閑話1 受付嬢の独白
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「いらっしゃいませ!冒険者ギルドへようこそ!」
私はここ、ナールビエの冒険者ギルドで受付嬢を勤めているディルーネと申します。
今日は私ことについて少しお話ししたいと思います。
ナールビエの冒険者ギルドは、慢性的な人手不足に悩まされています。
なので私は、受付としての仕事はもちろん、書類の整理や依頼の精査など、様々な業務を並行して行わなければいけないのです。
これ、結構な重労働で大変なのですが、やりがいはある仕事なので頑張れています!
「さて、次のお仕事はっと」
私の机の上には、やれどもやれども減る気配のない書類の山がいくつも並んでします。
訂正です。いくらやりがいがあったとしても、さすがにこの量は気が滅入ってしまいます…
まぁそんな小言を言ったところで仕事は減りませんし、頑張って書類を片付けるとしましょう。
果たして今日は日付が変わる前に帰れるでしょうか。
「おや、これは…」
山のような紙の束から一番上の書類をとると、それは新しいパーティーの申請書でした。
申請された方の名前は…おや?
「リュウさんとエリーさん、無事にパーティーを組むことができたのですね」
さかのぼること1週間ほど前、ギルドに訪れた礼儀正しい青年、リュウさん。
仕事柄、割と横柄で横暴な態度をとる方が多い冒険者の中では、彼の態度は異彩を放っていました。
ギルド職員として、彼の職業という最大のプライベートをさらしてしまったのは、私の最大の失敗でしたが…
そんな私に対しても怒ることなく、なんならそのあとにほかの冒険者に絡まれてしまったあとも、私をかばってくれました。とてもやさしい方なのです。
もう一人のエリーさん、エリザヴェータさんは、美しい金色の髪がトレードマークのエルフの美女さんです。以前は冒険者として活躍されていたのですが、技能に恵まれなかったせいでパーティーを抜けてしまわれたのです。
正直、普段の能力や立ち振る舞いを見ていると、技能など関係なくとても優秀な方だと思うのですか…
そんなこんなでギルド職員となったエリーさんは、この2年間をともに同僚として私と働いていたのですが、この度冒険者に復帰することが決まったのです!
とてもおめでたいお話なのですが、少し寂しくもあるのです。
冒険者になるということは、当然様々な迷宮に挑戦することになると思います。
この町には、D級の迷宮しかありません。
つまり、二人はいつかこの町を離れてしまう、ということです。
エリーさんは、このギルドで一番仲が良かったメンバーです。
たぶんエリーさんもそう思ってくれていると思います…思っていただけてますよね…?
うっ、ううん!
リュウさんとも、出会って日がたっているわけではありませんが、それでもその誠実な人柄は伝わってきます。是非とも仲良くなりたいと思っていたのですが…
お二人がいうには、まだ1か月ほどはナールビエで活動されるそうです。
その間に少しでも距離を縮めるのです!
「ディルーネ」
「あ、エリーさん!今お帰りですか?」
そういえば今日はおふたりで迷宮探索へ行かれていたのでした。
封鎖が解除されたナールビエ迷宮ですが、迷宮飽和の影響が迷宮にどのような変化をもたらしているか不明な点がありますので、お二人に定期的に迷宮の調査をお願いしているのです。
正直、迷宮内で不測の事態が起こった場合に対応ができるほど優秀な冒険者がほかにいらっしゃらないので、エリーさんとリュウさんには迷惑をおかけしてしまっています…
「リュウさんはどちらに?」
「あぁ、そろそろ物資が底をつきそうなんでな。補充しに買い物に行ってくれている。私はその間に依頼の報告にな」
「なるほど!では報告をお受けしますので、こちらへどうぞ!」
「我々のことは基本ディルーネが対応してくれているが、もはや専属だなこれは」
エリーさんはそういって苦笑しています。
専属…
冒険者ギルドと冒険者には、『専属受付』という制度があります。
冒険者がギルド間を移動する際、信用のおけるギルド職員を同行させ、依頼の受付や報酬の管理を任せることができるのです。
少し想像してみます。
お二人の専属になって、いろいろな旅をする私
お二人と次の行き先を話し合う私
いろんな町で、依頼から帰ってきたお二人に「おかえりなさい」っていう私…
おや?とても楽しいのではないでしょうか?
とはいったものの、ご覧いただいたとおり、このギルドには人手がありませんし、私が抜けるようなことがあれば、いよいよ業務が回らなくなってしまいます…
「どうした?ディルーネ」
「い、いえ!なんでもありませんよ!」
むぅ…なんか想像したら今の生活がとたんにむなしく感じてきました…
いえ!こんなことでは受付嬢としての名が廃ります!
切り替えてしっかりお仕事をしなければいけませんね!
「人員の増員…ですか?」
「おう。こないだの迷宮飽和の件で、上も流石に地方のギルドにも人手を割くべきだって気づいたらしい」
私はエリーさんと別れた後、ギルド長に呼び出されていました。
ギルド長からでた言葉は、我々の目下の課題であった人手不足に関するお話でした。
「とりあえず5人、来月着任できるらしい。それ以降も、新人含め例年の倍は人が増えるようになるぞ!」
「それは!つまり我々の残業が減る…と?!」
なんということでしょう。まさかの神から救いの手が差し伸べられたようです。
流石の神様も私の今の状況に憐れみを抱いてくださったのかもしれません。
「これは俺の独り言なんだが」
「…?なんでしょう?」
ひとりごとって、私にちゃんと聞こえる声量で話す独り言はもはや独り言ではないのでは?
「いやぁうちの将来有望株の冒険者が来月には王都に向けて出立するらしいんだが、どうにかして釣罰つけときたいんだよな。来月になれば、うちの人手不足も改善されるし、一人ぐらい専属で連れていかれても問題ないなぁ」
…!
これは、大チャンスです。
もしかしたら、本当にあの人たちと一緒に冒険することができるようになるかもしれません。
こんなことをしている場合ではありませんね。
少しでも彼らと仲良くなって、専属に選んでいただけるようにしなければ…!
「ギルド長、失礼します!」
「おう、引き続き頼んだ」
まずは、お二人に愛称で呼んでもらえるところからですね!!
「ったく、あの頑固エルフといい、うちの職員はなんでああかね」
ギルド長ガルシャール
辺境の地で隠居中とはいえ、その優秀さはギルドに関わるものなら知らない者はいない。
彼はギルド内である異名で呼ばれている。
『究極のお人よし』と。
「さて、来月以降の業務の振り分け考えねぇと…あぁ…こりゃまた1か月残業地獄だ…」
このギルドを見たものはみなこう話す。
この長あってこの職員あり、と。




