09 ヒースコート子爵の誤算
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【ヒースコート子爵の誤算】
ヒースコート子爵は焦っていた。
『愚かなことをしでかして』
ヒースコート子爵は、教会の裏部門であるサタンの会の幹部であった。
彼は徹底した人間主義、貴族主義者である。
亜人や魔獣などの存在は勿論、王族でさえ認めていなかった。
というよりも、自分が『王』だと思っていた。
封建領主にはありがちな性格である。
それが子供のアンドリューに強い影響を与えていた。
問題は、アンドリューが愚かであったことだ。
それは誰の目にも明らかであった。
子爵は、ずっと長男と次男とどちらを跡継ぎにするか、迷っていた。
普通の領主ならば、優秀な執事なりを揃えれば経営はやっていける。
ヒースコート家はそんな単純な家系ではない。
当家はサタンの会に深く入り込んでいる。
そんな中、馬鹿がやらかした。
冒険者ギルドでギルマス含む大勢の者が見守る中、
一方的な敗北を喫したのである。
しかも、相手は一人、こちらは元B級冒険者二人を含む4人。
ご丁寧に、敗北したら奴隷になる、という決闘契約をしてまで。
戦闘は一瞬であったという。
しかも、敗北後、さらに惨めな態度を示したと言う。
かばいきれない。
この件以降、長男は怯えきって部屋から出てこなくなった。
髪の毛は真っ白で、目は虚ろ。一体何をされたのだ?
子爵は諦めた。当家の跡取りは次男だ。
しかし、長男への憐憫はあった。
廃嫡はするが、どこかで静かに暮らさせるつもりだ。
貴族の面目を潰してくれた相手には報復するべきだと固く誓った。
『あの奴隷共も粛清しとけばよかったな』
子爵はアンドリューに付き従った三人の奴隷に腹をたて、
あっという間に売り払ってしまっていた。
『まあ、いいか。ついでに奴らも餌食にしてやろう。泣き叫べ!』
子爵はしてはならないことをしてしまった。
サタンの会でも禁秘にされている悪魔召喚の儀を行ってしまったのだ。
その結果、魔法陣のあった自らの館地下室を中心に、半径1kmが爆散した。
自分も。関係者一同を含めて。
悪魔は呼び出されなかった。
厳密に言うと、どこかの次元で僅かな存在の萌芽が芽生えたかもしれない。
そう、この世界とはまるで違う次元のことであった。
大爆発の原因を調査した王室警備団は、すぐに原因を探り当てた。
あの大爆発にも関わらず、魔法陣の一部が残っていたからである。
それは禁秘とされた悪魔召喚の魔法陣であった。
子爵家はもう跡形もなく吹っ飛んでしまった。
しかし、追求の手はサタンの会にまで及んだ。
元々、王家からチェックが入っていた組織である。
サタンの会は、教会の裏組織であるが、教会といえどもかばいきれなかった。
サタンの会は別名組織に改変された。
サタンの会は表面上この世からなくなったのであった。
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