第2話 絡まれるのは二度目です
ギリギリ滑り込めたってことで、ここはひとつ…だめですかそうですかごめんなさい…
迷宮から帰還した翌日。
僕らはクエストを受注するためにギルドを訪れていた。
クエストとは。
冒険者は基本、迷宮で得たドロップアイテムや、ごくまれに現れる宝箱などから得た報奨などをギルドに売却して生計を立てるわけだが、それ以外にも金銭を得る手段が用意されている。それがクエストである。
迷宮に発生する怪物の素材や、街の周辺に出現する魔物の素材を収集する依頼や、治安を維持するうえで脅威となる存在の討伐の依頼などを発注するのである。これがクエストだ。
クエストを通して売却されたアイテム類は、通常の売却額よりも高価に取引されるので、迷宮に潜るときは、迷宮に出現する怪物の討伐や素材収集のクエストを受けてから向かうのが常識なのである。
今回は、エリーとディーは、昨日の探索で消耗したポーション類を補充しに行ってもらっている。
その間に、明日以降の迷宮探索でついでにクリアできそうなクエストを見繕おうというわけで、
「へぇ、これがクエストってやつねぇ。あ、これなんかいいんじゃない?」
今日はシャルと二人でクエストが張り刺されているボードを眺めていた。
「なになに…?おっ、【プラチナゴーレム】のドロップ収集か。いいんじゃないか?」
【プラチナゴーレム】は、昨日も戦ったけど問題なく対処できそうだし、要求数もそこまで多くないから、荷物を圧迫することもなさそうだ。
「また明日もシャルに頼りっきりになっちゃうけど、よろしくね」
「こんなのたいしたことないわよ!私をへばらせたければゴーレムをあと100体は持って来いって話よ!」
そりゃ頼もしい。実際この迷宮に潜っている間は間違いなくシャルが頼りになるわけだし、無理をしないようによく見ておかないといけないかも。
「じゃあ僕はこのクエスト受けてくるよ。シャルは座って待ってて」
「なら私が…」
「いいっていいって。すぐ戻るから」
「むぅ…わかったわ」
さて、ちょうどニーコさんも手が空いてそうだし、今のうちにさっさとクエストを受注して、エリーたちと合流するとしよう。
「普通、こういう雑用は臨時要員にやらせるものじゃないのかしら…?」
まったく、このパーティに入ってから向こう、自分の常識が崩れていく音がする。ずっと。
なんならまだみんなと出会ってから3日しかたっていないにもかかわらず、もう長く一緒に活動しているように錯覚してしまう。ひとえに、メンバーがみんな人当たりがいいからかしらね。
(明日の攻略では、火の中級魔術連発して、度肝抜いてやろうかしら)
ずっと私ばっかり腰抜かされるのも癪だし、と考えに耽っていたところであった。
「やぁっと見つけたぜ。シャルティアさんよぉ」
「あなたたち…」
声をかけてきた男は、私がリュウたちと出会ったまさにその日、私をパーティーから解雇した張本人であった。
なにやら上から目線の腹立つ顔は変わんなけれど、着ている鎧の隙間から、以前はなかった傷や血のにじんだ包帯が見て取れた。たぶん迷宮攻略うまくいってないわね、これ。
「いまさら何の用?」
「はっはっは、驚け。お前をもう一度うちで雇ってやる」
「は?」
こいつ何様のつもりよ。冒険者間の暗黙の了解を知ってて言ってるのかしら?
「つまり、あんたは私を終身雇用する、っていってんの?」
「あ"ぁそうだ。うれしいだろ?てめぇみてぇな役立たずの魔法使いが俺たちみたいな将来有望なパーティーに名を連ねることができるってんだからなぁ!」
冒険者にとって、一度脱退したメンバーをもう一度加入させるということは大きな意味を持つ。
加入した側は当然、一度抜けたうえで再加入を認められたわけだから、もし二度目の解雇となれば当然冒険者としての信頼は地に落ちる。
一方パーティーの側も、二度も解雇するようなメンバーを加入させていたとなれば、その見る目をほかの冒険者から疑われることになるわけ。
まぁたぶん、こいつはそこまで考えてないのでしょうけど。
そもそもこいつらが将来有望ってなによ。んなわけないでしょ。
一度だけこいつらと迷宮に潜ったけど、全員銀級がいいとこだったじゃない。あんたらもうそこそこいい歳でしょ。その年齢で銀級で将来有望って、よくいえたわねほんとに。
私もあのときはそうとう焦ってたのね…こんなのと一瞬でも組もうとしたのがバカみたい。
「…ほかのメンバーはどうしたのよ」
「あ、あぁ、今は物資の補給にいってる」
嘘ね。さしずめ自分たちの力を過信して魔法職抜きで迷宮にいって、結果返り討ちにあってぼっこぼこに怪我して入院中とかでしょ。で、入院費やら治療費で首が回らなくなったうえに、魔法職の助っ人も見つからなくてどうしようかと頭を抱えていたところに私を見つけた、ってところかしら。
「しゃーねぇからよ、おめぇの言う通り魔法を撃つ時間ぐらいは待ってやってもいいし、ポーションも融通してやる。どうだ、かなりいい待遇だろ?」
「お断りよ」
「そうだろうそうだろう、ならさっそく加入申請を…ってなんつった?」
「だから、お断りって言ったの」
「はぁ?おめぇみてぇな役立たずを拾ってやるっつってんだぞ?どうせこんなところで油売ってるあたりほかのパーティーにも見放されてんだろ?今このチャンスを逃せばてめぇは…」
「シャル?どうした?」
はい、時間切れ。残念だったわね、私はもう居場所を見つけたのよ。
クエストの受注を無事完了させ、シャルのもとに向かうと、彼女がなにやら風貌の悪い体格の良い男に絡まれているのが見えた。というかあれ、シャルをクビにしたパーティーの男では?
