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核戦争で世界が滅んだので異世界で、やり直します! (  影竜物語 弐 )

作者: 鹿野 苑

      

      二十一世紀 現実世界編


       妹たちと世界の滅亡


 千九百九十九年七月、世界は核の炎に包まれた!

海は枯れ、地は裂け、あらゆる生命体が絶滅したかに見えた……。

だが、人類は死滅していなかった!


 日本、信州の松本! 山の地下を掘って造られた巨大で堅牢なシェルター!

そこに、ひとりの青年と五人の女子中学生が生き残っていた。


 男の名前は上杉景竜、千九百七十六年生まれ、二十三歳、埼玉出身! 

身長、百八十四センチ、痩せ型。

漫画、アニメ、テレビゲーム好きのオタク気質の男。この物語の主人公です!

そして義妹たち、千九百八十六年生まれ、十二歳、信州の松本出身。

 蘭菜らな、旧姓は高尾。

そつがなくて、おしゃま、九月十三日生まれ。

 麗夢れいむ、旧姓は桜小路。

しっかり者で運動が得意、九月十五生まれ。

 蓮々れれな、旧姓は伊丹。

本好きで知識欲旺盛、九月十七日生まれ。     

 月乃つきの、旧姓は戸隠。

クールな佇まい、九月十九日生まれ。

 あや、旧姓は宮島。

お転婆で活発、九月二十一日生まれ。


 全員、身長百四十センチ、体重三十四キロ、血液型はO型、星座は乙女座。

みんなボブカットで、雛人形のような端正な顔立ち。

そして同じ雰囲気なので一見、血が繋がっているように見えますが違います。


      妹たちとの出会い


 千九百九十三年、主人公が十七歳、高校二年生の冬、

予想だにしないことを両親に言われた。

兄と弟も同席していた。

男だけの三人兄弟で、兄の名前は景寅で大学一年生、

弟の名前は景未で中学三年生。


 父「小学生一年生の五人の女の子を、

我が家の子供として迎え入れることにした」

「今まで男だけの兄弟だったが、まだ幼い女の子たちが加わることになった」

「三人は兄として、優しくしてやってくれ」

しかし、兄と弟は興味ないみたいで生返事をしていたが、

父は、ふたりの生活態度を考慮してか? 何も言わなかった。


 僕の方は内心、気持ちが高揚した。

なぜなら、以前から妹がとても欲しかった。

男だけの兄弟にむさ苦しさを感じて、可愛い妹に憧れていた。


 そして父は引き取った事情を説明し始めた。

女の子たちは全員、マサミチの重役のひとり娘。

マサミチは松本発祥の銀行、自動車、建設等のあらゆる業種を持つ、

巨大企業である。


 両親は、つい先日の飛行機事故で他界してしまった。

上杉家とマサミチの創業者一族、立花家は懇意にしていて、

父が女の子を欲しがっていたので、信頼関係のある父に白羽の矢が立ったらしい。


 景竜の心の中「ニュースで大騒ぎになっていた、あの飛行機事故!」

「これは、喜んでばかりいられない」

「女の子たちの悲しみを少しでも、和らげなければ!」

「自分に何ができるか?」「わからないけど……」


 次の日、立花さんと五人の女の子たちが上杉家に訪れた。

女の子たちは別室で待機させた。

立花さん、父と母、息子たち三人兄弟の六人で話し合い。


 立花「女の子たちの御両親は墜落事故で全員、亡くなってしまった」

「母親が松本女学館の同級生、父親がマサミチの社員でしかも、御近所!」

「それで五人は、まるで姉妹のような関係で、

みんな離れ離れになるのを拒んでいる」

「しかし、どの親戚も五人も引き取ることに難色を示している」

「そこで上杉さんに思い至った」

「女の子を欲しがっていたし、何十人でも財政的には問題ない人物」

「話をしたら、ふたつ返事で引き受けてくれた!」

「ありがとう!」「上杉さん!」

すると父が「景竜!」「女の子たちに寄り添ってやってくれ!」

「景竜は妹を、欲しがっていたじゃないか?」


 景竜の心の中「突然の五人の妹の出現に不安はあるけど、

必ず、女の子たちを笑顔にしたい!」だから言った。

「父さん!」「僕に何ができるか?」

「わからないけど、女の子たちの面倒は僕が見るよ!」


 すると父は「頼むぞ!」「お前なら、そう言うと思っていた」と真剣な表情。

母は「景竜は優しいし、ひとまず安心ね」と笑顔になった。

「父さんと私は仕事が忙しくて普段、留守にしているから、お願いね!」

兄と弟は自分に、お鉢が回ってこないことに「ホッ」としているようだった。

案の定、兄は「じゃあ、景竜、頼むな!」

弟は「兄さんにお任せします!」と言って両人とも退席してしまった。


 兄の景寅は、いつも外で遊びまわっていて、ほとんど家に帰らない。

弟の景未は、逆に自分の部屋にこもっていて、ほとんど自室から出てこない。

両親は、ふたりに対して諦めていて、特に何も言わない状態だった。


 父も母も、ふたりの行動に一瞬、不快そうな顔をしたが……?

本人たちには、一言も言わず、

父「申し訳ない!」母「すみません!」と立花さんに謝罪していた。

立花「こちらこそ、突然の話で恐縮です」


 別室の女の子たちは、まだ涙が止まらない。

彩「彩たちのママとパパ!」「みんな、死んでしまって……」

「彩たちも、どうなるんだろう?」

月乃「男だけの兄弟って、いじめられないかな?」

蓮々那「それは、きっと大丈夫だと思う」

麗夢「そうよ!」「立花のおじさんが……」

「友人で『信頼できる人だ』って言っていたもん」

蘭菜「みんな、大丈夫!」「もし、意地悪してきたら文句を言ってやる!」

女の子たちで、そんな会話をしていた……。


 父「あまり待たせると、少女たちも不安でしょうから、

もう、そろそろ呼び入れませんか?」

立花「そうですね」「そうしましょう」

母「どんな娘たちかしら?」「お願いね、景竜!」

景竜「はい、母さん!」


 そして、メイドに連れてこられた。五人の美少女が着席した。

さすがに疲れた青白い顔を全員していたが想像以上にみんな、すごい可愛い!

そして、年齢より幼く見えて雰囲気が似ていて、五人姉妹に見えた。

景竜は内心、とても嬉しかったけど

少女たちの気持ちを想うと、喜んでばかりいられない。


 できるだけ優しく「僕は、この家の次男で景竜です」「みんな、よろしくね!」

しかし、少女たちは疲労と緊張からか? 

ただ、遠慮そうに「ペコリ」と頭を下げただけだった。

女の子たちの内心「三人兄弟って聞いていたけど」

「あれ?」「ひとりしかいない?」

「でも、よかった!」「すごい優しそうな、お兄ちゃん」

景竜の優しい佇まいに、少し気持ちが和らいだ。


 父「みんな、とても可愛い娘たちじゃないか!」

母「本当にそうね!」

「これからは、うちの娘として一緒に暮らすけど遠慮なく、わがままを言ってね」

「うちは男だけの三人兄弟なんだけど、

次男の景竜が、あなたたちの面倒を見ますね!」


 最初は埼玉の実家の方で生活させるつもりだったが、妹たちの気持ちを聞いて、

景竜は転校して妹、五人と三人のメイドで、松本の別宅で暮らすことにした。

両親の思い出のある松本にいたいし、学校が変わるのも不安。

ちょうど、彼女たちの家の近所に屋敷を持っていたので好都合だった。


      妹たちと日常生活


 妹たちは両親を失った悲しみで元気がなかったが、

転校してまで一緒にいて、世話を焼いてくれる、

景竜の献身的な姿勢に傷ついた心は癒されていった。

そして、五人とも一人っ子で、もともと「お兄ちゃん」に憧れていたので、

すぐに大好きになってしまった。


 一年ほど経つと、景竜と妹たちだけでの生活になった。

どうしてかと言うと、妹たちは超ブラコンになってしまったから……。

つまり、女性であるメイドさんが、

大好きなお兄ちゃんと会話するのも嫌がるからです。

だから妹たちの気持ちを汲んで、

三人のメイドさんに景竜の実家に帰ってもらった。


   [ODD(お兄ちゃん大好き団)]結成!

これは、お兄ちゃんをこよなく愛する妹たちによる組織です。


 そして妹たちは家事を、とても頑張った。

もともと料理は景竜が得意なので手ほどきを受けて、

掃除、洗濯、裁縫も五人で相談したりしながら完璧になっていった。

それどころか、大好きなお兄ちゃんを喜ばせたい一心で、

お茶、お花、日本舞踊、ピアノの習い事までしてしまった。

だから、妹たちの女子力はかなり高い。


 例えば食事。妹たちは、景竜の三度の食事を作らないと気が済まない。

景竜は食べ物の好き嫌いないけれど、パンより御飯が好きなので、

朝食はだいたい和食です。

献立は御飯、味噌汁、漬物、それに焼き魚、納豆、卵、海苔が定番です。

昼食は妹たちの手作り弁当。

景竜の好物のウィンナー、ハンバーグ、唐揚げなど多彩です。

夕食は毎日、お兄ちゃんの希望を聞いて決定します。


 妹たちの料理は、どれも美味しい。

その中でも、一番のお気に入りはカレーです。

妹たちも、お兄ちゃんの大好物だから気合が入ります。

丁寧に作られ、隠し味も工夫しています。

景竜「いつも、とてもおいしいよ!」

「カレーのときは、ついつい食べ過ぎてしまうよ!」

妹たちは大喜びして「もう、お兄ちゃん!」「大好き!」

褒められて嬉しいのか? とびっきりの笑顔になってしまう。


 最初、妹たち一人一人に部屋を与えられていたのだが

夜、みんなが、お兄ちゃんと一緒に寝たがるので、

そのうち大部屋で布団を敷いて、六人で寝るようになった。

みんな、隣で寝たい。でも、ふたつしかないので……。

そこで、公平を期すためにお兄ちゃんを中心に時計回りに、

一日ずつずれることにした。


 景竜は妹たちから、女の子特有のとても、いい匂いがするし、

全員声も、すごくカワイイので正直に

「みんなが一緒に寝てくれて嬉しいよ!」

「いい匂いがするし、声も可愛いよ!」と感謝した。

その言葉に妹たち「お兄ちゃん!」「大、大好き!」と、とても喜んだ。


 この屋敷の浴室は大きい。湯船も大人が十数人で入っても余裕の広さです。

小学一年、七歳とまだ小さいので、景竜は必ず一緒に入った。

妹たちは、お互いに洗ったり、ひとりで洗ったりしているけど、

景竜は妹がカワイくて仕方がないので、なるべく丁寧に洗う。

妹たちも大好きな、お兄ちゃんに洗ってもらうのが、とても嬉しいので、

できれば毎日してほしい。

でも、五人も洗いきれないので結局、毎日は無理です。


 小学生の高学年になった頃から、一緒に入浴するのを止めようとしたのだが、

妹たちが、それをすごい嫌がる。  

蘭菜「なんで、お兄ちゃん?」

麗夢「一緒に入ってくれないの?」

蓮々那「もう、カワイくないの?」と拗ねてくる。

月乃「お兄ちゃんは、月乃と入浴しなくちゃいけないの!」

彩「彩も、お兄ちゃんと一緒にわくわくっ!」

可愛い妹たちに押し切られて結局、

現在、中学生になっても状況は変わらなかった。


 それと高校生の景竜は、全国の模試で常に首位を取る秀才です。

日本一の江戸大学も、すんなり合格しました。

それで景竜は、妹たちの家庭教師もしている。

一番、勉強ができる本好きの蓮々那は「勉強は結構、好き」

蘭菜、麗夢、月乃は

「好きってほどじゃないけど、お兄ちゃんに教えてもらうのは楽しい」

苦手にしている彩は「勉強は嫌いだけど、お兄ちゃんは大好き!」

それで、「お兄ちゃんを喜ばせたいから……」と頑張って、

きちんとトップクラスにいる。

つまり、五人は決まって先頭集団にいます。


 余談ですが……。

妹たちが全員、乙女座なので景竜は好きな漫画キャラクターになぞらえて

「最も神に近い妹たち」と心の中で呼んで楽しんでいた。


      妹たちと大きい出来事


 妹たちは声もカワイイ! 五人で歌うと、まるで天使のささやきのようだ。

小学六年の時、音楽の先生に合唱コンクールの出場を勧められた。

場違いに思い、最初は乗り気ではなかったけど、お兄ちゃんに相談すると

「そんなに重く考えないで、出てみれば?」「僕は妹たちの可愛い声も好きだよ!」


   [ODD会議]開幕!

 幼い頃から仲良しだった妹たちは、一瞬で話し合う能力を獲得してしまった。

彩「ヤッタァー!」

「彩たちの声も好きって、お兄ちゃんに言われた」「嬉しい!」

麗夢「お兄ちゃんは、本当に麗夢たちを大切にしてくれる」

蓮々那「これは、お兄ちゃんの思いに応えなければ……」

蘭菜「みんな!」「蓮々那の言う通りね!」

月乃「そうね、月乃も、お兄ちゃんの喜ぶ顔が見たいわ」

蘭菜「お兄ちゃんの笑顔のために頑張りましょう」

他の四人「頑張ろぉー!」

   [ODD会議]閉幕!


