20 紡績と製糸
初投稿です。誤字・脱字等ご指摘いただけると幸いです。
とりあえず、最後まで書き終えました。煮詰めつつ投稿する予定です。
【紡績と製糸】
マレーラは一見荒野の広がる貧しい土地に見えた。
色は赤黒く、豊かな土地には見えなかった。
しかし、土地は元々火山岩である玄武岩が風化した大地である。
雨が少ないため植物の豊かな大地ではないが、比較的土壌は豊かである。
火山灰土壌はキメが細かく、腐食土を保有しやすいという。
こういう土壌を間帯土壌という。
インド・デカン高原やブラジル高原が有名だ。
デカン高原は綿花、ブラジル高原はコーヒーの大産地である。
綿花は集約的というか、典型的な奴隷農業で有名であった。
この世界には魔法がある。
単純な労働は、魔法に置き換えることが難しくない。
集約農業ではないのだ。
東にクリーク川が流れており、ここから運河を引っ張った。
リョータたちであれば数日程度の作業で数十kmの運河が完成だ。
この土地は豊かな農地となり、綿花栽培で有名になった。
綿花が取れれば、次は紡績業である。
糸車は既にこの時代にもある。
ここは一つ歴史で有名なジェニー紡績機を作ってみた。
ジェニー紡績機は1つの糸車と8つの糸紡ぎを並べたような構造を持つ。
ジェニー紡績機もどきをピョン太と相談しながら作成した。
この先にミュール紡績機というのがあり、蒸気機関と結びついて
産業革命が本格化していく。
が、糸ばかり作っても困るのだ。機織りが間に合わない。
機織り機は、これまた有名なジョン・ケイの飛杼。
この玩具みたいな装置で、機織りの効率が倍になる。
ただ単に緯糸(縦糸)を通す簡単な機構を考えただけなんだが。
この飛杼もゆっくりと発展していくが、とりあえずは飛杼だけを開発した。
当面は家内制手工業を便利にする、というのが念頭にある。
奥さんたちの仕事を奪わない程度に産業を進展させるのが目的だ。
急いで産業化させると、歪が怖い。
飛杼でさえ、前世では騒動がおきた。
繊維女工は、東西問わず悲惨の代名詞だし。
この2つの発明品は、ユグド街、チャーリーやモブレーの領地にも伝播させた。
また、すぐに全国で真似されるであろうが、それも認めた。
そもそも、産業革命の端緒となった発明である。
これをきっかけに技術が進歩してほしい。
綿花 木綿の生産は、マレーラの基幹産業となった。
携わる人が多いからだ。
マレーラでは木綿以外の繊維産業も発達した。
キングスパイダーの糸の産業化に成功したのである。
キングスパイダーは、大型のタランチュラのような魔物。
糸は絹のように滑らかだが、かなり頑丈。安定的。
変色したりしない。シミがつかない。高級糸となる。
キンク・スパイダーの糸に目をつけたのは翼竜のナーガである。
『キング・スパイーダーの糸でハンモックを作るのじゃが、あれは丈夫でしかもしなやかじゃぞ。綺麗じゃしな。あれ使ってドレスができんかの』
彼等に蜘蛛用チュールを与えた所、速攻でなつき、糸生産に同意してくれた。
蜘蛛糸工場は、世界樹の森の周辺に造成された。
そこでは毎日チュールを与えられる蜘蛛たちが糸の増産に励んでいた。
励んでいた、といっても1日数分間糸を吐き出すだけだ。
それで十分な量の糸を確保できた。
糸を運搬するのは魔狼である。
ときどき、魔狼たちが糸にくるまれる、という事件が起きるのはご愛嬌だ。
魔狼と蜘蛛が喧嘩することがあるようだ。
魔狼たちにはご愛嬌ではないのだが。
魔狼の力をもってしても出られないのだ。糸の強さがわかる。
なんとかヘルプ信号は出せるので、急ぎ救助に向かう。
『わふうぅ……』
顔だけ出して糸に雁字搦めにされた魔狼を救出するのは毎度困難だった。
簡単に切れる糸ではないのだ。
蜘蛛の糸は製糸の必要がない。
はきだした瞬間に製品レベルの糸となる。
問題は糸が丈夫すぎることであった。何しろ、魔狼にも切れないのだ。
ピョン太が専用のカッターその他の道具を製作した。
ダイヤモンドをも軽々と切れるという切れ味を誇る。
キング・スパイダー糸による製品は、ハイソ向けトップブランドとなった。
その他、防具としても超一流であった。
糸の名はマレーラ糸として、詳細を秘密とした。
マレーラブランドは一躍世界に名を轟かせることになった。
また、マレーラ糸を気に入ったナーガが、このエリアに常駐。
後日、ファッションデザイナーとして勇躍することになる。
『当たり前じゃ。この糸の良さは妾が一番良く知っておる』
何しろ、ナーガのデザインしたドレスを着られるかどうかが、
ハイソのパーティでの格を決める、とまで言われるのである。
こうして、マレーラの衣類はHARVISの高級衣類部門におさまることになった。
※紡績は短い繊維を糸の状態にすること。
製糸は長い繊維をバラバラにせずにまとめて糸にすること。
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