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微笑むその隣で


王立貴族学院のカフェテラスには、穏やかな昼下がりの陽光が差し込んでいた。


淡く揺れる木漏れ日が白いテーブルクロスに影を落とし、カップから立ちのぼる紅茶の湯気がふんわりと光に溶け込む。季節の風がカーテンを優しく揺らし、ほのかな花の香りとともに、心地よい空気が漂っていた。



その一角、薔薇の鉢植えが並ぶ日だまりの席では、ルシア・ウェストウッドがクラスメイトたちと談笑していた。


ルシアの柔らかな髪が陽光を受けて淡く輝き、優雅に微笑むその姿は、まるで一枚の絵画のようだった。

周囲に座る令嬢や令息たちは、自然と彼女の存在に引き寄せられ、その場は穏やかながらも華やかな雰囲気に包まれていた。


そんな彼女の隣にはヴィンセント・アルスターが座り、控えめにカップを手にしている。

その姿は普段通り冷静で、淡々とした表情を浮かべているものの、どこか落ち着かない様子が見え隠れしていた。



「ルシア様、ヴィンセント様!それで? 先日のこと、まだお聞きしておりませんわ!」


クラスメイトの一人が興味津々に身を乗り出すと、周囲の令嬢や令息たちも揃って期待に満ちた瞳を向ける。その様子はまるで、今にも宝石箱の蓋が開かれるのを待つかのようだった。


「ええ、もう! あれだけ話題になっているのに、ご本人からお話を伺えないなんて、不公平ですわ!」


「そうですわよ! 同じクラスの私たちが、お話を聞けていないなんて!」


「まさか何もない、なんておっしゃらないでしょう?」


令嬢たちは声を弾ませ、令息たちは少し距離を保ちながらも興味深そうに耳を傾けている。

その表情は柔らかく、けれど瞳の奥には好奇心の色が隠しきれなかった。

彼らの問いかけには、悪意の意図は微塵もなく、ただ純粋にルシアたちへの関心と憧れが滲んでいた。


「おやおや、これは逃げ場がなさそうだな、ヴィンセント」


一人の令息が、茶化すように笑いながらヴィンセントの肩を軽く叩いた。その言葉に、周囲から楽しそうな笑い声が上がる。


「まさか、社交界の白百合とお出かけして、何も語ることがないなんてことはないでしょう?」


「羨ましいぞ、ヴィンセント。君がどれほど幸運かわかっているのか?」


令嬢たちだけでなく、令息たちもその場の空気を和ませようと、軽口を交えながら話に加わっていた。その明るい雰囲気は、まるで一つの舞台で繰り広げられる朗らかな劇のようだった。


ルシアは、学院の中でも一際目を引く存在だ。

誰もがその完璧な振る舞いに敬意を払い、近づくことすらためらうほどの品格を持つ“淑女の鑑”として崇められていた。


けれど、最近のルシアはどこか違って見える。


ヴィンセントが隣に寄り添うようになってから、彼女の表情はほんの少しずつ柔らかさを増していった。気づけば、微笑みの端にかすかな温もりが宿り、遠い存在だった彼女が少しだけ近くに感じられるようになっていた。


