28 ある男の挽歌
初投稿です。誤字・脱字等ご指摘いただけると幸いです。
とりあえず、最後まで書き終えました。煮詰めつつ投稿する予定です。
【ある男の挽歌】
彼はずっと悩んでいた。
若い頃は、金はなかったが、目のさめるような金髪と好き通った青い目、そして何よりも見事なまでに整った顔立ちは、同年の女性からの称賛にさらされた。
彼が外を歩く時は、すぐに降り掛かってくる熱い視線にうんざりしていた。
しかし、いつからか彼はうざいほど感じていたその視線を感じなくなっていた。
それは単純に加齢によるものではないかと思われるのだが、
彼はそれをある一つの理由故と結論付けていた。
彼は、頭が不自由な人になりつつあったのである。
いや、頭が不自由でもかっこいい人はたくさんいる。
しかし、彼には我慢ができなかった。
彼は“パーフェクト”だったのだ。それがなにゆえ身体障害者に……
誠に失礼千万である。死んでほしい。間違いなく世界中のそして異世界の地球の同類の男性からの呪いの声を受けるだろう。
そうだとしても、彼には我慢ならなかった。
彼は“パーフェクト”だったのだ。
あらゆる毛髪剤を試し、髪型を変え、外出するときは帽子やフードを被り、しかし被り物は頭にはよくないといわれると、1日中ふさぎ込み、そうして彼はある噂を聞いた。
『ある街では治るらしい』
いてもたってもいられなくなった。その噂をもたらした人物~彼の友人~の元を訪ね、それからその噂を一つひとつたどっていった。
そして、彼はとうとうたどりついた。聖地『ユグド街』を。
『あのねえ、突然きても入れないの』
『移民なら、中に入れるのですか』
『移民ダメ』
『そこをなんとかお願いします!』
『駄目なものはダメ』
『お願いし……』
ガチャン。ユグド街の扉は閉じられてしまった。
彼は諦めなかった。
何度かのチャレンジのあと、彼はとうとう密入国することができた。
よし、これで治るぞ!
彼はあてもなくユグド街をさまよい歩いた。
彼は不信人物としてすぐにチェックされ、確保される寸前であった。
ここは緩衝地帯。濃いわけではないが、魔素の蔓延する地帯である。
ここを普通の人間が何の防御もしないで歩くと、何らかの影響が出る。
彼はみるみるうちに頭髪が抜け落ち始めた。
彼は当初それに気づかなかったが、ふと頭髪に手をやったときに気づいた。
手にはおびただしい毛髪が絡まっていたのである。
『あああああああ』
彼は絶叫とともに気を失った。
すぐに彼を確保した警邏隊は、彼を病院に連れて行った。
異常は何もなかった。髪の毛がぬけた以外は。
数時間程度の滞在ならば、通常影響は受けないものである。
だが、そんな弱い影響でさえも彼の頭髪は防ぐことができなかったのであろう。
彼はすぐにエリアの外に追い出された。
彼はとぼとぼと歩いた。ずっと歩いた。
歩いて歩き疲れて、そして……髪の毛が全て抜け落ちた。
涙がこぼれた。
全てが終わった……
ところが、哀愁をたたえた彼は、ふと感じるものがあった。
昔にあれほどうざく感じた熱い視線を。
彼は毛が完全に抜けたことにより、渋い魅力を発揮し始めたのだ。
彼はパーフェクトだった。
復活した。異性からの熱い視線にさらされる毎日が。
ただ、残念なことは、その視線は女性からのものだけではなかった。
その方面からのあーな称賛も振り払い生きる毎日が待っていたのである。
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