第2話 道中の計画
町を出発してから約3時間。
僕たちは道の近くにあった大きな木の木陰で休憩をすることにした。
「よ~しよし、いい子だなぁお前ら。よ~し人参食って大きくなるんだぞ~」
…エリー、キャラ変わってない?
彼女がかいがいしく世話を焼いているのは、ギルド長が僕たちのために用意してくれた二匹の馬である。
たぶん本来の名前があるんだと思うが、エリーが勝手に
「よし!お前たちは今日からマリとルーだ!」
と名付けてしまった。本人(馬)たちも「ヒヒン」とまんざらでもない反応だったのでいいんだろう。
…いいのか?
「エリーさん、リュウさん!昼食ができましたよ~!」
「今行く!エリー」
「了解した!ではなお前ら、ゆっくり休めよ」
「取り合えず干し肉と野菜でスープを作ってみました~」
「保存食でこんなおいしそうな料理が作れるのか…」
「まるで錬金術だなこれは」
「もう!言いすぎですよ二人とも!」
干し肉とは思えない柔らかさに、保存用に乾燥させた野菜とは思えないみずみずしさ。
いやこれ本当に保存食ですか?一流のシェフが作ったコース料理とかじゃないですか?
まずい。このままでは僕たちヴィーに胃袋掴まれてしまうのでは?
…別に問題はないか。
隣に座るエリーも、一心不乱にスープをかきこんでいる。
もはや僕とヴィーの微笑ましい目線も意識の外のようだ。
これはあとで正気に戻った時に耳を真っ赤にして恥ずかしがるだろうな。
ヴィーの料理に舌鼓を打ちながらしばらく談笑に興ずること10分。
「では、そろそろこれからの行程について改めて確認しましょうか」
「うぅ…忘れてくれ…」
「エリー…」
と、いうわけで
先ほどの自身の姿を思い出してもだえ苦しんでいるエリーを完全にスルーしたヴィーは、
何事もないかのようにこれからのことについて話し始めた。
長い付き合いゆえにヴィーはエリーの扱いを完璧に理解しているな。
「今日のひとまずの目標は、ここから西に進んだところにあるシルヴの村です。もともとの計画では夜までに到着すればよいと思っていましたが、想定以上に順調に進めています。この調子なら日が沈む前には村に到着できそうです」
「馬がいいからな!」
エリーの馬びいきは置いておいて、
実際、マリとルーは相当にいい馬なようだ。
素人目に見ても結構なハイペースで進んできたと思うが、二頭とも疲れた様子を見せないどころかむしろどんどんテンションが上がっているような気がする。
「ヒヒーン!!」「ぶるるるるるる!」
なんか「体がなまってしょうがないわ!」「おい速く走らせろ!」なんて言っているような気が…
ちなみに、マリが雌、ルーが雄だ。
「シルヴの村には民宿があるそうなので、そちらで一泊する予定です」
「この辺りは治安もよいし、盗難の恐れも少ないだろうし、問題はないと思う」
「ギルド職員二人が言うなら、僕に否はないよ」
「私は元だがな」
2人はギルド職員として、この国の地位ごとの特色や地理情報、治安などまですべて勉強済みらしい。
…あれ?これ僕は役立たずになる可能性があるのでは…
いや、その分僕は護衛役として活躍すればいい。盗賊とかに襲われたときに頑張ればいいのだ。
治安が良いこの地域に盗賊がでるのかは…考えないようにしよう。
「シルヴの村を出てからは、2回ほど野宿を挟んだのちにハイファ村という村を経由します。そのあとは途中どこにも寄らずに、リーザナに向かいます」
「リーザナ?」
「この国の交通と商業の中心である都市だな。王都とほかの街のハブ的な役割を果たしている、そこそこ大きい規模の都市だな」
「なるほど。じゃあそこから王都に向かうわけか」
「その予定です。ただ…」
「ただ?」
「あぁいえ、悪いことではないんです。まだ旅は始まったばかりですし、仮定の話ですけど、このままのペースを維持できれば、当初の予定をかなり短縮できそうなんです」
「ほう?ということはつまり…」
エリーの言葉にヴィーが静かにうなずく。
なんかこれ前も見たような気がするな。ぼくだけ置いてけぼりになっていませんか?
