第5話 とんでもないルーキー
※第3者視点を含みます。
※迷宮についての設定を変更します。物語の大筋にはあまり関係ありませんが、設定変更に伴って、多少改稿する部分があると思われます。ご了承ください。
リーザナは、D級の迷宮が二つも存在しているため、初級冒険者が最初の冒険の地に選ぶ町としても非常に人気が高い。
今日もまた、一つの新人冒険者パーティーが、大きな夢を抱いてギルドの門をたたく。
「無事登録も完了したし、いよいよ迷宮に初挑戦だな!」
初めて自分の才能を見た時、人の反応は大きく二つに大別される。
絶望するか、歓喜するか。
彼は4年前、10歳になったときに才能の開示を受けた。そこに刻まれていた職業は【剣豪】。
剣士系のジョブでは、【騎士】に並ぶ上位職である。
彼は飛び上がって喜んだ。職業の良し悪しが人生におけるほとんどの要素を決めるこの世界において、
上位職を発現するということは、どのような道を選んだとしても、その成功が約束されるようなものだ。
実際、彼がギルドで冒険者登録を行った際、受付を担当した女性職員は、彼の職業を見て驚いた表情を見せた。
「んな慌てなくても迷宮は逃げねぇって」
二人目の男は、剣豪の男と同じ村の出身で、【槍士】の職業を発現していた。
村ではいわゆる幼馴染という関係で、戦闘系の職業が発現したこともあり、ともに冒険者として活動することを決めたのであった。
「そうだよ…もうちょっとゆっくりしたって…」
さらに続いたのは細身な男。真っ黒なローブに身を包んだ彼は、【魔法士】の職業を発現した魔法使いである。
三人のパーティーは、職業のバランスが非常によく、またリーダーが上位職であったこともあり、ギルドからは期待のルーキーとして見られていた。
彼らも、そういった視線や思惑を感じており、内心これからの冒険者人生にむけた興奮を抑えることができていなかった。
これからは自分たちの時代なのだと、
世界を導く一流冒険者になって、地位や名誉をほしいままにするのだと、信じて疑わなかった。
彼らはある意味で幸運であった。
このまま冒険を続けていれば、いずれどこかで足元をすくわれ、その命を散らしていたかもしれなかった。
驕りや油断は、たとえどのように強力な職業や技能を持ちえたとしても、いとも簡単に命を奪うものである。
だが彼らにとって、その瞬間それは間違いなく不運であったといえる。
自分たちがあたかも冒険者の中でも一握りの存在であるかのように錯覚してしまった彼らに冷や水を浴びせるような、そんな存在が同じとき同じタイミングで、ここリーザナに滞在していたことが。
「D、D級迷宮がルーキーに攻略されたぞ!」
「おかえりなさい!」
「ただいま戻った」
「ただいま」
無事に洞窟迷宮の攻略を終えた僕たちは、
ディーのもとに無事の帰還を知らせるため、ギルドにやってきていた。
「そのご様子だと…」
「無事、迷宮の攻略は完了した。その報告をしたいのだが…」
「おめでとうございます!ではこちらにいらしてください!」
ディー、なんかすでにもう何年もこのギルドの職員だったみたいな風格があるな。
僕らが無事に帰ってきたのもあるが、迷宮の攻略を成功させたことを自分のことのように喜んでくれているのがわかる。
いやだってスキップしてるし、2~3歩歩くたびに飛び跳ねてるし。
そうしてヴィーに案内してもらった受付には、昨日パーティー登録の受付をしてくれた女の子が座っていた。名前は確か、ニーコさん…だっただろうか。
「こんにちは!今日はどんな御用でしょうか!」
「あぁ、D級迷宮 洞窟迷宮を攻略したので、その報告を」
「…は?」
人間って、驚くと本当に目が飛び出そうになることあるんだなぁ。
その後といえば、それはもうギルドは大騒ぎになった。
なんせ、昨日パーティー登録したルーキー、しかも5人組ではない2人組が、攻略開始初日にD級とはいえ迷宮を攻略したというのだ。
迷宮心臓を破壊すると、そのなかに含まれていた魔力が、攻略した冒険者のギルドカードに吸収される。その魔力を分析することで、実際に攻略が行われたかをギルドが確認するわけである。つまり、不正は不可。
「か、確認できました!パーティー『導きの星』による迷宮攻略の達成を認めます!」
その瞬間、ギルドの中は喧噪と騒乱の渦に包まれた。
「おいまじかよ!」
「あいつら昨日町に来たっていう専属持ちだろ!?」
「デュオで攻略ってマジかよ…しかも最速…」
いやまさかここまで騒ぎになるとは…
最速攻略っていったってD級だぞ?そんな大騒ぎするほどのものでもないと思うんだが…
「私も少し認識を改める必要があるな…リュウと一緒にいすぎて少し常識というものを見失っていたようだ」
あの、エリーさん?