「シャル?どうした?」
なにやら嫌な予感がしたのでさっさとシャルを連れて退散しよう。
こういう輩は相手にしないに限る。
「いえ、なんでもないわ。いきましょ」
どうやらシャルも同じ考えらしい。
シャルは立ち上がると、大男の前を興味なさげに通り過ぎようとする。
「おい待ちやがれ!話はまだ…!」
そういうと、男はシャルの肩を無造作につかもうとした。
おっと、それは良くないなぁ。
シャルに向かって伸ばした手首をつかむと、その力を利用して大きく振り回す。
そのまま時計回りに一回転させて生まれた遠心力を利用しながら、足を引っかけて倒す。
そのまま腕をひねりあげて拘束完了。
「いでででで!!おい!てめぇふざけんな!」
「いやそれはこっちのセリフでしょ。うちのパーティーメンバーになにしようとしてるの」
「はぁ!?パーティーメンバーだぁ!?」
にしても、いくら不意打ちだからってさすがに好きにされ過ぎでは…?
これだけ体格も良いのに、こんなにぶんぶん振り回されてちゃダメでしょ。
「そいつはうちのメンバーだぞ!勝手に獲ってんじゃねぇ!」
「はい?」
いやいや、君ちゃんとシャルのことパーティーから解雇してるよね?
え、ちゃんとうちへの加入手続きも問題なく進んだはずだし。手違いで実は二重に所属してましたとか、ないよね…?
「なにいってんのよ。あんたが直々に私の脱退手続きしてたじゃない。『こんな役立たずいなくなってせいせいするぜ!』なーんて大声で騒ぎながら」
「だ、そうだけど」
「う、うるせぇ!先に目をかけてやったのは俺らなんだから、その恩を返せって言ってんだ!」
う、う~ん。まぁなんとなく話は読めた。たぶんこいつらはシャルの魔法士としての能力を十分に発揮できる環境を準備できなかったんだ。そのうえで責任をシャルに擦り付けて首にした結果、冒険が上手くいかなくなって切羽詰まってしまった。で、こんなことをしでかしてしまったと。
「パーティー【岩石獣】リーダー、ガスマン氏、これ以上騒がれるのあればしかるべき対応をさせていただきますよ!」
やってきたのはさっきまで僕の対応をしてくれていたニーコさんだ。
その背後には男性職員も数名やってきている。ほほう、全員結構な手練れな雰囲気があるな。たたずまいが戦士のそれだ。
すでに相当な騒ぎになってしまっているし、野次馬も集まってきてる。
そりゃギルド職員の方も動きますよね。
「は!?おいこれみろよ被害者は俺だぞ!?とっつかまえんならこいつだろうが!」
「ギルド職員として、一部始終を確認させていただきました。非はガスマン氏にあると断言させていただきます。恐喝まがいの勧誘に、婦女子に対する暴行未遂です。そもそも、ここ数日のあなたの素行は、すでにギルドとしても看過できるものではありません」
「…チッ。おい離せよ!」
ギルド職員の声かけに気を取られて、一瞬力が緩んだすきに僕の手から逃れた大男、ガスマンはシャルとニーコさんをそれぞれひとにらみした後、
「てめぇ、覚えとけよ」
と、いかにも噛ませ犬なセリフを吐いてギルドから立ち去って行った。
最後にギルドの椅子を蹴っ飛ばしていくのも忘れないあたり、キャラがたってるなぁ。
「…ごめんなさい。わたしのせいで迷惑をかけてしまって…」
「いや、あれは事故みたいなものでしょ。シャルのせいじゃないよ」
でも、あぁ言う輩は後から何しでかすかわからないからな。
あとでエリーとディーにも相談しておこう。
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