14 エレン、前期試験終わる
初投稿です。未熟者ですので、誤字・脱字等ご指摘いただけると幸いです。
とりあえず、最後まで書き終えました。煮詰めつつ投稿する予定です。
【エレン、前期試験終わる】転移3年10月
前期試験が終わった。エレンはやっぱりトップというか、
相変わらず満点で筆記・実技ともに終えた。
キャサリンはその後、なぜかお茶会にエレンを誘う。
下僕への気配りらしい。
ウィリアム王子もいる。こちらはハイソ・イケメン枠だろうな。
エレンはお土産にユグド街のクッキーを持っていった。
これが一番地味だから。
ただ、この際、キャサリンには意見しとこうと決意する。
『いいかい、貴方は公爵令嬢だし、美人でスタイルも素晴らしいし、気品も礼儀作法も満点だ。令嬢の鏡だよね』
キャサリンは当たり前のことなので、フンフンとうなづくだけである。
『でもね、みんなをすぐに下僕にするのは考えなくちゃいけないよ。貴方には素晴らしい執事とメイドさんとかいると思うけど、ボクたちは執事でもなければ、メイドでもない』
キャサリンは驚いた顔をする。
キャサリンにとっては、家族と王族以外は基本的に目下のもの。
目下の者に支配者としてどう接するか。
それをキャサリンは幼少のころから学んできた。
ただ、随分と歪んだ形で学習してきたのであるが。
それは、キャサリンが基本善人であることを周りがよく理解し、
彼女を慈しんできたからである。
というと、口当たりが良すぎるか。
キャサリンが善人であることは間違いないが、
要するに、彼女の思うがままに甘やかしてきたのである。
エッという顔で周りを見渡すキャサリン。
取り巻きの女子が目をそらす。
ほんのちょっぴり自分の置かれている状況を理解したのだろうか。
少しエレンの言うことに耳を傾けてみようか、という気になる。
『多分だけど、貴方には同格の人がいないんじゃない?』
言われるとそうだ。
家族といっても、お父様・お母様はもとより、
お兄様・お姉様は敬愛の対象であって、友達じゃない。
王族は目上。
貴族の令嬢は格下。
その階層はしっかり守ってきたはずですわ。キャサリンはそう思う。
でも、ここは学院。建前にせよ、平等ということになっている。
キャサリンは考える。平等って何?
キャサリンは、今まで学業でも魔法でも人に負けたことがなかった。
しかし、学院に来て圧倒的な強者を見た。
いくら寝ぼけているキャサリンでもその実力格差は覆い隠せない。
そのエレンから平等の意識を問われて、キャサリンは考えるところがあった。
『とりあえず、お土産もってきたから、ご賞味あれ』
それで流れが変わった。そのクッキーが美味しすぎたからである。
『これ、どこのお店?わたくし、こんな美味しいクッキーは初めてでしてよ』
『これ、ウチで焼いたものだけど』
エレンは困った。ウチの製品で一番地味なものを持ってきたつもりだった。
そういえば、リョータに初めて会ったときにもらったクッキー。
この世のものとも思えないほど極上の味がした。それをしっかり忘れていた。
慣れというものは恐ろしいものである。
やらかした、とは思うものの、後の祭り。
『わかりましたわ。このクッキーをいただくには、その平等というものを学べば宜しいのですね』
キャサリンは善人であった。そして、それと同じくらいチョロい子であった。
『では皆様、これからはわたくしのことをキャサリンと呼ぶのを許して差し上げてよ』
いろいろと難しいキャサリンであった。
『はい、キャサリンお嬢様』
『お嬢様はいりませんわ』
『畏まりました、キャ・・・サリン・・・・』
後半は消え入るような声で答えるキャサリンの取巻きたち。
『宜しいですわ。これでクッキーをみなさんも賞味できましてよ』
やっぱりいろいろとおかしいキャサリンであった。
エレンはこの天然の押しの強さに押し切られた格好で、週1のクッキー提供を約束する。
この程度なら腕輪云々は不要ということにしたのだが、当初、キャサリンと取巻きたちへの献上品であったのが、Aクラスの他の女子にも突き上げをくらい、それは1年全員の女子に伝わり、それは2・3年の……
量が半端なくなるので、リョータは将来のことも考えて、クッキー製造工場をつくることにした。
といっても、クッキー担当者を決め、極力魔法で製造することとした。
ただし、クッキーを魔法で、という前に、魔法無しで美味しいクッキーを焼くことができなければ、魔法ではそれ以上のものはできない。
魔法は極上の手作りに負けるのだ。
だから、いろいろ奮闘してもらう。
クッキーといえど、馬鹿にするなかれ。
フワフワクッキー
風味の良いフワフワクッキー
風味の良いシットリクッキー
それぞれ微妙な手間がある。
また、手をかけるところと抜く所、見極めが必要である。
例えば、天ぷらのとき、小麦粉はサクッと混ぜる。
クッキーにも似たところがあって、生地をコネすぎると出来上がりが固くなる。
どうも、グルテンを出さないのがコツのようだ。
空気を混ぜるように混ぜるというのも大事だ。
空気を混ぜるというのは、寿司、アイスクリームなどにも言えるコツだ。
オレもいろいろ知っているわけじゃないが、知っている限りのコツを伝授した。
というか、あの前嫁が菓子作りが好きだったんだな。
オレが料理好きだったことがくっつく原因になったんだけど。
という嫌な思い出がよぎる。ホント、どこで捻れたんだろ。
いろいろ試すうちに、オレも合格点を出せるクッキーを作れるようになった。
これは前世日本レベルのものである。
そこで極力魔法で置き換えつつ、大量生産に向けて試行錯誤することになった。
少量生産と大量生産とでは、かなり感覚が違う。
それは実際に調理してみるまでは理解できない。
そうして、数カ月後、数百人分のクッキーなら1時間もあればできてしまう凄腕のクッキー魔法士が誕生したのであった。
なお、クッキー魔法士は孤児院の必須基礎スキルとして、全員に共有させた。
スィーツ作成の基礎として十分なものがあると考えたからである。
また、学院のみんなには、極力外にもらさないよう、お願いした。
取り合いになるからだ。
取り合いどころか、作り方を教えろだの、素材をどこで入手したのだの、
大騒ぎになるのは目に見えている。
だから、クッキーを外に漏らした人にはクッキーをあげないことを、しっかり肝に命じさせた。
これだけの人数、情報コントロールは難しいのだが、スィーツのことは別腹か。団結力強く、外部に漏れることはなかったのである。
これは後日の話であるが、エレンが卒業してからは、この縛りがなくなった。
限定された形ではあるが、クッキーを手に入れられるようにしたからである。
そのときには、クッキーなど目じゃないほどのモンスター・スィーツがこの国を襲うので、クッキーどころじゃなくなっていた。
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