これが長く付き合った友人同士の阿吽の呼吸というやつか…
「そうか、リュウは知らなかったな。リーザナには迷宮があるのだ。しかも三つ」
「三つも?それはまた。全部D級の迷宮なの?」
僕が経験したことがある迷宮は1つだけ。ナールビエのD級迷宮のみだ。あれをD級といってもよいかははなはだ疑問ではあるが。
階層自体は少なかったし、ほかの迷宮がどういう風になっているのかは興味があるな。
「いや、リーザナにある迷宮三つのうち二つはD級だ。が、うち一つは、C級だ」
「その通りです。もともと日程にはかなり余裕をもって計画を立てていますし、しばらくリーザナに滞在しても問題なさそうなら、リーザナのC級迷宮、攻略してみませんか?」
ガタガタガタガタ…
休憩を終えたあと、僕たちは最初の目的地、シルヴの村に向けて再出発した。
南の端にあるナールビエから王都に向かうには、道を北上する必要がある。
ナールビエの北には、シルヴの村に向かうまで、まったく代わり映えのない広大な草原地帯が広がっている。
よく言えば穏やか、悪く言えば
「…暇だな」
僕は今、馬車の荷台の屋根に上って周囲を警戒している。
屋根の上のほうが、360度全方位を確認出来て、偵察にはうってつけの場所だし。
周囲警戒は基本エリーと僕が交代で行うことになっている。
僕が警戒をしている間は、エリーは荷台の中で休憩しているはずだ。
ヴィーは御者として馬たちに張り付いているし、
結論から言って、メチャクチャ暇なのである。
それにしても、C級迷宮か。
迷宮飽和を起こしたナールビエの迷宮は例外的に難易度が跳ね上がっていただろうし、あそこまではないにしろ、初めて経験する難易度の迷宮になるわけだし、ちょっと楽しみだな。
それに、リーザナ自体も、僕自身が初めて経験する大都市である。
いろんなものの規模がナールビエとは全然違うのだろうな。それも楽しみだ。
…っと。そんな話していたら異常発見だ。
…暇だなぁ、なんて考えてたのがフラグになっていたりしない…よね…?
事前にヴィーから注意を受けていた。
『迷宮には怪物が出現しますが、迷宮外にはどんな脅威があると思いますか?』
『盗賊…とか…?』
『それもありますが、この辺りは治安は良いですからね。盗賊が出てくる可能性は低いと思います』
『じゃあ…』
『迷宮の外、特に人が活動しておらず、魔力があまり消化されない場所には、出るのです』
魔獣。たまった魔力を野生の獣が吸収したことによって狂暴化した存在である。
「ヴィー!馬車を止めてくれ!魔獣だ!」
「わかりました!エリーさん!」
「いつでも!」
ここまで手持無沙汰だったからな。
2人におんぶにだっこでずっと旅するのは、さすがに肩身が狭すぎる。
「そろそろ、活躍しておかないと、ねっ!」
馬車から飛び降りて魔獣の群れに突っ込む。
数は3、狼型の魔獣だ。
「シッ!」
まずは一匹、懐に飛び込んで首を落とす。
即座に対応した残りの二匹は、左右から同時に嚙みついてくる。
僕一度刀を収めてから、左の狼に正対する。
右から来る奴は
「はぁっ!」
エリーが小盾で狼の突進を防ぐ。
普段使っている盾ではないのに、何の違和感もなく使いこなすあたり、やっぱりすごいなエリーは。
「負けてられないな!」
___ 最刃流 抜刀術 刹那 ____
瞬きする間もなく抜き放たれた剣閃が、狼を切り裂く。二匹目。
「リュウ!」
「はぁぁぁぁぁ!」
エリーに攻撃をはじかれたことで大きくバランスを崩している狼に、頭上から刀を突きさす。三匹目だ。
短くうめいた狼は、わずかに身をよじったのちに絶命した。
ひとまず、これで護衛の面目は躍如…かな。
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