第4話 いざ、二度目の迷宮へ
リーザナには三つの迷宮の迷宮が存在している。
うち二つがD級、残った一つがC級である。
ナールビエにある迷宮は一つしかなかったため、そのまま街の名前が迷宮に用いられていたわけだが、
当然一つの街に迷宮が複数ある場合、それぞれを区別するための名称が必要になるわけだ。
「で、ここがD級迷宮の一つ、【洞窟迷宮】か」
「はい!内部の構造が一般的な洞窟の様子をしているため、そう名付けられたと聞いています」
「洞窟…ということはナールビエの迷宮と同じだな」
ナールビエ迷宮も洞窟みたいな構造をしていたし、迷宮のスタンダードなのかも。
「まぁ、階層数はナールビエの倍の10ですし、同じ洞窟といっても内部の様子は全く異なるようですが」
そう。僕らはこれから、このリーザナにあるD級迷宮の一つ、洞窟迷宮の攻略をするため、迷宮の入り口に集合していた。集合、といっても僕たちは同じ宿の、しかも隣の部屋に泊まっている都合、宿からずっと一緒に行動しているわけだが。
「ディーは僕たちが迷宮に潜っている間どうしてるんだ?」
「リーザナのギルドにお邪魔している予定です。パーティーの専属として、いろいろと処理することがございますので!」
「む、そうか。ギルドに送らなくて大丈夫か?」
「大丈夫です!正式にパーティーになってから初めての迷宮攻略ですから、お見送りしたかったんです!」
健気だ…!健気の化身がいる…!
隣にいるエリーなんて、そのあまりの健気さに顔を抑えて震えているじゃないか。
「じゃあ、行こうかエリー」
「そ…そうだな。さっさと終わらせてさっさと帰ってくるとしよう」
いやさっさとって…いくらD級といっても迷宮攻略をそんな簡単に…
といっても、まぁ実際ぼくらならたぶん、この迷宮は1日で攻略できる、と思う。
実際に潜ったわけではないから断言できるわけではないけど、この迷宮から漏れ出てる魔力の波動からは、脅威を全く感じないんだ。
あの時魔力を使ってから、そういう感覚が鋭くなったのを実感してる。
エリーがそこまで感じ取っているかはわからないけど…
昨夜3人で、今回の迷宮攻略について打ち合わせた時、ある目標を立てた。
ただ迷宮を攻略するだけでは、さすがに味気ないってものだし。
なれば、
「ふふっ、本来であれば無茶をいうなと文句を言いたいところだがな」
「お二人なら、史上最速の初日攻略、絶対に成功できます!」
そう、現状において、迷宮に突入したその日に攻略を完了させたパーティーはギルド設立以降の歴史において存在しないらしい。
「吉報を期待していてくれ」
「はい!行ってらっしゃい!」
さて、迷宮最速攻略、やってやりますか。
「リュウ、いったぞ!」
「任せて!」
エリーは迷宮用に、見慣れた大盾に白銀の鎧をまとっている。
道中の小盾をつかった俊敏な動きもかっこよかったか、やはり見慣れたあの大盾をつかった堅牢なスタイルのほうがしっくりくるな。
エリーの脇を抜けてこちらにとびかかってきたスライムを切り裂く。
この迷宮に現れる怪物は3種類、うち2種類はナールビエでも出現したスライムとコボルト、そしてもう1種類というのが
「キシャー!」
蛇型怪物、【コブラ】である。
一般的な蛇と大きさはほぼ同じで、その牙からは噛んだ相手をマヒさせる毒が分泌されているらしい。
「フッ!」
が、その動きは非常に緩慢で、もはや技を使うまでもなく切り伏せる。
なんというか、これは…
「手ごたえがなさすぎる…」
迷宮に侵入してから約30分、すでに第2階層の深部へ到達、まもなく3階層へ降りる階段へたどり着くだろう。ここまで目立った苦戦をすることがないどころか、僕もエリーも技や技能を使うことすらなかった。
「まぁ…D級迷宮は本来はこのぐらいの難易度だろうな…我々の初体験があれでは、物足りないのも無理はないが…」
エリーも苦笑している。