その変化は、彼女たちにとって新鮮で、眩しく、そしてどこか嬉しかった。

だからこそ、今までの分も埋めるかのように、ルシアとの会話を楽しみたくて、ついはしゃいでしまうのだろう。


ルシアはそんな視線を受けながら、穏やかな微笑みを崩さずにカップを手に取る。紅茶の縁に指先を添える仕草は優雅で、少しの間をおいて口を開いた。


「まあ……そんなにお知りになりたいのですか?」


柔らかな微笑みとともに放たれたその一言に、令嬢たちは思わず息を呑んだ。

その瞳の奥には憧れと好奇心が交錯している。


「当然ですわ! だって、二人で街へお出かけだなんて……まるで恋物語のような出来事ではありませんこと?」


令嬢の一人が紅茶のカップをそっと置き、頬を紅潮させながら言った。


その言葉に、ヴィンセントが思わず顔を赤らめる。

慌てて言葉を紡ごうとするものの、うまく声が出ない。


「そ、そんなこと……!」


声が上ずり、視線を泳がせる彼の様子に、令嬢たちはくすくすと微笑み合い、令息たちは楽しげにニヤリとしながら彼をからかうように覗き込む。


「おや、顔が赤いぞ? まさか図星だったりして?」


「これは貴族の青年らしからぬ反応だな、ヴィンセント」


その言葉に、さらに顔を赤くするヴィンセントの姿が、場の雰囲気を一層和ませ、笑い声がテラスに広がった。ヴィンセントはなんとか表情を整えようとする。

しかし、内心ではルシアがどんな答えを返すのか、期待と不安が渦巻いていた。

彼の瞳は、彼女の一言一言に魂を揺さぶられるかのように、静かに彼女だけを追い続けていた。





そして、テラスの少し離れた場所――

緑のアーチの陰に、ルシアの婚約者。エリオット・アシュフォードの姿があった。


彼は偶然、この場面に出くわしたのではなかった。

ルシアの姿を遠くに見かけ、その隣に座るヴィンセントの姿を認めた瞬間、無意識に足が止まった。胸の奥で何かが軋む音がしたのは、気のせいではない。

彼女の柔らかな笑顔が、ヴィンセントと交わされる言葉の端々に添えられるたび、視線を逸らすことができなかった。


――別に、気にすることじゃない。


そう心の中で呟きながら、彼はアーチの陰に身を潜める。

耳が勝手に彼女たちの談笑に傾いていくことに、わずかな苛立ちを覚えながらも、立ち去ることができなかった。






令嬢たちは紅茶を手に、令息たちは軽く椅子にもたれかかりながら、和やかな空気が漂っている。


「それで……実際、どんなふうだったんですか?」


令息の一人が紅茶のカップを傾けながら、興味深そうに尋ねる。


「街へ出かけたのなら、きっと小説のような素敵な出来事があったのでしょう?」


その言葉に、ヴィンセントの指先がわずかに震えた。

紅茶のカップを持つ手に力が入りすぎて、カップの縁がほんのりと揺れる。途端に顔に熱がのぼり、思わず視線をテーブルへ落とす。


「……あ、えっと……」


声を出そうとした瞬間、わずかに上ずった声が喉の奥で引っかかり、かすかに震える。


視線は宙を彷徨い、言葉の糸口を探すように瞬きを繰り返す。その様子があまりにも不器用で真剣だったからか、令嬢たちはそっと口元に指先を添え、微笑ましそうに目を細めた。


「まあ……ヴィンセント様、そんなに照れてしまわれるなんて」


「ふふ、きっと素敵な思い出なのでしょうね」


令息たちも、からかいや面白がるというより、どこか温かい目でヴィンセントの様子を見守り、肩をすくめ合って控えめに笑う。その雰囲気はどこか柔らかく、好意的な空気に満ちていた。


