15 エレン、友達を孤児院に呼ぶ
初投稿です。未熟者ですので、誤字・脱字等ご指摘いただけると幸いです。
とりあえず、最後まで書き終えました。煮詰めつつ投稿する予定です。
【エレン、友達を孤児院に呼ぶ】転移4年3月
前期試験から半年経つ。
あっという間に1年の履修がおわり、後期試験を終えたばかりの彼等がいた。
春休みの間にエレンは友達4人を孤児院に招待した。
『朝晩、礼拝するもんだから、城の連中がおかしがってるよ。それにそのあと掃除しようとするから、お付きのものに色々言われて説得するのに大変だったよ』
『ワイもやで。ま、ワイはもともと変人扱いされてるから礼拝はほっとかれてるが、掃除するのは皆不思議がってたで。病気か、とまで言われたわ』
『ウチは、母ちゃんが鋭くて。世界樹を拝んでいること、すぐにバレたわ。なんせ地元が山の上で、世界樹が見えるからな。雲海に浮かぶ世界樹はちょっと信じられへんで。だから、うちの村、割と世界樹を崇拝する人たくさんおんねん』
チャーリーはヘンリーの方言が移ったようだ。
『オレは隠れてやってるからバレてないけど、学院いって肌艶がよくなった、いうて驚かれたわ。前までアトピーがあったけど、いつの間にか完治しとったわ。多分、食事のおかげや』
モブレーもヘンリーの方言が移りつつあるらしい。
方言というか、ここ首都の言葉は前世日本でいう関西弁である。
オレの翻訳機能では首都の言葉が関西弁になってしまうのだ。
ウィリアムも首都住まいだが、お城言葉で喋っているようだ。
しかし、オレの翻訳では細かいニュアンスが出せないようで、
いわゆる標準語になる。
ところで、とヘンリー。
『なんで、キャサリンがココにおんねん』
『あら、わたくし、エレンから平等を学びましたの。男女とか階級とか私にはもう関係ございませんですのよ。エレンがご友人を誘って何やらコソコソしているようでしたので、私も参加させて頂きましたの』
『コソコソって。だいたい、これから行くとこは、ホント秘密なんやで』
『私も、エレンから説明は受けましたわ。私もみなさんと同じ学友として、平等の立場ですので、勿論、参加することにしましたの』
キャサリンには普通の会話が成り立たない。
『それに、皆さんの魂胆はわかっていましてよ。私に隠れてスィーツなるものを食しにいくことを』
『キャサリンはん、なんでそない詳しいねん』
『エレンに丁寧に教えていただきましたの』
エレンはキャサリンの謎の押しの強さに負けてしまっていた。
というか、いつも負けるのであった。
そして、納得してもらったのかよくわからないのだが、腕輪をせしめられ、ユグド街にいくことを約束させられたのであった。
ロボが来てくれて、ロボをみんなに紹介したあと、エレンたちを例の空飛ぶボックスにのせて、ユグド街に飛んでもらう。
ユグド街ではリョータと挨拶を交わす。
リョータが彼等をここに呼んだのは、次の手を考えているからだ。
国の中心に近い場所にいる人物で、あまり周りに染まっていないタイプを、ユグド街のいわば外交官、或いはある種のインフルエンサーとして活用しようと思っているのだ。
最初に、彼等に孤児たちの教育環境を見てもらう。
彼等は教育内容に衝撃を受けたようで、
『あの子達ボクたちより幼いよね。でも解いている問題、さっぱりわかんないけど』
一部の子は小5や小6の問題を解いている。
小数の計算や比の問題とかはこの国では見かけない。
というか、小数の概念があるのかすらわからない。
もっとも、前世日本の算数・数学教育はかなり難しい。
リョータは海外で、数学科に入学した大学生の問題を見せてもらったことがある。
それは日本の数1で習う内容と同じだった。
その国は数学の得意な国ではなかったが、そのくらいの差がある。
リョータは中世ということもあるが、地域性もあるかもしれないと考えた。
つまり、この世でも数学の得意な国はあるかもしれない、と。
それから、魔法の実習室で見学。
みんな、無詠唱がデフォで、発動が素早く、威力が大きいことに驚いていた。
