第14話 これから
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結果から言うと、僕の冒険者資格の登録は、無事に完了していたようだ。
僕が眠っている間にエリーがいろいろと手続きを済ませていてくれたらしい。
いや、本当に彼女には頭が上がりません。
ただ、エリーだけだと進めることができない手続きも結構あるらしく、今僕たちは冒険者ギルドを訪れている。
「あっ、リュウさん!エリーさん!」
「ヴェルーナさん、こんにちは」
今日も元気な様子で話しかけてくれるのは、初めてギルドにやってきた時から親身になってくれている受付嬢、ヴェルーナさんである。
長い黒髪をポニーテールにまとめた彼女は、けがをして寝込んでいる僕の世話をかいがいしく焼いてくれた。本当に毎日部屋にやってきて、食事から掃除までやってくれていた彼女とは
「ここまで看病してくれるのは本当にうれしいんだけど、無理はしないでくださいね…?」
「まったくこれっぽっちも無理しておりませんので大丈夫です!」
「…そ、そう?」
という会話があったとかなんとか。
「今日はギルド長との面談のご予定でしたね。ではご案内させていただきます!」
受付の横にある階段を上った先にある、ギルド長室。
この小さいギルドの中でもひときわ大きな扉。
「失礼します。リュウ様とエリザヴェータ様をお連れしました」
「入ってくれ」
その扉を開けると、その奥に座っている人物。
…いかにも現場からのたたき上げといった風貌だな。
年齢はかなり言っているようだが、顔に刻まれたしわがその圧倒的な経験値を後押ししているように感じる。左目には眼帯を巻いており、体躯もかなりたくましい。
できれば敵に回したくないタイプだな。
彼は席をおもむろに立つと、僕の前に立ち、口角をあげるとこう言った。
「よく来てくれた。ナールビエの英雄殿!」
「…はい?」
「がっはっはっはっ!君のおかげでこの町は救われた!ほんとうにありがとう!」
僕の肩をバシバシたたくこの人、ガルシャールは、現役時代は相当に鳴らしたベテランで、引退後は地元であったナールビエで隠居しているそうだ。
見た目の通り、かなり豪胆な人物であるらしい。
「いやっそのっエッリーのっおかっげも、あっ」
「そんな謙遜をするな!エリザヴェータからもことの詳細はきいている!今回の事件解決の立役者は君だと俺は確信しているのだ!」
そうなんですね。いやその前にちょっと待ってもらっていいですか。
あなた才能相当高いですねもしや。そんなあなたが力任せに叩かれると、こちらもかなり痛いししゃべりづらいのですが。
「あの、ギルド長。リュウがつらそうにしているのでそのあたりで…」
「お、すまんすまん。ついつい」
「ゲホッゲホッ、い、いえ」
「ふむ、では本題に入るとしようか。ではそこのソファーにでも座ってくれおふたりさん」
「「失礼します」」
「では、今回君たちに話したいことは二つだ。まず一つ目に、リュウ殿、君の冒険者ランクについてだ」
「ぼくの…ですか?」
基本的に冒険者ランクは、どのような人物であっても必ず鉄級からスタートになる。
僕も例にもれず、鉄級からスタートになると思っていたのだが…
「B級相当の迷宮の攻略に、迷宮飽和の解決…さすがにこれだけの功績をあげた冒険者を、鉄級のままにしておくというのは、外聞的にも効率的にもよくない状況であるわけだ」
「確かに、リュウの実力は白金級や金剛石に匹敵すると思われます、が…」
「そこでだ。リュウ殿には特例として金級からスタートとさせていただこうと思っている」
それはこちらとしても思ってもみない話だ。
高ランクの迷宮に入るためには、ある程度の冒険者ランクが必要になるらしいから、ランクは高ければ高いほどありがたい。
「それはこちらとしてもありがたいお話です。お受けいたします」
「うむ。して、それに付随して、君たちにはこれをわたしておこう」
そういうと、ガルシャールは机の上に一つのきんちゃく袋を置いた。
なにやらジャラジャラ音がして重そうな雰囲気なのだが。
「これは、ギルドからのささやかなお礼だと思ってくれ。迷宮飽和に対する恩賞としては少し少ないかも知らんがな!」
袋を手に取って中を覗いてみると、金貨が何十枚と入っている。
いやこれ1年は遊んで暮らせそうな額は入ってませんか?
