第6話 メンバー探し
「迷宮の構造が…本当なのか…?」
「えぇ、実際にギルドが調査を進めた結果のようですから、間違いないと思います」
迷宮は本来、自然発生してからその形を変えることはめったにない、とギルドからもらった資料には書いてあったはずである。
ただ、僕らは一度、そんな迷宮を作り変えてしまうような存在に出会っている。
「まさか、魔人が?」
そう、魔人。僕らはあの事件で、迷宮の怪物を自在に操る化け物の存在を知っている。
確か名前は…『メフィスト』とか言ったか。あいつか、もしくはあいつと同じような存在が今回の件に関わっているのであれば、大問題である。
ナールビエでの事件も、もしあの場に僕とエリーがいなかったら、もしかするとナールビエの街一つが失われていたかもしれない大災害であった。それと同じことがもしここで起きれば、その被害の大きさは想像に難くない。
「そこはなんとも…迷宮が自発的にその形をかえることも、ないわけではないですから」
ディー曰く、
長い期間迷宮が攻略されていない状態が続くと、迷宮心臓に魔力が過剰に蓄積されてしまう。その魔力を使って、迷宮が自身の構造を変化させることがまれにあるらしい。
ここリーザナの迷宮も同様で、すでに前回攻略されてから3か月は経過しているらしく、迷宮の内部になにかしら変化が起こってもおかしくはないとのことである。
「といっても、いずれにせよ原因をはっきりさせるには…」
「迷宮に潜るしかないというわけか」
エリーの答えに、ディーが静かにうなずく。
「じゃあ、実際に僕らで攻略すればいいんじゃない?」
「そこが問題なのです」
「問題?」
慢心をしているわけではないが、僕らは二人でD級迷宮を攻略してきたばかりである。
客観的にみても、C級の迷宮だろうが問題なく攻略が可能な実力があるという自負がある。
「今回迷宮内で変化したのは、出現する怪物の種類で、これが厄介なのです」
「厄介…というと…」
「そのほとんどの怪物が、【対物理耐性】が非常に高いものに変化しているのです」
ご存じの通り、僕たち【導きの星】は、前衛のアタッカーである僕と、タンク役のエリーの2人組であるわけだが、その実、僕は職業がない関係で魔法系の技能を一つも使えないし、エリーも攻撃家の技能を一切持っていないという、割といびつなパーティーである。
三人でも、いずれ僕たちの弱点ともいえる部分をカバーできる新メンバーは募集しなければならないという話し合いは行っていたが、まぁ王都についてからゆっくり考えよう…なんて悠長に構えていたわけだ。
「魔法職の不在、か」
「はい…おそらくいくらお二人でも、今の密林迷宮では苦戦を免れないと思われます」
事前に調べたところ、王都のB級以上の迷宮には、いくつかそうした耐性に特化したものや、出現する怪物の特性が偏ったものが存在するらしく、いずれはメンバーの増員も考えなければと思っていたが、まさかこんなに早く必要になるとは…
「といっても、急に今日明日で魔法職の人をスカウトできるかといわれると…」
「難しいだろうな…」
「今は、事情も事情ですし、魔法職の方の需要が急増していますから、余計に…」
僕ら三人の中に沈黙が落ちる。
せっかく迷宮を一つ攻略して、良い滑り出しのところを、鼻っ柱をたたき折られた気分だ。
でも、これではいそうですかってあきらめるのもなにか癪だな…
そう考えていると、エリーがおもむろに口を開いた。
「せっかくここまで来たのだし、何もせずに王都に向かうというのもなにか味気ない。できるだけのことをやってみないか」
「というと?」
「とりあえず、明日ギルドで一時加入を募るんだ。そうだな…期限は三日ほどにして」
「その募集にどなたか応募していただいたら迷宮へ挑む、期間内にメンバーが集まらなければ王都に向かう…ということでしょうか」
「そうだ。それに、今回の件がもし魔人によるものだとすれば、放っておくこともできんしな」
確かに…今回の件、そもそもまだ迷宮の自然変化によるものだと決まったわけではない。
もし魔人が絡んでいたとして、それを素通りして王都に向かったら。