大好きな、お兄ちゃんに言われて、心に火がついた。

必死に練習して出場したら、なんと優勝してしまった。

本人たちも驚いていたが、

さらに地元の多数のテレビ局からの出演依頼を気軽にしていたら、

今度は一躍、全国的に人気者になってしまった。


 「ファイブ キュート シスターズ!」という二つ名があるらしい。

容姿端麗なので、数多くの芸能事務所から勧誘されたが、

妹たちは、お兄ちゃんと片時も離れたくないので、きっぱり断った。

そして上杉家と立花家から一言、言われたので、

萎縮して一切、誘いはなくなった。


 もともと妹たちは、すごい可愛いくて明るい性格で、上杉家のお嬢様!

それを鼻に、かけないから女子たちの人気も高いが、

男子からは隠れファンがたくさんいる。

しかし、超ブラコンで有名なので皆、諦めている。


 それと千九百九十九年の春に、景竜の教授の甲斐あって実母の母校である、

松本女学館に楽々と全員、合格しました。

松本女学館は中高一貫校で地元のお嬢様、名門校! 女の子たちの憧れです。

これには義理の父、母、立花さんも大喜びして、

ささやかだけど、松本のマサミチの立派な施設で祝賀会が開催された。

その席で立花さんから

「これは五人とも景竜くんと結婚してくれたら、

私も亡くなった御両親たちも安心だ」

すると父と母も否定せず「景竜が面倒を見てくれたら一生、安心だ」と同調した。


 景竜は心の中で「大人たちは無責任に!」「何を言っているんだ!」と思ったが、

妹たちを見ると望外の喜びの表情をして、はしゃいでいる。

可愛い妹たちのその様子を見ると、自分も嬉しくなった。

景竜の心の中「法律的には無理だけど、

経済的には上杉家と立花家の後ろ盾があれば問題ないか?」

「喫緊の話ではないし、水を指すのはやめよう」

景竜「蘭菜!」「麗夢!」「蓮々那!」「月乃!」「彩!」

「みんな、これからもよろしくね!」


   [ODD会議]開幕! 

 妹たち一同「お兄ちゃん!」「結婚してくれるの!?」

蘭菜「お父さん、お母さん、立花のおじさまも認めてくれたわ!」

麗夢「麗夢も嬉しい!」「いつもは冷静な蓮々那も大喜びね!」

蓮々那「そうよ!」「こんなに嬉しいこと!」「冷静じゃ、いられないわ!」

彩「ワーイワーイ」「お兄ちゃんと結婚できるぅ!」「わくわく…!!」

月乃「月乃たちが、お兄ちゃんのお世話を一生する!」

他の四人「賛成!」「賛成!」「必ず、そうする!」

[ODD会議]閉幕!


 妹たちが喜びのあまり囲んで抱きついてきた。

妹たち一同「お兄ちゃん!」「ありがとう!」

「お兄ちゃんのお世話は、妹たちがするね!」


 妹たちに「ギュー」とされて、改めて思った。

景竜の心の中「いい匂いがして柔らかくて、そして声も可愛い!」「幸せ!」

魅了されていると、

さとい妹たちに見透かされて「もう、お兄ちゃんたら、可愛い!」

お互いにデレデレ状態に! 

それを嬉しそうに景竜の両親と立花氏は見守っていた。


      妹たちと核戦争


 妹たちと初めて会った時から、六年後の千九百九十九年、夏。

妹たちが妙なことを言い出した。

蘭菜「お兄ちゃん」

「この家に核シェルターがあると聞いたんだけど、みんなで行ってみたいな」

麗夢「その話、麗夢も聞きました」「麗夢も行きたいです」

彩「彩も、お兄ちゃんと一緒に行ってみたいな、わくわくっ!」

月乃「月乃も、お兄ちゃんと行ってみたいです」

蓮々那「蓮々那も行きたいから妹たち、みんなの気持ちよ」

 

 景竜の心の中「妹たちが、こんなに強く主張してくるなんて珍しいな」

「しかもシェルターなんて、女の子に面白いと思えないけどなぁ……?」


 上杉家の核シェルターは立花家、もしくは会社マサミチの共有である。

千九百六十二年のキューバ危機などで、

核戦争の恐怖が頻繁に叫ばれていた時代がある。

そこで上杉家と立花家の総力を挙げて、

松本の山の地下に巨大なシェルターを作り上げた。


 上杉、立花の当主たちは本好きなので、

完成したシェルターに書籍を図書館並みに収集してしまった。

さらに、立花の現当主が景竜に強い好意を持っていて、

マサミチの店舗で買い集めたものから、

好みの漫画、アニメ、テレビゲームを把握できる。

そこで、おっせかいにも甚だしいが、同一のものを集めさせて収納した。


 ちなみに年一回、

マサミチの社員たちは総出でシェルターに避難訓練をしています。

そして松本周辺の社員が避難しても百年、

生存できるようにマサミチの技術力を結集して整備してきた。


 蘭菜「お兄ちゃん!」

蓮々那「今度の日曜日にみんなで行こうね!」

麗夢「約束よ!」

景竜は「随分と積極的だな」と思いつつ

「うん、みんなで行こうね!」と返事した。

すると妹たちが「ホッ」としたような表情を見せた。

景竜は「嬉しそうだね?」と声をかけると……。

月乃「月乃」「嬉しいです!」

彩「アーヤ」「わくわく…っ!!」


 そこで特に必要性を感じないので、今まで放置していたのだが、

上杉家の地下室から核シェルターへの通路をとりあえず、

みんなで簡単に掃除した。


 日曜日、長い廊下を通り、

分厚い扉を開けてシェルターに妹たちと初めて訪れた。

思っていた以上に、きちんと清掃されていた。

そして御丁寧に案内図も、あちこちに表示されていた。

景竜が想像以上の巨大さに驚嘆していると妹たちも異口同音に

「大きい!」「すごい!」「綺麗!」「素敵!」「カッコイイ!」

と興奮していた……。


 その時だった!

明らかに非常時を知らせる警報音が鳴った。

そして、多数のモニターから各局の臨時ニュースが放送された。

その信じられない内容は……?

「アメリカとロシアが核戦争を始めた」

「他の核保有国も参戦して全面戦争になりました」

流れてくるラジオ放送も、ほぼ同じ内容だ。


 景竜「なぜ……?」とつぶやくと同時に倒れそうな気分になった。

妹たちを見ると少女たちも全員、青ざめている。「お兄ちゃん……」

すると、今度はシェルターの数箇所ある、

出入り口に通じる廊下の無数の扉が閉まっていく音が聞こえた。


 そして、テレビもラジオも凄まじい爆発音と共に終了した。

あまりのことにあっけにとられていた。人類が滅亡してしまった!?

衝撃の事実にめまいを覚えたが、同時にあることに気がついた。

妹たちが僕を救ってくれた!


 景竜「みんな?」「知っていたの?」

蘭菜「こんなことが起こるなんて知らなかったけど、

数日前から今日の日曜日に大変なことが起きる!」

月乃「そうなの…、よく、わからないけど…」

麗夢「麗夢たち、とても嫌な胸騒ぎがして!」

蓮々那「占いでシェルターが『吉』と出たの」

彩「それで、お兄ちゃんをシェルターに誘ったの!」

景竜「虫の知らせ!」

「蘭菜!」「麗夢!」「蓮々那!」「月乃!」「彩!」「ありがとう!」

妹たちは泣き出して「もっと、たくさんの人を助けられれば、よかった」

景竜「自分を責めないで!」「確信があったわけじゃないんだから」

落ち込む妹たちに、そう言うのが精一杯だった。


      妹たちとテレビゲーム制作


 食料と水道、電気、ガス等の生命線は問題ないようだ。

マサミチの立花家と上杉家で、万が一に備えてきた結晶だ。


 景竜が仰天したことがふたつあった。

ひとつは蔵書の量と種類の多さです。公立の図書館を凌駕している。

景竜の心の中「確かに両家の人は本好きだけど、こんなに集めるなんて!」

妹たちも「図書館みたい!」と驚いている。


 もうひとつは、

ある一室に景竜と妹たちの趣味のものがきちんと収集されていた。

景竜の好きな漫画、アニメとゲームのソフト!

妹たちの好みの楽器と習い事の服や道具!

最新のパソコンを十台以上も揃えた部屋もあった。

おそらく、立花のおじさんが集めさせていたのだろう。「ありがとうございます!」

欲しいものは、何でもある状態だ。


 しかし、このシェルターが、どんなに完備しているとはいえ、

外は核の嵐が吹き荒れている。

もしかしたら、人類はこの六人しか生存していないかも……?

景竜の心の中「人類はこのまま、滅んでしまうのか?」「もうダメなのか?」

すると妹たちが、景竜の胸中を察したのか……?

妹たち一同「諦めたら、そこで終了してしまうよ……?」


 そして、また妹たちが奇妙なことを言い始めた。

彩「お兄ちゃん!」「核兵器ができたのは、いつなの?」

景竜「それは第二次世界大戦中のアメリカだよ」

麗夢「それが日本に使われたの?」

景竜「そうだよ」

蓮々那「日本が核を落とされた、唯一の国だったのよね」

景竜「今までは、そうだったんだけど、

悲しいことに今度は世界が滅んでしまった」

月乃「じゃあ、核兵器がない方がいいよね!」「お兄ちゃん!」

景竜「そりゃあ、そうだけど人類は作ってしまった」

蘭菜「お兄ちゃん!」「それなら第二次世界大戦のテレビゲームを作って!」

そして、妹たち全員「お兄ちゃん!」「作ってください!」


 景竜は正直「何で?」と思ったけれど、真剣な表情。

そして、妹たちの胸騒ぎに救われたので、とっさに「わかった」と返事した。

でも、確かにゲームは好きだけど……。


 今まで制作したことはないので「大丈夫かな?」

「つくれるかな?」と不安を口にすると……。

なぜか? 妹たちは自信満々に「大丈夫、お兄ちゃんは作れます」と答えた。

そう言われると、できる気がしてきた。


 シェルター内には、立派なグランドピアノがあった。

妹たちが代わる代わる、クラシックを弾いてくれた。

景竜は音楽のことは詳しくないけれど、聞き覚えのある名曲ばかりで癒やされた。

景竜「可愛い妹たち!」「ありがとう!」

妹たち「どういたしまして」「頑張ってね、お兄ちゃん!」


 作り始めると順調だった。

まるで以前に何回か、作ったことがあるみたいだった。

なぜか? 後ろで指導している人が、いるような気がする時もある。

さらに就寝している間に大層、進捗している。ここまで来るとありえない。

妹たちは一緒に寝ていて起きた気配はない。夜、誰か?

作業しているみたいな早さだ?


 景竜「嘘だろ」「三日で完成してしまった」

蘭菜「お兄ちゃん!」「お疲れ様!」

彩「さすがは、お兄ちゃん!」

月乃「頑張った、お兄ちゃんに御褒美よ!」そう言って妹たちが横一列に並んだ。

景竜も思わず、立ち上がって向かい合った。

蓮々那「目をつぶって手のひらを上に向けて、籠のようにしていてね!」

麗夢「いいって言うまで、目を開けちゃダメよ!」

景竜「うん、わかった」


 蘭菜「はい、お兄ちゃん!」「大切にしてね!」

蓮々那「はい、お兄ちゃん!」「大切にしてね!」

麗夢「はい、お兄ちゃん!」「大切にしてね!」

月乃「はい、お兄ちゃん!」「大切にしてね!」

彩「はい、お兄ちゃん!」「大切にしてね!」

ひとつずつ何か? 軽めのものを乗せられた。


 妹たち一同「お兄ちゃん!」「目を開けていいよ」

見ると、景竜の手より少し小さい人形が五体。

妹たちがモデルらしい。とても愛おしく、可愛いく思えた。

景竜「ありがとう!」「大切にするね!」その言葉に妹たちは、すごい嬉しそう!