ヴィンセントは一層頬を赤らめながら、ちらりとルシアの方へ視線を向ける。

しかしその瞳とふいに目が合った瞬間、胸の鼓動が一層激しくなり、慌てて視線を逸らした。その動きがまた可愛らしく映り、周囲の笑みはさらに和やかさを帯びていく。


「まあまあ、ヴィンセント様ったら、ずいぶんとお可愛らしい反応ですこと!」


「ええ、本当に! こんなに照れるなんて……とても素敵ですわね」


「まるで特別な想いを抱いているみたいですわ」


令息の一人が、にやりと笑って肩をすくめる。


「これだけ顔が赤いと、かえって何もないとは言えないんじゃないか?」


ヴィンセントは慌てて否定しようと、口を開きかけた。


「……ふふ」


静かな空気を揺らすように、ルシアの柔らかな笑い声がふわりと響いた。

鈴の音のように澄んだその声は、まるで春風のように心地よく、自然と周囲の視線を惹きつける。


ヴィンセントもまた、反射的に彼女へと目を向けた。

その瞳には、うまく言葉を見つけられない戸惑いと、彼女の反応を確かめたいという淡い期待が宿っている。


ルシアはというと、紅茶のカップを指先でそっと回しながら、琥珀色の液面を静かに見つめていた。

その横顔はどこか物語の挿絵のように静謐で、まるで時が止まったかのような儚さを湛えている。


やがて、ふと視線を上げた彼女は、ヴィンセントと目が合った瞬間――


ふわりと、表情が綻んだ。


「あの日、私はとても楽しかったですわ」


その笑顔を見た瞬間、ヴィンセントの時間が止まった。


それは、彼だけが知る表情。

あの日、二人きりのときにだけ見せてくれた、特別な微笑み。

誰もが憧れる”社交界の白百合”にふさわしい、あの気品ある微笑みではない。


それは―― 年相応の、無邪気で、あまりにも可愛らしい、愛おしさに満ちた笑顔だった。


春の陽だまりのように暖かく、ふんわりと優しい。

純粋で、まるで子供の頃に戻ったかのような、自然な微笑み。

そして何より、それが彼に向けられたものだと、はっきりとわかる。


不意打ちであの日の笑顔を目の当たりにしたヴィンセントの頬に、熱が昇る。

胸の奥が強く締めつけられ、呼吸が浅くなる。

視線を逸らさなければと思うのに、まるで縫いとめられたように動けなかった。


「――っ!!?」

ヴィンセントの頬に、一気に熱が上る。



―― ガタンッ


「ヴィ、ヴィンセント!?」


あまりの動揺に椅子が傾き、ヴィンセントは見事にずり落ちた。


「大丈夫か!」


近くにいた令息の一人がすぐに駆け寄り、手を貸そうとする。

しかし、その彼もまたルシアの方を向いた途端、動きを止めた。


「……っ」


瞳を大きく見開き、みるみるうちに頬が赤く染まっていく。


「ヴィンセント様?」


「大丈夫ですの?」


その様子に、周囲の生徒たちも何事かとルシアへ視線を向け――


「……っ、ルシア様?」


「……こんな微笑みをなさる方だったのですか……?」


「なんて……可愛らしい……」


まるで雷に打たれたかのように、次々と顔を真っ赤にして息を詰める。


「こんなに無邪気な笑顔をされるなんて……」


感嘆とも動揺ともつかぬ声が、テラスのあちこちでこぼれる。

優雅な佇まいと、少女らしいあどけなさを併せ持つ微笑み。

それがどれほどの破壊力を持つのか、彼らはこの瞬間に知った。


ルシアはそんな騒ぎをよそに、ゆるりと瞬きをし、くすくすと微笑む。


「まあ、皆さまお元気ですわね」


まるで何も気づいていないかのように、穏やかに言葉を紡ぐ。

その声音すらも優美で、あまりにも自然だった。


彼女の無邪気な笑みが、さらなる余韻を残し、テラスの熱を引き上げていく。


ヴィンセントは、そんな彼女から視線を逸らすことすらできず――ただ、胸の鼓動が煩わしいほどに高鳴っていくのを感じていた。


――そして





その様子が、まるで無防備な矢のように、アーチの陰から密かにその光景を見つめていたエリオットの胸へと容赦なく突き刺さった。


鋭い刃が心臓を抉るような感覚。

呼吸が一瞬だけ止まり、喉の奥がひりつく。それなのに顔には微笑みの仮面を貼り付けたまま、指先がかすかに震えていることに気づかないふりをする。


ルシアが誰かに心を向けるなど、今まで一度もなかった。

彼女は誰からも敬われ、憧れられ、けれど距離を置かれる存在だった。

その微笑みは誰に対しても変わらず、けして親しさを感じさせるものではなかった。


なのに――今、彼女は違う。


僕すら見たことのない笑顔を、ヴィンセントだけでなく、クラスメイトたちまでが見てしまった。

彼女がそんな顔をするのは、誰の影響だ?

