17 孤児院6 転移後、1年が過ぎた
初投稿です。未熟者ですので、誤字・脱字等ご指摘いただけると幸いです。
【孤児院6】転移2年4月
ようやく冬がおわり、桜もどきが咲き始める。
多分、転移して1年が過ぎたんだな。
転移したときもあのピンクの桜もどきをみた記憶がある。
魔素濃度が高いと寒さが和らぐらしい。
オレのいるエリアは冬でもそれほど寒くはならない。
それでも最低気温が10度以下になることもある。
だから春が来て空気が緩んでくるのを感じるのは嬉しいものだ。
新人も含め、子どもたちは順調に育ってきている。
オレは冬の間に、いくつかの準備をした。
まず、品種改良された小麦・大豆・半魔牛と半魔豚、半魔鶏だ。
■小麦・大豆の品種改良
魔素密度の高いエリアでは栽培作物も魔素が高くなる傾向にある。
リョータと白孔雀農業実験チームは小麦の品種改良に成功。
今までは通常の作物を魔素の強いエリアで育てると芽が出なかったり、
奇形になったり、含有する魔素が心配だったりした。
何度かトライするうちに、魔素密度が比較的高い程度のエリア、であれば、
魔素をほとんど含まない作物を栽培できるようになった。
つまり、孤児院のあるエリアに適した植物ということだ。
動物でも植物でも、魔素の影響を受けると大抵はダメになる。
しかし、魔素に抵抗を見せる動植物は質の高いものになる。
品種改良された小麦は、収穫率が高く、従来よりも味のよい小麦となった。
とりあえずは、グルテンの分量の多い強力粉用の小麦を開発したが、
引き続き、薄力粉も開発している。
近々、完成品ができるようだ。
強力粉はパン向き。薄力粉はスィーツ向き。
ウドンは中力粉か強力粉。オレはウドンなら強力粉が好みだ。
パスタは特殊でデュラム小麦を使う。
デュラム小麦は腰が強いが粘りが薄い。つまりまとまりにくい。
だから、生パスタは普通の小麦粉にデュラム小麦を混ぜる。
そば粉と少し似ている。
大豆なども同様にして、この魔素の緩衝地帯に適した品種の開発を目指す。
何でもかんでも栽培すれば収穫できるわけではない。
それなら農家は苦労しない。
むしろ、収穫できないほうが多い。
市場にあるいろいろな品種を一通り試して、このエリア向きの作物を選別している最中だ。
■肥料
この世界では、三圃式農業を実践しているところが多い。
一つの畑を冬穀(秋蒔きの小麦)・夏穀(春蒔きの大麦・豆など)・休耕地(放牧地)の3つに分けて、毎年ぐるぐると役割を変えていって、連作障害を防ぐ。
だがそれでも収穫率はさほど向上しないという。
この世界の収穫率は3~5。
1の種に対して3~5の小麦が生産されるということだ。
さほど高くない。
主な理由は2つ。
放牧地が狭くて放牧が中途半端になること。
肥料が不足していること。
ウチは三圃式農業を進めた混合式農業を実践している。
小麦/牧草/大麦/根菜類に農地を分けるやり方だが、
それでも放牧地と肥料の問題は完全には解決しない。
それで、隣接した土地に広い放牧地を確保し、
腐葉土を利用した肥料つくりを行うことにした。
世界樹森林には豊富な腐葉土がある。
これに牛等の糞を混ぜて醸成、最後に魔素を適度に抜き完成。
小麦の品種改良と合わせ、従来よりも3倍程度の収穫率になった。
1haあたりだと3トン程度の収穫が見込める。
なお、根菜類は案外人手がかかる。
それは魔導農機を開発して、なるべく楽に耕作できるようにしたい。
■半魔牛 牛乳、バター、クリームチーズ、
半魔牛・半魔豚・半魔鶏など“半”がつく動物は、品種改良により魔素密度のさほど高くないエリアに適応した動物。
植物同様、魔素に適応した動物は体が大きくなり、味も良くなる。
まさに改良という名にふさわしい。
半魔牛乳による牛乳、バター、クリームチーズといった乳製品は、かなり質が高い。単純に言えば、かなり美味しい。前世基準でもプレミアムがつきそうな味だ。
『こら、ウニャ。バター、泥棒したな』
『うにゃ』
『目をそらしてもダメだぞ。なんだ、その口の周りのベタベタは』
『うにゃ』
『スィーツのべたべたじゃない。思いっきりバターじゃんか』
『うにゃっ』
あっ、逃げた。
今日はご飯抜きだな。
ご飯なしになるのがわかっているのに、モフモフたちは半魔牛の乳製品に手が出てしまう。
『我慢ができない?スィーツよりおいしい?うん、よくわかった。君たちもご飯抜き』
モフモフたちには今一番ホットなのが、半魔牛の乳製品らしい。
今日作ったバター、全部やられた。
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