妹たち

「お兄ちゃんがゲーム作りに頑張っているときに裁縫したの、よかった……」


 ゲームの舞台は第二次世界大戦! シュミレーションにRPGを合わせた感じ。

それはいいのだが、景竜の覚えのないことが設定されていた。

この世界の全ての人が日本語が話せる。だから、コンニャクはいらない……。

あと、タバコを吸うという概念がない。

日本語が通じるのは便利だし、

景竜も妹たちも、タバコは嫌いなので助かるけど……。

景竜は匂いを嗅ぐと頭痛がするし、

妹たちも「服や髪に臭い匂いがついて嫌い!」と嬉しい設定がついていた。


      妹たちとゲームをしてみよう


 景竜の心の中「このゲーム制作は奇跡だらけだけど、

それをこだわっていても先に進まない」

「今は妹たちの願い通りに完成したことが重要だ」

景竜「可愛い妹たち!」「ゲームが完成したよ!」

妹たち「やったぁー!」「お兄ちゃん、すぐに遊びましょう!」


 景竜「始める前に少し説明するね」 

妹たち「うん、お兄ちゃん!」

景竜「このゲームの舞台は第二次世界大戦!」

「歴史上の有名人、一般人になってプレイできる」

「それと自分が操作しない有名人たちの性格は、

僕のイメージだから史実と違うこともあります」

「実際に会ってみないと、わからないということで、了承してください」


 景竜「RPGの、ようにレベルがあります」「一から百、そして最上は神!」

「神レベルは不死身、不老、不死、そして、想像しただけで実現してしまう」

「電話ボックスもいらない、まさに最強」

「ただし、良心が痛むような躊躇する行為は具現化しない」

「例えば、罪なき人を殺めるとか、人間性が問われる行動です」


 景竜「それと火、水、風、雷、土、時の六つの属性があります」

「この属性は神レベルになると、効力は地球規模です」

「そして他の属性も、ある程度、行使できます」

景竜「みんなで話し合って属性を決めよう」

妹たち「はい、お兄ちゃん!」

「火は彩」「水は麗夢」「風は蓮々那」「雷は蘭菜」「土は月乃」

「時は景竜」にすんなりと決定。


 景竜「初めてだし、まずは神レベルでやってみようか?」

妹たち「うん!」「いいよ、お兄ちゃん!」

景竜「僕たちは日本人だから、そのまま日本人でいいよね?」

妹たち「賛成です!」「お兄ちゃん!」


 景竜「あと大事なのは開始年月日は、いつにするか?」

「満州国建国前、太平洋戦争開始前、ミッドウェー海戦前、どうしようかな?」

蓮々那「それは蓮々那たちに任せて、お兄ちゃん!」

景竜「うん、そう?」

麗夢「麗夢たちにお任せ」

月乃「月乃たちにお任せ」

彩「彩たちにお任せ」

蘭菜「お兄ちゃん!」「蘭菜たちに任せてね!」

景竜「可愛い妹たちに、そこまで言われたら、そうするしかないよ」

妹たち「ありがとう!」「お兄ちゃん!」

景竜「それで、いつにするの?」

月乃「ごめんね、お兄ちゃん!」「ちょっと秘密」

景竜「えっ〜!」「でも僕は、大好きな妹たちに従うよ」

妹たち「お兄ちゃん!」「大好き!」


 景竜「よし、僕たちは同姓同名の民草の日本人!」

「しかし、神の力を有している」

「属性も決まったし、開始年月日は妹たちに委ねます」

蘭菜「カワイイ妹たちに任せてね!」「お兄ちゃん!」

そして兄にやり方を教わって、妹たちが開始年月日を設定した。


 景竜「うん、じゃあ、やってみようね」

妹たち「うん!」

景竜「では、開始キーをポチッと」と言の葉に合わせて押した瞬間、

パソコンが眩しく光った。

そして景竜と妹たち、このシェルター・山全体が……なんと! 

パソコン画面に吸い込まれた。さらにパソコンは、永遠の空間に包まれた。

だが、なぜ? そうなったのか!? 今は、わからない?


     二十世紀 ゲーム世界編


      妹たちと異世界転移


 千九百四十五年の八月十四日に降伏要求のポツダム宣言の受諾、

そして十五日に発表、さらに調印されたのは、九月二日である。


 それでも、ソ連は九月五日まで日本の北方領土で占領活動、

それに国際法違反である、シベリア抑留を実行した。

その行為を苦々しい思いで見つめる者がいた。

この物語の主人公、上杉景竜と妹たち!


 景竜「日本の敗戦間際に漬け込んだ、ソ連の非道な振る舞いは許せない!」

温厚で滅多な、ことでは立腹しない景竜が怒りに震えているのが、

妹たちにも伝わった。


 満州国、樺太等での民間人に対する虐殺、暴力を目の当たりにして、

妹たちも同じ気持ちだ。

妹たち「戦争とはいえ、ひどすぎる!」と涙を流しながら言った。

景竜も何か、決意した表情をして相槌を打った。


 千九百九十九年七月のあの日、シェルターの一室でパソコンが光り輝き、

衝撃が起きたと思った瞬間、全員が気を失ってしまった。

暫くしてから……。景竜の心の中「シェルター内に風が入ってくる?」

「えっ、これは、まずい」と思ったが、すぐに気がついた。

「これは信州の爽やかな風?」

「放射能測定器が安全を認識したので、

コンピューターがドアを開放したのか……?」


 そして、目を開けて妹たちを見た。自分の目を疑うほど驚いた。

なぜなら、皆、全身が黄金色に光り輝いている。

そして、花のいい匂いもしてくる。

妹たち「うっ、う〜ん、お兄ちゃん!」

彩「これは? 一体、何が起きたの?」

景竜「声も、もっと素敵になっている」

もともと、妹たちの声は可愛らしかったけど、

さらによくなって、まるで天使のささやきだ。


 景竜「みんな、黄金色に光り輝いているし、花のいい匂いもしてくる」

「そして、声ももっと素敵になっているよ」

蓮々那「お兄ちゃんだって光っているし、お花の匂いがするし、

声ももっと、よくなっているよ」

景竜「えっ、本当だ!」「これは、一体?」「まるで神様みたいだ?」

「うん、神?」「もしかして、ここは……?」「ゲームの世界?」

「流行りの異世界転移!」

景竜の心の中「そういえば、パソコンが見当たらない」

「でも、そんなことは今は、まあいいか……!?」

 

 蘭菜「なんで、みんな光っているの?」

景竜「僕も、よくわからないけど」「神の力を手に入れたのかな?」

「とりあえず放射能の心配は、ないみたいだ」

「ちょっと、外の様子をみてくる……」

妹たち「一緒に行くよ」「お兄ちゃん!」

景竜「よし、一緒に行こう」と全員で外に出ることを想像した瞬間。

シェルターの山の頂上に、みんなでいた。

麗夢「今、麗夢たち瞬間移動したよ」

月乃「び、びっくりした〜!」

蓮々那「でも、ピンクのドアも要らないね!」

妹たち一同「うん!」


松本の街が見える。

そして、街並みを凝視すると望遠鏡のように拡大して、

なんと人の表情まで確認できた。

これも人間離れしている。


 景色の雰囲気は戦前を彷彿させた。

麗夢「街が少し、昔みたい」彼女たちも、平成ではないことが気づいたみたいだ。

景竜「間違いない、ここは僕が作ったゲームの世界だ」

蓮々那「そう思った方が辻褄が合うよね、お兄ちゃん!」

蘭菜「そうね、特殊な能力も簡単に使えちゃうしね、お兄ちゃん!」

景竜「うん、そうだね」「ここは太平洋戦争中の松本だね」

上杉家と立花家の屋敷、マサミチの社屋も見えた。


 景竜「さしあたって僕たちの家に行こう」

妹たち「うん、お兄ちゃん!」

屋敷に行くと想像した……、すると五人は玄関に立っていた。

彩「あっという間に移動できちゃう」


 埼玉に本宅があるので、松本の家は今、無人のようだ。

景竜の心の中「また想像しただけで瞬間移動した」

それだけでも、驚愕することだが……、さらに

「あっ、家の中、よごれている……」

「綺麗にしたい」と思ったら、なんと、みるみると「ピカピカ」に綺麗になった。

月乃「すごい」「屋敷も綺麗になる」


 確信した景竜は「フッフッフ」「僕は手に入れたぞ」

「神の力を手に入れたぞ!」「僕は!」「僕は!」「ゴッドマンだ!」

大好きな漫画の名場面を妄想してしまう景竜。

聡明な妹たちは

「お兄ちゃんたら、また漫画か、アニメの世界に入っちゃているのね」

お慕いする兄を見守る妹たち。


 そして、居間を想像すると玄関から瞬間移動した。

住み慣れた屋敷で、当然のようにソファーに座った。

景竜「ところで、今日は何年の何月何日なのかな?」と言った瞬間に空間に

「千九百四十五年五月一日」と液晶ディスプレイのように表示された。

景竜「僕たちの疑問も教えてくれるんだ」と驚きながら言うと

妹たちも、びっくりしながら「やっぱり、五月一日に行けたんだ」と言った。


 景竜「千九百四十五年の五月一日!」「あっ!」「もしかしたら?」

「こうなると、わかっていたんだ?」 「ありがとうね!」「みんな!」

「ヒトラーのホロコースト(ユダヤ人に対する大量虐殺)は許せない!」

「したがって、処刑しなければならない!」

「しかし、悪人といえど殺生はしたくない!」

「だから、ヒトラーと出会いたくない!」

「僕のそういう葛藤を汲んで、

ゲームの開始日をヒトラーの自殺した翌日にしてくれたんだね」

「ありがとう!」


 妹たちは神妙な顔で、蘭菜「でも、確信ってわけじゃないの……」

麗夢「多分、そうなるかなって感じ……」

蓮々那、月乃、彩「うん」と言った。


 景竜「コーヒーか、お茶でも飲みたいね?」と妹たちに言った。

妹たちが「うん、お兄ちゃん!」と返事を言い終わらないうちに、

なんと人数分のコーヒー、緑茶、紅茶のホットが出現した。

景竜「設定した通り、想像したことは何でも実現するみたいだ」

妹たち「うん、お兄ちゃん!」「すごいね」と言いつつも、

この状況に全員が慣れてきたみたいだ。


 試しに飲んでみると、とても美味しかった。

妹たちと、お茶を暫し楽しんだ後に言った。

景竜「僕たちの能力を確認してみよう!」

妹たち一同「大賛成です!」


      妹たちと能力の確認


 人に見られたら面倒なので、

上杉家の私有地である、なだらかな山の頂上に瞬間移動した。

景竜「まずは念話テレパシーから、やってみよう」

心の中で妹たちに話しかけてみた。「可愛い妹たち!」「僕の声が聞こえる?」


 すると妹たち全員から嬉しそうに

蘭菜「聞こえるよ!」「お兄ちゃん!」

麗夢「聞こえるよ!」「お兄ちゃん!」

蓮々那「聞こえるよ!」「お兄ちゃん!」

月乃「聞こえるよ!」「お兄ちゃん!」

彩「聞こえるよ!」「お兄ちゃん!」と応答があった。

妹たちは、兄と心の中でも話せるのが楽しいらしい。


 景竜「次は透視と千里眼を試してみよう」「ちょうど大木が視界を遮っている」

「『木が透ける』と想像してみて」と妹たちに声をかける。

言われた通りにやってみると大木が透けて、先の景色が見えた。

妹たち「あっ、本当に見えるよ」「お兄ちゃん!」


 だが、あることに気がついて、

全員が「妹以外にエッチに使っちゃダメよ」と真剣に言う。

景竜は内心「妹たちは、いいのか?」ツッコんだが

「僕は可愛い妹たちが、いれば最高さ」と答えた。

すると妹たちは、とても御機嫌になった。


 気を取り直して、景竜「千里眼をやってみよう」

彩「千里眼って何?」

蓮々那「遠いところの出来事を見通す力よ」

彩「ふ〜ん、そうなんだ」「教えてくれて、ありがとう!」

蘭菜「さすが、蓮々那は物知りね」麗夢と月乃も頷いている。

景竜「蓮々那は、本好きの成果だね」

蓮々那は、お兄ちゃんに褒められて嬉しそう。


 景竜「ところで、みんなはペンギンは好き?」妹たち「大好き!」

景竜「『南極にいるペンギンが見える』と想像してみよう」

すると、景竜と妹たちは氷上を「ヨチヨチ」と歩くカワイらしいペンギンが見えた。

妹たち「ぺ、ぺ、ペンギンさん!」「可愛い!」


 景竜「次は念力テレキネシス

妹たちに横一列に並んでもらい、

銘々の前に創造能力を使って、巨大な岩を置いた。

景竜「その岩を浮かせてみて」

妹たち「うん、お兄ちゃん!」そして「浮いて」と思ったら簡単に浮いた。

景竜「今度は砕いてみて」

妹たち「はい、お兄ちゃん!」そして「砕けて」と思ったら容易に砕けた。


景竜「よーし、次は自分たちが浮いてみよう」

妹たち「それは少し怖いけど、やってみるね」「せ〜の、浮いて!」

すると、みんな地面から一メートルぐらい浮いた。

彩「わっー!」

月乃「浮いているよぉ!」

蓮々那「お兄ちゃん!」

蘭菜「やっぱり、ちょっと怖い!」

景竜「ごめんね」「怖い思いをさせて」「みんな、降りて」

その言葉を聞いて、妹たちは着地した。

麗夢「うぅん、大丈夫よ!」「お兄ちゃん!」


 景竜「慣れれば、空も飛べるかもしれないね」

その発言に妹たちは、少し複雑な気持ち。

妹たち一同「空を飛べるのは嬉しいけど、正直、高いところは怖いかな?」

景竜「大丈夫」「無理してやらないで、気の赴くままにやればいいからね」

妹たち「うん、お兄ちゃん!」


 景竜「試したいことがあるし、今度は僕がはるか高く浮いてみよう」

妹たち「えっ?」と驚いていると、あっという間に高く上がって落下した。

月乃「キャアー!」

彩「お兄ちゃん!」

蓮々那「大丈夫!」と妹たちの心配をよそに「ピンピン」している。

景竜「やっぱり」「予想した通り、神の力で何ともないな」

麗夢「もう」

蘭菜「びっくりさせないで、お兄ちゃん!」と妹たちが少し怒る。

景竜「ごめん」「ごめん」と謝る景竜。


 その時だった。「キャッー」と突然、妹たちの悲鳴!

