみせた。
「ムッ」
ゴーレムは、全くの予備挙動を見せることなく、ものすごい速さでエリーの背後に回り込んだのである。
速さ自体は、速いのは速いがまぁそこまで驚くことはない。が、
「予備動作がないのは厄介だな…!」
エリーはとっさに、構えていた盾を背中に背負う形で、ゴーレムの攻撃を防ぐ。
金属と金属がぶつかり合う音が部屋中に鳴り響く。
「こっちも見てほしい…なっ!」
僕は、エリーに向けて振りぬいた拳の接合部を狙う。刀を右わきから、下から上へ振り上げる。
「___最刃流 三日月 下弦___」
ガキィッン!
「切れはしないか…!」
上手く間接に入りきらなかったものの、その拳を打ち上げることはできた。ならば
「技能 突撃盾!」
「グギッ」
エリーの技能を受けて大きくのけぞったゴーレム。行動阻害状態だ。
「シッ…!」
振り上げた刀を、そのまま振り下ろす要領でゴーレムにたたきつける。
手ごたえは少ないが、確かにほかのゴーレム種と比べると間違いなくダメージは入りやすそうだ。
かといってこれを続けてたとしても、時間がいくらあっても足りないな。
「準備オッケーよ!どきなさい!」
まぁ、僕らはただの時間稼ぎなんだが。
「射撃 炎 錐体<内なる衝動に身を任せ、貫き滅ぼせ>【火炎槍】!」
以前もつかったことのある【火炎槍】。しかし今回は、【追加詠唱】を加えたものである。
追加詠唱とは、中級以上の魔法に特殊な言霊を付け加えることで、その威力を上昇させることができる裏技である。
当たり前であるが、そのぶん発動まで時間がかかるのであまり用いられない技術ではあるのだが、シャルはほぼすべての魔法の追加詠唱の文言を記憶しているらしい。すごい。
圧倒的な大きさの炎の槍が動きを止めた【ラピッドゴーレム】に直撃した。
「グギガガガゴガ」
「さすがに一撃では倒せないか…!」
「今ので結構魔力持っていかれたわ!回復まで10分ちょうだい!」
「オッケー!」
流石階層主。ここまでほとんどの怪物は、エリーと僕が引き付けて、シャルの魔法で瞬殺~みたいな流れが多かったが、シャルのほぼ全力の魔法でも倒しきれないとは、さすがにタフだ。
シャルの報告を聞いてすぐ僕とエリーは動き出す。
「こっちを向け!技能 挑発!」
「___最刃流 抜刀術 紫電一閃___!!」
エリーの挑発をうけて、僕から視線を外した瞬間、一気に踏み込んでその胴体に刀をたたきつける。
「やっぱり硬いな!」
なんとか振りぬけたけど、少し胴体に傷をつけただけにとどまった。
これ、続けてたら刀が刃こぼれしそうだ。帰ったら普段以上に手入れしないとまずいな。
「っと!まずっ」
ゴーレムは懐に入り込んだ僕を殴りつけようとこぶしを振り上げていた。
こちらは抜刀術で思いっきり踏み込んだあとで、身動きが取れない。いや、やろうと思えば動けるけど、足ぶっ壊れそう。
「技能防護術! 」
と、思っていたらまるで瞬間移動をしたかのようにエリーが僕の前に現れて、盾でゴーレムの拳を防いだ。ほんと頼りになるなうちのタンクは!
「___最刃流 抜刀術 刹那___」
再度ゴーレムの拳、その関節を狙って攻撃を加える。
おっ、結構いいのが入ったんじゃないか?
エリーがヘイトを買っている間に僕が少しずつ攻撃をあたえ、僕に敵視が来る瞬間にはエリーがヘイトを取り返す。もはや慣れ親しんだ連携である。
手ごたえ的に、もうそろそろだと思うんだけど…
「いまだ!」
エリーがヘイトをとってくれた瞬間、ここまで何度も攻撃を入れてきた部分、右手関節部分を目指して
「___最刃流 三日月 上弦___」
刀を振り下ろす。瞬間、
バキィッ!
「グアギギガガガガ」
狙い通り!関節部分が砕けたおかげで、右手が体から脱落する。
「待たせたわね!大技行くわよ!」
待ってました。シャルの声かけに合わせて、僕とエリーはゴーレムから大きく距離をとる。
「射撃 炎 三重 球体…」
詠唱は下級の火魔法…でも、この魔力量は…
「合成 <燃やせ、燃やせ。総てをもって、総てを灰に>【灼熱】!!」
強大な魔力によって顕現した、通常の3倍はあろうかという3つの火球が合わさり、
とんでもない大きさの炎、もはやこれは上級魔法の類では…?
「ググッ…?」
着弾と同時に大爆発。とんでもない破壊力。いやこれ迷宮持つ?
いや音もとんでもない。爆風で僕らも吹き飛ばされそうなんだけど?
おそらく、あのゴーレムは自身の消滅を認識することができなかったかもしれない。
それほどの大炎上をもって、10階層の階層主、【ラピッドゴーレム】は塵すら残らず焼失した。
「…これ、私たち必要だったか?」
「…僕たちはとんでもない魔法士を仲間に加えてしまったようです」
なにはともあれ、10階層突破、迷宮上層攻略完了だ。
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