ヴィンセントのせいで、僕のルシアが変えられていく。

誰の手にも触れられず、ただ遠くから憧れられる存在だったはずの彼女が、あんなにも近しく、自然に――楽しそうに微笑んでいる。


それが耐えられない。


何のつもりだ、ヴィンセント。彼女を僕の知らない世界へと連れて行くな。

ルシアは、誰のものにもならない。彼女はそういう存在のはずだった。


――僕だけが、その隣にいるべきなのに。


影の中で、冷たい石壁にもたれかかりながら、エリオットは眩暈にも似た感覚に目を細めた。

鼓動はひどく不規則で、胸の内側で熱を帯びた怒りと嫉妬が渦を巻いている。





椅子に座り直したヴィンセントは、真っ赤な顔のまま慌ててルシアに返事をする。


「ルシア様!あの、 私にとっても、夢のように楽しい時間でした……!」


まだ動揺が残り、声がわずかに上ずるのを自覚しながらも、どうにか言葉を紡ぐ。

驚きと喜びが入り混じった表情のまま、視線を逸らしそうになるのを必死にこらえた。


不意打ちの笑顔に騒ぎになったが、それよりも――彼女が確かに言ったのだ。

クラスメイトたちの前で、迷いなく、自分との時間を「楽しかった」と。


その言葉を思い返すだけで、胸が破裂しそうなくらい嬉しい。


「ルシア様に……その、お楽しみいただけたのなら、本当に光栄です」


ぎこちなくも懸命に微笑みながら、ヴィンセントはまっすぐ彼女を見つめる。

彼女の言葉を一つも取りこぼすまいとするように――。


「まあ……そんなに気を使わなくてもよろしくてよ?」


ルシアはそのままの微笑みを保ちながら、ほんのわずかにヴィンセントの方へと身体を傾けた。さりげない動作なのに、ヴィンセントの心臓が跳ね上がるのがわかる。

その柔らかな声は、まるで春風のように彼の胸に吹き込んだ。


「私は、ただご一緒できただけで、とても嬉しかったのですから」


その瞬間、ヴィンセントの顔に一気に光が差し込んだかのように、表情が明るく輝く。

内心の歓喜を隠しきれず、目を丸くしてルシアを見つめた。


「……本当ですか?」


かすかに震える声は、彼の心の奥底からこぼれ落ちたものだった。その純粋な問いかけに、ルシアはさらに微笑みを深め、柔らかく頷いた。


「ええ。ヴィンセント様は、とてもお優しい方ですもの」


その一言が、ヴィンセントの心に甘く温かな光を灯す。

周囲のクラスメイトたちは、思わず顔を綻ばせ、ほっとしたように微笑み合った。


「まあ、素敵な関係ですわね」


「本当に、幸せそうなご様子で何よりです」


令嬢たちは控えめながらも微笑み、令息たちもどこか照れたように小さく頷く。

からかうような声もなく、誰もがその場の空気を壊すことなく、温かい雰囲気がテラスを包み込んでいた。

まるで春の日差しのように、柔らかく穏やかな空気だけがそこに漂っているかのようだった。


ヴィンセントは、照れくさそうに視線を落とし、恥ずかしげに目を伏せる。

しかし、口元には確かな喜びが滲んでいた。紅潮した頬が、抑えきれない幸福感を物語っている。


——ルシア様が、私にこんな言葉を向けてくれるなんて。


ヴィンセントの胸は甘く痺れるような幸福感で満たされ、その瞳はルシアをただ真っ直ぐに見つめていた。

彼女の柔らかな微笑みは、まるで自分だけに向けられているように思えてならない。

その瞬間、世界がほんの少し輝いて見えた。





しかし、そんな光景を陰から見つめるエリオットの指が、無意識に拳を握りしめる。

爪が手のひらに食い込む感覚すら意識できないほど、胸の奥に湧き上がる苛立ちと焦燥感が彼の全神経を支配していた。


ルシアの言葉が、ヴィンセントを歓喜させるたび、エリオットの心のどこかがひび割れていく。

ルシアの声は以前と変わらず穏やかで優しいはずなのに、耳に刺さるたび胸がきしむのはなぜなのか。


エリオットはルシアを信じていたはずだった。


——けれど。


未だ続くルシアとクラスメイト達の会話が、耳に響く。

「ヴィンセント様とご一緒すると、とても安心いたしますのよ」

その一言が、鋭利な刃のようにエリオットの心臓を刺す。


——なぜ、そんな言葉を?


彼の脳裏に浮かぶのは、婚約者として隣にいる時には見せたことのない、どこか柔らかな表情を浮かべるルシアの姿だった。

「私が迷ってしまったときも、そっと手を引いてくださるのですもの」

彼女の声音は、あくまで穏やかで優しい。

しかし、耳に届くその響きは、不思議なほど鋭く、彼の胸を抉る。


——なぜ、そんな声で?


「だから、これからも……たくさんの場所にご案内してくださるかしら?」

微笑むルシアの瞳が、まるでヴィンセントだけを映しているように見える。

その仕草、その声色、そのささやかな表情の変化さえ、すべてヴィンセントにだけ向けられているような錯覚に襲われる。


——なぜ、そんな表情で?


エリオットは、奥歯を強く噛み締める。心臓の鼓動がうるさいほどに鳴り響き、呼吸すら浅くなる。

拳を固く握る手のひらには、微かな汗が滲んでいた。


ルシアは、確かに自分の婚約者だ。

それなのに、なぜこんなにも自然に、誰かと親しげに微笑んでいるのか。

誰にでも分け隔てなく優しい彼女だからこそ、この笑顔もただの一つに過ぎないはずなのに。


——なぜ、彼女のそんな表情を、ヴィンセントにだけ見せるのか。


目の前の景色が歪んで見える。視界の端がぼやけ、細かい輪郭が揺れていく。

それが陽光の眩しさのせいなのか、彼自身の胸を締め付ける感情のせいなのか、もう分からなかった。


エリオットの視界が、ほんのわずかに滲んだ気がした。


彼女の笑顔が、まるで遠ざかっていくかのように思えた。

あの穏やかで優しい微笑みが、自分ではない誰かに向けられている現実が、鋭利な刃となって胸の奥を抉る。彼女の言葉が、誰か別の男に紡がれるたび、その刃はさらに深く突き刺さる。