驚いて妹たちの指差す、しげみを見ると、カマキリがチョウを捕獲していた。

妹たち「チョウチョさんを助けてあげて!」

「お兄ちゃん!」と涙目で訴えてくる。

景竜は食物連鎖も自然界の掟だと思ったが、

妹に超甘い兄なので

「可愛い妹を泣かせる奴は、死んでしまえ」とつい思ってしまった。


 すると驚いたことにチョウを掴んだまま、カマキリが「コテッ」と倒れた。

妹たちも「えっ!」と驚く、景竜が近づいて見てみると、

なんとカマキリは絶命していて、チョウは羽が「ボロボロ」で虫の息だった。

景竜は不憫に思い、カマキリとチョウを助けたいと思った。

その瞬間だった。カマキリは生き返り、チョウは羽が綺麗に蘇り元気になった。


 しかし、再びチョウに襲いかかったので、

思わず「世界!」「停止!」と言った。

時が止まった! 景竜と妹たちは動ける。

景竜「あっ、ゲームの設定通りだ」と少し冷静だったが妹たちは大騒ぎだ。

蓮々那「えっ?」「えっ?」

彩「何が起きたの?」

景竜「僕が時を止めたんだよ」

蘭菜「お兄ちゃん!」「そんなこと、できちゃうんだ」

麗夢「すごい!」

景竜「こんなことも、できるよ」「世界!」「逆行!」

まるで、逆再生を見てるみたいに時が戻っていく。


 そして、カマキリがチョウを捕まえようとしたところまで戻して、

蝶を離れたところに瞬間移動させてあげた。

月乃「時間が戻った?」

景竜「そうだよ」

月乃「時間を止めて、戻すこともできるんだね」

蓮々那「でも、お兄ちゃんと蓮々那たちは動けるんだね」

景竜「僕たちは、神の力のおかげで干渉されないんだよ」

「それと、あとひとつ驚愕することが起きたね」


 彩「カマキリさんが、死んだけど生き返った!」

月乃「死にそうだったチョウチョさんが、元気になった!」

蘭菜「お兄ちゃん!」「これは?」

景竜「僕たちは、どうやら神の能力で治癒ができて、

生物の生死も決定できるらしい」

「おそらく人間も例外じゃないだろう」

蓮々那「怪我や病気が治るのは嬉しいけど……」「たとえ虫でも、殺すのは嫌!」

景竜「ノートも必要ない」「恐ろしい能力だ!」「この力は不行使にしよう」

「この力は好きになれない」

麗夢「賛成です」「殺生は嫌いです!」


 景竜「最後に、みんなの属性の能力を確認しよう」

妹たち「うん、お兄ちゃん!」

先程と同じように横一列に並んでもらって、再び巨大な岩をそれぞれに置いた。

景竜「みんな!」「『岩を攻撃する』と想像してみて」


 妹たちは言われた通りに、ただ想像してみた。すると

蘭菜から、雷が放たれ岩を砕いた。

麗夢から、冷気が放たれ岩を氷漬けにした。

蓮々那から、風が刃と化して岩を両断した。

月乃から、石が放たれ岩を貫いた。

彩から、炎の球が放たれ岩を溶かした。

景竜「予想通り、設定した属性通りだね」

妹たち「うん、お兄ちゃん!」


 景竜「ちょっと、試したいことがあるから、みんな協力してね」

妹たち「うん、いいよ、お兄ちゃん」

景竜「じゃあ、僕の言う通りにやってみて」

妹たちの前に超巨大な岩をひとつ置いて、砕け散るたびに新たに用意した。

景竜「みんなで火で攻撃」すると、妹たち全員から火の球がはなたれた。

  「みんなで氷で攻撃」すると、妹たち全員から冷気が放たれた。

  「みんなで風で攻撃」すると、妹たち全員から刃と化した風が放たれた。

  「みんなで雷で攻撃」すると、妹たち全員から雷が放たれた。

  「みんなで土で攻撃」すると、妹たち全員から高速の石が放たれた。

景竜「みんな、安易にできてしまうね」

「さらに自分の属性の能力は、地球規模で発揮できるはずだ」


 蘭菜「すごいね、お兄ちゃん!」

麗夢「ところで、お兄ちゃんの時の能力は?」

月乃「さっき見せてくれたのだよね?」

景竜「昔、読んだ漫画のキャラクターの能力を参考にしたんだ」

「時を停止させる、時を逆行させる」

「さらにさらに、この世界で経過した日時なら何度でも戻ることができる」

「あの日は大失敗して後悔した」「そんな時でも、やり直せる」

彩「すごい!」


 景竜「うん」「でも、僕たちの能力で最も着目すべきものは……」

蓮々那「躊躇しなければ、想像したことは何でもできてしまう」

「簡単に言うと、良心が咎めること以外は実現しちゃう」

景竜「蓮々那、そうだね」


 景竜「これで、一通り能力は確認したと思う」

「これから、僕たちが志すべき世界について話し合おう」

妹たち「はい!」「お兄ちゃん!」

景竜「じゃあ、家に戻ろうか?」妹たち「うん!」

家の中に瞬間移動して、くつろごうとしている時だった。

「ピンポーン!」と呼び鈴が押された。

突然の事態にみんな、気持ちがあっせた。


      妹たちとご近所トラブル?


 千里眼で屋敷の外をうかがうと七、八人の老若男女が見えた。

景竜「あっ、もしかして屋敷は不在だったのに見知らぬ僕たちが

今、突然いるから近所の人たちが怪しんで、様子を見に来たんじゃないかな?」

蓮々那「お兄ちゃんの言う通りだと思う……」

他の妹たち「うん……」

景竜「上杉家の人間として、ご近所の方たちと揉め事は起こしたくないなぁ」

「なんとか、納得してもらう方法は……?」


     [ODD会議]開幕!

 蘭菜「お兄ちゃんが困っているわ!」

麗夢「麗夢たちで、お兄ちゃんを助けましょう!」

彩「賛成!」

月乃「でも、どうしたら、いいのかな?」

蓮々那「お兄ちゃんは、お父様によく似ているでしょ」

他の妹たち「あっ!」

蓮々那「だから、お兄ちゃんが『僕たちは上杉家の者です」

と言えば少しは納得してくれると思う……」

蘭菜「それは、いいアイデアね!」

月乃「それに月乃たち、本当に上杉だしね!」

彩「彩も、そう思う」

麗夢「お兄ちゃんが話しした後、麗夢たちで訴えてみようよ!」

他の妹たち「大賛成!」

     [ODD会議]閉幕!


 蘭菜「お兄ちゃん!」「『上杉の人間です』と語りかけてみて!」

景竜「そうだね!」「嘘じゃないしね!」「よし、ちょっと行ってくるよ」

麗夢「麗夢たちも行くよ!」他の妹たちも頷いている。

景竜「じゃあ、みんなで行こう!」

妹たち「うん、お兄ちゃん!」


 門の外から全員が怪訝そうな顔をして、こちらを見ていた。

景竜たちが近づいていくと全員が「あっ!」「あれっ!」という顔になった。

口々に「旦那様?」「お坊ちゃん?」と言って首を傾けている。

とても似ているが、年齢が合わないので不審に思っているのだろう!?


 そこで景竜が「僕たちは、上杉の者です!」と言った!