エレンは学院でずっとトップを突っ走っている。
それがフロックでないことがよく理解できた。
多分、この子たち、学院にきたらエレンみたいになる。
それと、リョータ、トム、アーノルドの剣の実力に驚いていた。
剣先が見えないし、剣のぶつかる衝撃波が凄い。
『王国でもトップクラスだよね』
ウィリアム王子はよく城での武道会とかを見ている。
あと、リョータの魔法の実力は衝撃的だったみたいだ。
『王国魔導士レベル遥かに越えてるよ』
しかし、もっと驚いたのは、モフモフたちの実力。
『半分、神様だって聞いたけど、本当だった』
彼等はいろいろと衝撃で頭をフラフラさせながら、食堂で昼食を取る。
献立は、パン、魔牛乳、野菜スープ、それと唐揚げだった。ソースはタルタル。
そして、再び衝撃を受けたのがスィーツ。
苺のショートケーキが出たのである。
『なんやこれ、舌がとろけてしまうわ』
目を見開きながら、5人は殆ど無口でケーキを貪り食う。
このケーキは苺やクリームの美味しさはもとより、スポンジがフワフワシットリという相反する性格を併せ持った、スポンジの究極と言えるものであったからだ。
チートの塊、これがユグド街の苺ケーキなのである。
『これ、グレースさんかな? また腕を上げたね』
グレースは、ユグド街世界樹食堂の料理番として、既にこの世界のトップシェフの一員たりうる実力の持ち主となっている。
その彼女がもっとも腐心しているのが、スィーツである。
その中でもリョータに言われたのは、スポンジを制覇せよ、と。
リョータにコツを教わる。
ただし、リョータとて上手にスポンジが焼けるわけではないことを伝えながら。
卵白の泡立て方、小麦やバターの混ぜ合わせ方、温度管理など知っていることをリョータは伝え、いいスポンジはフワフワでかつシットリが完成品であると。
毎日のように、彼女は卵白を泡立てる。
料理人が男ばかりなのは、基本的にガテン系の職業だからだ。
体力が物を言う。特に、職業とするなら。
彼女の右手はまるで剣の上級者のように筋張り、風格の漂うものとなっていた。
こうして、いろいろ衝撃を与えたユグド街見学が終わった。
なお、エレンは後期試験でもやっぱり満点でトップだった。
ちなみに、キャサリン。
『私、もう決めました。卒業後はグレースさんに弟子入りしますの』
『えっと、公爵家……』
『お父様にはもう納得して頂きましたわ。これからの世の中、女性の地位はもっと上がるべきというのがお父様の持論ですの』
お父様が本当にそんな持論をもっているのかは実に怪しいのであった。
なにせ、キャサリンだからだ。
AをBであると言いくるめるのは彼女のお箱であった。お父様限定でだが。
彼女の幼い頃の必殺技は『わたし、パパのお嫁さんになる』であった。
キャサリンはパパに幾度となく繰り返された『最後の』お願いをするのであった。
しかし、そのために設定した『無料肩たたき券』を次の日にはすっかり忘れてしまう。彼女は都合の悪い事はすぐ忘れてしまう癖があった。
しかも忘れてしまってもそれが許される謎のコミュニケーション能力があった。
それは、パパだけではなく、多くの人に効果があるのであった。
ナチュラル魅了の持ち主がキャサリンであった。
また、公爵は長女の件で実はリョータたちに借りがあることをよく知っていた。
1年位なら、高等学院に行く代わりにリョータに面倒を見てもらってもいいかな、と娘に甘えられたためにデレッとした頬をなぜながら、そう考えるのであった。
但し、それは1年では終わらなかった。
彼女は在学中、魔狼を勝ち取り、毎週のようにユグド街に通い詰め、グレースに弟子入りして料理を習い、卒業時点ではグレースの右腕といえる程度には料理の腕が上がっていた。そして、卒業後はユグド街のリーサルウェッポンとして、活躍することになるのであった。
彼女の謎の押しの強さにはリョータも苦笑いするしかなかったのである。
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