彼女の気持ちが、少しずつ、知らぬ間に誰かに移ってしまうのではないか——


そんな想像が、まるで現実のように鮮やかに心に浮かび、心臓を痛みで締め付けた。


「……」


エリオットは、拳を強く握りしめ、視線を地面へと落とした。

爪が手のひらに食い込む感覚すら気にならない。ただ、胸の奥で波打つ衝動を、どうにか抑え込もうとする。


まだだ。

まだ、彼女は自分の婚約者なのだから。


彼女を手放すことなど、決して許せることではない。


——君をそんなふうに笑わせるのは、本来僕であるはずなのに。


その想いが胸を満たすほど、苛立ちと焦燥感が膨れ上がっていく。

自分こそが隣にいるべきなのに、なぜ彼女はあんな表情をヴィンセントに向けるのか。


エリオットは、その場を離れるつもりだった。

このままここに立ち尽くしている意味などないはずだ。

見なければ、聞かなければ、きっと心は揺れない。

それなのに——


足が、動かない。


カフェテラスの穏やかな談笑が、まるで遠い世界の出来事のように響く。

その中で、ルシアの澄んだ笑い声だけが鮮明に耳に刺さる。その音が心臓を締め付け、鼓動は不規則に跳ねた。


ここにいるべきではない。

彼女を信じているなら、ここに留まるべきではない。


そう自分に言い聞かせても、体は微動だにしなかった。

心が、理性を無視して彼女の声を求めてしまう。どうしても、彼女の表情を確認したい。

その瞳に、誰が映っているのかを確かめたい——そんな衝動が、理性を凌駕していく。


耳を澄ませると、話題が変わったことに気づく。






「ねえねえ、ルシア様、ヴィンセント様。せっかくだから、お二人の恋愛観も聞かせてくださらない?」


令嬢の一人が、頬杖をつきながら好奇心たっぷりに話を振る。その瞳はきらきらと輝き、場の空気もふわりと弾んだ。


「好きなタイプとか、そういう話?」


「ええ、気になりますわ!」


華やかな声が重なり、テラスの穏やかな風に乗って広がっていく。


ヴィンセントは思わずカップを手にしたまま固まり、視線を泳がせた。


「えっ、そんなこと……わざわざ言うものですか?」


ヴィンセントはカップを手にしたまま視線を泳がせ、戸惑いを隠しきれない様子だった。

その反応に、周囲からは微笑まし気にくすくすとした笑い声が漏れる。


令息の一人が肘で軽くヴィンセントを突きながら、からかうように言う。


「おいおい、逃げる気か? ここまで話しておいて、言わずに帰れると思うなよ」


令嬢たちもすかさず笑いに乗り、扇子で口元を隠しながら目を輝かせた。


「まあ、ヴィンセント様! 今さら恥ずかしがるなんて、可愛らしいですわ。」


「観念なさい、白状するしかありませんわよ」


「ええ、ここまできたら、もう逃げ場はございませんことよ?」


茶化す声が次々と飛び交い、テラスの空気はさらに賑やかさを増していく。

令息たちは楽しげに笑いながらも、ヴィンセントの答えを心待ちにしている様子だった。


ヴィンセントは観念したように肩を落とし、ため息をひとつ。紅茶のカップをそっとテーブルに置くと、小さく息を整えて口を開いた。


「……穏やかで、優しい方が好きです」


ぼそりと呟くようなその答えに、令嬢たちは一斉に「まあ!」と感嘆の声を上げる。令息たちはにやりと笑いながら、再び彼の肩を軽く叩いた。


「それだけか? まさか、それで終わりじゃないだろう?」


「もっと詳しく聞かせてくださいませ、ヴィンセント様!」


皆が楽しげな中、ヴィンセントは再び視線を落とし、テーブルの縁を指でなぞる。

ちらりとルシアに目を向けると、彼女は穏やかな微笑みで彼を見つめている。

その視線にわずかに喉が鳴るのを感じながら、観念したように小さくうなずいた。


「……そうですね」


少しだけ間を置き、言葉を選ぶように続ける。


「普段は穏やかで優しいのに、ときどきふっと違う一面を見せてくれる方、でしょうか。たとえば、ささやかなことで驚いたり、笑ったり……そういう瞬間に、つい目を奪われてしまうんです」


