第3話 修行
幼少(?)編完結!
「ペースが落ちとる!まだあと10週残っとるぞ!」
「ひゃいぃぃぃ!」
「なにぷるぷる小鹿みたいに震えとるんじゃ!まだまだ腹筋100回3セット!」
「ふべぇぇぇぇぇ!」
「腰が引けとる!腕が落ちとる!素振りもう100回!」
「にぎゃあああああ!」
師匠にほだされてからかれこれ3年、ジェル師匠のもとで修業を重ねて僕もそこそこ強くなったのではないかと思う。
今のステータスがこちら。
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name:リュウ・ライデル age:13 sex:男
job: ---
↑STR 340
↑VIT 430
↑AGI 525
↑INT 120
↑DEX 200
↑LUK 30
<技能>
・ ---
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師匠からは、
「すでに冒険者としては、ステータスだけ見れば一流の域に達しておろうな。」
というお墨付きをもらっている。まぁあくまでステータスだけ見ればだが。
当然技能を習得できない以上、多少ステータスが上回っているぐらいでは、技術の有無という大きな壁を超えることは難しいわけで。
「まだまだぁ!ほらほらそんなものか!」
「なにこのっ…!」
その差を埋めるために、こうやって厳しい修行に明け暮れているわけである。
いや、厳しすぎて最初はマジで死ぬかと思った。マジで。
「ふむ、今日はこのあたりにしておこうかの」
「あっ…ありがとっ…げほっ…ございました…」
毎日朝から晩まで修行に明け暮れている毎日、両親は最初こそ心配していたものの、なにやら師匠が
「大事なご子息をお預かりするのだから、ちゃんとご挨拶せねばな」といってうちに来てから、心配の声はピタッとやんだ。
なにやら
「リュウ!ちゃんとジェリオール様のいうことを聞くんだぞ!」
「失礼のないようにするのよリュウ!でもきつかったらすぐにいうのよ!」
と慌てていたのをよく覚えている。その時のことを師匠に話しても
「ただ年だけ食ったおいぼれじゃよ」
とひょうひょうとしていた。もともとつかみどころがない人だなとは思っていたが、なにやら謎の多いおじいちゃんだなほんとに。
「さてリュウ。ワシがお主に剣を教えるようになって3年たつわけだが、そろそろ良いじゃろう」
「ほえ?」
「おんしに剣術を教えようと思う」
「剣術?剣はいままで十分教えてもらってると思いますが…」
「それはただの基礎じゃよ。そもそもこれから教えることは体にかかる負担が相当大きいでな。ある程度ステータスで担保せねば、肉体に大きなダメージをおってしまうのじゃよ」
「け、剣術ってそんなにやばいものなんですか…?」
「もちろんただ剣を振るだけを剣術というのであればそうはならん。」
「じゃあなぜ…」
「おんしには、スキルを覚えてもらう」
「…へ?」
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繰り返しになるが、本来技能とは、職業と紐づいて覚えるものである。剣士は魔法スキルを覚えられないし、魔法使いは剣術を身に着けることはできない。まぁ見よう見まねで剣を振るぐらいはできるかもしれないけど…
「それじゃよそれ。リュウには今から、剣術スキルの模倣をやってもらう」
「スキルの…模倣…?」
どうやら考えていたことが口に出ていたらしい僕の言葉に続いて師匠が話を続ける。
「3年前、ワシが恩師と出会った時のことを覚えておるか?」
「それはもちろん」
「あの時ワシは、確かにお前の心持に感銘を受け、師を請け負ったのは事実。しかし、当然じゃがそれだけでここまで厳しい修行を付けてやるほどお人よしでもない。」
確かにここ3年、生きるか死ぬかわからないぐらい厳しい修行をつけてもらって、ステータスはすでに現役冒険者と比較しても上から数えたほうが早いぐらいには成長できた。
「つまり、これまでの修業はあくまで前提条件を成立させるためのもので、ここからが本番。。。ということですか?」
「察しが良くて助かるわい。あの時、おんしの剣、おんしの体は、職業によって発動する技能とほぼ同じ動きをしておった。ジョブは剣士か、はたまた騎士系もあるかと心躍っておったら、あとから職業を持っておらんと聞いて心底驚いたわい。」
確かに、3年前に師匠に出会ってすぐ自身の職業のことを明かしたときはとんでもない顔してたけど、そんな裏話があったのか。
「つまりこれからは、技能なしでスキルを使うことができるようにトレーニングをする…ということですか」
「ご明察じゃ」
職業を持たない僕が、技能を使うことができるようになる…?それは文字通り、間違いなく、夢だった冒険者稼業に大きく近づく一歩である。
「技能の模倣が本当にできるようになれば、さらにそれを応用させることでおんし独自の技をつくりあげることもできよう」
「僕だけの…技…」
そんなの、男として見過ごせるわけがない。
他の誰も使えない、僕だけの、僕のための技。そんなのロマンでしかないじゃないか。
「もちろん、そんじょそこらの訓練で身につくほど甘いものではない。ワシ自身、職業によらずに技能を使うなぞ聞いたことがないからな。むしろ血のにじむような努力をした結果何も得られない可能性のほうが大きいじゃろ。それでも」
「やります!やらせてください!」
「…ふむ、良い顔じゃ!よかろう!ここからはまた一段修行の強度をあげるぞ!期限は、冒険者登録が可能になる14歳までの一年間じゃ。この1年で技能を身に着けて見せるのじゃ!」
「はい!」
もとから職業が発言しなかった段階で希望なんて蜘蛛の糸より細いもの。少しでもその意図をつかめるチャンスが増えるのであればえらばない選択肢なんて、ないんだ。
ここまでをプロローグとさせていただきます!
次回から本編突入!頑張りますので応援よろしくお願いします!