すると一番の年配の代表らしき男が

「私たちは上杉家の方たちに大変、お世話になっている近所の者です」

「似ているけど、お年が……?」と納得できない様子。 


 しかし、妹たちが声を揃えて一同で

蘭菜「皆様、お兄ちゃんを信じてください!」

麗夢「皆様、お兄ちゃんを信じてください!」

蓮々那「皆様、お兄ちゃんを信じてください!」

月乃「皆様、お兄ちゃんを信じてください!」

彩「皆様、お兄ちゃんを信じてください!」と言った途端。


 今までの雰囲気が嘘みたいに、全員が異口同音に

「妹さんたちが言っているから!」

「その通りだ!」「そうそう!」とすごい納得している。

そして「お騒がせして、すみません!」と頭を下げて、

安心しきった表情で、あっさりと帰っていった。


 景竜の心の中「これも神の能力?」

「妹たち全員で『言ったこと』は必ず、納得してしまう!」

「これは正直、『使える!』と思った」


      妹たちと景竜の決意


景竜たちが、ソファーに座り「何か、飲みたい」と思っただけで、

各々の前に飲み物が提供された。

コーヒー、紅茶、緑茶等、望むものは何でも。

いわゆる物質創造能力だが、慣れてきて誰も驚かなくなってしまった。


 景竜「僕たちは日本人だね!」

麗夢「それはそうだけど……」

蘭菜「それが、なぁにぃ?」

蓮々那、月乃、彩「お兄ちゃん!?」

景竜「僕は『世界を安寧に導くのに相応しい民族は日本人だ』

と本気で思っている」

「その理由は縄文、平安、江戸時代などの長期の平和は世界的に見て異例だ」

「さらに日本はナチスドイツの同盟国だったのにも関わらず、

ユダヤ人を救った樋口季一郎、杉原千畝などの人物がいる」

「この話の実例からも、日本が親身な国だとわかる」


 景竜「その上、僕たちはこの世界では僥倖にも神の能力を得た」

「だからこそ、そのことに慢心せず、核兵器のない平和を築きたい」

「そして僕の理想である戦争と飢餓がない、

かつ全ての人が教育を受けられる世界にしたい」

「僕たちの力は、ひとりでも世界を支配できる」

「それが今、ここに六人も存在しているのだから、

みんなで力を合わせて、世界の人々を幸せに導こう!」

「妹たちにお願いします!」「どうか、みんな!」「僕に協力してほしい!」

そう発言すると、立ち上がって深々と頭を下げた。


 景竜の、この行動に妹たちは、びっくりしてしまった。

なぜなら、妹たちからの「お願い」は頻繁だけど、

兄からの要望は滅多にないからです。

妹たち「お兄ちゃん!」

麗夢「頭を上げて!」

月乃「大好きな、お兄ちゃんに協力するよ!」

蓮々那「それに世界の人たちの幸せを願う気持ちに『グッ!』ときたわ」

彩「手伝うよ、お兄ちゃん!」

景竜「本当にありがとう!」「みんな!」

蘭菜「そんなの水臭いよ!」 「お兄ちゃん!」


 景竜「感謝します!」「じゃあ、作戦を説明するね」

妹たち「うん、お兄ちゃん!」

妹たちは景竜の話を驚嘆しながら、真剣に耳を傾けた……。


      妹たちと時を戻す、そして、もうひとつの世界を創造する


 千九百四十五年五月一日の長い一日も夕方、もうすぐ日が暮れそうだ。

景竜「戦争の犠牲者をもう、

これ以上、増やさないために時間を戻せるところまで戻します」

妹たち「うん、お兄ちゃん!」

景竜「世界!」「逆行!」

まるで逆再生しているみたいに、時が逆流していくのが妹たちにも、わかった。

そして、五月一日の朝になった。


 景竜「よし!」「作戦通り、みんなで願うよ!」

そして、自然と六人で輪になり、手をつないで願った。

なんと、地球と瓜二つな、幻影の世界を創造した。

これは好き放題に、攻撃させるための世界。

連合国が攻撃の意思を持つと、瞬く間に転移します。

幻なので誰も死傷しませんし、攻めている方もそのことに全然、気づきません。


 そして幻影の世界ではない、真の世界。

こちらのアジアの日本人とヨーロッパのドイツ人は眠ってもらった。

いわゆる人工冬眠。

千九百四十五年の五月は沖縄戦の最中だが、

この方法により犠牲者は、もういません。

しかし、眠っていても敗戦の悲惨さを受け止めてもらうために、

夢の中で史実を実体験します。


      妹たちと祖父と立花当主に会う


 景竜と妹たちは、祖父に会うためと念のため、

まだ結婚していない両親の様子を見に行くことにした。

埼玉の母の実家の真田邸。七歳の美少女が寝ている。

そこへ景竜と妹たちが、忽然と現れた。

いつもの通り、「母の部屋へ」と想像しただけで瞬間移動したのだ。


 妹たち一同「お母さん!」「可愛い!」

「マジ、天使!」と大喜びで、はしゃいでいる。

景竜も心の中で「ママ、超、可愛いじゃん」と少し照れてしまった。

勘が鋭い妹たちが、それを見て「ニコニコ」笑っている。

景竜は本当は、もっと見ていたかっが、恥ずかしいのをごまかすように

「もう、父さんのところに行くよ」と声をかけた。

妹たち「は〜い!」


上杉邸。まだ八歳の父が「スヤスヤ」寝ている。

妹たち一同「お父さんも可愛い!」とまた、喜んでいる。

景竜が誕生したのだから、両親が無事なのは当然なんだけど、

やはり実際に確認すると「ホッ」とする。


 景竜「よし!」「両親の安泰は確かめたから、僕のおじいちゃんに会おう」

妹たち「はい!」「お兄ちゃん!」

実は景竜が出生したときには、もう他界していたので会ったことがありません。

だから、人柄がわからないので少し緊張した。


 妹たちと祖父の部屋に行き、寝ているのを眺めた。

景竜は正直、「ごく普通の中年のおじさんだぁ」と思った。

そして眠りを解いて起きてもらった。

眠たげだったが、黄金色に輝く若者たちがいることに驚いていた。

祖父「君たちは……?」


 景竜「おじいちゃん!」「初めまして、孫の景竜です」「未来から来ました!」

「そして、僕の可愛い五人の妹たちを紹介します」

蘭菜「おじいちゃん!」「初めまして、孫の蘭菜です」

麗夢「おじいちゃん!」「初めまして、孫の麗夢です」

蓮々那「おじいちゃん!」「初めまして、孫の蓮々那です」

月乃「おじいちゃん!」「初めまして、孫の月乃です」

彩「おじいちゃん!」「初めまして、孫の彩です」

声も神々しい。いい花の匂いも漂ってくる。


 最初、祖父はかなり驚いていた様子だった。

そりゃあ、そうでしょう。

いきなり孫を名乗るものが六人も現れて、

しかも、未来人で黄金色に輝いているのだから。


 しかし刹那、景竜たちを見つめただけで確信した。

「この子たちは真実を言っている」

男の子は息子に面影あるし、

なぜなら、全員の瞳が澄んでいたから……。


 祖父「息子は六人も子供を授かるのか!?」「これは、めでたい!」

「しかも、女の子たちはみんな、めんこいなぁ!」

景竜「ごめんね!」「おじいちゃん!」

「僕は男だけの三人兄弟の次男坊で父さんの実の子だけど、

五人の妹たちはマサミチの社員の子供たちで、

不幸があって、上杉家に養子に来てもらったんだ」

祖父「養子でも実子でも関係ない」

「こんな可愛い娘たちが、わしの孫だなんて、おじいちゃんは嬉しいぞ!」

妹たち一同「おじいちゃん!」「ありがとう!」

みんなで、きちんと揃って、お辞儀した。

その礼儀正しい様子は、とても微笑ましかった。


 景竜「突然で申し訳ないけど、おじいちゃんと立花家にお願いがあるんだ」

祖父「上杉家と立花家は、昔からの良好な関係があるから、

話は順調に進むじゃろう」

景竜「そこで、松本の立花家に一緒に行ってほしいんだ」

祖父「可愛い孫の頼みじゃ、いいとも!」

景竜と妹たち「ありがとう!」「おじいちゃん!」

景竜「それでは早速、移動します」

祖父「えっ!?」


祖父が戸惑っている瞬間に、風景がガラリと変わり立花家の廊下にいた。

祖父「ここは?」「立花さんの……?」

景竜「いきなり、人様の部屋に侵入するのは無礼ですが、

火急の用事なので御容赦ください」

祖父「やはり、立花さんの屋敷の中か?」

景竜「そうです」と言って、ある部屋のドアを開けた。

すると、中年男性が就寝しているのが見えた。

祖父「あっ、立花さん!」


そして、景竜が男性に手のひらを向けた途端に「ムクッ」と起き上がった。

立花氏「そこにいるのは、どなたかな?」

祖父「わしじゃ、上杉だ」「立花さん!」

立花氏「おぉっ、上杉さん!」「いくら、親友だからって」

「突然、寝室に来たのはビックリしたぞい」

「あれ、目の錯覚かな?」「黄金色に輝く若者たちが見えるぞ」

祖父「それが、可愛い孫たちと一緒なんじゃ」

立花氏「えっ、孫?」「息子さんもまだ、小さいのに?」


 景竜「初めまして、立花さん!」「祖父の言う通り、孫の景竜です」

「未来から来ました!」「よろしく、お願いします!」

蘭菜「初めまして、蘭菜です」「よろしく、お願いします」

麗夢「初めまして、麗夢です」「よろしく、お願いします」

蓮々那「初めまして、蓮々那です」「よろしく、お願いします」

月乃「初めまして、月乃です」「よろしく、お願いします」

彩「初めまして、彩です」「よろしく、お願いします」


 立花さんも驚愕していたが、すぐに表情を和らげて……。

立花氏「これは、みんな丁寧な挨拶じゃ」

「わしが、立花家の当主じゃ」「こちらこそ、よろしく!」

「確かに景竜君は息子さんに似ているな」

「『未来から』という話は本当のようだ」

「それにしても、女の子たちはみんな、べっぴんさんじゃな!」

妹たち、声を揃えて「ありがとうございます!」


 立花さんは、ますます喜び、冗談で「本当に上杉さんの孫かい?」

すると、微妙に気まずい雰囲気……。

祖父「この娘たちは養女なんだよ」

「こんなに可愛い娘たちが、上杉家に来てくれて、わしは嬉しい」

この祖父の言葉に空気が和んで、みんな笑顔になった。


 景竜「今日は立花さんとおじいちゃんに、

どうしても、お願いしたい件があるんだ」

祖父と立花氏は声を合わせて「できる限り、何でもしてやるぞ」

そして、ふたりは顔を見合わせて「ニヤリ」と笑った。


 景竜「ありがとうございます!」そして、頭を下げた。

妹たちもつられて「ペコリ」と御辞儀した。

その仕草が愛らしくて余計、にやけてしまう中年男性たちだった。


 景竜「お願いというのは……」

ふたりは真剣な表情で話に耳を傾けた。


      妹たちと御前会議


 景竜は次に日本の最高決定機関である、御前会議に参加した。 

日本、世界の静謐のために行動することを、了承してもらうためである。


 八月十四日の皇居の防空壕の一室で、最後の御前会議!

この会議は、とても重要なので夢の中で済ませず、目を覚まして来ていただいた。

メンバーは昭和天皇、鈴木首相、東郷外相、阿南陸相、米内海相、梅津参謀総長、

豊田軍令部総長、平沼枢密院議長。

そこに見知った顔の黄金色に輝く若い男女、六人が忽然と出現した。

お花畑が存在するかのような、いい匂いもしてくる。

なぜ? 知っているのか?

それは三日前から必ず、

各人の夢枕に立って、会議に出席する意志を伝えてきていたのだ。


 御前会議、参加者たちの夢の中。

景竜「僕は上杉景竜と言います」「よろしく、お願いします」

「こちらの少女たちは義理の妹たちです」

妹たち一同「よろしく、お願いします」


 景竜「詳しく話せませんが、簡潔に述べると未来から来ました」

「この戦争で広島と長崎に落とされた新型爆弾、

原子爆弾の破壊力は凄まじいです」

「将来、人間は人類を滅亡させられる量の核兵器を保有してしまいます」

「残念ながら、全て使用されて人類は滅びました」

「その過ちを正すために、過去に来ました」


 にわかには信じがたい話だが三日連続、夢に出てきた。

そして今、花のいい匂いを漂わせて、黄金色に輝く姿で地下壕に突然、現れた。

もう、十分に神の次元だった。


 景竜は敬慕する昭和天皇を前にして緊張していたが口を開いた。

「皆様方の夢に御邪魔させていただいた、上杉景竜と妹たちです」

「よろしく、お願いします」

蘭菜「皆様、よろしく、お願いします」

麗夢「皆様、よろしく、お願いします」

蓮々那「皆様、よろしく、お願いします」

月乃「皆様、よろしく、お願いします」

彩「皆様、よろしく、お願いします」


 御前会議の出席者たちは、さらに驚嘆してしまった。

それは景竜と妹たちの声が、

まるで神と女神を思わせるように、耳に心地よかったからだ。

その場にいた人たちは、とても神聖な者たちに巡り合った気持ちになった。


 景竜「参謀たちの検証によれば、日本は必ず、アメリカに負ける」

「現在の戦争は消耗戦で、国力で勝敗は決する」

「挑発されたとはいえ、国力差が十二倍あるアメリカに挑むのは愚鈍です」

「国民に国力差を説明して、無謀な戦であることの理解を得るべきだった」

「そもそも、太平洋戦争の原因の日中戦争」

「日本に中国を侵略する、大義名分はありません!」

「その上、人種差別を標榜するナチスドイツと同盟するのは道義に反します!」

神の雰囲気をまとう景竜に正論を言われて、押し黙るしかなかった。

「そして和平交渉の仲介をソ連に依頼して、

日ソ中立条約が有効期限内だったのにも関わらず、攻め込まれる始末!」

「『ソ連・ロシアはヨーロッパ諸国でも最も信頼できない国だ』

と言っても過言ではありません」


 景竜「陛下は首尾一貫、戦争反対だったのに、今や日本は亡国の危機!」

「心中をお察しいたしますと胸が痛みます」

「しかし、僕たちの能力の駆使して、

日本を勝利に導きますので御安心ください」

景竜のその言葉に一瞬、胸のつかえが取れた表情になられたが、

すぐにまた真剣な趣になった。

天皇陛下「日本国民の平穏のために頼みましたぞ!」と仰せられた。

景竜と妹たち「御意!」

そして景竜は参加者、全員に作戦を説明した……。

その内容に驚きを隠せなかった。


 景竜「制圧部隊の派遣準備をしてください」

「人選と規模は、お任せします」

「勝者といえど、おごらず日本人であることを誇りに持って、

紳士な行動をお願いします」

大臣たちは、得心して深く頷いた。


      妹たちと世界の首脳たち


 千九百四十五年の九月三日から五日までの三日連続、

アメリカのトルーマン大統領、イギリスのチャーチル前首相とアトリー現首相、

ソ連のスターリン書記長、中国の国民政府主席の蔣介石と共産党首席の毛沢東、

インドのガンジー、ドイツのデーニッツ大統領。


 実は、この八人は奇妙な夢を見ていた。

現れたひとりの男と五人の美少女! 彼らはなぜか? 黄金色に輝いている。

そして、こう告げた。


 景竜「僕たちは、未来から来た日本人です」「よろしく、お願いします」

「この大戦中にアメリカが開発した原子爆弾!」「核兵器!」

「将来、あちこちの国が保有します」

「そして全ての核兵器が使用されて、人類は滅亡します」

「それを是正するために、この大戦の勝利者は日本にします」

「さらに世界の安寧は、日本が構築します」

「そして、東京で連合国側の降伏の確認、今後の世界の様相を説明します」

「そういうわけで、会合に出席してください」

指導者たちは

「アメリカ、ソ連、イギリスの連合国側の勝利は目前なのに途方もない話だ」

と思った。

「ドイツは、すでに降伏しているし、日本も風前の灯だ……」


 千九百四十四年の十月のレイテ沖海戦で、連合艦隊は壊滅。

十一月から始まった空襲で、日本の大都市は焼け野原。

千九百四十五年の六月に、沖縄守備軍の指揮系統は消滅。

八月九日から九月五日までのソ連の侵略で、満州、樺太、千島を失った。

 

 そして、千九百四十五年九月二日、

東京湾上のアメリカの戦艦ミズーリの甲板上において、

日本の降伏文書が調印された?

この世界でも、再び日本は負けてしまうのか? 否!


 同年の九月六日、

東京の赤坂離宮の会議場の空間に投影された。

この映像を一瞬も見逃さず、見つめている人たちがいた。

前述の八人の首脳たちだ。


 それに黄金色に輝く人たちがいる。花のようないい匂いもしてくる。

もちろん、景竜と妹たちだ。そして神を思わせる荘厳な声が響いた。


 景竜「この状況が本来、起こるはずだった姿です」

「しかし現実は、

この大戦の勝利者は日本なので、全ての決定権はこちらにあると御理解ください」

「世界征服の確認と、これからの世界の概略を説明します」


 景竜「しかし、その前にアメリカとイギリスに

『開戦に関する条約』に違反して、宣戦布告が遅れたことを謝罪します」

そして景竜と妹たちは、両国に深々と頭を下げた。

勝者であり、生き神の雰囲気をまといながらも、

景竜の謙虚な姿勢に驚嘆せずにはいられなかった。


 ところで、日本はなぜ? 勝利することができたのか?

九月六日の朝、アジアの日本人とヨーロッパのドイツ人は人工冬眠から目覚めた!


 そして、世界は一変していた。

戦争の激しい攻防によりアジア、ヨーロッパの、

あちらこちらの街が破壊されたはずなのに、元の状態に戻っていた。

日本、中国、ドイツ、イギリス等の全ての都市が……。


 ある男性「あっりゃあー、ぶったまげたぁー」

「街が粉々になっていたはずなのに……」「戦争する前と同じになっている……」

ある女性「本当に信じられない」「神様の仕業かしら……」

このような、やり取りが至る所で見られた。


 それだけじゃない、

建物だけではない人間も……、大戦で生じた傷病が完治していた。

それと、もうひとつ驚愕することが起きていた。

なんと銃以上の武器がない! 製造工場もない!

つまり、日本以外の全ての国が丸腰になってしまった。


 中国の八大古都の

鄭州、安陽、洛陽、西安、南京、杭州、開封、北京は治安が保たれていた。   

アメリカのワシントン、ソ連のモスクワ、イギリスのロンドン等の連合国の首都。

そして、国民政府の重慶、中国共産党の延安に

整然とした日本軍が突然、出現して制圧してしまった。

乱暴狼藉なことは一切せず、礼儀正しい物腰が柔らかい態度だった。

さらに驚いたことは、日本軍に反抗しようとすると体が動かなくなり、

諦めて、その気持ちが失せると自由に動けた。

こうして、あっけなく日本が勝利した。


 各地の制圧部隊の指揮官は、世界の首脳に申し上げた。

「貴国の主要都市は我々が制圧しました」

「これから、東京での会合に出席してください」

その瞬間、気がついたら大きいテーブルを囲んで着席していた。

しかも身なりまで、きちんと整えられていた。


 世界中の人々は、

これらの奇跡の連続に神の存在を感じぜずには、いられなかった。

「信じられない」「あの状況をひっくり返すなんて……」

「日本は、神が味方しているのか!?」


      妹たちと首脳会議


 海外の出席者はアメリカのトルーマン、イギリスのチャーチルとアトリー、

ソ連のスターリン、中国の蔣介石と毛沢東、

インドのガンジー、ドイツのデーニッツ。

そして日本からは、もちろん主人公の上杉景竜と五人の妹たち!