「いやこれは多すぎでは…」
「おいおいお前は町一つ救ったも同然の働きをしたんだ!本当ならもっとねだったってバチはあたんねぇよ!」
ほんとこの人思いっきりがいいというか…
でもこういう性格の人、嫌いじゃないな。
こういうのはあんまり遠慮しすぎるのも失礼か。
「そういうことなら、ありがたく頂戴します」
「おう!ほんでだ、どちらかっつうとこっちの話が本題なんだが…エリザヴェータの冒険者復帰の話についてだ」
「やはり、彼女は手放せませんか…?」
それはそうだな、と思う。
一緒に冒険して分かったが、彼女は相当に優秀だ。
冒険者としての能力は言わずもがなだが、所々で見せた判断力や思考力を見るに、
ギルド員としても欠かせない存在だったのではなかろうか。
「ギルド長…私は…!」
「待て待て待てそういう話じゃない。こちらとしても、エリザヴェータの冒険者復帰は渡りに船な話なんだ」
あれ?想像していた反応と違うな?
てっきり「お前に娘(優秀な部下)はやらん!」みたいな話になると思っていたのだが。
「…へ?」
ほら、いつも毅然とした態度を崩さないエリーもポカンとしてるし。
「と、いうと?」
「今回の魔人の件をさしひいても、近年迷宮での異常が増加してきているのは、エリーは知っているな」
「えぇ、まぁ…」
え、そんなことが起こってたのか。
言われてみれば、今回の迷宮飽和に対するギルドも対応が思いのほか早かったのも、
すでにそういった事案が発生してたおかげ…いや、『せい』か。
「それに伴って、上級迷宮の探索可能な冒険者が不足していてなぁ。猫の手、いやエルフの手も借りたいってやつなんだよな!」
「つまり、ギルドとしても、元冒険者が現場に復帰するのに否はないと?」
「むしろ率先してお願いしたいぐらいだな!」
エリーの復帰は人手不足なギルドにとって、ある程度話が通せる、しかも腕利きが一人増えるっていうメリットがあるってことか。
「ギルド長、そう言っていただけるのはありがたいが、私を良いように扱おうとはしていないか?」
このままエリーが冒険者に戻ったとして、元ギルド職員という肩書は、これからの活動においてよい意味でも悪い意味でも大きいだろう。
ギルド職員だったエリーに対して、ほかギルドは下手な動きはできないから、例えば報酬を抜かれるとか、変な依頼を押し付けられるみたいなことは少なくなると思う。
一方で、目の前の男みたいな、上層部からのお願いは断りづらくなるだろうなぁ。
「そこが我々が話したかったところである。エリザヴェータが冒険者に復帰するにあたり、もし何かやってほしいことがあったら、しっかり契約書をかいたうえで、正式な指名依頼を発行したうえで協力をしてほしい。なんなら細かい条件をここで書面に著しても良い」
「それは…あまりに条件が良すぎるのでは…」
「それほどこちらは切羽詰まっていると受け取ってもらって構わんよ」
ちらっとエリーのほうを見ると目が合った。うなずいてくれているあたり、たぶん問題はなさそうだ。
彼女のほうがガルシャールの人柄をよく知っているだろうし。
「ひとまずエリーの復帰が認められるのなら、こちらにいうことはないです」
「よし、これで問題は一通り終わりだ!2人の冒険者登録は今日中に終わらせておくから。改めてよろしく頼む!」
「こちらこそ」
「ひとまずこれで我々が冒険者パーティーとして活動するめどが立ったな」
「いやよかったよほんとに。エリーは譲らん!とか言われたらどうしようかと」
「なんだそれは」
2人で談笑しながら階段を下りていくと、階下にディルーネさんが待っていた。
「お二人とも、お話は無事終わられましたか?」
「あぁ、つつがなく」
「では、エリーさん冒険者復帰も認められたのですね!よかったぁ…!」
迷宮から帰ってきたときに聞いたのだが、ディルーネさんは、エリーがギルド職員になってから2年間、一番仲が良かった職員らしい。
となると、エリーが冒険者をやめた経緯も当然知っているわけで。
それに対する思いもひとしおという奴だろう。
「でも、さみしくなっちゃいますね。エリーさんがギルド員じゃなくなっちゃうと…」
「しばらくはこの町で活動するつもりだし、顔を見せる頻度はあまり変わらないと思うぞ」
「そうなんですね!お二人なら、すぐにでも王都にある上級迷宮に挑むのかと…」
「それも考えたんですけど、まずは王都でしっかり生活できるように、冒険者活動に慣れていこうと思って」
「あ、そういえばそうですよね。なんかココ数日が濃すぎたせいでリュウさんのことベテランだと思っちゃいましたけど、実際まだ登録して数日しかたってないんですもんね」
それは僕も思っていた。本当にここ数日で得た経験値は、下手な冒険者の数年にも匹敵しそうな濃厚さだったな。
「というわけなんで、ディルーネさんもこれから改めてよろしくお願いしますね」
「はい!こちらこそよろしくお願いします!」
出鼻をくじかれた、というより出鼻からとんでもなく高い山を登った感は否めないが、
ここから本当の冒険者としての生活が始まるわけだ。
いや、とてもワクワクするな!
これにて1章終了!
次は閑話をいくつか入れます!




