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第8話 最深部とエルフの秘密

2話目!ちょっと日付変わっちゃったけどご愛嬌ということで!


ちょっと長くなってしまったが、キリがいいところまでやりたかったので!

一章の節目です!

「なんとかここまで来れたか」


「えぇ…ほんとよくここまで二人で来れたと思います…」



___ ナールビエ迷宮 第5層



3層と4層も、2層と変わらずC級を超える難易度の怪物が多く出現していた。

しかし、僕とエリーさんも戦闘を重ねるごとに連携も上達し、後半はほとんど苦戦することなくこの最下層まで到着することができた。


…やっぱりエリーさん、専業のギルド職員って感じしないんだよな。

ほぼ初見といっていい迷宮でも落ち着いて対応できて、初めて組んだ僕相手でも平然と前衛をこなして…


シンプルに白金級とかそのあたりの冒険者といわれてもおかしくない気がする。


…まぁ、個人にはそれぞれ事情があるし、詮索はマナー違反か。

もし無事に帰ることができれば、それとなく聞いてみるのもいいかもしれない。


「いよいよボス部屋なわけだが、一般的な迷宮であればその前に怪物が発生しない安全地帯(セーフルーム)がある。もししっかり稼働していれば、そこで少しは体を休められるだろう」


「安全地帯が稼働していなければ?」


「少し体力的に心もとないが、そのままボスに挑む形がいいだろうな。下手に周辺の怪物とやりあって損耗を増やすのは得策ではない」


「わかりました」


もはやここまで異常事態が重なっていれば、安全地帯の1つや2つ動かなくたってもう驚かない。


「…リュウ、ひとついいか」


「なんでしょう?」


「その…だな…我々は出会ってまだ間もないとはいえ、相当な死線を潜り抜けてここまでやってきたわけだが」


「?…そうですね?」


「一般的なパーティーとは比較にならない絆をはぐくんでるといっても過言ではないはずだ」


「え、えぇ…まぁ…」


ないやら話が見えないのだが。というか普段は凛とした雰囲気を醸し出しているエリーさんが、耳とほほを真っ赤に染めているのはなぜだ。なにか知らないうちに彼女に失礼を働いてしまっていたのだろうか…?


「そのだな!君はいつまで私の名前をさん付けで呼ぶのだ!敬語もやめろ!」


「…へ?」


「我々はすでに戦友だ!ならば気心が知れた相手であるというわけでだな!にもかかわらず私だけ一方的に砕けて話すというのは…その…距離を感じてだな!」


何だこの人。この迷宮を通してずっとかっこいいところばかり見てきたからか。

すっごい可愛いんですけど!?

これが俗にいうギャップ萌えということでしょうか師匠。


「わ、わかりま…わかったよエリー。これからは僕も気兼ねなく話すようにする」


「う、うむ。それでよい」


ボス戦を前に、しっかり英気を養えた…気がする。






「どうやら安全地帯は無事に動作しているようだな」


「よかった。これで少しは休めるね」


「あぁ。量はそう多く持ってきてないが、いくつか携帯食料がある。少しでもエネルギーを回復させよう」


ボス部屋の前は、事前の情報通り怪物一匹存在しない安全な場所になっていた。

二人で携帯食料のエネルギーバーを口に含みながら、ひと時の安らぎを享受する。

僕自身自覚がなかっただけでかなり気を張っていたらしく、一気に疲労感が増したのを感じる。


もしあのままボスに挑戦することになっていたら危なかったかもしれない。そういう意味では、まだツキに見放されたわけではなさそうだ。


「…リュウ、ひとついいだろうか」


「…?」


エリーさ…エリーがなにやら深刻な表情で話しかけてくる。

先ほどの照れた姿とは打って変わって、なにやら落ち込んだ様子である。


僕は首をかしげながら、彼女の次の言葉を待った。


「ボスに挑む前に、君に伝えておかなければならないことがある」


「ボス戦の打ち合わせ…っていうわけではなさそうだね」


「そちらも後ほど話し合いをしたいと思うが、そうではない。私自身の話だ」




「君は不自然に思わなかったか?私がここまで、防御系の技能しか使っていないことに」


「それは…まぁ…」


そう。確かにここまでの攻略では、エリーは一度たりとも攻撃系の技能を使っていなかった。


技能(スキル)は大きく分けて2つに大別される。

汎用技能と専門技能だ。


汎用技能は、職業に関係なく覚えられる技能のことで、

専門技能は、ある職業にしか覚えることができない特殊な技能を指す。


いくら盾での防御が専門の盾職系の職業でも、剣術系の汎用技能のひとつぐらいは使えてもおかしくないはずである。特に、エリーみたいな熟練者はなおのこと。


つまりそれは、エリーは攻撃系の技能を使わないのではなく。


「察しの通り、私は攻撃系の技能の一切を()()()()()()()()()()()()


