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18 ウィリアム王子

初投稿です。誤字・脱字等ご指摘いただけると幸いです。

とりあえず、最後まで書き終えました。煮詰めつつ投稿する予定です。

【ウィリアム王子】転移6年6月


 ウィリアム王子は容姿端麗、能力も高く、性格もよく人の言うことを聞き、かつ意思の強い、いわばリーダーとしてなかなか高い能力の持ち主であった。


 しかし、彼は五男であった。

 母親は伯爵家の三女とされたが、実は男爵家からの養女であった。

 しかも、よく調べると男爵家でも養女であった。


 階級ロンダリングをした結果であり、元々は平民であった。

 そのことは王族の誰もが知っており、公然の秘密とさえいえない状態であった。



『妾の子のくせに』


 ウィリアムは兄弟たちから蔑まされ、味方がいなかった。

 いつも一人であった。


 唯一の話相手は病弱の母親かメイドのジョリーナだけであった。

 ジョリーナ以外の使用人からでさえ、避けられている状態であった。

 ウィリアムが学院でエレンたちと友達になれたことは大変嬉しいことであった。


 正直、王族には未練はない。

 いずれにせよ、5男であるから、早いうちに王位継承レースから脱落(元々出走しているとはいえなかったが)して、余計な思惑から遠く逃れておきたかった。


 だから、王立高等学院への進学を断念して、機会を伺っていたのである。

 そういうなかで、今回の殊勲である。



『此度は見事であった、ウィリアムよ。そなたは王家の誉である。何かのぞみはあるか』


 ウィリアムは考えた。

 この際、以前より考えていたことを実行するときではないかと。


『怖れながら、土地を賜りたいと存じます。どんな僻地でも文句を申しませんが、できれば世界樹の森の近くで。それと軌道にのりましたなら、体調のよくない母親を静養のために呼んでも宜しいでしょうか』


『それでよいのか? では、少し待て。適切な土地をそなたに贈ろう』


 ウィリアムがそういう希望を述べたのには、理由がある。


 ユグド街が想定の人口を突破し、移民を受け入れられなくなりそうだからだ。

 新たなユグド街を必要としていた。


 ウィリアムはもし自分が土地をもらえたのなら、そこを第2のユグド街にしたい旨、リョータに了解をとっていた。



 協議の結果、場所はランスター王国の西側、ローマン帝国との国境近くの土地を賜った。マレーラという名前だった。

 かなりの僻地らしかった。開発もされていないようだ。



 帝国との戦争の結果、ランスター王国の王室や貴族の間には衝撃が流れていた。

 ウィリアム王子とその背後にある世界樹の戦力を。


 隔絶している。

 ランスター王国が世界樹勢力と戦ったら。

 相手にならない。

 なんとかして懐柔の方向でつきあうしかない。


 しかし、ウィリアム王子の兄弟や取巻きたちの醜い嫉妬は収まらない。

 必死の工作の末、王子は王国の西のはずれに領地を構えることになった。

 未開発で住民のいない僻地である。



 王子はまるで島流しのような土地を与えられたのだ。

 この顛末を周りはどう見たか。

 命を助けられた貴族や、彼を英雄と讃える国民たちは。


 王族は激しく支持率を下げた。

 特に、王子の兄弟や取巻きたちには激しい怒りが巻き起こる。


 このあたりを『ラヂオ』は興味深く煽り立てる。


 もとより、この戦争を『ラヂオ』は現場から実況した。

 無線機が戦場の状況判断に革命を起こすのは誰の目にも明らかであったが、

 その前に、『ラヂオ』は娯楽として無線機を活用した。


 いや、娯楽というのはおかしい。

 民衆への情報伝達手段として、無線機を活用した。

 ウィリアム王子の国民的な人気はここから生まれた。

 勿論、そこにはリョータの意思が入っていた。



 一方、周囲の同情的な視線に反して、

 ウィリアム王子にとっては新領地は願ったりの場所であった。


 中央から目の届かない場所。

 しかも、荒野とはいえ、実は案外肥沃な大地なのであった。

 火山灰地で、水が不足していただけであった。


 一代限りとはいえ伯爵に叙爵して、ウィリアムは任地に赴く。

 後継者資格も辞退した。

 共をするのは、リョータとモフモフたち、メイドのジョリーナである。



『凄いところにきちゃったな』


 ここはなんていうのか、ステップ?

 草木もまばらで生命の気配が薄い黒赤色の荒れ地。


 南西側を見ると、峻険な山脈が自然国境を形成している。

 領土の東側にはクリーク川が流れており、北側は世界樹の森で塞がれている。


 八方塞がりのど僻地である。



 以下は後年の話である。


 ランスター王が崩御したあと、醜い後継者争いが起こった。

 ウィリアム王子は後継者資格を辞退していたが、

 勝者の次男王子は、すぐさまウィリアム王子打倒の兵をあげようとした。


 ところが、そこに集まった兵士は一人たりともいなかった。

 一人たりともだ。


 いや、厳密に言うと影に潜む数多もの魔狼たちとウニャ丸がいた。

 少なくとも、猫一匹と魔狼たちはそこにいたのである。


 魔狼たちは、ほとんど何もしていない。

 次男王子の配下だったものはすべて逃げ出し、見限ったのであった。



 王国は紆余曲折の末、ウィリアムを首班とする共和制国家となった。

 共和政といいながら、事実上のウィリアム王国である。


 隣国アーロッシ帝国南部地域の各都市は平民が力をつけ、いわゆる市民階級を形成した。アーロッシ帝国自体が混迷を極める中、自治都市となる街が続出。


 やがて、ウィリアムの共和国と連邦国家となるのである。



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