 景竜「皆様の夢の世界に御邪魔させていただきましたが、

本題に入る前に改めて、御挨拶をさせてください」

「僕は未来から来た、日本人で上杉景竜と言います」「よろしく、お願いします」

蘭菜「妹の蘭菜です」「よろしく、お願いします」

麗夢「妹の麗夢です」「よろしく、お願いします」

連々那「妹の蓮々那です」「よろしく、お願いします」

月乃「妹の月乃です」「よろしく、お願いします」

彩「妹の彩です」「よろしく、お願いします」


 そして、六人は起立して御辞儀した。あくまで謙虚な姿勢だった。

さらに連合国側の首脳たちは、

突然の敗戦の衝撃で暗然たる気持ちになっていたが、

天使を思わせる五人の美少女たちの佇まいに、幾分か救われた気がした。


 景竜

「降伏の確認の前に連合国側の方たちに一言、申しておきたいことがあります」

「この大戦中の無抵抗な民間人や捕虜に対する、悪逆非道の行為は罪に問います」

「しかし、単なる軍事作戦上の犠牲は不問にします」

「日本とドイツに平和に対する罪があると言うのなら……?」

「アメリカは?」「インディアンの平和に対する罪は?」

「イギリスは?」「アフリカとアジアの平和に対する罪は?」 

「ソ連は?」「ポーランドの平和に対する罪は?」

「これらの罪を全て、裁くのですか?」

「連合国側の論理は、公平さに欠けています」

景竜はトルーマン、チャーチルとアトリー、スターリンたちの顔を見つめた。

彼らは痛い、ところを突かれて、ぐうの音も出ない。


 でも、この話は敗戦国である連合国側にもっけの幸いだ。

連合国側の首脳たちは、

指導者たちに対しては、厳しい対応をしないことを言明してきたので内心、

少し「ホッ」とした。


      妹たちとアメリカ


 トルーマン大統領の心の中

「千九百四十五年の今年の四月十二日に、

脳卒中でルーズベルト大統領が急死した」

「私は外交経験が全くない」

「アメリカが、この大戦の勝利に近づいているとはいえ、不安だらけだった」

「新型爆弾、開発の話は確かに聞いていたが、

どのようなものか、全然わかっていなかった」

「爆弾投下後の広島の写真を見せられて初めて、その恐ろしさを認識した」

「後悔しているが、アメリカ軍の最高責任者である大統領という立場上、

そんなことは口が裂けても言えなかった」

「日本の逆転勝利が決定した今、一番の気がかりは、

ふたつの原爆の使用を責められることだ」

「日本の寛大な処置を望むだけだ……」


 景竜「トルーマン殿!」

「一番の不安は、

ふたつの核兵器を民間人に使用してしまったことでしょう?」

「僕はあんな凄惨な兵器は許せないし、

ましてや一般人に使用するなんて言語道断だと思う」

「しかし先ほども言いましたが、

これは軍事作戦の範囲だと思うので追求しません」

「ただし原爆を使用したら、どうなるか?」

「全世界に大々的に公表させていただきます」

「これは貴国を貶めるための行為ではなく、

世界に忌まわしい兵器の存在を認知してもらうためです」


 景竜「それと、とても重要な真実があります」

「今年の五月一日を境にして、

連合国側が攻撃していた場所は、僕が用意した仮想世界です」

「それをした理由は、これ以上の犠牲者の出さないためです」

「それと死に体の日本に、連合国側がどのような対処をするか?」

「見定めるためです」

「つまり、その日から戦争による犠牲者は、双方とも発生していません」

確かに、五月一日以降の戦死者は幻覚で、実際は生存していた。

それは核による犠牲者も、いなかったことになる。


 景竜「日本のアメリカに対する要求を申し上げます」

「ハワイ諸島とアリューシャン列島を買収させていただきます」

「金額は正常な価格の二倍!」

「また、アメリカ本土への移転の希望の方には、

新居を取得までの費用と迷惑料をお支払いします」

アメリカ建国以来、

初めての領土喪失は衝撃だったが見方によっては、かなりの好条件だった。

そして景竜は畳み掛けるように言った。

「ハワイは元々、アジア系が最も多く、

特にフィリピン系と日系が多い州ですね!?」

「そしてアリューシャンはアレウト族の島」「大陸とは関わりの希薄な場所です」


 もちろん、これは日本の安全を考えての要求です。

景竜の心の中「ハワイは太平洋の要所」

「そしてアリューシャンも押さえれば、東からの脅威はなくなる」


 アメリカ国民は最初、領土を奪われた現実に激昂していた。

しかし次第に感謝するようになり、最終的には親愛の情を抱くこととなった。

一般市民の被爆の凄惨な状況の画像を見て、恐れおののいた。

それを神の能力と言うべき力で防いでくれた。

また、戦争に関わった全てのアメリカ人を罪に問わなかった。

それに、ハワイとアリューシャンの現況を考えれば

日本の主張にも道理があったし、補償も十分すぎるほどだった。

最後に、一般社会に銃が存在しなくなったことで、明らかに凶悪犯罪が激減して、

安心できる社会に一歩でも近づいたことに、大多数の市民が喜んだ。


      妹たちとイギリス


 アトリー現首相の心の中

「七月の選挙に勝利して、首相として今ここにいるが、

私は大戦には全く関わっていないので、場違いな気がする」

「しかし、現首相は私だから仕方ないか……」


 チャーチル前首相の心の中

「『日本軍が真珠湾を攻撃した』と聞いた時、

アメリカを巻き込んだことにより

『ドイツと日本との戦争に勝利した』と確信した」

「まさか、未来から来たという日本人の神のような能力で、

ひっくり返されるとは……」

「イギリスに対する印象は、ソ連とアメリカに比較すればいいはずだが……」


 景竜「チャーチル殿!」

「同じ、君主制国家として五大国の一角になった、

日本に親近感を持っていたのを知っています」

「ルーズベルト前大統領、トルーマン大統領より融和的だった」

「それに日本が敗戦した世界では戦後、

訪英した日本の皇室、政治家に心配りしてくれましたね」

「ありがとうございます」と妹たちも、一緒に御辞儀した。

チャーチルは自分の心を見透かして、かつ違う世界の話をする景竜に驚嘆した。


 景竜「僕が貴国に話したいことは、植民地についてです」

「日本は台湾の帰属は、現地の方たちの意思を尊重します」

「しかし、満州と朝鮮は放棄します」

「そしてヨーロッパの強国たちが、

この大戦後、植民地を失っていくのは時代の趨勢です」

「そもそも、外国を搾取して自国を繁栄させる方法が道義に反しています」

チャーチル、アトリーの両人とも、確かな正論なので何も言えないようだ。


 景竜「それと貴国はオスマン帝国の勢力範囲の中東の地に、

アラブ人とユダヤ人の双方に建国の約束をした」

「つまり、二枚舌外交」 「これが混乱の原因です」

これにサイクス・ピコ協定を加えると三枚舌外交になる。

イギリスの不誠実な外交政策だった。

景竜「いわゆる、ユダヤ人のパレスチナへの帰還の問題!」

「この案件は日本が引き受けます」


 イギリスは、この問題に頭を抱えていたので渡りに船だった。

景竜「日本列島とハワイの間の海に、

パレスチナの倍の面積の肥沃な土地を隆起させて島を造ります」

「ユダヤ人の方たちは、そこに居住していただきます」

「もちろん、安全保障は日本がします」

このスケールの大きい話に、出席者たちは驚きを隠せないようだった。


 景竜「それと重要なインドの話をしなければなりません」

「インドは独立させていただきます」

チャーチルは、危惧していたことをズバリ言われたので、

表情を曇らせたが反論できなかった。

先ほども植民地主義は否定されたし、ましてやイギリスは敗戦国なのだから……。

景竜「これからのイギリスとインドの関係は、真っ当な商行為を望みます」


      妹たちとインド


 戦勝国の日本から「インド独立」の確約を得た。

この事実に、冷静なガンジーも気持ちが高揚した。

そして「インドに対する配慮に感謝します」と御礼を述べた。

景竜「ガンジー殿!」「これで悲願の独立は達成されました」

「あと心配の種は、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒の争いですね」

「この問題は僕たちに、お任せください」


 景竜「可愛い妹たち!」「お願いします!」

妹たち「はい!」「お兄ちゃん!」

景竜は会議場の空間に、インドを投影した。

妹たちが、そこへ語りかけた。


 同時刻、インド全土の上空に五人の美少女が映し出された。

「インドの皆様!」「宗教の違いで、人間同士が争わないでください」

「立場が違っても、相手に敬意を持ち寛容の精神で、お願いします」


 少女たちは黄金色に光っている、空から花のいい香りも降ってきた。

その上、声も天使みたいだ。五人、揃って話すと女神を思わせた。

そして「宗教の違いで争うのは、くだらない」

と全てのインドの人が納得してしまった。


 インドでの出来事は、会合の参加者たちにも確認できた。

これは、つまり史実と違い、インドは統一されていて、

パキスタンとバングラデシュは存在していません。

だから、この世界ではカシミール紛争がないので、

インド・パキスタン戦争は起きません。


      妹たちとソ連


 スターリンは冷や汗が止まらず、針のむしろの心境だった。

スターリン書記長の心の中「まずいぞ、まずいぞ、これはまずいぞ……!」

「日本がアメリカにボロボロにやられて、降伏寸前の八月九日に攻めかかった」

「日ソ中立条約は、来年の四月二十五日まで有効なので国際法違反だった」

「満州等で多数の日本民間人を強姦、虐殺した!」

「そして、拘束した日本軍捕虜や民間人を連行して強制労働をさせる、

いわゆるシベリア抑留!」

「これも国際法違反」

「それを昨日の九月五日に、着手してしまった」

「戦争とはいえ、日本人が激怒することをやりまくっている」


 景竜「スターリン殿!」

スターリン「はひぃっ!」ビビるあまり、素頓狂な声を出してしまった。

景竜「僕の貴国、そして、あなたに対する感情は理解できますか?」

スターリンは、青ざめた表情で声を絞り出すように……

「すっ、すっ、すみません!」

「何卒、寛大な処置を……、お、お願いしますぅ……」

もう周囲の目を気にせず、なりふり構ってられなかった。


 景竜「外道を散々して、今度は懇願ですか……?」

「だが断る」「たった、ひとつの単純な答えだ……」「あなたは僕を怒らせた」

「やられたら、やり返す」「倍返しだ!」ときっぱり言った。

核兵器を使用したアメリカに対してでも、

温和な態度だったので出席者一同は驚いた。

景竜の激しい怒りが伝わったきたので、全員が固唾を呑んだ。


 景竜「まず共産主義は平等をうたいながら、共産党員が特権階級になっている」

「その現実を踏まえて、共産党による独裁政権は認めません」

「そもそも、ソロシアという国が存続できるか?」「どうか?」「瀬戸際です!」

この発言にスターリンは全身が震えて、気絶しそうな気分になってきた。


景竜「モンゴルの侵攻による『タタールのくびき』の二の舞になるか?」

「どうかは?」「あなたの選択次第です」「賢明な決断をしてください」

「国を失うか?」「シベリアと北樺太の買収を承諾するか?」

「その二択です」

「ズバリ、日本の最低限の要求はウラル山脈から東の全ての土地です」

「僕はソ連という国を、全く信用できません」

「そこでシベリアに強力な軍を常駐させて、日本列島を守ります」

「買収金額はアメリカと同様、正常な価格の二倍」

「ウラル山脈の西、ヨーロッパ方面に移転を希望される方には、

新居を取得するまでの費用と迷惑料を支払います」

「それを拒絶するのなら、ソ連という国が消滅します」


 スターリンは、今の現実の状況に押しつぶされそうな気持ちだ。

心の中「正常価格の二倍!」

「こ、こ、これはシベリアを売却する選択しかない……」

「しかも、もし民主化したら、私はどうなるのか……?」

「ソ連国内で私に殺害された人間は何百万もいる」

「数が多すぎて、私自身が正確な数字が、わからない」

「こんなことになるなんて!」

「欲張って火事場泥棒なんか、しなければよかった……!」

「私は終わった……!」


 ところで、ロシア人のシベリアからヨーロッパ方面への移転の話だが……。

実際、大概のロシア人はシベリアではなく、ヨーロッパ方面に住んでいる。

事情があってシベリアにいる人も、

できれば極寒のシベリアよりヨーロッパの方にいたい。

だから愛国心は傷ついたが、破格の好条件だったし、

本当は願ってもない話だった。

それに、こうなった経緯もきちんと説明を徹底していたので、

日本の怒りも理解できたので、仕方ないと思った。


 しかも、現地の少数民族たちも、ロシアから日本に変わって大喜びだった。

最初は不安に感じていたが、生活環境等、全ての面で改善されたからだ。

これは、景竜が「日本になってよかった!」と思えるように心を砕いた賜物だ。