なんか僕をあたかも常識外れの存在みたいに言うのはやめていただいても?
閑話休題。
いろいろと騒ぎが大きくなってしまったギルドを這う這うの体で逃げ出して宿にたどり着いた僕ら。
特に、エリーとヴィーを引き抜こうとする輩が多いこと多いこと。
予想はしていたが、二人の美貌に加えて、
迷宮を最速攻略してしまうような実力を示したエリーはもちろん、
ヴィーは僕たちが迷宮にいる間、ギルドの仕事を手伝っていたときにその有能さをいかんなく発揮してしまったらしく、
2人をあわよくば自分たちのパーティーに加えようとする人間が殺到したのだ。
2人ともそのすべてを毅然と断ってくれたわけだが。
「迷宮よりも疲れた気がする…」
「同感だ…なんなのだあやつらは…」
「リーズナにいる冒険者の方々は、良くも悪くも上昇志向の高い方が多いので…」
つまり優秀な人材はたとえ無謀だとわかっていてもワンチャンスにかけてアタックする奴が多い、ということか。
「とにもかくにも、迷宮攻略達成、改めておめでとうございます!」
「ありがとうディー」
付き合いにしてまだ一か月強ほどだが、もうこの三人で一緒にいる状況がかなり自然になってきたなと思う。
「あまり手ごたえは感じられなかったが、そういえばD級とはそういうものであったと思いだしたよ」
「リュウは初めての、エリーは久しぶりの攻略でアレでしたからね」
そういってヴィーは苦笑する。
あの経験があったおかげで、今回も変に気負わず迷宮に挑めたというのも多少あるかもしれない。
「今回の攻略はあくまで肩慣らしのようなものだし、本命は次のC級迷宮だからな」
「あ、それなのですが」
さてここからC級迷宮の打ち合わせでもと考えていたし、エリーもそのつもりでC級の迷宮を話題にしたと思うのだが、ヴィーがそれを遮った。
「すこし、計画を変更しないといけないかもしれません」
「なんだ?もしかしてC級が攻略されてしまったか?」
迷宮は、一度攻略されてしまうと、一週間ほどボスに挑戦することができなくなる。
道中の怪物のドロップアイテムだけでももちろん成果として十分ではあるが、やはり迷宮最大の報酬はボスのドロップアイテムである。
行程には余裕があるとはいえ、C級迷宮に一週間も待って挑むほどの価値があるかといわれると、ラインとしては微妙な線だ。それなら早めに王都へ出発するのも手か。
「いえ、攻略はまだされていません。前回攻略されたのも3週間ほど前らしいので、ボスも問題なく出現するはずです…なんですが…」
「どうしたヴィー。歯切れが悪いぞ」
普段のヴィーは、必要なことや要望ははっきり口にすることが多い。
明瞭完結に物事を伝えるように、とギルドで指導を受けた名残かもしれんな、とはエリーの談だ。
「それが…C級迷宮 密林迷宮が、その構成を変化させた可能性があるとのことです」
これはまた、なにか面倒ごとのにおいがしてきたな。
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