ただこれだけのペースで怪物を倒せているおかげで、ドロップアイテムはかなり集まっている。
むしろ集まりすぎて、僕らの持っているポーチはすでに満杯に近い。
「ドロップ品ももう拾えないし、ここからはペースアップしていこうか」
「そうだな。疲労も全くないし、道中の怪物をある程度スルー出来れば、体感1.5倍ほどのペースで攻略を進められそうだ」
C級迷宮に挑むときは、ギルドにお願いして荷物持ちのサポーターを募集するのもありかもしれないな。
まぁ、先のことは後で考えるとして、今は攻略に集中しよう。
そこからというもの、ほぼノンストップで階層を進んでいったことで、4時間もしないうちに最下層である第10層へと到達することができた。
「こう…なんというか…あまりにあっさり進めすぎて、実感がないというかなんというか…」
「ははは…まぁ、そもそも目標は今日中の攻略だったのだし、こういうのはうれしい誤算だと思っておこう」
エリーの言う通り、確かに迷宮を最速で攻略するにあたって、敵が弱いのは良いところだ。なのだが、こうも簡単に進めてしまうと、肩透かし感が否めないな。
「ボス部屋も近いし、いったん安全地帯で休憩しておこう。こういうときに油断すると足元をすくわれるのが、迷宮の怖さだからな」
こういうあたりはさすがベテラン、といった感じだ。
たぶん僕が浮足立っているのを察してくれていたんだと思う。
「そういえば、リーザナにはもう一つD級迷宮があるんだよね?そっちは攻略する?」
「いや、もう一つの迷宮はここよりも階層数が少ないうえに難易度も一段下がるらしいから、スルーで問題ないだろうな」
「そうかぁ…じゃあ次はいよいよC級迷宮挑戦か」
「あぁ。まぁ明日は休養にあてて、特に問題がなければ明後日あたりから攻略開始できれば、といったところか」
ふむ、C級か。ヴィーの談によると、迷宮の難易度は、ランクが一つ違うだけでかなり変化するらしい。
これはちょっと期待してしまうな。
「まぁその前に、まずは目の前のボスをしっかり倒さなければな」
「おっしゃる通りで」
ひとまず、D級迷宮洞窟迷宮を攻略してしまおう。
「コイツがここのボスか」
洞窟迷宮のボス、【コブラ】を3周りほど大きくしたような巨大な蛇。
ディーの事前情報通り、だな。
「【ボアコブラ】。注意点は大きさにそぐわない速度と、牙から出る毒、だったな」
「毒は確か【コブラ】のもってる麻痺毒とはちがうんだよね?」
「あぁ、噛まれると腹痛や吐き気に襲われるらしい」
「あ、けっこう優しい」
「とも言えんぞ。戦闘中に腹痛にさいなまれれば当然集中力を隠し、シンプルに隙になるからな」
それもそうか。ま、食らうつもりはない。それに
「そもそも私がほとんど捌けると思うから、そのあたりの心配はせずとも問題ないだろう。では、いくぞ」
「よし!ラストバトルだ!」
「…まぁ、こうなるよね」
「…予想はしていたがな」
結論からいうと、圧勝であった。
巨大な体躯から生み出される圧倒的質量による突進、はエリーが簡単に押しとどめてしまう…というより弾き飛ばしてしまうし、
吹き飛ばされた【ボアコブラ】はあおむけで倒れた挙句、陸に打ち上げられた魚よろしく、しばらくビチビチ跳ね回るだけであった。おかげで何度も攻撃を加えることができた。
結果、エリーが吹き飛ばし、僕が切る無限ループで、あっという間に倒せてしまった…
しいて特筆すべき点を挙げるのであれば、ボスらしく少しタフだったぐらいか。
「ひとまず、迷宮心臓を止めようか」
「そうだね…」
こうして、少し、いやかなり消化不良感が否めないものの、
無事、D級迷宮最速攻略、完了だ。
☆☆☆皆様へ大事なお願い★★★
筆者のモチベーション維持のために、
少しでも面白い!先を読みたい!と思っていただけた方は、
画面下のポイント欄
ぜひ☆5の入力をお願いします!
そのほかにも、感想やレビュー、リアクションなどもお待ちしております!!




