第1話 出立
第2章スタートです!
「よし、こんなもんか」
腰には刀をさげて、軽装の鎧を身に着ける。
背負っているリュックのなかには、必要最低限の保存食とわずかの私物だけ入っている。
荷物になる大きなものは昨日のうちに馬車に積み込んでしまったからな。
自分の部屋を出て階段を降りると、両親は待っていた。
「リュウ、いよいよ出発か」
「さみしくなるわねぇ…」
「父さん、母さん」
そう、今日は僕、リュウ・ランデルがいよいよ王都に向けて出発する日である。
ここ一週間で準備はあらかた終わっている。
もともと、ここ一か月でこなした依頼料などで、少しずつ旅支度を進めていたわけだが、
ギルドの好意で、大型の馬車を借りることができたのだ。
もともと徒歩で少しずつ向かうつもりで荷物を選別していたが、馬車での移動ができるようになったおかげで、いろいろと持ち込むことができたうえ、こうして当日も必要最低限の荷物で済んだし、とてもありがたい。
最初、職業がぼくのもとに存在していなかったとき、
僕の夢を否定せずに、ずっと支えてくれた。
そのおかげで今の僕がいるのは間違いないんだ。
「父さん、母さん。今まで本当にありがとう。ここまでやってこれたのは二人のおかげです」
そういって僕は二人にむけて頭を下げる。
「リュウ…」
「そういうの…泣いちゃうからやめて…」
「じゃあ、いってきます!」
「「いってらっしゃい」」
両親に見送られて、慣れ親しんだ実家を後にする。
見えなくなるまでお互いに手を振りあったあと、集合場所である冒険者ギルドに向かう。
途中、よく利用した商店の店主に声をかけたり、よくエリーと待ち合わせに使った噴水公園を眺めたり、
まぁ一生来なくなる…なんてことはないだろうけど、実際当分は見ることがなくなるだろう景色だ。
目に焼き付けておくことにしよう。
そんなこんなで歩いていると、冒険者ギルドの入り口が見えてきた。
その前には大きな馬車が一台と、
「む、来たかリュウ」
「エリー、おはよう」
金髪蒼眼の美女、エリザヴェータ。
本来使う大盾ではなく、今は小楯を背負っている。
鎧も僕と同じ軽装だ。長距離を移動するにあたって、大きくて重い装備はさすがに邪魔になるからな。
「コンディションはどう?」
「問題ない。絶好調だ」
馬車には、すでに昨日のうちに装備や王都でつかう日用品、貴重品の類が詰め込んである。
まったく、中古品とはいえ、馬車を貸してくれたギルドには足を向けて眠れないね。
「馬も温厚で頭がいいやつらを選んどいたからな!」
「ギルド長」
眼帯の大男、ギルド長のガルシャール。
今回、僕らの遠征に向けていろいろ手を貸してくれた張本人だ。
まぁギルドとしても、迷宮飽和に関連した諸々の事件の解決に多少は役に立ってと思うし、WIN-WINってことで
気にしないようにしよう。
「今回は本当に助かりました」
「いやいや、こっちとしてもお前らをこき使った自覚はあっからよ。お互い様だ」
そう言って笑うガルシャール。本当に気持ちの良い男だ。
と、三人で雑談に興じていると、
「おまたせしました!」
そう、今回の旅は僕とエリーの二人旅ではない。
何ともう一人同行者が増えたのである。
それが彼女、ナールビエ冒険者ギルドの受付嬢、
「ディルーネさん!」
「むぅ…」
「じゃないや、ディー、おはよう」
「はい、おはようございます!リュウさん!」
黒髪ポニーテールが印象的な女性、ディルーネだ。
この一か月、僕たちの依頼に関してのほとんどを対応してくれていた彼女だが、
ギルド長の
「お前、こいつらの専属になれよ」
という鶴の一声で、僕らのパーティーの専属受付になってくれることになったのである。
正直、ここ一か月彼女からのアプローチのすごさから、想定はしていたけれども。
しかも最近は愛称である『ディル』で呼ばないと反応してくれないし…
「ディー、君も準備はいいのか?」
「はい!お二人と違って武具の類はもっていきませんので、そんなに荷物もありませんし」
専属受付とは、一つのパーティーにつきっきりで対応をし、冒険者としての依頼や報酬の管理を一手に引き受けてくれるというものらしい。
専属受付がいるパーティーはそれだけギルドに期待されている有望株であるというアピールになるし、
専属となれる受付も、職員の中で一握りの能力のある人物のみであるらしく、どちらにも利がある制度らしい。
しかも
「今回の旅路では、すべて私にお任せください!」
ギルド職員は、エリーのような冒険者上がりの人間を除いて
長距離の移動に際する訓練を積んでいるらしい。
今回の旅において、馬の御者から野営の設営、はてはルートの策定まで彼女が担ってくれるのである。
いやほんとうにありがとうございます。
「ぶっちゃけお前らにはもう少しうちで活躍してほしかったんだがなぁ」
「これ以上出発が遅れると、冬に入ってしまうからな。そうなると年が明けるまで町をでれなくなってしまう」
「わーってるよ!ただの愚痴だよ」
今の季節は夏の終わり、もうすぐ秋に入ろうかという時期である。
冬に入れば、この辺境の地は雪に閉ざされてしまう。
そうなると馬車はもちろん、徒歩での移動も難しくなってしまう。
王都までは短く見積もっても半月はかかる。
道中にどのようなハプニングに見舞われるかわからない旅だ。
余裕をもつという意味でも、早めに出立しておくに越したことはない。
「そろそろ出発しようか。時間もいいところだ」
エリーに促されて空を見上げると、明け方に家を出てからそこそこ時間がたっているようだ。太陽が昇ってきている。
「そうですね…今日は夜までには滞在予定の村についておきたいですし」
「わかった。じゃあガルシャールさん」
「おう、王都でばっちり活躍してナールビエのギルドを目いっぱい宣伝してくれよ!」
この男は、最後まで変わんないんだから。
僕は苦笑いを隠せない。まぁ、こういう別れのほうが、湿っぽくなくていいか。
「では、出発します!」
ディーが鞭をしならせると、馬がいなないて進み始めた。
「いよいよ…だな」
「…うん」
馬車はゆったりとした歩みで町を練り歩いていく。
そうして見えてきた大きな城壁、警備をしている騎士にあいさつをすると、
いよいよ生まれ育ったナールビエの地を離れることになる。
「ついに…冒険の時間だ…!」
________________新章、開幕
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