言葉を絞り出すようにして告げると、ヴィンセントは一気に顔を真っ赤にして、膝の上でぎゅっと拳を握りしめた。

耳まで赤く染まり、視線は決して誰とも合わないように逃げ道を探すかのように泳いでいる。


「おやおや、それはずいぶん具体的なご趣味で」


「ええ、まるで誰かを思い浮かべているみたいですわね?」


令嬢たちは頬を染めながら小さく歓声を上げ、令息たちは「なるほどな」とからかうように笑う。


「……もう、これくらいでいいでしょう。勘弁してください」


苦し紛れに吐き出すようなその一言に、場は再び和やかな笑い声で包まれた。令嬢たちは微笑み、令息たちはからかうように肩を軽く叩く。


ヴィンセントは顔を覆い隠すように片手で頬を押さえ、真っ赤な顔を隠すこともできず、ただ静かに紅茶をすすることしかできなかった。

その様子があまりに素直で微笑ましく、周囲の笑いはしばらく途切れることはなかった。


ふと、ルシアの視線に気づく。

その視線は柔らかく、優しさに満ちていて、まるで彼の不器用な可愛らしさを慈しむようだった。


その視線に気づいたヴィンセントは、はっとしてカップを持つ手を止める。


「っ……!」


視線を合わせた瞬間、耳まで真っ赤に染まったヴィンセントが、どうにか平静を装おうとするものの、隠しきれない動揺がその仕草に滲み出ている。


そんな彼の姿に目を丸くし、ルシアが思わずふふっと小さな笑い声を漏らした。

柔らかな笑みが唇の端に浮かび、普段の完璧な淑女の表情とは違う、年相応の無邪気な可愛らしさがにじむ。


そのにこやかな笑顔は、まるで春の日差しのように温かく、ヴィンセントの胸の奥をさらにくすぐるのだった。






その様子が、エリオットにはどうしようもなく腹立たしく映る。


アーチの陰からじっと見つめる視線の奥で、胸の奥がじりじりと焼けつくような感覚が広がっていく。笑顔を浮かべるルシアの顔、その視線を真正面から受けて顔を真っ赤にしているヴィンセント。

その光景は、エリオットにとって耐えがたいものだった。


彼女の微笑みは、婚約者である自分だけのもののはずだった。

それなのに、今、目の前でルシアは、まるでヴィンセントの好意を受け入れるような、優しく柔らかな笑顔を向けている。


——ルシアは、婚約者がいる自覚が、ないのか?


