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エボッツさん

作者: のじか

エボッツさん



私は一人で住んでいます。

茶色いお家に住んでいます。


テーブルとイスが一つ。

ベッドが一つ。

それだけです。


雪がお家を包むころ、

エボッツさんがやってきます。


エボッツさんは一人で歩けません。

いつも部屋のすみに座っています。

私は時々動かしてあげます。


エボッツさんが怒れば、

部屋が冷たくなります。


エボッツさんがごきげんなら

部屋は暖かいです。


朝、私が目を覚ますと

エボッツさんも目を覚まします。


私は一人でご飯を食べます。


昼、私は外へ遊びにいきます。

エボッツさんは部屋のすみに

すわったまま。


夜、私がベッドに入ると

エボッツさんは寝言を言います。

こぽこぽ

こぽこぽ

何を言っているのか

私にはわかりません。


ある日私が風邪を引くと

エボッツさんはいつものように

何も言わず

でもいつもより少しだけ近くで

私をずっとあたためてくれました。


けれど「ありがとう」は

伝えていません。


クリスマスにはツリーを飾り

エボッツさんの傍でごちそうを食べました。


大晦日には大掃除をして

部屋のすみもピカピカにしました。


お正月にはエボッツさんの隣で

窓から見える初日の出を眺めました。


私は一人で住んでいます。


しばらくすると

雪が

もっともっと積もるでしょう。

さらにしばらくすると

雪がとけはじめるでしょう。


お家がすっかり

雪の中から出てくるころ

私とエボッツさんは

さよならをします。


エボッツさんはまた

次の冬まで

真っ暗なところに

入れられます。


私とエボッツさんは

そのことを

よくわかっているのです。


そしてお家が顔をだし

土が顔を出し

いよいよ

太陽が元気になってきました。


もうエボッツさんが目を覚まさなくとも

部屋はあたたかいのです。


さよならの日がやってきました。


さよなら

さよなら

エボッツさん

また次の冬まで。


さよなら

さよなら

エボッツさん

また会う日まで。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 冬が訪れると、そばにいて温かくしてくれる不思議な存在のエボッツさん。読む人によって、『エボッツさん』がどんな存在になるのだろうと思いを馳せながら、読ませていただきました。 怒れば部屋が冷た…
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