「それは…」


「職業すら発現していない君の前でこんなことをいうのは…なんというか、情けない話なのだが…」


そういうとエリーさんは、ぽつぽつと自身のことを僕に教えてくれた。


「私の職業は、剣士系のなかでも、タンク職の上位、騎士なんだ」


「騎士っていえば、冒険者はもちろん、文字通り国の騎士団にスカウトされてもおかしくない優良職じゃないか」


「その通りだ。私もはじめは、これで未来は安泰だ、もしかしたら世界をまたにかける()()()()()()のではないかと、胸を躍らせていたよ」


そうか、やっとわかった。出会ってまだ数日、まともに話したのだって今日が初めてのこの人に、なにかシンパシーを感じていたのは


同じなんだ。この人も、僕と。


「最初こそよかったよ。防御系の技能は特に苦労することなく覚えられたし、パーティーを組んでから最初のほうは順調そのものだった」


「…だった、って過去形ってことは、つまり」


「そう…うまくいっていたのはそこまでだった。パーティーのランクが上がって、上級迷宮に挑むようになってからは、私が攻撃できないゆえの火力不足に悩まされることになっていった」


僕は上級迷宮がどういった世界かは、想像もつかない。

そんななかでタンクとして敵を引き付けるだけで相当の鍛錬を必要とするのは想像に難くない。


「そのころには私もうすうす感じてはいたんだ。何度武器をふるっても、全く手ごたえを感じられなかったから」


でも、それでも。いや、だからこそ、か。

彼女は、自分がもっとできれば。そう考えてしまったんだと思う。


「そんなときだった。あるB級迷宮のボスに挑んでいる時だった。あと一撃入れればボスを倒せる、というタイミングで、仲間がひとり攻撃のターゲットになってしまった」


…あぁ、そういう流れか。

僕がよく読んだ英雄譚にもそんなシーンがあった。


「もしあのとき、私が怪物に一撃いれれていれば、その瞬間我々は勝利できていた。しかし、できなかった」


「…その仲間は…?」


「そんな顔をするな。彼はまだ元気に冒険者をやっているよ。結構名の知れた白金級冒険者だ」


よかった。もしそれでその人が亡くなっていたとしたら、僕はそんな彼女のトラウマを思い出すような場所に連れてきてしまうところだった。


いや、彼女にとって仲間を自分のせいで傷つけてしまった。

その事実が、彼女の心をむしばんでいるのかもしれない。


「その迷宮探索(ダンジョンアタック)を最後に、私はパーティーを抜けた。そのあとギルドに拾ってもらって今に至るというわけだ」


「そんなことが…」


彼女はこの迷宮で、いったいどんな気持ちで僕に接していたのか。

そんな思いで、その盾をふるっていたのか。


「ギルドで、私のことを『傷なし』と呼んでいたやつがいただろ?」


「あぁあの不良3人組」


「不良…不良か。確かにそうだな」


少し口元に笑みを浮かべたエリー。そのはかなげな表情は場所が場所なら見る者を魅了するだろう。

けど、今の彼女は、あまりにか弱く、まるで触れただけで割れてしまうガラス細工を思わせた。


「あれは私のタンクとしての力量をほめそやすものではない。全く攻撃をせずに縦の後ろに隠れている私を揶揄した蔑称だ」


「そんな…」


「実際、もっとも敵の攻撃を受けるはずのタンク役にもかかわらず、いつも迷宮帰りでわたしだけ全くけがを負っていたかったからな。さもありなん、ということだ」


気持ちは、痛いほどわかる。

僕だってそうだったから。職業が目覚めず、技能も覚えられない。でも、僕の同じこの人なら。





「…諦めは、ついていたはずだったんだがな」





諦められないんだ。こういう人種は。一度夢見てしまえば。しがみついてでも離したくないって、そう思ってしまうんだ。


「…まぁ長くなってしまったが、何が言いたいのかというと、次のボス戦、わたしは変わらず攻撃には参加できない。どの代わりこの命に代えても君を守る。だから、君は攻撃に専念を…」


「エリー」


だから僕は伝えなきゃいけない。たぶんこの役割は僕にしかできない。


「エリー、この迷宮から生きて帰ったら、僕とパーティーを組んでくれないかな?」


「…は?」


彼女の英雄譚はまだ終わっていない。いや、それどころかまだ始まってすらいない。

もしかすれば、一度も表舞台に立つことのなく、ナールビエという辺境で誰の目にも触れずに枯れてしまっていたかもしれない英雄のつぼみ。


「今の話を聞いていたのか…?私には迷宮における攻撃手段がない。今回だって、出てくる怪物がC級の範囲に収まっているからどうにかなっているが、これがさらにレベルが上がれば…」


「今日、エリーといっしょに戦って感じたんだ。後ろを気にせずに戦えることの安心感というか、思いっきり刀を振ることだけ考えていればいい気持ちよさみたいなものをさ」


でも、僕は見つけてしまった。

僕と同じ気持ちを共有できる存在を。

ともに、どれだけ笑われても、どれだけ馬鹿にされても、一緒に夢を追いかけられるかもしれない人を。


「僕は確かに刀はふれるけど、身を守ることはできない。君は剣をふるうことはできないけど、その盾でたくさんの人を守れる」


だから、一緒に戦ってほしいんだ。

一緒に目指してほしいんだ。


「僕が君の矛になるから。君が僕の盾になってほしい」



諦めるにはまだ早い。

なんなら、僕が君の前で体現し続けて見せるから。



「僕とパーティーを組んでください」



そのとき流れた彼女の涙は、たぶんどんな宝石よりも美しいものだった…なんてね。


書き終わって思ったけど、これ完全にプロポーズなのでは?


リュウが英雄に対してものすごい憧憬を抱いているのにはちゃんと理由があります。


が、たぶん明かされるのはだいぶ先カモ…?

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