その後にリーザナで大きな事件や事故につながったとしたら。
僕らはたぶん後悔してもしきれないだろう。
「僕も賛成だ。もしだめならだめであきらめもつくし」
そういいながらヴィーのほうを見ると、彼女も笑顔でうなずいていた。
「では、明日は朝一でギルドへ向かおう」
そうして翌日、三度ギルドに訪れたぼくたちは、さっそく助っ人を募集するために受付へと向かおうとしたその時であった。
「ちょっと!クビってどういうことよ!?」
甲高いかなぎり声がギルド中に響き渡る。
「どうもこうもねぇよ。てめえ魔法職って言いながらまともに魔法撃てねぇじゃねぇか!」
「確かに詠唱には少し時間がかかるかもだけど、私が準備できる前にあんたらが仕掛けるから、詠唱する時間が…」
「後衛アタッカーは前衛の動きに合わせて攻撃するのが基本だろうが!」
「だから!あんたたちがちょっと待ってくれれば!」
「うるせぇ!とにかくてめぇはクビだ!ったく、見た目がいいからいいもんひろったとおもったのによ…!」
「ま、まちなさいよ!」
なにやら聞き耳を立てていると、事情がうっすらわかってきた。
たぶん、あのパーティーは、僕らと同様に魔法職のあの女の子を雇ったものの、なにかしらがあって解雇したわけだ。それで、あの女の子はそれに不満があって反論したものの取り付く島もなく…といったところか。
「最近あぁいったことが多いようです…加入する際に自身の能力を過剰に高く申請したり、逆に不正に解雇したり…」
「急に迷宮が変化したことによる弊害ってやつか」
「迷宮に新しい怪物が出現したりすると、素材なども新しいものが手に入るからな。欲深い冒険者たちは躍起になっているのだろう」
それはまた…たくましいというかなんというか…
だがこれは…チャンスかもしれない。
どうやらエリーとディーも同じ考えのようで、お互い顔を見合わせるとうなずきあう。
「君、ちょっといいかな」
さて、魔法職のスカウトといこう。
「…なによ」
「い、いや、何っていうか…」
僕らはギルドの一角にある机に4人で座っている。
肝心の、冒険者パーティーをクビになったばかりの女性、いや、女の子といったほうがいいな。
真っ赤な髪を二つに結んでいて、その瞳も髪色と同様真っ赤に染まっている。
「とりあえず、自己紹介をさせてほしい。僕らは…」
「【導きの星】…でしょ?昨日騒ぎになってたのみてたから知ってるわ」
「ならば話が早いな。君の名をきいてもいいか?」
「…シャルティア、シャルティア・ボアビスタよ」
シャルティアと名乗った少女は、終始不機嫌な表情を浮かべながら、こちらをひどく警戒しているようだ。こういう時の交渉は…
「改めまして、私はこのパーティーの専属受付をしておりますディルーネと申します。こちらの剣士がリーダーのリュウ、こちらのエルフがエリザヴェータといいます」
「…そんな専属持ちの有望パーティーが私に何の用なのよ」
「もうお察しかもしれませんが、我々はC級迷宮を攻略したいと考えているのですが、いかんせん魔法を使えるメンバーがおりません」
「それで、たったいまちょうどよくパーティークビになった私をスカウトしようってわけね」
「ありていに言ってしまえば、そうですね」
…なーんか雰囲気が不穏である。
向こうからしたら、パーティークビになった瞬間いきなり声かけられて警戒心MAXってところか。
「正式な加入、というわけではありません。一時的な臨時要員として、C級迷宮の攻略間だけ、お手伝いをしていただきたいのです」
「さっきの聞いてたならわかるでしょ。わたし、魔法士としては欠陥持ちなの。そんなのスカウトするより他当たったほうがいいんじゃないの」
欠陥、ね。
さっきの言い合いから察するに、たぶん魔法発動まで結構な時間がかかる…みたいな話なんでしょうね。
でもたぶん、うちならそのぐらいは欠陥足りえないと思うんだよね。
「じゃあ、さ」
「なによ」
「いっかい、うちの戦い見てみない?」
実感してもらうのが、早そうだ。
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