 結局、ソロシアが民主化された後に、スターリンは裁判を経て死刑に処せられた。

ドイツに勝利したまでは、よかったが欲をかいて非道な行いをして、

しっぺ返しが来た。

因果応報、当然の報いかもしれない。


      妹たちと中国


 景竜「僕は日本軍が貴国に仕掛けた戦争、満州事変、日中戦争は過ちだと思う」

「どう考えても、大義名分が立たない」「謝罪します!」

そして景竜と妹たちは起立して、蔣介石と毛沢東の両人に深々と頭を下げた。


 日本は戦勝国なのに、是々非々な対応に改めて出席者たちは驚嘆してしまった。

御辞儀を受けた蔣介石と毛沢東は、なおさらで思わず

「頭を上げてください」と言ってしまった。


 促されるままに、景竜と妹たちは頭を上げて着席した。

景竜「僕の思想は、実際に住んでいる、現地の人の気持ちを、

なるべく汲み取ることです」

「チベット、ウイグル、内モンゴル、香港の人々が中国であることを望むのなら、

それでいいと思います」

「しかし独立を望んでいるのなら、独立させてください」

「日本は朝鮮に独立を所望します」


 景竜「それとソ連から買収した土地の外満州は、中国に譲渡します」

「ここは清の時代にロシアから強奪された領土ですし、

戦争で迷惑をおかけした御詫びです」

この提案に両首脳は正直、驚いた。

「異民族の独立の話は痛いけど、

ソ連から買収した土地を譲渡してくれるなんて……」

「お人好しすぎる!」「とにかく、道義を大切にする人物なんだ」

両人は好感を抱いた。 


 結局、中国はソ連から外満州を獲得したが

チベット、ウイグル、内モンゴル、香港は独立を果たすことになった。


      妹たちとドイツ


 デーニッツ大統領の心の中「私の現在の心境は複雑だ」

「ドイツは連合国側に降伏したが、

急転直下、今度は連合国側が日本に敗北してしまった」

「ドイツの処遇は、どうなるのだろうか?」

「上杉殿の道義的、論理的な思考を見ると……」

「大戦を引き起こしたことより、

ホロコーストの方が印象を悪くしているのではないか?」

「私自身は、その所業を知らなかったが、そればかりを言ってはいられない」


 景竜「デーニッツ殿!」

「最初に申し上げましたが、

戦争の作戦上の犠牲者に対しては、罪に問いません」

「僕が問題にするのは、捕虜や民間人に対する私情による悪行です」

「そういう理由で、

ホロコーストの蛮行は言語道断、絶対に許せません!」

その言葉に血の気が引くのを感じたが……


 景竜「しかし、ホロコーストの発案者のヒトラーが死亡した今!」

「僕は単純に事務的に従事していた者たちは、罪に問わないつもりです」

「もちろん、何度でも言っているが、

個人的にユダヤ人を迫害していた者は罪に問います」

「関わった者、全てを断罪しろという意見もあると思うが、

それは正しくないと思う」

「被害者に関係のある人たちの心情は理解できます」

「だが、十把一絡げにせず、きちんと吟味することが肝要だと思う」

「そうでなければ、ナチスドイツと同類です」

デーニッツは景竜の感情に流されず、

冷静で論理的な思考に救われた気持ちになった。


 景竜「もう、ひとつ大事な話があります」「ヨーロッパの国境の件です」

「僕はドイツがポーランドに侵攻した、直前の国境で決定しようと思う」

「理由は戦後、ドイツはヨーロッパで一番の経済大国になります」

「ですから、住民もその恩恵にあずかれば、いいと思います」

「それに、ヒトラーの恫喝があったにせよ、ドイツ系住民は歓迎していた」

「そして民衆から『オーストリアがいい!』『チェコがいい!』

という要望があれば改めて、そうすればいい」

「ヒトラーのしたことを全て否定するのではなく、

冷静に熟慮して決めればいいと思います」


 デーニッツは景竜のドイツに対する、

合理的で温情ある措置に目頭が熱くなった。

自分自身としては、

軍人として祖国のために粉骨砕身の思いで尽くしてきたが敗北!

大どんでん返しで日本が最終勝利したが

ドイツが、どのような処遇を受けるのか不安で仕方なかった。

デーニッツ「日本の望外な慈悲に感謝いたします!」


 景竜「『ドイツに甘い』と考える方もいると思いますが、

あくまでヨーロッパの住民の幸福のための方策と理解してください」

この発言に異を唱える出席者はいなかった。


      妹たちと世界へ提案


 景竜「僕の願いは戦争と飢餓がない、

そして、全ての者が正しい教育を受けられる世界です」

現実とかけ離れた理想を真顔で語られると

「頭、大丈夫か」と言われるのがオチだが……。

奇跡を何度でも実践してみせる。この日本人なら可能なのか? 

出席者たちは……、そう感じた。


 景竜「日本は一旦、軍隊を解散して新たに『日本支援隊』を創設します」

「これは軍隊ですが、人を殺すのが目的ではありません」

「人を助けるのが目的です」

「紛争の仲裁、食料支援、教育支援、医療支援、インフラの整備等を行います」

「困った事態があれば、遠慮なく申し出てください」


 この話に一同は驚嘆、でも雰囲気から真剣さが伝わってきた。

それに、今までの景竜の言葉から人柄が推し量れたので、

「きっと実行される」と感じた。


景竜「皆様に人間の歴史において、画期的な機械を提供させてください」

「古今東西の統治者を常に悩ませてきたのが、後継者問題です」

言い終わると、起立して少しテーブルから離れた空間に手をかざした。

すると、なんと金属製の門が出現した。

わかりやすく言えば、ゲート型の金属探知機みたいな感じです。

まるで魔法を見た感覚で首脳たちが驚いているが、景竜は平然と説明を続けた。


 景竜「これは『統治さん!』」

「市長は?」「知事は?」「首相は、誰が相応しいか?」

「候補者全員に、この機械のゲートを通過していただきます」

「その地位に一番、相応しい人の名前を『統治さん』が読み上げます」

「選挙による、金銭と時間の浪費を防げます」

「そして、見せかけだけの人間を排除できます」

「よろしければ、皆様に何台でも、お渡しします」

統治者たちの心の中「うっわぁー」

「この機械が本物なら本当に、すごすぎるぅー」

「でも、きっと今までの奇跡からして正真正銘な物だろう」


 景竜「話は変わりますが歴史上、

最も偉大な人物は『ゴータマ・シッダールタ』だと思います」

「つまり、仏教の開祖『ブッダ』です」

「そして、『四諦八正道』は至高の論理だと思う」

「僕の大雑把な解釈ですけど、全ての人の幸せのために最善の道を歩む!」

「そんな感じだと思う」「僕は仏教は、宗教というより哲学だと思います」

「宗教という枠に、とらわれず」「この素晴らしい教えを広めてください」


 この話に特に喜んだのはガンジー。

自分自身の心情に合っているし「内容が素晴らしい」と感じた。

スターリンは自分のことで頭がいっぱいで、耳に入っていなかった。

他の首脳たちは否定する言葉が見つからず、頷いていた。


      妹たちと核の怪獣


 この会議の出席者のアメリカのトルーマン、

イギリスのチャーチルとアトリー、ソ連のスターリン、

中国の蒋介石と毛沢東、インドのガンジー、ドイツのデーニッツ。

彼らは景竜に気圧されていた。

景竜「最後に皆様に御覧いただきたいものがあります」

連合国の首脳たちにとって、戦後処理の話は衝撃的すぎた。

特に、スターリンとトルーマンは逃げ出したい気分だった。


 それでも、さすがに「嫌です」と言えず。付き従うしかなかった。

景竜「それでは、移動しましょう」と言った瞬間に景色が一変した。

首脳たち一同「『ムッ』とする暑さだ」「だが、美しい」「ここは……?」

景竜「ビキニ環礁です」「海洋性熱帯気候のマーシャル諸島に属しています」

トルーマン「ビキニ環礁……?」


 ちなみに環礁とは、島が沈み島の輪郭にサンゴ礁が残った地形です。

景竜「違う世界線で、貴国であるアメリカが核実験を繰り返す場所です」

トルーマン「ウッ……」とつぶやいて、冷や汗が出た。

広島と長崎の惨状を回想して、良心の呵責に苛まれたのだ。


 そんなトルーマンを尻目に、他の者たちが尋ねてきた。

「ところで一体、ここで何を……?」

景竜はしたり顔で返答した。「これから、皆様の度肝を抜くことが起こります」


 そう言って、目の前の地面に向かって両手を広げた。

その刹那、三メートルを超える、ふたつの爆弾が出現した。

いわゆる物質創造能力だ。


 そしてトルーマンの顔は、さらに青ざめて「なぜ……?」

「あれが、ここにあるんだ……?」とつぶやいた。

景竜の神の御業に驚きつつも、トルーマンのろうばいで察した。

他の首脳たちの心の中「あの、ふたつが日本に落とされた新型爆弾……!?」


  その時だった。

「見る見る海面が山のように盛り上がった」と思ったら、

水しぶきを弾きながら、全長がゆうに百メートルを超える生物が現れた。

姿形は恐竜を思わせ、背びれが青白く光り、ほうこうも凄まじかった。

そしてなぜか? こちらをにらんでいる気がする。


 慌てふためいて、腰を抜かす者までいた。

だが、景竜は涼しい顔をしていた。妹たちは微笑を浮かべていた。


 「あっ、ふたつの大きい爆弾が浮いた」と思ったら……?!

吸い寄せられて、あっという間に巨大生物が飲み込んでしまった。

そして、お腹で爆発したのだろう……?! かすかな震動が二回あった。


 首脳たちは直前の出来事に放心して、二の句が継げなかった。

相変わらず冷静な景竜が言った。

「最近、友達になりました」「見た目は怖いけど、いい奴です」

「『核兵器を根絶したい』という僕の気持ちに共感してくれました」

「秘密裏に開発しても千里眼で探し出して、確実に破壊してくれます」

「そういうわけで、この世界で核兵器の存続は二度とありません」


 そう言うと景竜は首脳たちを見渡した。

穏やかな表情ながら、剛毅果断のオーラは震え上がらせるのに十分だった。

「ギョッ」として「日本に隠れて核兵器なんて開発しません!」と誓約した。

その発言に景竜と妹たちの笑みがこぼれた。


 そして、怪獣は静かに海に帰っていった。漠然だが表情が和らいだ気がした。

「逆鱗に触れないようにしよう」と心に誓う面々だった。


 景竜「これで僕が思い描く世界です」

「確かに全て人の話を聞いていたら、収拾がつかなくなってしまいます」

「それでも現地の人々の気持ちに寄り添い、正しい道に導きたいと思います」

そして「よろしく、お願いします!」と妹たちも一緒に頭を下げた。

神の能力を持ち、戦勝国なのに、

あくまで謙虚な姿勢に感銘を受けざる得なかった。


      妹たちとニューイスラエル


 東京に主要国の首脳を集めた、会合の次の日の九月七日。

ここは、つい最近まで日本とハワイの間の海だった場所だが、

現在は中東のパレスチナの倍以上の広さのある、肥沃な島がある。

シオニズム(イスラエルの地に故郷を再建しようとする運動)の代表である、

ダヴィド・ベン=グリオン一行を招待した。

もちろん、妹たちも一緒だ。

そして、樋口季一郎と杉原千畝も同座していた。

景竜は自分の想いを両人に説明して、快諾を得て同行してもらったのだ。


 景竜「ユダヤ人の聖地である

「『嘆きの壁』に瞬間移動できる装置を島の至る所に設置します」

「故郷の地で国を再建したいという気持ちは、よく理解できます」

「しかし、彼の地に、ユダヤ人の国家が失われてから、

二千年近くの時が流れています」

「現在、すでに他の民族が生活を営んでいます」

「そこにユダヤ人国家を創ると、どうなるか?」「火を見るよりも明らかです」

「たくさんの命が奪われます」「そんなことは、僕は座視できません」


 景竜「イギリスはなぜ?」「ナポレオンとヒトラーの侵攻を防げたのか?」

「そして日本も長い年月、外国の侵略を許さなかったのか?」

「答えは簡単です」「海に守られているからです」


 景竜「そこで僕からの提案です」

「故郷に思いをはせる気持ちはわかりますが……」

「争いの地より安住の地を選択しませんか?」

樋口季一郎「私は賛成です」杉原千畝「私も賛成です」

妹たち一同「お願いします!」

すると黄金色に輝く美少女たちの光がました。

まるで女神たちに懇願されたような気がした。

これで、彼らの気持ちが固まってしまった。


 ダヴィド・ベン=グリオンは感動してしまった。

ユダヤ人は差別、迫害を受けてきた。

しかし、日本人たちは自分たちのことのように憂慮している。

これほどまでに配慮してくれる景竜たちに「いいえ」と言えなかった。

「わかりました」「温情に感謝します」

「この島をニューイスラエルと命名します」

こうして紛争の火種をひとつ、取り除くことを達成した。


      妹たちとクルディスタン


 第一次世界大戦中の千九百十六年にイギリス、フランス、ロシアの間で、

オスマン帝国の分割を約した秘密協定(サイクス・ピコ協定)を締結!

