第11話 窮地
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リュウとエリー、二人は知らないことであったが
怪物【オラクル】は、現在迷宮に出現するオーク類の原種だと考えられており、
【オラクル】が繁殖していく過程で、様々な種に細かく枝分かれしていったのではないか、という学説が一般的である。
そうした経緯もあり、【オラクル】はこの世に現存するオーク種の能力のほぼすべてを使うことができるといわれている。
その中でも最たる能力の一つが、身体強化能力の魔法である。
高い魔法力をもった【メイジオーク】が使う魔法で、本来であれば自分以外の怪物にバフを与える役割を果たすものであるのだが、源流たる【オラクル】は、その身体強化魔法を自身に付与することができる。
二人の連携は、確かに相当なレベルにあった。階層が少ないため参考記録ではあるが、わずか二人でB級にも到達せんとする難易度のダンジョンを最深部まで攻略するなど、まさしく偉業といって差し支えないものであった。
だが、【オラクル】という存在は、その能力が弱体化しているとはいっても、人知を超えた存在であることは間違いないのも事実であるのだ。
「エリー!来るぞ!」
「あぁ!」
この【オラクル】とかいう怪物、その力の強さはもとより、やはり特筆すべきはその耐久力である。
そもそもの体の大きさのせいで致命傷を与えづらいのに加えて、外皮も相当の硬さを誇っている。
おかげで、いくら切っても薄皮一枚切るのが精いっぱいだ。
が、かといって完全にノーダメージというわけでもなさそうだ。
【オラクル】の動きに注視しながら、横目にエリーの状態を確認する。
相当に敵の攻撃を受け止めているにもかかわらず、まだ余裕が見てとれる。
仮にこのまま持久戦になったとしても、分はこちらにあると見た。
「グルゥッ」
突然バランスを崩した【オラクル】。蓄積したダメージが足にキタのか?それともなにかにつまずいた?
一見すると大きな隙が見えただけだ。切り込むには絶好の好機のはずだ。
だが、なんだ?なにかとてつもない違和感がある。僕たちはなにか、この怪物に対して大きな思い違いをしているのではないか?
「チャンスだ!技能 突撃盾!!」
「エリー!ちょっとまっ」
僕の静止は届くことなく、エリーは片膝をついた【オラクル】に突進を仕掛ける。
もう一度行動阻害を発生させられれば、今度こそ大ダメージを与えて、あわよくば倒すところまで行けるかもしれない。のだが…
(なんだこのぬぐい切れない不安は…)
しかし、今はそんなことを考えている場合ではない。
エリーが行動阻害を成功させれば、僕もすぐに攻撃を加えられる位置にいなければ…
そうして【オラクル】を見据えた瞬間であった。
ヤツが、ヤツの口角が上がった気がしたのだ。
走る悪寒。強烈な危機感。
(まずい!)
なりふりは構っていられない。僕の持つ才能の持つすべてをもって走り出す。
【オラクル】が急に立ち上がるのが見えた。その速度はこれまでの比ではない。まさか…!
「身体強化!?そんなものを隠し持って…!ぐッ!!」
初撃は何とか防いだエリーであったが、これまでとは比較にならない速度で繰り出された一撃に大きく体制を崩されてしまった。二撃目は、防げない。
「しまっ…!」
間に合うか。いや、間に合わせる。
「__最刃流 雷 __!!!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
エリーと怪物の間に割って入る。そのままの勢いで奴の拳を少しでもそらす!
結果、確かに【オラクル】の攻撃をそらすことには成功した。
しかし、当然次の一撃に対しての防御態勢をとることはできない。
「リュッ…」
瞬間、全身が砕け散るような痛みが僕を襲った。
どうやら、【オラクル】の攻撃をまともに食らったらしい。
「がっ…!?」
「リュウぅぅぅぅぅぅぅ!?」
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私のせいだ…私の…!
あの瞬間、あいつが隙を見せた瞬間に、勝ちに焦った…!
持久戦に持ち込んでもこちらに勝算があったのにもかかわらず、目の前に転がり込んだチャンスに目がくらんだ…!
私をかばって攻撃を受けたリュウは、大きく吹き飛ばされて壁に打ち付けられて動く様子は見られない。
私はやはり、あのときから何も変わることができないのか…?
大切にしたいと、そう誓ったものを、守ることができないのか…?
「ぐぅっ…!」
リュウと二人でヘイトを分散できなくなったからか、【オラクル】の攻撃はさらに熾烈を極めていった。
防御だけはできる。でも、それだけだ。私にはそれしかできないから。
『君が僕の盾になってほしい』
…そうだな。
あのとき諦めた気持ちを思い出させてくれた、彼のために。
そもそもが生きて帰れるかどうかもわからない死地を、ここまで生きて進んでこれただけで僥倖だったのだ。
ならば、彼のためにその命を捨てたって、構わないだろう。
おかしなものだ。ついこの間まで生きているか死んでいるかわからないような状態で、惰性で過ごしていたのに。
たった数日過ごしただけの男のために生きて、この男のために死にたいと思うなどと。
以前呼んだ英雄譚にもこういう人物がいたな。たしかチョロイン…などといったか。
リュウのそばに走りこんで大盾を構える。
呼吸は…しているようだ。よかった。
おそらく、私一人では彼のことはもちろん、自分のことすら守ることも難しいだろう。
【オルクス】の猛攻を防ぎながら考える。
おそらくこの状態が続けば、十数分と持たないだろう。
「すまないディルーネ。どうやら我々は、そちらに帰還することはかなわないようだ」
だが、こういう最後も悪くないな。
仲間を守って死ぬ。一度は諦めた騎士として、その誉のなかで死ねるのだ。
そう、必死で自分に言い聞かせる。
でも、でも。
やっと出会えたと思った。
やっと一緒に戦える、心から信頼できる仲間と。
これから新しい人生が始まるんだと、年甲斐もなく興奮してしまったのがとても昔のように感じる。
「あぁ、そうだな」
すでに諦めてしまっていたもののはずなのに、
もう一度つかめることを知ってしまったから。
「死にたく…ないなぁ…」
その瞬間、私の背後から突如、とてもあたたかな光が広がった。
最刃流 雷 :本来軸足にためた力を開放して行う剣術の踏み込みを、両足を用いて行う技。敵との距離を詰める際にも用いられる。