そんな苛立ちが、心の奥底からじわりと滲み上がってくる。理性では無意味な問いだと理解している。けれど、感情はそう簡単に割り切れるものではなかった。


自分の知らない彼女の顔、自分の知らない彼女の微笑み。

そのすべてが、エリオットの心に鋭い棘となって突き刺さる。


ルシアの声が、ヴィンセントの頬をさらに赤く染めさせ、その反応にまた笑みが深まるたび、エリオットの心は怒りとも嫉妬ともつかない感情で膨れ上がっていった。





「ルシア様は? どんな方が好みなのですか?」


令嬢の一人が明るく問いかけると、場の空気がふわりと弾んだ。


クラスメイトたちは紅茶のカップを手にしたまま、興味津々とルシアへ視線を向ける。

その言葉をきっかけに、令嬢だけでなく令息たちもわずかに身を乗り出し、さりげなく耳を傾ける者や、余裕を装いながらも内心の期待を隠せない者たちがいた。


ルシアはほんの少しだけ思案するように視線を伏せ、その仕草はどこまでも優雅だった。

まるで一輪の白百合が静かに風に揺れるかのような儚さと気品がそこに宿っている。

彼女の長いまつ毛が繊細な影を落とし、淡い光の中で揺れていた。


「……私には、まだよくわかりませんわ」


柔らかな微笑みを浮かべながらの曖昧な答えに、すぐさま令嬢たちの反応が返る。


「まあ、そんなことを言わずに!」


「ほら、理想を探しましょう」


「例えば、頼れる方がいいとか、穏やかな方がいいとか!」


楽しげな声が弾け、令息たちはそのやり取りにさりげなく耳を傾けながらも、どこかそわそわと落ち着かない様子を見せる。

中には紅茶のカップを持つ手がわずかに強ばり、ちらりとルシアの顔を窺う者もいれば、気取った余裕を見せながらも内心では答えに一喜一憂している者もいた。


ルシアはそんな周囲の熱に押され、少し困ったような微笑みを浮かべている。

しかし、ほんの一瞬だけ、彼女の視線がカップの中の紅茶へと沈んだ。その表情には、どこか遠くを見るような静けさが漂う。


やがてルシアはゆっくりと顔を上げ、微かに目元を緩めた。


「……そうですわね」


しばしの沈黙のあと、静かに言葉を紡ぐ。

令嬢たちは身を乗り出し、令息たちは固唾を呑んで耳を傾ける。


「私を、とても大切にしてくださる方……でしょうか」


その一言に、令嬢たちは期待通りの答えに思わず目を輝かせた。


「まあ!」


「やっぱり!」


「素敵ですわ!」


令息たちは一瞬だけ安堵の表情を見せる者もいれば、内心でほっと息をつく者もいた。

中には自分にも可能性があるのではないかと淡い期待を抱く者もいたことだろう。


ルシアは、穏やかな微笑みを浮かべたまま、さらに言葉を続けた。


「そして……深く、私だけを愛してくださる方」


その穏やかな声には、どこか寂しさを滲ませるような静けさがあった。

令嬢たちは胸をときめかせながら頷き、令息たちは一瞬、姿勢を正して自分を律するような仕草を見せる。


だが、言葉はそこで終わらなかった。


「私以外には目もくれず、誰にも微笑まない方が良いですわね」


その一言に、場がわずかにざわつく。

令嬢たちは顔を見合わせて驚いたように笑い、令息たちは思わず背筋を伸ばし、緊張気味に表情を引き締める者もいれば、苦笑いを浮かべてごまかす者もいる。


「え……?」


「誰にも微笑まない、ですか?」


戸惑い混じりの声が、令嬢と令息たちの間から漏れた。

その反応に対して、ルシアは微笑みを崩さず、紅茶のカップをそっとテーブルに置く。指先の優雅な動きが、まるでその場の空気を撫でるかのように穏やかだった。


「ええ。私だけを特別扱いしてくださる方。誰にでも分け隔てなく優しい方は、きっとどなたに対しても同じように接してしまいますでしょう?」


その声は柔らかく、冷たさは微塵も感じられなかった。

ただ、淡々と紡がれたその言葉は、不思議な余韻を残し、聞く者の胸に微かな影を落とす。

令嬢たちは思わず言葉を飲み込み、令息たちは気まずそうに視線を逸らす者もいれば、逆に好奇心を隠せずにルシアを見つめる者もいた。


「そ、それは……まあ、そうかもしれませんけれど……」


令息の一人が気まずそうに笑いながら口を開く。しかし、ルシアはそのまま穏やかな声で続けた。


「でも、それでは特別にはなれませんわ」


その静かな一言が、テラスに流れていた明るい空気をふっと冷やす。


小鳥のさえずりや風の音が、妙に鮮明に耳に届くような気がするほど、場は一瞬の静寂に包まれた。


令息たちの表情は複雑だった。淡い期待を抱いていた者たちは、どこか居心地悪そうに視線を落とし、気取っていた者たちも思わず姿勢を正す。

令嬢たちは互いに目配せしながらも、ルシアの言葉の真意を測りかねている様子だった。


そして、その場にいた誰よりも、ヴィンセントが驚いていた。


「……ルシア様、それって……」


ヴィンセントは無意識にカップを持つ手を止め、まるで何かに気づいたかのように顔を上げる。


その瞳には揺れる疑念と、ふいに差し込んだ一筋の理解が滲んでいた。控えめな声だったが、その響きには確信めいた色が宿っていた。


「エリオット様とは……まるで正反対ではありませんか?」


その瞬間、場が一瞬静まり返った。


クラスメイトたちは顔を見合わせ、驚いたように小さなざわめきを交わす。そして興味深そうにヴィンセントとルシアの様子を見守った。



一人の令嬢が、ふとした沈黙を破るように静かに呟いた。


「確かに……エリオット様は誰にでもお優しくて、人気者ですものね」


その声はからかうでもなく、どこか素直な感想として響いた。


「ええ……私たち、ずっと心配していたんですのよ?」


「そうですわ。ルシア様はいつも完璧で穏やかだから、もしやお寂しいなんて思わないのかしらと……けれど、ずっとお一人でいらっしゃることが多くてやはり、心配でしたの」


令嬢たちの声には、心からの敬意と親しみが滲んでいた。彼女たちにとって、ルシアは憧れの象徴であり、同時に遠い存在だった。

その彼女が、誰かの特別でありたいと願うことがあるのだと知り、どこかほっとした気持ちさえ浮かんでいるようだった。


ルシアは令嬢たちの言葉に微笑みを崩すことなく、そっとカップへ視線を落とした。