この不自然な国境がクルド人を分断させた。


 ニューイスラエルに訪れた、次の日の九月八日。

東京の赤坂離宮にクルド人、

トルコ、イラン、イラク、シリアの首脳たちに集まってもらった。

国を持たない最大の民族(三千万人以上)、クルド人問題を話し合うためである。


 景竜「トルコ、イラン、イラク、シリアにまたがる

クルド人の居住地域が国として成立、

クルディスタンを皆様が歓迎しない気持ちは理解できます」 

「国土が小さくなってしまいますから……」

「しかし、僕が考えてほしいのは国が発展するのには、

安定が必要だということです」

「常時、国の中に不満分子を抱えている、最悪の場合はテロが頻発します」

「それよりも独立を認めて、改めて友好関係を築くべきだと思います」

「それでも独立により経済的損失が生じたのなら、日本が補填しましょう」


 すかさず、妹たち一同も「お願いします!」

景竜と妹たちは、いつも黄金色に輝いているが今一瞬、

光の強さが増した気がした。

そして、美少女たちの女神を思わせる可愛い声の懇願に

首脳たちは魅了されてしまった。

トルコ、イラン、イラク、シリアの首脳たち全員が「はい!」「わかりました!」

と二つ返事で引き受けた。

これで、またひとつ難問が解決された。


      妹たちとアフリカ


 日本は、欧米諸国にアジア、アフリカの植民地を解放させていった。

そして、クルディスタンが成立した次の日の九月九日。

アフリカ大陸の全ての国の代表者たちを赤坂離宮に招待した。

紛争が絶えず、貧困に苦しむ人々を救うための会合です。


 景竜「アフリカの国境は、同じ文化背景を共有する人々を無視して、

ヨーロッパ諸国が勝手に引きました」

「それが原因で争いが絶えません」「だから、それを是正する必要があります」

「また豊富な資源が存在しているのだから、

これを一部の人間が独占するのではなく、

多くの人たちに富が分配されるように工夫することが肝要です」

「そして、全ての人に正しい教育を受けさせてこそ、将来の展望が開けるのです」


 景竜「皆様、どうでしょうか?」

「国境は熟慮して、なるべく同じ文化を持つ人たちを一括りにしましょう」

「ヨーロッパに決めさせるのではなく、

アフリカのことはアフリカで決めましょう」


 妹たち一同「アフリカの皆様!」「そう、しましょうよ」

すると、またしても妹たちの金色の輝きが一瞬、強まったようだ。

まるで、女神に囁かれたような衝撃を受けた。


 アフリカの代表者たちは感激して

「自分たちで、よく話し合って改めて国境を引き直します」

「そして、アフリカの件でもう煩わせないように、

資源と教育についても建設的に議論します」と力強く約束してくれた。

景竜「アフリカの人々が公平に幸せになることを願っています」

代表者たち「はい!」


アフリカ全体が豊かになれば、景竜の理想に近づく!

これで景竜が特に危惧する世界の紛争を防いだ。

もちろん、これで全てはない。

これからも、少しでも世界を安らかにしていく所存だ。


      妹たちと日本


 九月六日、

東京の赤坂離宮で連合国側は、この大戦の日本の勝利を認め、調印された。

そういうわけで、九月六日が戦勝記念日ということになる。

この勝利の祝賀行事の開催の要望が、全国各地から相次いだ。

しかし、国や県、市町村の主催で行われることはなかった。

その理由は景竜からの強い要求だった。


 景竜は目立つことは好きじゃないので、積極的には国民の前に現れなかった。

ただ、重要な案件だと思えば、どこにでも顔を出した。

そして、政治家から助言を求められれば、未来の知識を活用して的確にこなした。


 その景竜から全国の新聞を通して発言があった。

景竜「日本国民の皆様!」

「戦争の勝利を御祝いしたい気持ちは理解できます」

「しかし、僕は祝賀より反省していただきたい」

「正確な情報を発表しない政府、

開戦を煽ったマスコミにも責任はありますが……」

「それらに踊らされる国民も問題です」

「清(中国)とロシアに勝利して、天狗になってしまったのも、わかります」

「それでも謙虚な気持ちを失わず、冷静な判断をすることが大切です」

「世界中を敵にして勝利するのは不可能だと、

良識あればわかるはずだったのに……」

「日本は無謀な戦争に突き進んで、

敵味方問わず、たくさんの犠牲者を出してしまった」

「ですから、今は祝賀より故人の冥福と反省をしていただきたい」


 この発言はド正論だし、

大戦の勝利の立役者に、こう言われては何も言えなかった。

それでも戦争に勝ったのは事実なので祝いたい人たちも、いるわけです。

なので、個人や法人などが祝賀会を開催するのは黙認した。

そこまで禁止するのは野暮だし、自由さに欠けてしまうということで……。 


 ところで、景竜と妹たちは日本の救世主。

しかも景竜の真摯で謙虚な姿勢に、さらに好感度が上がった。

それに妹たちは五人、揃って、とても可愛い!

六人が人気者になるのは当然だった。


 それでも景竜は有頂天にならずに、誰に対しても気さくな態度は崩さず、

国民の生活に改善すべきところがないか? 配慮を怠らなかった。


      妹たちと学校


 九月十日の朝。ここは信州、松本の上杉家邸宅の居間。景竜と妹たち。

景竜「今日は、温めていた案を実行したいんだ」

蘭菜「お兄ちゃん!」「おじいちゃん、立花さんと話し合った件ね」

景竜「そうだよ」

「上杉家と立花家から譲渡された土地に、孤児院を兼ねた学校を創設する」


 蓮々那「学校は、どんな感じになるんだっけ?」

景竜「改めて、説明するね」

「僕たちがこの世界に来たのは五月一日、

日本に本格的な空襲が初めて実行されたのは三月十日の東京大空襲!」

「つまり、日本は約五十日間、大空襲にさらされた」

「両親を失って、孤児になってしまった子供が多数、いるはずだ」

「だから、そういう子供たちを救済する施設」

「そして子供たちには、きちんとした教育を受けてもらいたい」

「『知識こそが人生において、最大の武器になる』と信じているから」


 妹たち一同「大賛成です!」「孤児院を兼ねた学校の設立!」

麗夢「ひとりでも多くの子供が救われて、

日本、世界に貢献ができたらいいですね」

景竜「ありがとう!」「みんな!」


景竜「学校には考えつく、あらゆる施設を用意しよう」

「図書館はシェルター内の大量の蔵書も利用しよう」

「プール、体育館は、もちろん、温泉もある」

「だから、男女別々の敷地にして、つまり隣接にする」

「また、どんなスポーツにも対応できるようにしよう」

月乃「とても、素敵な学校ね!」

彩「彩も通いたいわ!」

景竜「ありがとう!」「子供たちのためにも、いい学校になるように気を配ろう」


      妹たちと月デート


 中秋の名月の九月十日の夜。ここは信州、松本の上杉家邸宅。

景竜は五人の妹と月見を楽しんでいた。

久しぶりに兄妹だけで過ごしているので、ブラコン妹たちは御機嫌だった。


 彩「彩、お兄ちゃんと一緒!」「嬉しい!」と笑顔がはじける。

蘭菜「本当にそうよね!」

「蘭菜たちは、お兄ちゃん!」「大好きだから……!」と蘭菜も嬉しそう。

麗夢「そう、蘭菜ちゃんの言う通り!」「ぽっ!」と顔が赤くなる。

蓮々那「蓮々那も、お兄ちゃん!」「好きなんです!」

月乃「月乃もです!」「これは間違いないです!」


 景竜「ありがとう!」「みんな!」

「僕も初めて会った時から、ずぅ〜っと好きだよ!」

「よし、これからデートしよう!」


 景竜のその言葉に一瞬、みんな驚いたが、すぐに歓喜の表情に変わった。

彩「アーヤ!」「わくわく…っ!!」

蘭菜「お兄ちゃんとデ、デ、デート!?」

麗夢「これは夢ですか?」「嬉しすぎます!」

蓮々那「夢じゃないよ!」「麗夢ちゃん!」「ねっ、お兄ちゃん!」

景竜「もちろん、夢じゃないよ」

月乃「月乃も、すごい嬉しいです!」「でも、夜にどこへ?」

景竜「みんなが今、見ている場所さ」


妹たち「えっ!」「まさか、お月さま?」

景竜「そうだよ」

妹たち「えっえっー!」

暫く、間があってから……。

 

 蓮々那「蓮々那たちの能力ならできるかも?」

麗夢「あっ、そうかも!?」

月乃「月乃たちは大丈夫っ?」

蘭菜「お兄ちゃんは確信しているのね?」

景竜「この世界は僕たちが創造した」

「そして信じていれば、何でも可能なはず」「そう設定した」

彩「わ〜い、彩たちは、お月さまへだって行けるんだ!」


 景竜「よ〜し、みんなで手をつないで輪になろう!」

妹たち「うん、お兄ちゃん!」

妹たちは内心、少し怖かったけど、「お兄ちゃんと一緒なら大丈夫!」と思った。

そして、手をつないで月を見上げる。


 景竜「月へ行くよ!」妹たち「はい!」

すると「フワッ」と浮いた。

そして「グングン」と加速して、あっという間に月に着いた。

妹たちは怖かったけど、あまりにあっけなかったので拍子抜けしてしまった。

蘭菜「あれっ、思っていたより簡単!」

他の妹たち「うん!」

麗夢「麗夢たち、本当に何でもできちゃうんだね」

彩「みんな見て見てぇ!」「地球さん!」「きれい!」

月乃「ホントにそう!」

蓮々那「きれい!」「お兄ちゃん!」「ありがとう!」

続けて他の妹たちも「お兄ちゃん!」「お誘い、ありがとう!」


宇宙空間では人間は生きられないはずなのに……!

そして、気づいた!

頭の中で会話している。つまり、念話テレパシーだ。


 蘭菜「お兄ちゃん!」

「蘭菜たち宇宙でも平気だし、それに頭の中で会話しているね!」

彩「彩たち、すごい!」

景竜「本当だね!」

蓮々那「いつも、みんなと一緒だからテレパシーは久しぶりね」

月乃「それにほら、月から見る地球はとても綺麗よ」

麗夢「キレイ!」

景竜「うんっ……」


暫し、兄妹たちは美しい地球を堪能した。

景竜「青く輝く、この星に色々な人々が住んでいる」

「僕は誓うよ」「人種にこだわらず、公平に幸せに導きます!」

蘭菜「お兄ちゃん!」「蘭菜、お手伝いします!」

麗夢「お兄ちゃん!」「もちろん、麗夢もお手伝いします!」

蓮々那「んっ、蓮々那もお手伝いします」「お兄ちゃん!」

月乃「月乃はお手伝いします!」「お兄ちゃん!」

彩「わーい、彩もお兄ちゃんをお手伝いします!」


 景竜「ありがとう!」「僕の可愛い妹たち!」

景竜は嬉しくて、目が潤んでしまった。

妹たち全員も、その様子を見て、もらい泣きしてしまう


      妹たちと初めての……!


 地球に帰還後、上杉邸の一室。景竜は初めて、女性を知った。

妹たちは顔を赤らめながら、嬉しそうに尋ねた。

妹たち一同「お兄ちゃん!」「カワイイ、妹たちはどうでした?」

景竜は恥ずかしそうに答えた。

「うん、想像していた以上にすごい、よかった」

妹たち一同「キャッー、嬉しい!」


 景竜「女の子って、いい匂いがして、柔らかくて、小さいんだね」

「カワイイ声を発して、そして、とても美味しいよ」

「もう夢中になってしまうかも?」

妹たち一同

「お兄ちゃんは好きな時に、好きなだけ、妹たちと一緒にいてください」

「お兄ちゃんだけの妹なんだから!」


      妹たちとその後の世界


 第二次世界大戦後、日本が指導する世界。戦争がない世界!

景竜が日本以外の国は銃以上の武器を所有、生産できない魔法をかけた。

もちろん、世界を滅ぼした核もない。

軍隊が存在するのは唯一、日本だけである。

その現実が世界を静謐にしている。


 ソ連から買収したシベリア、

アメリカから購入したハワイに強力な軍である「日本支援隊」を常駐させている。

しかし、軍隊と言っても専ら、平和活動に勤しんでいる。

争いの仲裁、食料支援、医療支援、教育支援、インフラの整備。

現地の状況に沿った支援を心がけている。

だから、世界中からの評判はすこぶるいい。


 ちなみに、この組織は本来は志願制なのだが、

妹たち一同から「日本国民の皆様!」

「よろしければ、ぜひ入隊してください」「お願いします!」

と発言があったので国民全員が希望してきた。

だから、実態は徴兵制になっている。


 また、「統治さん」が世界の至る所に普及したので、

その場所に最も相応しい人物が就任した。このことは良好な衝撃を与えた。

上っ面だけの話術が得意な偽善者の登場を防いだ。

民草に幸せをもたらす、優秀な人だけが選抜された。

すなわち、悪質な独裁者は存在しない。


 その上、この世界の日本には、

景竜たちの物質創造能力のおかげで資源不足はない。

石油、天然ガス、鉄など良質な物を無限に確保できた。


 さらに特筆すべきは妹たちの存在だ。

妹たち、五人が揃って話すと誰もが納得して受容してしまう能力。


 毎朝、日本国内で妹たちが声を合わせて「皆様、おはようございます!」

「今日も、みんなのために頑張りましょう!」と天使みたいな美声を届けます。

これで日本人全員がやる気が満ちて、引きこもる人はいません。

従って、犯罪、自殺者は皆無です。


 それと彼女たちの属性能力!

蘭菜は雷! 落雷を制御する。発電も賄える。

麗夢は水! 津波、洪水を制御する。水不足は発生しない。

蓮々那は風! 台風、竜巻を制御する。

月乃は土! 地震を制御する。どんな土地も肥沃にできる。

彩は火! 火事、火山を制御する。暖房にも対応できる。

人々にとって、とても貴重な力だ!

この世界の日本は、エネルギー問題が存在しない!


そして、孤児院を兼ねた学校から日本、世界を牽引する

優秀な人物が多く、輩出された。

孤児院出身のある人物の声

「両親を失って、途方に暮れていた時に拾っていただき感謝しています」

「その方から、世界をリードする人間になってほしいと言われ努力してきました」

「それだけに感慨無量です!」


      妹たちと大いなる奇跡?


 もしかしたら数十年後の、この世界でも二千八年の四月一日を迎えた時、

大いなる奇跡が起きるのかもしれない!?

だが、それは主人公である景竜は知らない……!









 




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