淡い琥珀色の紅茶が静かに揺れ、その繊細な波紋が彼女の端正な横顔に儚げな影を落とす。

その佇まいは、まるで静寂そのものを纏っているかのようだった。


「でも、今日のお話を伺って……やっぱり、ルシア様も誰かの特別でありたいと思うことがあるのだと知って、少しだけ安心しましたわ」


「そうですわ。ルシア様ほど素敵な方は、特別に大切に思われるべきですもの」


ヴィンセントは、思わずルシアの横顔を見つめた。

ルシア言葉は、まるで自分の心の奥底を代弁するかのように響いていた。

胸の中に、どうしようもなく熱いものがこみ上げてくる。


彼女は、確かに特別でなければならない。誰よりも、何よりも——。


「ルシア様は……」


ヴィンセントがふと口を開いた。


その声は静かでありながら、深い感情が宿っていた。

周囲の談笑もふっと静まり、自然とその言葉に耳が傾けられる。


「どなたからも愛されるお方です。でも、私は……その中で、誰よりも強く、ルシア様を大切に思っています」


その一言に、令嬢たちの目が輝きを帯び、令息たちは息を呑む。まるで劇のワンシーンを見ているかのような、静かな緊張感がテラスを包み込む。


「誰にでも優しいのではなく、ただ一人のためだけに心を尽くすことが、どれほどかけがえのないものか……私は、ルシア様を通じて知りました」


ヴィンセントは、言葉を噛みしめるようにして口を閉じる。

その瞳はまっすぐにルシアを捉えていた。

彼の頬はわずかに紅潮しており、隠しきれない真摯な思いがその表情に浮かんでいた。


ルシアは、驚いたようにヴィンセントを見つめる。

その瞳には、微かに揺れる感情の光が宿っていた。

だが、彼女の表情はすぐに穏やかな微笑みに戻り、優雅にカップを口元へと運ぶ。


「まあ……!」


「なんて素敵なお話!」


令嬢たちは思わず声を上げ、微笑みながら温かな視線を二人に向けた。


「ルシア様が誰かに独占されたいと思われているなんて……とても可愛らしいですわ」


「ええ、こんなに素敵な方、皆が独占したいと思っていますわよ」


令嬢たちの言葉に、令息たちもどこか気まずそうに笑いながらも頷いている。


そんな中、令嬢の一人がいたずらっぽくヴィンセントに声をかけた。


「ヴィンセント様、あなたもそう思われるでしょう? ずっとルシア様のそばにいたいって!」


ヴィンセントは、その言葉に再び顔を赤く染めながらも、視線をそっとルシアへと向けた。その瞳には、静かに、しかし確かに彼女への熱意が宿っている。


「はい……もちろんです。ずっと、ルシア様のそばにいたいと願っています」


その言葉に、ルシアは少しだけ困ったように微笑んだ。しかし、その微笑みの奥には、どこか嬉しさが滲んでいるようにも見えた。


周囲の令嬢たちも微笑み合いながら、穏やかな空気がテラスを包み込む。誰もが、心の中で静かに思う。


——ルシア様には、幸せになってほしい。






心臓を、鷲掴みにされたような感覚だった。エリオットの爪が、無意識に手のひらへ深く食い込む。

ルシアは、本当にそう思っているのか?


「……違う」


エリオットは、唇の内側を噛みしめるように、心の奥で静かに呟いた。

僕は、君を誰よりも特別に思っている。ただ、それを見せないだけなんだ。


——この狂気を、君に知られたくないから。

君に知られたら、きっと嫌われて離れて行ってしまうから。


だから、君のそばにいるために、僕は必死で普通のふりをしているのに。


なのに、君は——。


視界が滲むような錯覚に襲われ、彼は一歩、影の中で足を後退らせる。その胸の奥で波打つ痛みは、嫉妬という言葉では片づけられないほど鋭く、深かった。


「……」


震える指先で、そっと拳を握り締めた。

爪が手のひらに食い込む感触だけが、かろうじて自分を現実に繋ぎとめている。


立ち去ろう。

理性がそう囁く。けれど、足は地面に縫い付けられたように動かない。


「私だけを特別扱いしてくださる方」

その言葉が、心臓に深く突き刺さる。

君が求めているものは、確かに僕の中にあるのに。


だけど、僕はそれを隠している。隠さなければ、君は笑ってくれないと思っているから。


違う。——違う。


君は僕のものなんだ。

誰のものでもない。僕のものだ。

君が求める理想が、僕の中にあるのに、なぜ君を手にできない?


君が望むなら、すべてを壊しても構わないのに。

君の笑顔も、自由も、幸せさえも——僕のために捧げてしまえばいい。


不幸でも、涙でも、憎しみでもいい。

僕への君の感情なら、どんな形でも構わない。


エリオットは、気づかれないように顔を伏せ、ゆっくりと背を向けた。

その歩みは静かで、誰にも悟られることなく。


けれど、心の奥では理性がひび割れていく音がしていた。


君は、僕では駄目なのか?ヴィンセントでなければならないのか?

そんなはずはない。——だって、君は僕のものなのだから。


もし、君が僕を選ばないというなら——。

いっそ、君の世界ごと奪い取ってしまえばいい。

君が誰を求めようと、僕の腕の中でしか呼吸ができないようにしてしまおう。


この気持ちを、もう押し殺すことはできない。


エリオットは、学院のカフェテラスを静かに立ち去った。

足元に長く伸びた影が、彼の心の闇を映すかのように揺れる。


胸の奥が、締め付けられるように痛む。まるで、そこに空洞ができたかのようだった。

でも、それは空洞なんかじゃない。君への欲望が、あまりにも大きすぎて、収まりきらないだけだ。


——僕は、君の理想にはなれないのか?

君が求めるのは、僕の知らない誰かでなければならないのか?


ならば、その理想すら、僕が壊してみせる。

君が求めるものは、僕だけでいいように。君の世界が、僕だけで満たされるように。


その問いの答えは、風に紛れて消えていく。

静かに、しかし確実に、心が壊れていく音がした。


君の前では、絶対に知られてはならない。

この狂おしいほどの執着と、壊れていく自分の姿を。


だけど、君が誰かに微笑むその瞬間を、もう二度と黙って見過ごすことはできない。


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